クレジットカード、電子マネー、QRコード決済……。めまぐるしく変化を続けるキャッシュレス決済。その動向をコンパクトに伝える連載企画「おトクの真相! 月刊キャッシュレス展望」。過去1か月のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー編集部員が気になったニュースをピックアップしてお届けします。
記事の最後には、記事公開時点で参加可能なキャッシュレス関連のキャンペーン情報も掲載していますので、おトク情報の取りこぼしがないようこちらもぜひチェックを。この連載は、毎月月初の公開予定です!
今月は、「お賽銭のキャッシュレス化」「大日本印刷が開発した抗ウイルスカード」「カードレス決済の普及の兆し」の話題をお伝えします。いずれの話題も、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響がキャッシュレスの世界にも波及してきていることを感じさせるものとなっています。
依然として予断を許さない新型コロナウイルス。年末に向けて人の往来が増えることが想定される中、「年末年始の休暇を延長して、人出を分散させる」など、感染拡大を防ぐ取り組みが報じられるようになってきました。そんな年始の風物詩と言えば「初詣」、そして初詣に欠かせないのが「お賽銭」ですが、そこにもキャッシュレス化の波が押し寄せています。
キャッシュレスでのお賽銭のシステムを導入した東本願寺(画像は同寺公式サイトより)
京都府の東本願寺は、2020年10月12日より、お賽銭のキャッシュレス決済を導入しました。東本願寺境内の「御影堂」や「阿弥陀堂」など計6か所と、“飛び地境”内にある「大谷祖廟」(おおたにそびょう)などに、QRコード決済の「J-Coin Pay」と「Union Pay」のバーコードが印字されたパネルを設置。参拝者はスマートフォンなどで読み取り、金額を入力して支払うことができます。また、10月下旬には、各窓口で取り扱う読経志、納骨志、出版物冥加金などに対してもクレジットカード決済(Visa、Mastercardに対応)が使えるようになっています。東本願寺は2023年を目標に、全国の事務所(教務所)にも同じキャッシュレス環境を整えることを予定しています。
東本願寺に設置されたクレジットカード決済用のタブレット端末。システムは京都市のビジネスラリアート社が開発
実は、寺社仏閣における「キャッシュレス決済」の取り組みは、近年少しずつ広がっています。
86段の急勾配の階段、通称「出世の石段」で有名な愛宕神社(東京都)では、2014年より、多くの人が参拝に訪れる「仕事始めの日」限定で、「楽天Edy」「楽天Pay」でのお賽銭の支払いに対応しています。ほかにも、日光二荒山人神社(栃木県)では、インバウンドの参拝客の増加を受け、2018年10月から「WeChat Pay」や「Alipay」による奉納を開始。後に「PayPay」にも対応しています。また、四国八十八か所霊場のひとつに数えられる平等寺(徳島県)も、2018年12月から「d払い」「Amazon Pay」によるコード決済に対応。お寺にタブレット端末が置かれ、参拝者はスマホを使ってお賽銭を奉納できます。
キャッシュレス化はお賽銭だけにとどまりません。下鴨神社(京都府)は、お札やお守りなどを授けてくれる授与所で、クレジットカードや、「iD」「楽天Edy」「WAON」「nanaco」「Suica」など、コンビニエンスストアにも負けない種類のキャッシュレス決済に対応しています。2020年の新型コロナウイルス、それ以前はインバウンドと、キャッシュレス決済導入の背景はさまざまですが、社会にキャッシュレス決済が普及するのと比例して、今後も寺社仏閣にキャッシュレス決済が普及していく傾向は続きそうです。
大日本印刷株式会社(以下、大日本印刷)は、2000年代から抗菌仕様のプラスチックカードを開発し、クレジットカードやキャッシュカードなど、金融業界を中心に広く採用されてきました。これを発展させる形で、2020年10月より、抗菌に加え、国内初となる抗ウイルス性能も兼ね備えた非接触のICカードの提供を始めました。
大日本印刷が発表した、国内初の「抗ウイルス」のICカードのイメージ(出典:大日本印刷公式サイト)
このカードの両面には抗ウイルス剤がコーティング(塗工)されており、カードの表面に付着するウイルスの数を減らすことにより、結果的に、人の手に付着するウイルスを減らす効果が期待できるそうです。本カードの抗ウイルス効果については、「独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所」による「ISO 21702」に準拠した分析・評価によって確かめられています。同社によるとカードの利用でカード表面に傷がついた場合でも、抗ウイルス性能を維持したまま利用できるとしています。
また本カードは、同社が従来から手がけてきた「抗菌性」も兼ね備えており、カード表面の大腸菌と黄色ブドウ球菌の繁殖率を1%以下に抑える効果もあるそうです。「抗ウイルス性」と「抗菌性」によって、「決済用カード」「社員証」「入館証」などの用途や、高水準の衛生管理が求められる医療機関や福祉施設、食品関連の施設、教育機関などでの利用も想定。提供価格は従来のカードの約5〜10%増となる予定で、同社では、2023年度までにカードの関連サービスも含めて6億円の売上を目指すとしています。
新型コロナの影響で注目度が増しているのが「非接触」での決済手段です。クレジットカードをよく使う人ならすでにお気づきかもしれませんが、ここ半年で、店員ではなく、客みずからがカードリーダーにカードを挿す決済方法がだいぶ一般的になりました。また、レジ端末にクレジットカードをかざして決済する「タッチ決済」(コンタクトレス決済)に対応する店舗も増えてきています。
クレディセゾンは2019年よりカードレスで買い物できる「セゾンカードレス決済」を提供(画像は公式サイトより)
こうした中、リアルカードそのものを使わない「カードレス決済」に取り組むカード会社も出てきています。そのひとつがクレディセゾンです。同社はもともと、2019年11月より、「セゾンカードレス決済」というサービスを提供しています。これは、クレジットカードを申し込んだ後、リアルカードが届くまでの期間、スマホアプリ上の決済用QRコードなどを利用して買い物に使えるというサービスです。
「セゾンカードレス決済」は、あくまでも「カードが届くまで」の限定的なカードレス決済サービスですが、2020年11月からは、新たに、リアルカードの発行がない「完全カードレス」のサービスを開始します(ただし希望者にはリアルカードを発行)。オンラインでの買い物はもちろん、Apple Payなどのモバイル決済にカード情報をひもづけることで、リアルカードがなくても買い物に使えるようになるそうです。
※2020年10月29日の記事執筆時点で本サービスの詳細は未定ですが、その内容が明らかになり次第、当サイトでも解説記事を公開する予定です。
ジェーシービーもカードレスの取り組みを進めています。2020年10月8日、同社とNTTコミュニケーションズは共同で、JCBブランドのバーチャルカードをアプリ上で即時発行できる決済アプリ、「JCB Mobile Wallet」(仮称)を発表しました。
「JCB Mobile Wallet」(仮称)のサービスイメージ
このアプリは、キャッシュレス決済やモバイル上での送金機能のほか、優待店のマップ検索など、モバイルならではの特徴を持つ多機能ウォレットアプリとなっています。また、在留外国人などの利用促進を狙い、24時間いつでも22の通貨に両替できる機能も搭載しています。まず、2020年10月より本アプリの実証実験を開始。2021年中に日本およびアジア圏での商用化を目指すとしています。
「カードレス決済」は、すでに、三井住友カードの「三井住友バーチャルカード」や、エポスカードの「エポスバーチャルカード」などが存在しています。しかし、これらはいずれもネット決済専用のカードです。今回紹介したクレディセゾン、ジェーシービーのサービスはリアル店舗での利用も可能となる予定で、今後、カードレスで決済できるシーンが増えていくのか注目です。
期間中に、三井住友カードが発行する対象のカードに新規入会のうえ、「入会月の2か月後までに1回以上『Vpassスマホアプリ』にログイン」、「入会月の2か月後までにクレジットカードまたは『iD』でショッピング」の条件を満たすと、利用金額の20%(最大1万2,000円)がプレゼントされます(決済口座への振込)。
キャンペーン期間:開催中〜2020年11月30日(カード申し込み期限)
公式サイト:https://www.smbc-card.com/nyukai/campaign/cardinfo7040214.jsp
期間中に、エントリーのうえ、新規で「Apple Pay」または「Google Pay」に三井住友カードを設定し、コンビニ・スーパー・ドラッグストアなどのリアル店舗で利用すると、利用代金のうち最大1,000円分が還元され、利用月の翌々月の支払日にカード利用料金に充当されます。
キャンペーン期間:開催中〜2020年12月31日
公式サイト:https://www.smbc-card.com/mem/cardinfo/cardinfo7242263.jsp
期間中に、「楽天ポイントカード」または「楽天ポイントカードアプリ」を提示して大戸屋で500円以上の会計をすると、抽選で100名に楽天ポイントが5,000ポイントもらえます。要エントリー。なお、現在発行されている「楽天カード」には、楽天ポイントカード機能が付帯しています。
キャンペーン期間:開催中〜2020年11月30日
公式サイト:https://pointcard.rakuten.co.jp/campaign/ootoya/20201015#ruleBox
(執筆協力:大正谷成晴)
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