ASUS JAPANの人気ポータブルゲーミングPC(ゲーミングUMPC)「ROG Ally(アールオージー エイライ)」の“アドバンスモデル(機能強化モデル)”が登場します。バッテリー容量が2倍に増え、メモリーとストレージの容量も増加した「ROG Ally X(アールオージー エイライ エックス)」です。
発売前に実機を試せたので、その実力をチェックしていきましょう。
ASUS JAPAN「ROG Ally X」、価格.com最安価格138,520円(2024年7月22日時点)、2024年7月24日発売
・7型ディスプレイ搭載のポータブルゲーミングPC
・AAAタイトルも遊べる高性能CPU「Ryzen Z1 Extreme」を搭載
・ユーザーの声を反映してバッテリー容量を倍増
ASUS(ASUSTeK Computer)は台湾のパソコンメーカーです(日本ではASUS JAPANが販売、サポートなどを担当)。パソコンだけでなく、マザーボードやビデオカードなどのPCパーツ、無線LAN(Wi-Fi)ルーターやゲーミングマウス・キーボードなどの周辺機器、「Zenfone」や「ROG Phone」というスマートフォンなども手掛けています。
ASUSのパソコンの特徴は高性能なこと。PCパーツを手掛けるメーカーだけに、すぐれた技術力により、その高性能を実現しています。そんなASUSは以下の7シリーズのパソコンを展開しています。
Zenbook…モバイルノートから2画面PCの先進モデルまで展開するプレミアムシリーズ
Vivobook…エントリーモデルから高性能モデルまで揃える主力シリーズ
ProArt…クリエイター向けPC
ExpertBook…法人向けPC
ROG…高性能なゲーミングPC
TUF Gaming…高コスパなゲーミングノートPC、堅牢性ボディも特徴
ROG Ally…ポータブルゲーミングPC
※これ以外にもASUSブランドでデスクトップPCやChromebookを展開しています。
今回取り上げる「ROG Ally X」は、昨年2023年6月に発売された「ROG Ally」のアドバンスモデル(機能強化モデル)。「ROG Ally」ユーザーの声を受け、バッテリー容量を2倍に増やしたほか、メモリー容量とストレージ容量もアップ。バッテリー容量が増えた分、「ROG Ally」よりも本体重量は増えましたが、それでも重量は約678gと軽量です。人間工学に基づいて、トリガーやバンパーも改良されています。
ユーザーの要望を反映し、バッテリー容量を倍増した「ROG Ally X」
■「ROG Ally X」 筆者による評価チャート
価格.com「ノートパソコン」でのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けたレーダーチャート
評価チャートについて
・実際に製品を使用して、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けました。
評価項目:満足度、デザイン、処理速度、グラフィック性能、拡張性、使いやすさ、持ち運びやすさ、バッテリー、画面、コストパフォーマンス
点数:5点満点(標準点は3点)
・本記事を執筆した筆者による個人的な評価です。評価は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にとどめてください。
価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビュー一覧
「ROG Ally X」はポータブルゲーミングPCとして重要なコンパクトなサイズと高いグラフィック性能を両立しています。「処理速度」と「グラフィック性能」は、ポータブルゲーミングPCとしてはトップクラス。それでいてバッテリー容量が2倍になったので、「バッテリー」は文句なしの5点。「使いやすさ」はゲーム機としては文句なしですが、Windowsパソコンとしては単体で使いにくいので、悩みましたが4点を付けました。
価格については「ROG Ally」よりもスペックアップした分、高くなっており、「コストパフォーマンス」は4点にしました。
ポータブルゲーミングPCはニッチな市場ですが、昨年2023年6月に発売された「ROG Ally」は、価格.comの「ノートパソコン」カテゴリーの人気ランキングで1位を獲得。1年経った2024年7月22日時点でも同ランキングで19位に入るなど、ロングセラーを記録しています。レビュー投稿数は500件以上、クチコミは300件以上寄せられるなど、ユーザーからの関心の高さがうかがえます。
価格.com上でも人気の「ROG Ally」。発売から1年以上経った現在でも人気ランキングで19位に入っています
「ROG Ally」のアドバンスモデル「ROG Ally X」。基本デザインはそのままに、本体カラーがホワイトからブラックに変更されました
そんな「ROG Ally」のアドバンスモデル(機能強化モデル)が、今回取り上げる「ROG Ally X」です。初代「ROG Ally」のユーザーからのフィードバックをもとに再設計され、バッテリー容量が2倍の80Whにレベルアップ。「ROG Ally」はバッテリー動作でヘビーゲームを最大2時間遊べましたが、「ROG Ally X」は最大3時間遊べるようになりました(時間はカタログスペックの値)。
ポータブルゲーミングPCは、外に持ち歩いて使えるほか、家の中でも電源につなげずに遊べるのが魅力なので、バッテリー容量アップはうれしい進化と言えるでしょう。実際にプレイしてみましたが、Epic Gamesの「フォートナイト」は2時間以上遊べました(2時間やってもビクロイはとれませんでしたが……)。満充電からプレイし、2時間以上遊んで残量は17%だったので、3時間近くは遊べそうです。
ゲームだけでなく、動画再生時間も増えており、バッテリー容量アップの効果はかなり大きいのではないでしょうか。
バッテリー容量2倍で動作時間がアップ
・ROG Ally X(80Wh):ヘビーゲーム 最大約3時間、動画再生 最大約11.7時間
・ROG Ally(40Wh):ヘビーゲーム 最大約2時間、動画再生 最大約6.8時間
※仕様表の数値
>>>価格.comで「ROG Ally X」と「ROG Ally」のスペックを比較する
なお、「ROG Ally X」はアドバンスモデルなので、ノーマルモデルとして「ROG Ally」は継続販売されます。発売から1年以上が経過しており、価格.com最安価格は上位モデルが8万円台、下位モデルが7万円台となかなか魅力的な価格です。価格重視の人は、「ROG Ally」を検討するといいかもしれません。
続いて、「ROG Ally X」の各特徴を細かく見ていきましょう。
まずはスペックをチェックしましょう。
CPUは「ROG Ally」の上位モデルと同じAMDの「Ryzen Z1 Extreme」です。1年前に発売されたモデルと同じCPUですが、ポータブルゲーミングPC向けとしては記事執筆時点でも最上位のCPUです。
8コア16スレッドの低消費電力タイプのCPUながら、動作周波数は最大5.1GHz(標準でも3.3GHz)で動作します。GPUの「RDNA 3グラフィック」の処理性能は8.6TFLOPS(テラフロップス)を実現。「ROG Ally」でもAAAタイトルが快適に楽しめたので、本モデルでも快適にゲームを楽しめそうです。
CPUは変わっていませんが、メモリーとストレージはパワーアップしています。
メモリーは容量が16GBから24GBにアップ。仕様はLPDDR5X-6400からLPDDR5X-7500になり、処理スピードが17%向上しているとのこと。ストレージ容量は512GB SSDから1TB SSDにアップ。マザーボードを再設計し、M.2-2230からM.2-2280(サイズのことです)となり、容量アップを実現しました。
「ROG Ally X」の性能を定番ベンチマークアプリでチェックしていきましょう。比較用に、昨年レビューした「ROG Ally RC71L-Z1E512」(「Ryzen Z1 Extreme」搭載モデル)の結果も記載します。
定番のベンチマークアプリの結果は、「ROG Ally」とほぼ同じと言っていいでしょう。
ゲームプレイに関しては、エレクトロニック・アーツのバトルロイヤルゲーム「Apex Legends」、Epic Gamesの「フォートナイト」をプレイしてみましたが、どちらも60fps前後でプレイできました(自動設定時)。ゲームの快適さは「ROG Ally」と同じと考えてよさそうです。
ゲームプレイ時の音も静かです。上部に通気孔があり、手をかざすと熱を感じますが、操作部は熱くなることはありませんでした。一新したエアフローにより、タッチパネルの温度を最大6度低下したということで、タッチ操作で遊ぶゲームも快適に楽しめそうです。
続いて本体を見ていきましょう。
本体カラーはホワイトからブラックに変更され、ゲーム機っぽさがアップした印象を受けます。基本的なデザインは「ROG Ally」を踏襲。見た目は完全にゲーム機です。
見た目は完全にゲーム機の「ROG Ally X」
背面にはスリットで表現された「ROG」のロゴが配置されている
本体サイズは「ROG Ally」より少しだけ大きくなっていますが、バッテリー容量が2倍になっていることを考えると、よくこのサイズに収めたと言えるでしょう。重量は70g増の約678g。グリップが深くなり、ホールドしやすくなったためか、重くなった感じはしません。寝転がってでもストレスなく使えるでしょう。
ディスプレイの仕様は「ROG Ally」から変わっていません。7型のタッチ液晶で、解像度は1920×1080のフルHDです。リフレッシュレートは最大120Hz、応答速度は7msとしっかりゲーミング仕様です。輝度は最高500ニト、最低10ニト。明るい屋外でも、寝る前の暗いシーンでも快適にゲームができそうです。
なお、7型の画面はWindowsを利用するのには狭く、普通のパソコンとしては正直使いにくいです。ゲームのインストールやWindowsの設定をいじるときは、Bluetooth接続のキーボードとマウスがあるといいでしょう。パソコンとして使うときは、USB Type-Cモニターがあるといいと思います。基本性能が高いので、仕事や勉強もサクサクこなせます。周辺機器は必要ですが、Windowsマシンなので仕事や勉強用のサブ機として使うのもアリでしょう。
ボタンは指紋認証対応なので、キーボードがなくても素早くサインインできます。充電はUSB Type-Cポートを経由して行います。
外部インターフェイスは本体上部にすべて搭載されています。USB 4(Type-C/Power Delivery対応)、USB 3.2(Type-C/Gen2/Power Delivery対応)、microSDメモリーカードリーダー、マイク入力/ヘッドホン出力。なお、外付けGPUを接続できる「Mobile XGコネクター」はなくなりました
最後に操作系を見ていきましょう。コントローラー部分は、「ROG Ally」とほぼ同じですが、随所に細かな改良が見られます。
背面のグリップ部分はテクスチャが変わりホールドしやすくなっています。背面のマクロボタンは誤入力防止のため、小さくなりました。このほか、左の方向ボタンと左ジョイスティック、右のABXYボタンと右ジョイスティックの位置関係を見直し、より自然に指が届きやすいように調整されています。
グリップのテクスチャが新しくなり、手触りがよくなっています。ゲームに熱中しても汗でベタつきにくいのもいい感じです
左が「ROG Ally X」、右が「ROG Ally」。背面のマクロボタンが小さくなり、誤操作しにくくなりました
ボタンの配置を調整し、より自然に操作できるようになりました。左右の親指を無理に動かさなくても操作できます
ジョイスティックは500万回の耐久試験をクリアしており、安心してガシガシ遊べます。左の方向ボタンは、8方向に入力がしやすいものに変更。これにより格闘ゲームやレトロゲームなどを快適に遊べるといいます
トリガーとバンパーはボタン形状や角度を見直し、より素早い入力にも対応できるようになりました。手にフィットするように曲線的なデザインに変更されています
ゲームに関する操作性は、「ROG Ally」も概ね良好でした。「ROG Ally X」では、さらに細かい部分を改良され、より快適にゲームを楽しめるでしょう。
ゲームプレイ中に、ゲームを終了することなく、動作モードを変更したり、画面録画したり、各種調整ができる「コマンドセンター」とそのボタン、それにインストールしているゲームを一覧できる「ゲームライブラリー」とそのボタンも引き続き搭載されています。
「コマンドセンター」は画面左の小さなボタン(赤囲み)から素早く呼び出せます。画面の輝度や音量もここで設定可能。FPSリミッターやリアルタイムモニターなどゲーム中に便利な機能もここにあります
ポータブルゲーミングPCはこの1年で選択肢が一気に増えました。大手メーカーのレノボの「Legion Go」やMSIの「Claw-A1M」は、価格.com上でも人気です。ポータブルゲーミングPCを早くから手掛けるAYANEO、GPD、テックワンなど新興メーカーのモデルもあります。ニッチと思っていましたが、これだけ増えるとは正直驚きです。
そんなポータブルゲーミングPCの人気をひっぱっているのが「ROG Ally」なのは間違いないでしょう。その機能強化モデルである「ROG Ally X」は、7月24日の発売前から価格.comの「ノートパソコン」カテゴリーの人気売れ筋ランキングで32位に入るなど注目度の高いモデルです。「ROG Ally」と同じように、ヒット商品になる可能性は大いにあると思います。
ゲーミングPCは欲しいけど大型のものは置けない人や、家庭用の携帯ゲーム機のように気軽にPCゲームを楽しみたい人には、ぴったりのモデルです。ゲーム専用ではなく、Windowsパソコンとしても使えるので、ゲーム機とパソコンを購入すると考えれば、価格.com最安価格138,520円はお安いのではないでしょうか。価格を重視する人や、ポータブルゲーミングPCをまずは試したいという人は、価格が下がってきている「ROG Ally」を検討するといいでしょう。