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“半導体不足”や“岸田政権”で株価伸び悩みの2021年!? それでも「大健闘した日本株」8選

今年2021年、日本の株式市場はどう動いたのか? 年末恒例、日本株の年間ふりかえり企画。昨年に引き続き、「相場の福の神」こと人気マーケットアナリストの藤本誠之さんに解説いただきます!

昨年に引き続き新型コロナの影響が大きかった2021年。日本の株式市場にはどんな動きがあった?

昨年に引き続き、社会的には新型コロナの影響が大きかった2021年。日本の株式市場にはどんな動きがあった?

(本記事の日付は特別な記載がない限り2021年のもの。株価は2021年12月21日の記事執筆時点のものです)

2021年の日本株は「静かなもみ合い」

2021年の日経平均株価の最高値は「3万795円」(9月14日)。いっぽう、最安値は「2万6,954円」(8月20日)で、その値幅は約4,000円でした。昨年2020年の日経平均株価の値幅が約11,000円と“大荒れ”だったのと比べると、今年は狭い値幅で上下したことがわかります。マーケットアナリストの藤本誠之さんはこれを「静かなもみ合い相場の1年」と評します。株価はなぜ動かなかったのでしょうか?

2020年1月から2021年12月までの日経平均株価2年チャート。昨年よりも高値圏で推移はしたものの、値動きの大きかった昨年と比べると今年の「静かさ」は一目瞭然

要因1:昨年に続き、よくも悪くも大きかった「新型コロナの影響」

まず藤本さんがあげるのが、やはり新型コロナの影響。ただし、昨年2020年とは様子が違ったようです。

「2020年は新型コロナの影響による経済活動の低下で、3月に株価は1万6,000円台まで大きく下落。しかしその後、世界的な金融緩和によって余ったお金が株式市場に流れ込み、そこに新型コロナからの回復期待が重なる形で3万円を射程圏内に入れるほどの大きな株価上昇を見せました。

しかし、この2020年後半の株価の値上がりは、コロナからの経済回復が“織り込まれたもの”(要因がすでに株価に反映された状態)でした。すでに投資家に十分買われていたわけですから、2021年にさらに株価が上昇し続けるのはやや難しい状況だったと思います。ここに、新型コロナ感染再拡大からの緊急事態宣言、感染第5波による感染者増、オミクロン株などが重なり、株価の伸び悩みにつながりました」(藤本さん。以下同)

解説:藤本誠之(ふじもとのぶゆき)さん。「相場の福の神」の愛称を持つマーケットアナリスト。年間300社を超える上場企業経営者とのミーティングを通じて、個人投資家に真の成長企業を紹介。ラジオNIKKEIで4本の看板番組を持ち、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。日興証券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジスト。近著に「株は社長で選べ! コロナ継続・収束問わず確実に勝ち続けるたった一つの株式投資術」(かんき出版)がある

要因2:「半導体が足りない」と騒がれた1年、株価にも影響

2つめの要因は「世界的な半導体不足」。皆さんもニュースなどでよく耳にしたと思います。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)による需要増に加えて、IoTなどの影響で、これまで半導体を必要としてこなかった自動車業界などの半導体ニーズも急拡大しました。いっぽう、供給面においては、外交問題などがからんでサプライチェーン(製品の原材料や部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ)が混乱。増え続ける需要に対して供給が追いつかない状態に陥りました。半導体不足によって多くの企業活動が影響を受け、景気自体は回復傾向にあったものの、十分にその恩恵を受けられませんでした。それが、株価の頭を抑えた格好です」

要因3:岸田新政権に対する「投資家の厳しい評価」

3つめは岸田政権の誕生です。2021年10月に岸田新総理が誕生し、新たな政権がスタートを切ったのは皆さんご存じのとおりですが……。

「岸田内閣発足後の1週間で日経平均株価が700円超も下落し、“岸田ショック”などとも言われましたよね。株取引で得た利益への課税強化や、企業の自社株買いの制限などが報じられているように、これまでのところ、岸田内閣の政策は成長よりも分配に重きを置いている印象です。これを株式市場への逆風と見る投資家が多く、株価の足をひっぱっています」

この記事を書いている2021年12月21日時点の日経平均株価は28,517円。2021年1月末時点では2万7,663円だったので、ほぼ同じ株価で年末を迎えています。上記の3つの要因などから、2021年は“株価が伸び悩んだ1年”と言えるかもしれません。

そんな中で「健闘した日本株」もあった

しかし、すべての企業の株価が伸び悩んだわけではありませんでした。時流に乗って株価を上げた企業や、業績回復が株価に反映された企業などさまざまです。また、まだ十分に株価には反映されていないものの、今後の大きな成長が期待できる企業もあります。ここからは、注目企業の具体名を交えつつ、「半導体周辺産業」「中古自動車」「海運」「DXコンサル」「セールスフォース関連」の5つのテーマについて藤本さんに解説いただきます。

テーマ1:半導体周辺産業(東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック)

世界的な半導体不足についてはすでに述べたとおりですが、その際に問題視されたのが半導体の生産体制、すなわちサプライチェーンのあり方です。

「半導体の多くは韓国、台湾、中国で生産されて全世界に供給されています。この体制が新型コロナの影響や米中の貿易摩擦、台中の緊張関係などで乱れたことから、各国の不安が募りました。自分たちの国への半導体の供給がストップするリスクが想起され、韓国、台湾、中国だけに頼るのではなく、自国で半導体を生産しようとする動きが世界中で起きました」

そこで注目されたのが、半導体の製造に関連する銘柄です。日本には世界的な半導体メーカーこそ存在していないものの、その周辺産業である「半導体の製造装置」や「半導体の検査装置」に強みを持つ企業が多く、その株が注目されたというわけです。

「半導体製造装置でいえば、東京エレクトロン(東証1部:8035)があげられます。1月4日の年初来安値は3万7,520円でしたが、そこから株価が上がり11月19日には年初来高値6万4,100円をつけ、一時、株価は約1.7倍となりました」

東京エレクトロン(東証1部:8035)の株価1年チャート。以下に掲載する株価チャートはすべて1年チャート。ただし、今年新規上場した企業については上場日から2021年12月21日までのチャートです。

「同じ分野のアドバンテスト(東証1部:6857)も好調でした。1月4日の年初来安値7,640円から、9月16日には年初来高値1万1,550円をつけ、一時、株価は約1.5倍にまで上がっています」

「また、半導体検査装置の関連企業としては、レーザーテック(東証1部:6920)があります。3月9日の年初来安値1万1,270円から、11月19日には年初来高値3万3,300円をつけ、こちらも一時約3倍と大きな株価上昇を見せました」

テーマ2:中古自動車(IDOM)

前出のとおり、今や自動車にも半導体が必需品です。エンジン制御やパワーステアリング、カーナビなど車の各所に半導体が用いられています。しかし、世界的な半導体不足の影響により自動車メーカーは工場の停止や減産に追い込まれました。それにより、新車は半年以上の納車待ちも珍しくない状況に。

「供給の遅れから新車の販売台数は落ち込みました。それを受けてニーズが高まったのが中古車です。中古車販売店では品薄状態が続き、販売店での価格やオークション相場も高騰しました」

そんな中で注目されたのが、中古車買い取りの最大手で、中古車販売店「ガリバー」を展開するIDOM(東証1部:7599、社名の読みは「いどむ」)です。1月4日の年初来安値539円から、9月14日には年初来高値となる1,090円をつけ、一時、株価が2倍にまで上がりました。ただし、材料の出尽くし感などから秋以降は反落しています。

テーマ3:海運(商船三井)

株価が低迷した昨年とは打って変わり、今年大きく値を上げたのが海運セクターです。

「海運株の上昇は、船で荷物を運ぶ需要が大きく回復したことで供給がひっ迫し、運賃が高騰したことが要因です。ばら積船(穀物・鉱石・セメントなどの商品を梱包せずに大量に運ぶ船)やコンテナ船など船の運賃が大幅に上がり、海運各社に収益増をもたらしました」

株価が好調だったのが海運大手の商船三井(東証1部:9104)です。1月28日の年初来安値2,710円から、9月27日には年初来高値1万60円をつけ、株価は一時3.7倍に。また、1株あたりの配当も、2020年3月65円、2021年3月150円、2022年3月800円(予想)と増えており、「こうした株主への還元重視の姿勢も投資家に評価されて買い材料になった」と藤本さんは話します。

テーマ4:DXコンサル(ベイカレント・コンサルティング、デリバリーコンサルティング)

昨年、テレワークの浸透などを背景に一気にニーズが高まったDX(デジタルトランスフォーメーション)。2021年もその流れが継続し、企業のDXニーズは依然として高い状態が続いています。

「そこで脚光を浴び始めたのが、DX支援に強いコンサル企業です。企業の変革といえば、これまでは自社の経営企画部などが任っていましたが、DXには専門的な知識が求められることもあり社内の人材では対応しきれないとの見方が強まりました。また、ニーズが拡大したことでDXに強いIT人材も転職市場に不足しており、採用もそう簡単にはいかないようです。そんな背景から、DX推進を支援するコンサル企業のニーズがにわかに高まり、現在は“コンサルバブル”的な過熱感もあるほどです」

アクセンチュア、PwCコンサルティング、ボストンコンサルティングなど、企業のDX推進を支援するコンサル企業は多数あります。ただし、株式上場しているところは限られるそうです。

「上場しているコンサル企業で代表的なのはベイカレント・コンサルティング(東証1部:6532)です。デジタル技術を活用した経営戦略の立案や実行支援に強みを持ち、今年は株価的にも絶好調でした。2月1日の年初来安値は1万5,540円、9月21日の年初来高値は6万3,400円となり、株価は一時4倍以上にまではね上がりました」

「もうひとつの注目株が、2021年7月に新規上場したデリバリーコンサルティング(マザーズ:9240)です。“コンサルバブル”を受け、800円台だった株価が、一時1,600円台と2倍以上になりました。その後はやや落ち着きましたが、DXニーズの過熱感が続くようであれば今後も注目したい銘柄です」

テーマ5:セールスフォース関連(Sharing Innovations)

近年、テレビCMなどでSalesforce(セールスフォース)の名前を耳にしたことのある人は少なくないはず。セールスフォースは、米セールスフォース・ドットコム社が提供するクラウド上の顧客管理システム(CRM)で、効率的な顧客情報管理や営業体制の強化、各種業務改善などのメリットから、全世界的にそのニーズが急速に高まっています。

※画像はSharing Innovationsのプレスリリースより

「セールスフォースはDX推進の流れの中で欠かせないCRMツールとして日本でも人気が高まっています。CRMツールになじみのない人はまだそこまで実感していないかもしれませんが、セールスフォースの人気も、コンサル同様ややバブル的な様相を見せ始めています。個人的には、かつて独SAP社のERPパッケージ(統合基幹業務システム)が市場を席巻した時と似たようなイメージを抱いています」

セールスフォースに興味を持った企業はまず自社で同ツールを導入しなければなりません。また、ツールを導入したらそこで終わりではなく、運用や定着化を図る必要があります。しかし前出のDXコンサルと似た構図ですが、セールスフォース導入・運営の一連の作業を社内人材が担うのは難しく、外部のサポートに頼ることになります。

「セールスフォースなどクラウド型サービスの導入や運用などをサポートする企業をクラウドインテグレーターと呼びますが、セールスフォース人気の高まりが、クラウドインテグレーター各社の業績にもプラスに働いています。たとえば、3月に上場したSharing Innovations(マザーズ:4178)はセールスフォースに強いクラウドインテグレーターとして有名です。今のところ株価は下落しており『2021年に健闘した』とまでは言いがたいですが、今後の成長期待を込めて同社の株価に注目しても面白いと思います」

「市場区分再編」などで来年の株価は動きが大きい!?

動きが比較的少なかった2021年の日本株。では、2022年はどうなるのでしょうか? 実は来年、日本株にとってのビッグイベントが控えています。それが、2022年4月に行われる東京証券取引所の「市場区分再編」です。東証1部など既存の4つの市場が姿を消し、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの新市場に再編。それにともなって、新規上場の基準や上場維持の基準が変わり、売り上げや流通株式の時価総額など、上場企業に求められるハードルが上がります。

2022年の株式市場は動きが大きい!? ポイントや注目企業は、年明けの記事でお伝えします

2022年の株式市場は動きが大きい!? ポイントや注目企業は、年明けの記事でお伝えします

「現在の上場企業が新市場区分のどの市場に移行するかは2022年1月に発表される予定で、今年は、新市場の上場基準を上回ろうとする企業の活発な動きが見られました。また、新市場に以降した後も、上場を維持するために企業には今以上の努力が求められるようになり、日本株への影響も大きいでしょう。私個人としては、2022年は日経平均株価35,000円台を視野に入れた展開になるのではと見ています」

東証市場区分再編を含め、2022年の株式市場の気になるテーマや注目すべき企業については、年明けに本記事の後編としてお届けします。ご期待ください!

※本記事は取材者、執筆者の見解です。

百瀬康司

百瀬康司

フリーランスライター。副業をはじめ、投資、貯蓄、節約などマネー企画全般を取材。ビジネスや働くママのジャンルでも取材経験豊富。雑誌、Web、夕刊紙、書籍などで執筆。「真に価値ある情報提供」を使命とする。

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