増やす
3倍以上株価が上がったケースも

ワークマン、ラグビー、タピオカ… いろいろあった2019年を関連企業の「株価」で振り返る

2019年もさまざな話題やニュースが世間をにぎわせました。本記事では、読者の皆さんの印象に残っているであろう出来事をピックアップして振り返ります。ただし、ただ振り返るのではなく、出来事と関係する企業の株価の動きを中心に紹介するという、ちょっと変化球の企画です。はたして「あの話題」に関係する企業の株価は上がったのか、下がったのか? ガイド役は、年間300社以上の企業を訪問し、上場企業の動向に精通しているマーケットアナリストの藤本誠之さんです。本記事をきっかけに、世の中の動きと企業の株価の関係性の面白さを知ってもらえれば幸いです。
※本記事は2019年12月24日時点の情報を元にしています。また記事内に出てくる日付は、特別な表記がない限り2019年のものです。

監修:藤本誠之(ふじもとのぶゆき)さん。「相場の福の神」の愛称を持つマーケットアナリスト。年間300社を超える上場企業経営者とのミーティングを通じて、個人投資家に真の成長企業を紹介している。ラジオNIKKEIで4本の看板番組を持ち、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。日興証券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジスト

作業服チェーン「ワークマン」がブレイク

ダミー

黄色いロゴでおなじみのワークマン。新業態の「ワークマンプラス」が人気に

ファッションの世界で2019年に大きな話題になったのが、「高機能×低価格×おしゃれ」が特徴の斬新な「作業服」でした。その発信源となった企業が「ワークマン」(7564 ※証券コード。以下同)です。ワークマンは1979年創業。作業服や作業用品の専門チェーンを全国展開していて、店舗数は800以上を誇ります。建設・工事などの「プロ」をターゲットにして店舗を拡大してきましたが、2018年秋に一般客にターゲットを広げた新業態店舗「WORKMAN Plus」(以下、ワークマンプラス)を立ち上げ、これが大ヒットとなりました。

「ワークマンの作業服はプロ用途ということもあって、機能性が高く価格も抑えめでした。これらの作業服が『日常生活でも意外に使える』と一般層にも浸透してきた機運をうまくとらえ、一般層に寄せた商品展開で大ヒットしたという構図です」(藤本さん)

追い風となった2つの要素

藤本さんは、これに加えて2つの要素がワークマン躍進の背景にあると指摘します。

「ひとつはアウトドアブーム。有名ブランドのアウトドアウェアは値が張りますよね。ワークマンなら安く抑えられ、品質も悪くない。コストに敏感な若者層を中心に選択肢のひとつとして認知されてきました。もうひとつはSNSの力です。ワークマンの服をおしゃれに着こなし、『ワークマン女子』などのハッシュタグを付けてインスタグラムなどにアップする女性が増えています。高級なブランド服を見せびらかすのではなく、手ごろな値段の服をいかにおしゃれに着こなすかが一種のトレンドになっており、これもワークマンにとって追い風となりました」(藤本さん)

ワークマンの株価は約3倍に

※ワークマンの各月の終値をグラフ化<br>※ワークマンは2019年3月に1対2の株式分割を実施

※ワークマンの各月の終値をグラフ化しています
※ワークマンは2019年3月に1対2の株式分割を実施

こうした動きは、テレビ・WEB・雑誌などの各種メディアでもたびたび取り上げられ、ワークマンの人気に拍車をかけました。その結果、同社の株価にもポジティブな影響があったようです。

「ご覧のとおりワークマンの株価は力強く上がりました。年初来安値は3,450円(1月4日)で、 年初来高値は1万570円(12月15日)ですから、今年1年で株価は約3倍にまで大きく上がった計算です。12月24日の記事執筆時点の株価も1万200円と高値を保っています」(藤本さん)

話題の大きさが株価にも表れたワークマン。余談ながら、筆者はこの冬「フィールドコア」というブランドのアウターを着た人を街中で立て続けに見る経験をしました。見慣れないブランド名だったのであとで検索したところ、これもワークマンのブランドのひとつだったことが判明。まさに、ワークマンの「勢い」を肌で感じた出来事でした。2020年もこの人気は続くのか? そして株価はさらに上がるのか? ワークマンに引き続き注目していきたいと思います。

ワークマンのアウトドアブランド「フィールドコア」には低価格でほどよくファッショナブルな商品がラインアップされています(画像はワークマン公式通販サイトより)

ワークマンのアウトドアブランド「フィールドコア」には低価格でほどよくファッショナブルな商品がラインアップされています(画像はワークマン公式通販サイトより)

「ラグビーワールドカップ」であの英国風パブが盛況

ラグビー人気の影響がこんなところにも!

ラグビー人気の影響がこんなところにも!

日本代表が悲願のベスト8入りを果たしたラグビーワールドカップ。代表チームのスローガンだった「ONE TEAM(ワンチーム)」は、2019年の流行語大賞を受賞するなど、国民的な関心を集めました。ラグビーワールドカップの関連企業と聞いてもピンとこないかもしれませんが、実はある企業が大きく株価を伸ばしました。それが「ハブ」(3030)です。首都圏を中心に英国風パブの「HUB」を展開していることでおなじみですよね。

「ラグビーはイギリス発祥のスポーツです。外国人のラグビーファンの間では、パブで観戦したり試合後にパブに繰り出したりする文化が根付いています。ラグビーワールドカップの開催期間中、観戦に日本を訪れた外国人や日本のラグビーファンによる客数増加が見込まれました。そしてフタを開けてみると、その見込み通りHUBはどこも大盛況。日本代表の活躍もそれを後押ししました。全店舗の売上高が9月、10月ともに前年同月比25%以上の大幅増と業績好調だったんです」(藤本さん)

英国研修など本物志向が人気を支える

ハブはもともとダイエーの創業者である故・中内功氏が、イギリスのパブ文化に感動し、日本にもそれを広めたいという思いで作った業態だそうです。

「ハブは1988年から社員のイギリス研修を実施したり、2016年から入社式をイギリスのパブで実施したりと、本場パブの雰囲気づくりに力を入れています。また日本で店舗を作る際はかなりの設備投資をして、バーカウンターなど店内の設備もできるだけ本物で揃えているそうです。『英国風』と銘打っていますが、形だけでなく本場のパブに対して敬意を払う姿勢が、国内外のお客さんを集める要因にもなっていると思います」(藤本さん)

ハブの株価は一時約1.7倍に

※ハブの各月の終値をグラフ化しています

ラグビーワールドカップの盛り上がりはハブの株価にどう影響したのか? 年初来安値は839円(1月4日)。年初来高値は1,445円(9月24日)なので、一時的に約1.7倍に伸びた計算になります。ちなみに、最高値を付けたのはワールドカップで日本がロシアに勝ち、4日後にアイルランド戦を控えるというタイミングでした。

「ラグビーワールドカップが開幕する9月20日の1か月あたり前から株価が上がり始めました。『みんなが投資して株価が上がるはず』という期待先行で買われたのが要因だと思います。証券用語ではこれを“理想買い”と言います。ハブは9月24日に最高値を付けたあと下降線に。12月24日時点では1,010円に落ち着いています。一時の盛り上がりが株価を引き上げた好例と言えます」(藤本さん)

「タピオカブーム」の恩恵を受けたある激安スーパーとは?

タピオカブームにうまく乗ったのは「街中のタピオカ店」ではなく……

タピオカブームにうまく乗ったのは「街中のタピオカ店」ではなく……

「タピる」という言葉は皆さんもご存じですよね? 2019年の流行語大賞でトップ10入り。空前のブームとなったタピオカ入りのドリンクを飲む(または食べる)ことを意味する言葉です。このタピオカブームに関連する企業が「神戸物産」(3038)です。同社は低価格路線で知られる「業務スーパー」を展開する企業。「業務」と名前が付いていますが、一般客でも利用できます。ここ数年売り上げは右肩上がりで、全国に800店舗以上を抱えるまでに成長しています。

「神戸物産の大ヒット商品が、冷凍食品コーナーに並ぶ『タピオカドリンク(ミルクティー)』です。同社のプライベートブランド品で、1袋に4食(65グラム)入って298円(税別)。街中の店舗で買うとそこそこの値段がしますし、行列に並ぶなどの面倒もあります。その点、1杯あたり100円以下と格段に安く、自宅で手軽にタピオカドリンクが楽しめるということで人気になりました。なおタピオカドリンクに欠かせない『太めのストロー』も4本付いていて手が込んでいます」(藤本さん)

神戸物産の株価は約2.4倍

※神戸物産の各月の終値をグラフ化しています
※神戸物産は2019年10月30日に1対2の株式分割を実施

神戸物産の株価の年初来安値は1,590円(1月4日)。年初来高値は3,850円(12月18日)と、一時的に約2.4倍にまで上がりました(12月24日時点の株価は3,725円)。

「ワークマン同様、業務スーパーのタピオカドリンクもSNSで大きな話題になった商品で、これをきっかけに神戸物産の名前を知った人も少なくなかったと思います。チャートを見ると8月、9月は株価を下げています(各月とも終値は2,620円)が、『タピオカブームはそろそろ終わるのでは?』という空気が影響したのかもしれません。しかしその後、神戸物産の業績がよかったことから再び買われました。同社の売り上げ全体の中でタピオカが占める割合はわずかなんです。それ以外の商品もしっかりと売れていることが10月以降の株価上昇につながっています。『ハブ』の項で触れた"理想買い"に対し、このように好業績を背景に買われることを"現実買い"と言います」(藤本さん)

話題になった3つのニュース

「新元号」「あおり運転」「キャッシュレス」の3つのニュースと株価の関係についても藤本さんに聞きます

「新元号」「あおり運転」「キャッシュレス」の3つのニュースと株価の関係についても藤本さんに聞きます

最後は、世間の耳目を集めた3つのニュースに注目してみます。株価にはどんな影響があったのでしょうか?

ニュース1:新元号

2019年4月1日、平成に代わる新しい元号「令和」が発表され、1か月後の5月には新天皇が即位。令和の時代が始まりました。

「新元号で投資家が注目するのは、元号が変わることで生まれる消費です。代表例は、印鑑の購入や印刷物の刷り直し。その需要を見込んで株を買うわけです」(藤本さん)

※AmidAホールディングスの各月の終値をグラフ化しています

新元号関連の企業のひとつが「AmidAホールディングス」(7671)。同社は「ハンコヤドットコム」というサイトを運営し、印鑑のネット通販でシェアナンバー1。名刺やカレンダーの印刷専門サイトも運営しています。

「年初来高値の4,400円を付けたのが3月29日。令和の発表直前ですね。しかし、高値はほんの一瞬で、その後に株価は下落しました。新しい需要が生まれると言っても、印鑑の単価は低く売り上げ増には限界があります。それもあり株価にはさほど影響しなかったようです。現在の株価は921円で落ち着いています(12月24日時点)」(藤本さん)

ニュース2:あおり運転

意図的に車間距離を詰めたり、進路をふさいだりするなどの「あおり運転」。悪質なあおり運転が重大な事故や事件につながったケースが報道されるようになり、深刻な社会問題へと発展していきました。現在、厳罰化に向けた法整備も進んでいます。

「あおり運転が取り沙汰された影響もあり、投資先としてドライブレコーダー関連の企業が注目されました」(藤本さん)

※カーメイトの各月の終値をグラフ化しています

自動車製品や部品の卸売り大手「カーメイト」(7297)もそのひとつ。同社の株価はどうだったのでしょうか?

「年初来高値は1,089円(9月9日)で、 年初来安値は635円(5月15日)。記事執筆時点の株価は986円(12月24日)となっています。ドライブレコーダーが売れて株価に一定の効果があったと言えそうですが、この企業の株式時価総額が75億円余り(取材時)と小さい点は注意が必要です。一般的に、時価総額と流動性が低い銘柄を『小型株』と言いますが(※)、小型株は少し買われると株価が上がりやすいという特徴があることは覚えておいていただければと思います」(藤本さん)

※一般に、時価総額と流動性が低い銘柄を「小型株」と言います。そのほか、東京証券取引所では、規模別株価指数の算出において、東証1部上場銘柄のうち時価総額と流動性が高い上位100銘柄を「大型株」、その次に高い400銘柄を「中型株」、それより低い銘柄を「小型株」と分類しています。ジャスダックなど新興市場の株式も「小型株」の分類に入ります。

ニュース3:キャッシュレス

2019年は、消費税増税にともなう政府の「キャッシュレス・ポイント還元事業」も影響し、スマホ決済などのキャッシュレス決済が急速に進んだ1年でもありました。そうなると、投資先としてキャッシュレス関連企業が思い浮かびますが……。

※メディアシークの各月の終値をグラフ化しています

「キャッシュレス関連銘柄は、クレジットカードや電子マネーに絡む会社をはじめ、決済サービス会社やシステム開発会社、端末メーカー、銀行、コンビニなどまでかなり広い範囲に及びます。必然的に投資先は分散され、株価を大きく押し上げたとは言い難い状況です。たとえば、QRコード読み取りアプリを手がける『メディアシーク』(4824)ですが、年初来安値は623円(10月3日)で年初来高値は940円(5月20日)。世間がキャッシュレスで盛り上がった9月、10月にむしろ株価を落としています(最新の株価は12月24日の667円)。そのほかのキャッシュレス関連企業も世間の盛り上がりと連動した株価の上昇はさほど見られず、その意味で、キャッシュレス関連は株価との関係性は比較的低かったと言えそうです」(藤本さん)

オリンピックイヤーの株価は?

ダミー

 

2019年の出来事に合わせ、関連する個別企業の株価について振り返ってきました。来年2020年はいよいよ東京五輪の年です。藤本さんのお見立ては?

「オリンピックで実需が見込まれる企業の株価には注目しています。たとえば、『ビーアンドピー』(7804)という会社があります。ここは業務用の大型インクジェット出力機を用いたサインディスプレイ(屋外広告、POP広告、交通標識などの総称)制作に強い企業で、オリンピック関連の旗や、ラッピング広告などの需要増が見込まれています。このように、世の中の変化を読み、あれこれと想像をはりめぐらせるのは株式投資の醍醐味だと思います」(藤本さん)

投資を楽しんでいる方もまだの方も、2020年は世間の話題と株価の関係性に注目されてはいかがでしょうか?

※本記事は、取材者及び執筆者個人の見解です。

百瀬康司

百瀬康司

フリーランスのライター。副業をはじめ、投資、貯蓄、節約などマネー企画全般を幅広く取材。ビジネスや働くママのジャンルでも取材経験が豊富。雑誌、Web、夕刊紙、書籍で執筆を行い「真に価値ある情報提供」を使命とする。

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