めまぐるしく変化するキャッシュレス関連の動向を月イチで伝える本連載。キャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えします。
今回は、2024年5月21日から始まった、フリマアプリ「メルカリ」による、暗号資産のイーサリアムの取り扱いについて取り上げます。メルカリでは2023年よりビットコインを売買することが可能になっていましたが、ここに、2つ目の暗号資産としてイーサリアムが加わることになりました。
このほか、JALがSBI証券と始める「JALの資産運用」サービスや、ドコモの「dポイントクラブ」のリニューアルについてもお伝えします。
このニュースのサマリー
〇フリマアプリのメルカリで暗号資産のイーサリアム(ETH)の取引が可能に
〇約1年前に始まっているビットコイン(BTC)の取引はユーザー200万人超の人気サービス
〇BTCに次ぐ取引量のETHの導入で、メルカリの暗号資産サービスはさらに盛り上がるか
フリマアプリのメルカリは、2024年5月21日より、暗号資産イーサリアム(ETH)の取り扱いを始めました。これにより、ユーザーがメルカリのアプリ内で取引できる暗号資産は、ビットコイン(BTC)に次いで2種類目となります。
メルカリ上でのイーサリアムの取引画面。青い線がイーサリアムの価格チャートで、黄色の線はビットコインの価格チャート。2つの暗号資産のチャートが重ねて表示される仕様になっています
メルカリは2023年3月にビットコインの取引サービス「ビットコイン取引」を開始。メルカリでの売上や、銀行などからチャージした残高で1円からビットコインを購入することができ、好きなタイミングで売却して残高に戻すことも可能です。その手軽さもあり、サービス開始から約1年で利用者が200万人を突破するなど、人気を呼んでいました。
また2024年2月からは、メルカリでの商品の購入時に、保有するビットコインで決済できる機能も追加。メルカリによると、この機能の追加から約1か月で、ビットコインでの決済が10万回を突破しているといいます。
今回新たにメルカリの暗号資産取引に加わったイーサリアムは、アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産の総称)の一種で、ビットコインに次ぐ取引量を誇っています。ビットコインと同じく、2024年は価格が上昇傾向にあり、2024年1月時点で1イーサリアム=約31〜33万円程度だったのが、2024年5月時点では約60万円前後にまで上昇しています。
イーサリアム/円の1年チャート。画像は価格.com内「暗号資産(仮想通貨)・ビットコイン取引所比較」より
イーサリアム(ETH)とは?
イーサリアムは、カナダ出身の起業家兼プログラマーのヴィタリック・ブテリン氏により開発されたプラットフォームを表す名称。決済・取引など価値の移転を目的に開発されたビットコインと異なり、イーサリアムは「スマートコントラクト(自動契約履行システム)」や「分散型アプリケーション」などを動かすためのプラットフォームという位置づけ。
同プラットフォーム内で使用される暗号資産のことを、厳密には“イーサ”と呼称するが、日本においては、プラットフォームおよび暗号資産の両方を“イーサリアム”と呼ぶのが一般的。
ビットコイン取引の開始以降、メルカリには、ビットコイン以外の暗号資産を取引したいという声が届いていたといい、なかでもイーサリアムの人気が最も高く、今回の導入につながったとのこと。
メルカリにおけるビットコイン取引と同じく、イーサリアムもメルカリの売上やチャージした残高を元手にして、1円から購入することができます。また、前掲の取引画像のように、メルカリアプリ上では、ビットコインとイーサリアムの価格チャートを重ねて表示させ、比較しながら取引することもできます。
メルカリでのイーサリアムの取引はシンプルな操作で完結(画像はメルコインより)
メルカリはイーサリアムの導入によって「特徴が異なる新たな暗号資産が加わり、自分の好みに合った組み合わせで暗号資産を購入できるようになります」(同社プレスリリースより)とそのメリットを強調。将来的には、イーサリアムの特徴である「スマートコントラクト」などの技術を活用したサービスもメルカリ上で提供することを目指すとしています。
一般社団法人日本暗号資産取引業協会の調査では、2023年2月末から2024年2月末までの1年間で、国内の暗号資産取引口座数は約290万件増加。メルカリによると、このうち約63%が同社の「ビットコイン取引」の新規利用者が占めているといい、国内の暗号資産取引におけるメルカリの存在感が急速に高まっていることがうかがえます。今後もメルカリの暗号資産関連の動きは要注目と言えそうです。
このニュースのサマリー
〇JALが「金融商品仲介業務」として「JALの資産運用」をスタート
〇JAL経由でSBI証券の口座を開くと、同証券でのJALマイル獲得が有利に
〇「JAL NEOBANK」を含め、金融サービスの利用でのJALマイルの獲得チャンスが拡大
近年、非金融企業による金融サービス導入の動きが活発です。そんな中、2024年5月14日より、日本航空(以下、JAL)が、「JALの資産運用」というサービスを始めています。
「JALの資産運用」は、JAL、JALペイメント・ポート、SBI証券による「金融商品仲介業務」として展開されます(画像はJALのプレスリリースより)
「JALの資産運用」は、JALの専用サイトを経由して開設されたSBI証券の証券総合口座(JALペイメント・ポート仲介口座)を対象とするサービスです。
SBI証券には、投資信託を保有すると毎月ポイントが付与される「投信マイレージ」というサービスがあります。付与されるポイントは数種類あり、もともと「JALマイル」もそのひとつ(ユーザーが貯めるポイントを選ぶ仕組み)。10万円の残高に対して月4マイル付与、というのが通常の付与レートです。
「JALの資産運用」では、この付与レートが最大1.5倍(※)にアップします。つまり、月10万円の残高なら6マイル付与、月50万円の残高なら30マイル付与、といった具合です。「JALの資産運用」は新NISAにも対応しているので、新NISAのつみたて投資枠において投資信託を積み立てながら、マイルを効率的に貯めていくことも可能です。「JALの資産運用」では、このほかにも「国内株式手数料マイレージ」や「金・銀・プラチナの購入」など、SBI証券での対象の取引でJALマイルが貯まります。
※保有する銘柄によってレートアップの倍率が異なります。
「JALの資産運用」では、投資信託の保有でのJALマイル獲得が有利になります(画像はJALのプレスリリースより)
「JALの資産運用」を利用する際は、JALが住信SBIネット銀行を所属銀行とする銀行代理業者として展開している「JAL NEOBANK」との併用が便利です。「JAL NEOBANK」には「SBIハイブリッド預金」という円預金口座があり、ここに預け入れたお金は、SBI証券の口座の買い付け余力に自動で反映され、株式や投資信託、債券などの取引に利用できます。
また、「JAL NEOBANK」にはマイル獲得の面でもメリットがあります。円の普通預金や定期預金の月末残高(100万円以上〜300万円未満で20マイル付与、など)や、給与や年金の受け取り(月20マイル付与)など、複数の取引がJALマイル付与の対象です。
2024年6月の取引分からは、外貨普通預金・外貨定期預金の月末合計残高に応じて付与されるマイルの数が増えるほか、新たに、他行からの振込件数に応じてマイルが付与されるようになるなど、マイルプログラムが拡充されます。
「JALの資産運用」の開始にともない、2024年6月30日まで「JALの資産運用」の口座開設などで、最大7,000マイルが付与されるキャンペーンが始まっています。
JAL専用サイトからSBI証券の証券総合口座を新規開設し、JALアカウントと連携させると100マイル、アンケート回答で200マイル、期間中に「JAL Pay」(JALのスマホ決済サービス)で500円以上の買い物を3回以上決済すると100マイル、同じ条件で5回以上の決済で200マイルが付与されます。
これらに加えて、月末時点で「JAL NEOBANK」の円普通預金残高に100万円以上保有し、かつ翌月1〜5日までの毎日の円普通預金最終残高が10万円以上だと、最大で1,500マイル付与される特典などもあります。
実施期間:開催中〜2024年6月30日まで
https://www.jal.co.jp/jp/ja/jmb/securities/campaign/release/
このニュースのサマリー
〇ドコモのポイントプログラム「dポイントクラブ」が2024年10月にリニューアル
〇ヘビーユーザーの「dポイント加盟店」でのポイントアップ倍率は低下
〇いっぽう、スマホ決済「d払い」を使うと還元率が上がる特典が新設
ドコモは、同社のポイントプログラム「dポイントクラブ」のルールを、2024年10月3日より順次変更すると発表しました。
「dポイントクラブ」は2022年に始まった「dポイント」ユーザー向けのプログラムです。直近3か月の「dポイント」の獲得数に応じて、「1つ星」から「5つ星」までの5つのランクがあり、ランクが上がるごとに「dポイント加盟店」でのポイント還元率がアップするなどの特典があります。
要は、“「dポイント」を多く貯めるほど、さらに「dポイント」が貯まりやすくなる仕組み”と言えますが、10月より、その内容が若干変わります。
「dポイントクラブ」が2024年10月にリニューアル。画像はドコモ公式サイトより
「dポイントクラブ」のリニューアル内容。詳しくは以下の本文で解説。画像はドコモ公式サイトより
「dポイントクラブ」の「2つ星」になるために必要な直近3か月の獲得ポイント数が、従来の100ポイントから50ポイントに引き下げられます。たとえば、「eximo」や「ahamo」といった、ドコモ回線の加入者であれば、3か月で50ポイント以上を獲得できるので、これだけで「2つ星」になることができます。
いっぽうで、「dポイントクラブ」でのランクに応じて上がる「dポイント加盟店」でのポイント還元率が、一部ランクで下落します。従来2.5倍だった「5つ星」の倍率は2倍に。従来2倍だった「4つ星」と「3つ星」の倍率は1.5倍になります。
リアル店舗での買い物で「d払い」で支払うとポイント還元率が最大1%アップする「d払い特典」が新設されます。
「5つ星」の場合は還元率が1%アップし、「d払い」の基本還元率の0.5%や、「d払い」の支払方法を「dカード」に設定するなどした場合に還元される0.5%と合わせて、合計で2%還元になる計算です。「4つ星」の場合は0.5%アップ(上記と同じ条件なら合計1.5%還元)、「3つ星」の場合は0.1%アップ(同1.1%還元)です。
ドコモのケータイやサービス、「ドコモ光」「ドコモでんき」のいずれかを使っている人を対象に、「dポイント」を毎月の利用料金に充当すると、ランクに応じて最大5%の料金充当額が上乗せされる「料金充当特典」が始まります。
たとえば「5つ星」の会員が3,000ポイントをドコモケータイの支払いに充てると、その5%に相当する150円分が上乗せされて支払われます。ただし、時期は明らかにされていませんが、ドコモによるとこの特典は期間限定で提供されるとのことです。
一部料金プランの長期契約者に対して、「dポイントクラブ」のランクに応じて、誕生月の「d払い」の支払いに対して5〜20%のポイント還元が上乗せされる「長期利用ありがとう特典」が終了します(終了は2024年10月末日)。
上記のように、今回のリニューアルは、改善と改悪が混在しています。
「3つ星」以上のヘビーユーザーに関しては、「dポイント加盟店」でのポイント還元率が下がるいっぽうで「d払い」を利用するメリットが新設されました。ここには、「d払い」を使ってほしいというドコモの思わくが見て取れます。これまでは、加盟店でdポイントカードを提示して「dポイント」を貯めつつ、支払いに他社の決済手段を使っていた人も一定数いたと思われますが、新ルールが「d払い」で支払う動機付けになるかもしれません。
また、「2つ星」へのランクアップのハードルが下がったことも注目ポイントのひとつです。新ルールの「3か月で50ポイント獲得」は、なんとなく「dポイント」を貯めているライト層でも達成できそうなラインです。こうしたライト層を「2つ星」に引き上げ、「dポイント加盟店」でのポイント倍率アップを体験させることで、より深く「ドコモ経済圏」に関わるきっかけになってほしいとの意図を感じさせます。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした3つのキャンペーンをご紹介します。
「楽天カード(Visa)を10,000円以上使うと抽選で総額1億円キャッシュバック」など、3つのキャンペーンをご紹介(画像は楽天カードのプレスリリースより)
期間中にエントリーし、Visaブランドの「楽天カード」を街の店舗で1万円以上利用すると、抽選で1万名に1万円がキャッシュバックされます。さらに、同カードをスマホのタッチ決済で利用すると、期間中の利用合計額より20%がキャッシュバックされます(キャッシュバック上限はカード1枚につき1,000円まで)。
実施期間:開催中〜2024年8月31日まで
https://www.rakuten-card.co.jp/campaign/spt/other/20240513/
キャンペーン期間中、「au PAYポイント運用」の好きなコース(今回のリニューアルで1本から3本に増加)にポイントを追加し、下記の条件をクリアすると、抽選でPontaポイントがプレゼントされます。ポイント還元できるau IDを持っていることも参加条件です。
条件1:合計1,000Pontaポイント以上追加:抽選で100名に1万Pontaポイントを進呈
条件2:合計500〜999Pontaポイントを追加:同1,000名に2,000Pontaポイントを進呈
条件3:合計100〜499Pontaポイントを追加:同1万名に300Pontaポイントを進呈
実施期間:開催中〜2024年6月28日まで
https://aupay.auone.jp/contents/lp/campaign/aupaypointinv_cp_202405/
期間中にキャンペーンにエントリーし、「dカードお得情報メール」の受信設定を完了することが条件。そのうえで、対象の「dカード特約店」2ブランド以上で合計5,000円以上買い物をすると、抽選で50人に1等10万ポイントが当たります。以下、2等は100人に1万ポイント、3等は1,000人に1,000ポイント、4等は1〜3等の当選者を除く条件達成者に10ポイントが進呈されます。ポイントはいずれも期間・用途限定の「dポイント」です。
実施期間:開催中〜2024年6月30日まで
https://dcard.docomo.ne.jp/std/campaigns/202405_rs/cpn-tokuyaku/index.html