筆者は20年以上にわたって活動しているマネーライターです。得意分野は「マイル」や「旅」。これまでもたびたび、「マイルの貯め方」「おトクな旅の方法」をテーマに記事を書き、またプライベートではマイルを使って30以上の国々を旅行してきました。
そんな筆者が今年の夏、家族3人(夫、中学生の長男)でパリオリンピック観戦旅行に出かけました。
利用したのは往復ともに、エールフランスのビジネスクラスの特典航空券。1マイルの価値は「1〜2円相当」とされるのが一般的ですが、今回は繁忙期なら往復でひとり100万円前後するビジネスクラスのチケットを、JALマイル11万マイルで交換することができました。試行錯誤を重ねはしましたが、1マイルを「約10円相当」で活用することができ、改めて「マイルの利用価値の高さ」を痛感しました。
オリンピック期間中という繁忙期に、航空機代の実質的な負担ナシの旅行をどうやって実現したのか。その模様をお伝えします。
2024年の夏、JALマイルを使って「東京―パリ」をビジネスクラスで往復することができました
筆者は20年以上にわたってJALマイルを貯めてきました。
マイルは、飛行機に搭乗することで貯められる「フライトマイル」と、クレジットカードなどを使って日々の買い物で貯める「ショッピングマイル」に大別されますが、「フライトマイルだけではなかなかマイルを貯められない」というのが実感です。
たとえば、JAL便で「東京―札幌」を片道利用して貯まるマイルは510マイル(一般のJALマイレージバンク会員の場合)。しかもこれは正規運賃の場合。早期予約で割引きとなる「セイバー」などのチケットの場合は75%に減り、獲得できるのは383マイルになります。
毎月定期的に国内線を利用する機会があったり、ひんぱんに海外出張をしたりする方でない限り、フライトマイルだけでまとまったマイルを貯めるのは難しいでしょう。
そこで、有効活用したいのがクレジットカードです。我が家では筆者と夫あわせて年間7万〜10万マイルを貯めていますが、このうちフライトマイルは1万〜2万マイル程度。残りは基本的に、ショッピングマイルです(一部、ポイントサイトから移行するマイルも)。
マイル獲得の際に使っているクレジットカードは下記の3枚です。
メインカードとして利用。JALの利用ではJALマイルを、JR東日本の利用ではJRE POINTを貯められるカードです。マイル還元率が2倍になるオプションサービス「ショッピングマイル・プレミアム」(年会費4,950円)が無料で自動付帯しているので、基本のマイル還元率は1%(100円利用で1マイル)となります。
SuicaチャージやJR東日本のきっぷ購入などで貯まるJRE POIINTを「1,500P→1,000マイル」のレートでJALマイルに交換できるのも、大きなメリットです。
モバイルSuicaチャージの場合、そのままJRE POINTとして使うと1.5%還元(1,000円で15P還元)ですが、マイルに交換すると1%還元に下がってしまいます。それでも筆者にとってはJALマイルの方が価値が高いため、すべてマイルに交換しています。
ゴールドカードならではのメリットは、えきねっとでJR東日本のきっぷを購入する際の還元率が高いこと。通常のビューカードは5%還元ですが、ゴールドなら10%のJRE POINTが貯まります。また、モバイルSuicaで定期券を買う場合の還元率も6%(一般カードは5%)と高く設定されています。
年会費は20,900円と決して安くはありませんが、入会時および年間100万円以上の利用で毎年JRE POINT5,000ポイントがもらえます。
前述のようにショッピングマイル・プレミアムが自動付帯しているので、年間100万円以上決済するなら、年会費は実質1万円程度と考えることもできます。特にモバイルSuicaやJR東日本の新幹線利用が多い場合は、マイルを効率的に貯められるカードだと感じています。
豪華な入会キャンペーンや、年間150万円以上の利用でもらえる無料宿泊特典(マリオット系列のホテルに1泊1室)にひかれて入会しました。
100円利用で「マリオットポイント(正式名称:Marriott Bonvoyポイント)」が3P貯まり、貯めたポイントは系列ホテル宿泊に利用できるほか、JALなど14社の航空会社マイルに交換できます。
JALマイルへの交換レートは通常「3ポイント→1マイル」ですが、6万ポイントをまとめて交換すると5,000マイルのボーナスマイルが付くのでおトク。なるべくまとめて交換するよう心がけています。年会費は49,500円
楽天市場での買い物時に利用。楽天市場では100円で「楽天ポイント」が3P貯まり、貯めたポイントは「50P→25JALマイル」のレートで交換しています。年会費は無料
JALマイル獲得用に使っている3枚のカード。上から「JALカードSuica CLUB-Aゴールドカード」「Marriott Bonvoy アメリカン・エキスプレス・プレミアム・カード」「楽天カード」
クレジットカードによるマイル獲得にあたって、特に気をつけていることは以下の4つです。
多くのマイルを一気に稼ぐ大きなチャンスは、クレジットカードの入会キャンペーンです。JALカードでは、「入会」+「一定期間内に一定額利用」などの条件をクリアすると、一般カードで2,500マイル程度、ゴールド以上のカードであれば3万超のマイルをプレゼントするキャンペーンを定期的に開催しています。
いっぽうで、JALマイレージバンク会員を対象にした「アンケートに答えると10マイル」といった細かなキャンペーンもチェックし、コツコツとマイルを貯めることも大切にしています。
2024年10月時点で、JALカードが実施している入会キャンペーン。「CLUB-Aゴールドカード」では最大3万マイルが獲得できます(画像は2024年10月時点のJALカード公式サイト)
買い物や公共料金支払いの際には現金は使わず、できるだけJALカードをはじめとしたキャッシュレスを使って決済することを心掛けています。
JALマイル獲得において、マイル還元率が2倍になる「ショッピングマイル・プレミアム」(年会費4,950円)は重要なオプションサービス(筆者が保有する「JALカードSuica CLUB-Aゴールドカード」は無料で付帯)。このサービスに加入することで、通常は200円で1マイルのところ、100円で1マイル獲得できます。
また、「ショッピングマイル・プレミアム」では、対象金額は四捨五入される仕組み。仮に50円(税込)の決済でも1マイル貯まるため、スーパーでペットボトル1本を買うときなど、100円未満の超少額決済にも活用しています。細かいことですが「1マイルに泣く(1マイルが足りずに特典航空券を予約できない)」ことがないよう、気を抜かずに貯めています。
JALカードには特約店制度があります。これらの店舗で決済をするとマイル還元率が2倍以上にアップ、つまり「ショッピングマイル・プレミアム」に加入していると、100円で2マイル以上(未加入の場合は100円で1マイル)獲得できます。
特約店にはイオンやファミリーマート、ウエルシアなど日常使いしやすい店舗が数多く登録されています。獲得スピードが2倍以上になる特約店を積極的に使うのも、重要なポイントと考えています。
公式HP:「JALカード特約店でショッピングマイルが2倍!」
筆者はコード決済の「au PAY」や「d払い」も使っており、これらで決済すると「Pontaポイント」や「dポイント」を貯めることができます(基本は200円で1P)。この2つのポイントのJALマイルへの移行レートは「2ポイント=1マイル」となるため、一般的には「1P=1円」として使うほうがメリットが大きいと言われています。
ただ、筆者の目的はただひとつ、マイルを使って旅行に行くこと。1マイルには2円以上の価値があると確信しているため、保有するポイントは基本的にすべてマイルに移行する、と決めています。
また、dポイントやPontaポイント、楽天ポイントなどでは、JALマイルへの交換レートが20%程度アップする増量キャンペーンをひんぱんに行なっています。たとえば通常は「10,000ポイント→5,000マイル」のところ、「10,000ポイント→6,000マイル」となるタイミングを狙って交換することを心がけています。
ここまで、筆者の「マイルの貯め方」について紹介してきました。従来は数万のマイルが貯まったら、毎年国内外への旅行で消費してきました。ところが、コロナ禍となり状況は一変。3年間ほとんど使う機会がなく、20万を超えるマイルがそのまま積み上がっていました。
「そろそろ、マイルを使って海外旅行しようか」と思い始めた2024年5月ごろ、我が家の中でパリに五輪観戦に出かけてみようという話が出てきました。筆者を含め家族全員がスポーツ観戦好きです。楽しみにしていた東京五輪が無観客開催となったこともあり、「今回こそは生観戦しよう」とパリでの五輪観戦の計画をスタートさせました。
JALマイラーの筆者は当然、最初はJALの特典航空券を利用することを考えましたが、JALの燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)の金額を紹介するページを見て、手が止まりました。
日本発のヨーロッパ便の燃油サーチャージはひとり片道35,000円。コロナ禍前は1万円前後だったと記憶しているので3倍も値上がりしたことになります。JALの場合、特典航空券を利用するときも燃油サーチャージは別途負担する必要があり、我が家の場合はそれだけで21万円(35,000円×2回(1往復分)×3人)かかってきます。
高値が続く燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)。JALの北米、欧州便はひとり片道35,000円(画像は2024年10月時点のJAL公式HPより)
JALマイルを使って特典航空券を予約しても、20万円超の負担が発生すれば「コスパのよい旅行」とは言えなくなります。そんなときに思いついたのが、エールフランスの活用でした。
所属するアライアンス(航空会社間の連合組織)は異なるものの、JALとエールフランスは提携しています。JALマイルを使ってエールフランスの特典航空券を予約することが可能で、さらにこのやり方だと燃油サーチャージが負担なし(日本発の場合)になる「おトク技」の存在も思い出しました。
もうひとつ、JALに比べて特典航空券の予約が取りやすいのもエールフランスを選んだ理由のひとつです。ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて(ロシア上空を迂回するため)、東京からパリの飛行時間は以前より2〜3時間ほど長い約15時間弱。これだけの長時間、エコノミーで移動するのは肉体的につらいので、ビジネスクラスの席を狙っていました。
筆者の経験上、JAL便でビジネスクラスの特典航空券を3席以上予約するのはほぼ不可能なのですが、エールフランスでは3〜4席の空きが出ることも多く、家族連れにはありがたい限り。ただし、エールフランスの場合、予約開始と同時に特典航空券の座席が解放されるわけではなく、不定期に解放されるのが難点です。
案の定、パリ旅行の計画をスタートさせた5月の段階では、エールフランスで3席分のビジネスクラスの特典航空券の空きはなし。それ以降は毎日、空きが出ていないかJALの公式HPをチェックするのが日課となりました。
特典航空券の空席チェックとあわせて行ったのは必要マイル数の確保。「東京―パリ」往復のエールフランス・ビジネスクラス特典航空券に必要なJALマイルは11万マイル(ひとりあたり)。我が家の場合、3人分の計33万マイル必要ということになります。なお、5月時点で筆者は約24万マイルを保有していました。
エールフランスの「東京―パリ」往復のビジネスクラスに必要なJALマイルは11万マイル(画像は2024年10月時点のJAL公式HP)
まずは順次、保有するマリオットポイントや楽天ポイント、dポイント、JRE POINTをJALマイルに交換していきました。これによって、約32万マイルまでこぎつけることができましたが、そこからさらに上積みすることが見込めない状況になってきました。
状況打開のため、最後の手段とも言える方法に頼りました。それがマリオットポイントの購入です。前述のとおり、「3ポイント→1マイル」のレートでマリオットポイントはJALマイルに交換でき、交換にかかる日数も数日で済みます。
そして、マリオットポイントは、ポイントそのものをクレジットカードで購入することも可能になっています。つまり、「マリオットポイントを購入→購入したポイントをJALマイルに交換」というステップを踏むことで、間接的にではありますが、不足分のJALマイルを“買う”ことにしたのです。
マリオットポイントの購入レートは、通常1,000ポイントを12.5米ドル程度(購入するポイント数に応じて価格は変動)ですが、ひんぱんに増量セールを行っています。筆者が購入したタイミングでは、40%の増量セール中だったため、マリオットポイント21,000Pを187.5米ドル(1ドル=150円で計算すると約28,000円相当)で購入。
もともと持っていたマリオットポイント3,000Pとあわせて24,000P=8,000JALマイルに交換しました。1マイル獲得するのに3円以上かかっているので、コスパのよいJALマイル獲得方法とは決して言えませんが、出発の日も迫っている中、背に腹は代えられなくこの方法を選択しました。
このようにして、33万超のマイルをかき集めることができた7月初旬。パリ出発まで2週間の段階で、3席分のエールフランス・ビジネスクラスが空いていることを発見。すぐに、特典航空券交換の手続きを行ないました。
筆者のJALマイルの履歴。パリ出発まで2週間の段階で、パリ行きの特典航空券の座席を確保
実は、エールフランスのパリ行き特典航空券が予約できない場合に備えて、JALの「東京―フランクフルト(ドイツ)」3席分の特典航空券(プレミアムエコノミークラス)を押さえていました。
ただこの方法だと、前述の燃油サーチャージがかかってくるうえ、フランクフルトに到着後、鉄道を使ってパリまで行く必要があります。時間と労力、そして余分な出費までかかってくるやり方なので、無事パリ行きの特典航空券の座席を確保することができて、かなりホッとしました。
今回、ひとりあたり11万マイルで「東京―パリ」往復の特典航空券に交換しましたが、同路線ビジネスクラスの航空券価格は閑散期でも往復75万円前後、繁忙期には100万円を超えます。筆者の金銭感覚から言って、100万円を払ってビジネスクラスでパリに行くなんて一生かけてもなさそうですが、11万マイルなら頑張れば数年で貯められる。これが、筆者が長年マイルにハマっている理由なのです。
当初計画していたとおり、エールフランスのビジネスクラス特典航空券を使って、7月下旬から8日間、パリ・オリンピック観戦旅行に出かけてきました。
出発時の羽田空港ではデルタ航空のスカイクラブラウンジを満喫し、約15時間のフライトもビジネスクラスのゆったりとした座席で快適に過ごすことができました。旅の目的であるオリンピックもサッカーやフェンシング、体操、バレーを観戦しましたが、どの会場も熱気にあふれ「テレビで見るのとは違うな」と実感しました。
羽田空港からの出発時には、デルタ航空スカイクラブラウンジを利用
食事の種類が多く、その場で作ってくれるヌードルバーも楽しめました
ビジネスクラスの座席は広く、15時間弱のフライトもくつろぐことができました
ただ、円安の影響もあり、現地の物価は非常に高く感じました。街中のカフェで3人分のスイーツとコーヒーを頼んで合計80ユーロ(13,200円、1ユーロ=165円で計算)したときは、レシートをまじまじと見てしまいました。そのため、滞在中はパン屋さんで買ったクロワッサンや日本から持ち込んだカップ麺を食べるなど「食」では節約を心がけました。
さて、マイルから話は少しそれてしまいますが、今回の旅行中「タッチ決済」の利便性も強く感じました。
というのも、今回筆者は約10年ぶりにフランスを訪れましたが、クレジットカードやスマホを使ったタッチ決済が浸透しているのが非常に印象的でした。美術館などの観光施設やレストラン、ショップ、はたまた駅の有料トイレに至るまで、観光客が訪れる施設のほとんどでタッチ決済が使えました。
もちろん、従来通りのクレジットカード決済もできますが、財布から取り出し、PIN番号(暗証番号)の入力が必要など手間がかかります。フランスでは観光客を狙った、暗証番号を盗み見ることによる窃盗も横行しているとの注意喚起もなされていました。この点、スマホによるタッチ決済であれば、スピーディーに決済を済ませることができ、盗み見られるリスクも低く、安全性が高いと感じました。
筆者は手持ちのiPhoneのWalletアプリにクレジットカードを登録し、スマホのタッチ決済「Apple Pay」のサービスを使える状態にはなっていました。ただ、利便性をあまり感じておらず(クレカ決済で十分だと思っていました)、ほとんど使うこともなかったのですが、今回の旅で考えが大きく変わりました。
財布からカードを取り出す必要がなく、PIN番号入力の手間もないスマホタッチ決済は、本当に便利だと感じました。 「三井住友カード(NL)」のように、スマホのタッチ決済で還元率がアップするクレカも増えています。
また、関西圏ではタッチ決済で乗車できる私鉄が増えてきましたが、首都圏でも東急電鉄が「タッチ決済」乗車のサービスに乗り出すなど、普及の兆しが見え始めてきました。国内でも利用できる環境が整いつつあるので、今後は積極的に使っていこうと思っています。
以上、パリ・オリンピック観戦旅行を通じて筆者が感じた「マイルの利用価値の高さ」について紹介してきました。
現在、ヨーロッパやアメリカ路線の航空券・ツアー代は高騰しており、一般庶民にはなかなか手が出せない状態です。筆者自身も、今回の旅行前には円安・物価高・燃油サーチャージ高のトリプルパンチで、欧米旅行に対して「今は時期が悪いかも」と後ろ向きな気持ちになっていました。
しかし、マイルを使って特典航空券を交換すれば、航空券代はもちろん、今回のエールフランスの特典航空券がそうだったように、燃油サーチャージも節約することができる可能性があります。むしろ「旅行費用が高騰している今だからこそ、マイルの価値は高まっている」と感じました。
33万マイルを一挙に使ってしまったため、我が家の保有JALマイルはさみしい状況になっていますが、また今回のような思い出に残る旅をするために、日々コツコツとマイルを貯めていきたいと考えています。