キャッシュレス決済の普及が進む昨今ですが、現金のニーズもまだまだ健在です。そこで今回は、知っておくと意外と便利な、スマホ決済アプリの「残高を現金で引き出す機能」に注目してみます。
「ユーザー同士で気軽にお金を送れる」のはスマホ決済アプリの大きな魅力です。しかし「PayPay残高はPayPayでの支払いだけに使える」といった具合に、各アプリの残高は基本的にそのアプリの加盟店でしか決済に使えません。仮に、お金を受け取る側がそのアプリでの決済をあまり使っていない場合、残高を送られても使い道に困ってしまうことにもなりかねません。そんなとき、送ってもらった残高が現金で出金できると知っていれば、送られる側も安心ではないでしょうか(スマホ決済アプリにより、送金可能であっても出金には対応していない残高もあります)。
この記事では「アプリ内の残高を現金に引き出せる機能」(以下、出金機能)を持つアプリの中から6種を紹介します。また、この機能のほか「アプリユーザー間で無料で送金ができる機能」(以下、送金機能)と「QRコードで決済ができる機能」(以下、QRコード決済機能)の2つもアプリ選びの基準にしました。QRコード決済機能については、使える加盟店の数や決済金額に応じたポイント還元の有無でアプリ間に差があるため、理解を助ける目的で、加盟店が多く、ポイント還元がある4つのアプリを「買い物系」、残りの2つを「送金系」とジャンル分けして紹介します。
最初に、スマホ決済アプリの出金機能について説明します。現状、スマホ決済アプリの出金機能には
(1)銀行口座への振り込み
(2)セブン銀行ATMでの出金
の2つのタイプがあります。アプリによって(1)のみができるものや、(2)にも対応しているものに分かれています。これを念頭に読み進めていただければと思います。なお、(2)のみに対応しているアプリはありません。
ユーザーが希望する銀行口座へ残高が振り込まれる機能で、今回紹介する6つのアプリすべてが対応しており、振り込みできる銀行や手数料は各アプリによって異なります。また、アプリでの手続き終了後、実際に口座に振り込まれるまでの時間がアプリによってまちまちなので注意が必要です。
※銀行口座から現金を引き出す際には、キャッシュカード等が必要となり、手数料などは各銀行のルールによります。
アプリ内の残高をセブン銀行ATMから直接現金で引き出す機能です。セブン銀行の口座やキャッシュカードは不用で、スマホがあれば現金を引き出せます。記事で取り上げる6つのうち3つのアプリがこの機能に対応しており、手数料などはアプリによって変わります。
まずは買い物系アプリの「PayPay」「au PAY」「d払い」「LINE Pay」4種から。これらのアプリの特徴は「QRコードで決済できる加盟店が多い」ことと「決済金額に応じてポイント還元がある」ことです。最近は、一時期のような大規模かつ高還元のキャンペーンこそ減ったものの、地域や対象店舗を絞ったキャンペーンなどで、依然として「おトク感」が魅力のひとつになっています。なお、本記事に掲載していないメジャーな買い物系アプリのうち、「楽天ペイ」は現在出金機能を一時停止しています(※)。
※2021年7月29日に再開予定。再開後、本記事の内容を更新予定です。
会員数が3,800万人を突破(2021年4月時点)し、QRコード決済の中で存在感を強めつつあるPayPay。PayPayが対応している出金機能は「銀行口座への振り込み」のみとなっています。
画像はPayPay公式サイトより
PayPayから銀行口座への振込方法
PayPayで銀行に振り込みができるのは「PayPayマネー」のみです。これは、PayPayでの本人確認後に銀行口座などからチャージ、もしくは「ヤフオク!」「PayPayフリマ」の売上金からPayPayにチャージした残高のことで、それ以外のキャンペーンなどで付与された残高は出金できません。
出金は100円から1円単位で可能です。PayPay銀行(ジャパンネット銀行から名称変更)の口座に出金する際は手数料無料。そのほかの金融機関に出金する際は1回あたり100円かかります。また、PayPay銀行への出金は即時反映されますが、その他の銀行口座への入金は翌〜翌々営業日程度の時間がかかるので(手続きタイミングによって異なる。ゆうちょ銀行の場合は3〜4営業日と長め)、日数に余裕を持って手続きしたほうがいいでしょう。PayPayの出金機能に対応している主な銀行は下記のとおりです。
PayPayで出金できる主な金融機関
・PayPay銀行
・三井住友銀行
・みずほ銀行
・ゆうちょ銀行
・セブン銀行
・住信SBIネット銀行
※このほか地銀など合計80行以上に対応(2021年6月時点)。対応する金融機関は下記リンク先で確認ができます。
https://paypay.ne.jp/guide/bank-list/
KDDIが運営するau PAYも、PayPayと同じく「銀行口座への振り込み」のみ対応しています。
画像はau PAY公式サイトより
au PAYから銀行口座への振込方法
au PAYから出金できる銀行は「auじぶん銀行」のみとなっています。ほかの買い物系アプリと同様、キャンペーンなどで付与されたポイントは出金できません。また「auかんたん決済」「クレジットカード」「au Payギフトカード」を使ってチャージした残高も出金できないのでご注意ください。出金1回あたりの手数料は、出金額が20,000円未満の場合は220円。20,000円以上の場合は出金額の1%+税となります。出金は1円以上1円単位で可能。1回あたり10万円が上限です。
au PAYで出金できる金融機関
・auじぶん銀行
ドコモが運営する決済サービスのd払い。ドコモユーザー以外でも、dアカウントを作ることで利用できます。「銀行口座への振り込み」と「セブン銀行ATMでの出金」の2つの出金機能に対応しており、出金機能を使うには銀行口座を登録する必要があります。
画像はd払い公式サイトより
d払いの銀行口座への振り込み
d払いに登録している銀行口座に出金することができます。対象は「全国銀行内国為替制度に加盟している金融機関」となっており、国内のほぼ全ての金融機関に対応しています(ドコモ口座公式サイトより)。1度に払い出しできる金額は2万円までで、出金回数は月5回までに設定されています。手数料は利用する金融機関や回数によって異なり、みずほ銀行宛てのみ、その月の最初の出金は110円、2回目以降は220円。みずほ銀行以外の金融機関の場合は一律220円となっています。なお、口座に入金されるまでに、1〜2営業日程度かかるようです。
d払いで出金できる金融機関
・ 全国銀行内国為替制度に加盟している金融機関
d払いのセブン銀行ATMでの出金
セブン銀行ATMで現金を出金できます。手数料は1回につき220円。最小1,000円から1,000円単位で引き出し可能です。上限は1回につき10万円まで。また、出金できるのは月に10回までに設定されています。
LINE Payは「銀行口座への振り込み」と「セブン銀行ATMでの出金」の2つの出金機能に対応しています。出金機能を使うには、LINE Pay上で本人確認を済ませる必要があります(銀行口座を登録すると本人確認されたとみなされます)。
画像はLINE Pay公式サイトより
LINE Payの銀行口座への振り込み
LINE Payに登録している銀行口座に残高を出金することができます。手数料は1回あたり220円かかります。手続き終了後、原則として即時口座に反映されます(平日の営業時間内のみ)。対応している主な銀行は下記のとおりです。
LINE Payで出金できる主な金融機関
・三菱UFJ銀行
・三井住友銀行
・みずほ銀行
・ゆうちょ銀行
・PayPay銀行
・イオン銀行
・住信SBIネット銀行
※このほかの対応銀行は下記リンク先の「チャージ用として登録可能な銀行を教えてください」より確認が可能(対応銀行を確認するにはLINE Payアプリが必要です)。
https://help.line.me/line?contentId=20003235&country=JP
LINE Payのセブン銀行ATMでの出金
銀行口座への振り込みと同じく、こちらも1回につき220円の手数料がかかります。上限は1日につき10万円です(設定によって限度額を10万円まで上げられます)。
続いて「送金系アプリ」2種を紹介します。買い物系アプリと比べると決済やおトクの面では弱いものの、「お金を動かす」機能に強みを持っています。
「pring」(以下、プリン)は、株式会社pringが2018年3月にリリースしたマネーアプリで、「銀行口座への振り込み」と「セブン銀行ATMでの出金」の2つの出金機能に対応しています。以前は、1日1回、銀行やセブン銀行ATMへの出金が無料で使えるアプリとして知られていましたが、2020年7月よりルールが変更され、無料で使える範囲が狭くなっています。
画像はプリン公式サイトより
プリンの銀行口座への振り込み
対応している金融機関は現在53行で(2021年6月時点で公式サイトに記載の銀行)、月に1回、無料で振り込みが可能。2回目以降は220円の手数料がかかります。出金の上限は1日あたり50万円で、口座への入金は当日〜翌々営業日中までとなっています。対応している主な銀行は下記のとおりです。
プリンで出金できる主な金融機関
・三菱UFJ銀行
・三井住友銀行
・みずほ銀行
・ゆうちょ銀行
・りそな銀行
・PayPay銀行
・住信SBIネット銀行
・楽天銀行
・イオン銀行
・auじぶん銀行
※このほか地銀など合計53行に対応(2021年6月時点)。対応する金融機関は下記リンク先内「利用できる銀行はどこですか?」で確認ができます。
https://www.pring.jp/faq
プリンのセブン銀行ATMでの出金
セブン銀行ATMでアプリ上の残高を出金できます。その月の1回目は手数料が無料で、2回目以降は1回につき220円の手数料がかかります。最小1,000円から、1,000円単位で引き出すことができ、上限は1日につき10万円までとなっています。
「J-Coin Pay」(以下、Jコインペイ)は、みずほ銀行が2019年3月にリリースしたスマホ決済サービスです。ポイント還元や大型キャンペーンなどはありませんが、銀行口座からのチャージや、口座への出金が無料です。出金機能は「銀行口座への振り込み」にのみ対応しています。
画像はJコインペイ公式サイトより
Jコインペイの銀行口座への振り込み
対応している金融機関は全国の地方銀行など75行です(2021年6月時点で公式サイトに記載の銀行)。出金手数料は無料で、1日あたりの出金金額の上限は3万円。本人認証の手続きをすると1日50万円まで増やすことができます。口座への入金は、出金先の金融機関の営業時間内の依頼であれば原則当日中に振り込まれます。
Jコインペイで出金できる主な金融機関
・みずほ銀行
※このほか地銀など75行に対応(2021年6月時点)。対応する金融機関は下記リンク先で確認ができます。https://j-coin.jp/user/bank/
各アプリは一長一短で、スマホ決済アプリに何を求めるかによって選び方が大きく異なります。「決済での使いやすさ」や「おトクさ」を求める人で、出金機能を使う機会が限られる人は買い物系アプリを選んだほうがよさそうです。また、買い物系アプリを手数料のおトクさで比較すると、「PayPay銀行は無料。その他銀行は100円」というPayPayのコスパのよさが目を引きます。
いっぽう、定期的に仕送りを受ける人や、なんらかの事情で一時的にお金を立て替える機会が多い人など、アプリからの出金が一定回数発生しそうな人は、送金系アプリがコスト面で有利です。昨年2020年7月のルール変更で、プリンから無料で出金できる回数が月に1回に減ったため、コスパや使い勝手の面で現状はJコインペイに軍配が上がりそうです。
このほか、今回の「残高を現金として出金する」というテーマからはややずれますが、送金系アプリを使って「自分が持つ複数の銀行口座間のお金の移動」を無料で行うという使い方も考えられます。下記は、メガバンク3行の振込手数料ですが、他行宛への振込にはそれなりの手数料が発生します。たとえば、給与振込口座と家賃や住宅ローンの引き落とし口座を、なんらかの理由で同じにできない場合など、両方の口座を送金系アプリに登録しておき、アプリを介して「チャージ → 出金」すれば、実質無料で口座間のお金の移動が可能です(ただし、金額の上限はあります)。
三菱UFJ銀行の振込手数料
◇三菱UFJ銀行同一店宛て
・3万円未満 → 0円
・3万円以上 → 0円
◇三菱UFJ銀行本支店宛て(同一店以外)
・3万円未満 → 110円
・3万円以上 → 110円(法人、団体は220円)
◇他行宛て
・3万円未満 → 275円
・3万円以上 → 440円
※いずれもATMで三菱UFJ銀行キャッシュカードを利用の場合
三井住友銀行の振込手数料
◇三井住友銀行同一店宛て
・3万円未満 → 0円
・3万円以上 → 0円
◇三井住友銀行本支店宛て(同一店以外)
・3万円未満 → 110円
・3万円以上 → 110円
◇他行宛て
・3万円未満 → 220円
・3万円以上 → 440円
※いずれもATMで三井住友銀行キャッシュカードを利用の場合
みずほ銀行の振込手数料
◇みずほ銀行同一店宛て
・3万円未満 → 220円
・3万円以上 → 220円
◇みずほ銀行本支店宛て(同一店以外)
・3万円未満 → 220円
・3万円以上 → 220円
◇他行宛て
・3万円未満 → 330円
・3万円以上 → 440円
※いずれもATMでみずほ銀行キャッシュカードを利用の場合
このように、各アプリの長所を生かした使い方がいろいろと考えられると思います。本記事を参考に、最適なお金の動かし方を考えてみてはいかがでしょうか?
北欧関連媒体の広告営業、書店・取次営業、一般書籍・月刊マネー誌の編集を経て2018年より価格.comマネー編集部。キャッシュレス、ポイント、投資、節約など便利でおトクな情報をタイムリーにお届けします。