デルの高性能ノートパソコンが「XPS」シリーズ。そのなかでも持ち歩きに適した13.4型で、最新のCPUインテル「Core Ultra 7 258V」を搭載する第2世代の「Copilot+ PC」が、デル「XPS 13 Core Ultra 7 258V・32GBメモリ・1TB SSD・3K 有機EL タッチディスプレイ搭載モデル [プラチナ]」です。早速その実力を実機レビューします。
デル「XPS 13 Core Ultra 7 258V・32GBメモリ・1TB SSD・3K 有機EL タッチディスプレイ搭載モデル [プラチナ]」、価格.com最安価格327,000円(税込)、2024年11月19日発売 ※ページ内の価格などはすべて執筆時点2025年2月14日のもの
今回レビューするのは13.4型の「XPS 13 Core Ultra 7 258V・32GBメモリ・1TB SSD・3K 有機EL タッチディスプレイ搭載モデル [プラチナ](以下XPS 13)」です。XPSシリーズは「XPS 13」「XPS 14」「XPS 15」「XPS 16」と4サイズで展開されていますが、シリーズ中、最もコンパクトで軽い製品。とはいえ中身は非常に高性能な1台です。
「XPS 13」ってどんなパソコン?
・最新のインテル「Core Ultra 7」を搭載した第2世代「Copilot+ PC」
・高性能な「XPS」シリーズなので一般作業のほかクリエイティブ用途にも対応可能
・13.4型とコンパクトで軽めなので毎日でも持ち歩ける
■デル「XPS 13」筆者による評価チャート
価格.com「ノートパソコン」でのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けたレーダーチャート
評価チャートについて
・実際に製品を使用して、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けました。
評価項目:満足度、デザイン、処理速度、グラフィック性能、拡張性、使いやすさ、持ち運びやすさ、バッテリー、画面、コストパフォーマンス
点数:5点満点(標準点は3点)
・製品カテゴリーや価格を考慮して評価しています。ノートパソコンとしての絶対的な評価ではありません。
・本記事を執筆した筆者による個人的な評価です。評価は個人によって変わりますので、あくまでも 参考程度にとどめてください。
価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビュー一覧
https://review.kakaku.com/review/newreview/CategoryCD=0020/
今回レビューした「XPS 13」はプロセッサーに最新のインテル「Core Ultra 7 258V」を搭載する第2世代「Copilot+ PC」です。また、メモリーは32GBでSSDは1TBと一般的な作業には十分すぎるスペックです。
ディスプレイのタッチ対応有機ELは、解像度が3Kと高解像なうえ、高精細で輝度も十分なので文字は見やすくなっています。キーボードのキーも大きめなのでテキスト入力や、いわゆるデスクワークに向いています。また、DCI P3 100%と色域も広いので、グラフィック作業や写真編集、動画編集にも適しています。ただし、画面は13.4型と小さいため、本格的な作業のために作業スペースを確保するなら外部ディスプレイの導入も検討するとよいでしょう。有機ELディスプレイのきれいな画面は動画視聴にも向いていますが、メディアプレイヤーとして使うには、音響面においてやや低音が迫力不足です。
バッテリーの持続時間は動画再生の実測で約10時間。十分な値ではありますが、最近のモバイルノートパソコンが長時間駆動の製品が増えた関係でやや点数は控えめ。ただし、本体がコンパクトなのでここは割り切るポイントだと思います。その代わり携帯性は良好です。なお、プロセッサー内蔵GPUのわりにグラフィック性能は高めです。そのためある程度のゲームまでなら設定次第で快適に遊べそうです。
詳細な特徴は次項以降のレビューからご確認ください。
ここからは「XPS 13」についてより詳しく説明していきます。
今回レビューする「XPS 13」を発売するデル(Dell Technologies Inc.)はもはや説明も不要なほど巨大な、米国のコンピューターテクノロジー企業です。デルは複数のノートパソコン製品を販売しており、「XPS」シリーズは個人向けの高性能モデルという位置付けです。ただし、デルは2025年1月にラインアップの刷新を発表済みで、今後は「Dell Pro」という名称に統合されます。「XPS」というシリーズもなくなる予定です。
従来のラインアップ
個人向けノートパソコンとして4シリーズを展開しており、「XPS」はクリエイターにも最適な高性能モデルの位置付けでした。※こちらは刷新前のラインアップとなります
「XPS 13」シリーズはカスタマイズ可能な製品で、さまざまな仕様がありますが、今回の扱う機種の構成はプロセッサーがインテル「Core Ultra 7 258V(シリーズ2)」、メモリー32GBでストレージ容量は1TBとなります。さらにディスプレイもタッチ対応の「3K(2880×1800)有機EL」で、いわばフル装備的な構成です。ちなみに同じ有機ELモデルでもCPUなど各種スペックを下げた「Core Ultra 5・メモリー16GB・ストレージ512GB」の構成だと約275,999円(税込。価格.com最安)となります。
デル「XPS 13」は、マイクロソフトが2024年に新たに策定したAIパソコンの規格「Copilot+ PC」に適合しているため、AI処理の一部を、プロセッサー内のNPUで処理します。当然「Copilot+ PC」のみ利用できるWindowsのAI機能をフルに活用できます。さらにインテル製プロセッサーなので、Windowsも通常版となり、クアルコム製CPU「Snapdragon」シリーズで使われるARM版Windowsと比べてアプリケーションの互換性の不安がありません。
「Copilot+ PC」の機能。「ペイント」の画像生成機能「Image Creator」の画面です
デル「XPS 13」は最新CPUを搭載するため処理能力は当然気になるところ。各種ベンチマークの結果をまとめておきます。なお、測定は電源を接続した状態で行い、電源モードは「最適なパフォーマンス」を選択。
電源を接続し、電源モードは「最適なパフォーマンス」とした状態と、バッテリー駆動で電源モードを「バランス」にした状態で測定しました。バッテリー駆動時に電源モードを「バランス」に変えて使用する場合、一般的にスコアは低下します。電源接続時の結果をこのCPUのものとして公開されている数値と比べてみると、シングルコアは良好な結果でしたが、マルチコアは20%程度下回りました。
マルチコア:495 pts(電源接続)/483 pts(バッテリー駆動)
シングルコア:120pts(電源接続)/66 pts(バッテリー駆動)
電源接続時(左)と、バッテリー駆動時(右)
「3DMark」でのテストでは、プロセッサー内蔵グラフィックとしては高めのスコアでした。結果は以下のとおり。
Fire strike:8292
Time Spy:4106
Steel Nomad Light:3325
Steel Nomad:670
Speed Way:509
Fire strikeの結果画面
FF15のベンチマークは画面解像度の3Kに近い「2560×1440」で測定。「高品質」では「動作困難」だったので、「標準品質」に落としましたがそれでも「やや重い」です。「軽量品質」まで落としたところ、なんとか「普通」に変わりました。ちなみに、フルHDなら「高品質」でも「普通」でした。
高品質・2560×1440・フルスクリーン:2049(動作困難)
標準品質・2560×1440・フルスクリーン:2958(やや重い)
軽量品質・2560×1440・フルスクリーン:4492(普通)
高品質・1920×1080・フルスクリーン:3477(普通)
「高品質・1920×1080」での結果がこちら。より快適さを求めるなら「標準品質」でのプレイがよさそうです
F14のベンチマークも同じく「2560×1440」で測定。最も高画質な「最高品質」では「設定変更を推奨」でしたが、「高品質(ノートPC)」に落とすと「やや快適」でプレイ可能です。フルHDの場合は「最高品質」では「普通」、「高品質(ノートPC)」で「快適」でした。
2560×1440・最高品質・フルスクリーン:2818(設定変更を推奨)
2560×1440・高品質(ノートPC)・フルスクリーン:7448(やや快適)
1920×1080・最高品質・フルスクリーン:5186(普通)
1920×1080・高品質(ノートPC)・フルスクリーン:8969(快適)
フルHDの結果がこちら。フルHDであれば、「高品質(ノートPC)」で「快適」にプレイできそうです
デル「XPS 13」は高級感のあるメタルボディで、素材はCNC削り出しのアルミニウムを採用。本体サイズは295.3(幅)×199.1(奥行)mmで、A4サイズよりやや小さめです。閉じた状態の厚みは14.8mmで、重量は1.18kg。毎日でも持ち歩けるサイズと重量です。
サイズはA4より数ミリ小さく、薄いので非常に持ちやすいです
付属の電源アダプターは60WのUSB Type-C接続で、小型ですが3ユニットに分かれているので持ち歩きはちょっと面倒です
「XPS 13」のディスプレイは13.4型の有機ELディスプレイ(有機EL)で、解像度は3Kの2880×1800ピクセルです。画面の比率は16:10で、一般的な16:9のディスプレイより縦が若干広めです。Webサイトなどを見ても高解像度なので細かな文字がくっきりと見えます。また、写真などを表示しても有機ELらしくメリハリのある映りです。
リフレッシュレートは最大60Hzで、「Dolby Vision」に対応しています。有機ELモデルの画面はタッチ対応で、衝撃に強い「Gorilla Glass 3」を採用。反射防止や防汚加工がされているので、光沢ガラスのわりには映り込みがあまり気になりません。
画面の輝度は「400 nit」と十分な明るさで、コントラスト比は「1,000,000:1」。再現可能色の割合を示す色域は、映画撮影やビデオ制作向けの「DCI-P3」規格で100%と広色域です。
上の写真では拡大率を「150%(推奨は200%)」に下げて輝度100%で表示しています。いちばん上の列のみ画像を拡大して表示すると、細かい文字までしっかりと表示されているのがわかります
写真を表示したところ、メリハリのある画質です。有機ELの特徴である黒もしっかり締まって見えます
こちらが上で画面に表示している元の写真です。見比べても色味は近く、変に赤や青が強調されていることもありません。左の雲の明度はやや落ちていますが、かなり自然に見えます
本体には2Wのスピーカーを4つ、合計8Wのクワッドスピーカーを搭載。また、Dolby AtmosとWaves MaxxAudioにも対応しており、音の広がりが感じられます。やや低音の迫力は不足気味ですが、サイズを考慮すれば、十分な音質と言えます。
スピーカーの穴がまるで目立たず、底面の両サイドにスリットが3つ並んでいるだけです
画面上部には1080pのWebカメラに加えて、赤外線カメラも搭載するのでWindows Helloの顔認証が利用できます。デュアルアレイマイクも搭載しますが、プライバシーシャッターはありません。Webカメラの映像はそれなりにきれいですが、標準設定ではやや赤みの補正が強い印象です。マイクの音声は若干こもり気味ではありますが、会話はしっかり聞き取れるレベルです。
Webカメラは30FPSのフルHDで、顔認証用の赤外線カメラも搭載しています
キー配列は日本語配列のファンクションキー付きで、Windowsの標準AIアシスタント「Copilot」を呼び出す専用の「Copilot」キーも用意されています。ファンクションキーは実際のキーではなく、LEDで表示されるタッチ方式です。
XPSの特徴のひとつであるキーは大きめで、LEDバックライト付きなので視認性は高め。キーボード全体が広いので、コンパクトモデルにありがちな窮屈さは感じず、基本的には打ちやすい印象です。本体が薄いためキーの沈み込みは浅めで、打鍵感はやや硬め。そのため、長時間のタイピングだと、反発で打ち疲れるかもしれません。
XPSならではのシームレスなタッチパッドは、見た目はスッキリしていてよいのですが、位置に慣れるまでは範囲外をクリックしてしまうことがあります。また、ものすごく軽く触れると、反応したりしなかったりで個人的には今ひとつな印象でした。
日本語配列のキーボードでバックライトを搭載
ファンクションキーは実際のキーではなく、LEDで表示される方式で触れて操作します。スタイリッシュではありますが、文字キーのようにLEDを消せないため、明るい場所では見にくい印象です
Windows標準のAI機能を素早く呼び出せる「Copilot」キーも装備しています
電源ボタンは指紋認証に対応しており、キーボードの右上に配置されています
カーソルキーの上下はかなり縦幅が狭く、ここだけ非常に打ちにくさを感じます
シームレスなタッチパッドはおしゃれですが慣れないうちは誤操作の原因になりそうです
外部インターフェイスに関しては、USB Type-Cが2ポートのみとかなり少なめです。2つのType-CポートはThunderbolt 4に対応しており、転送速度は最大40Gbpsと高速。まだ、USB Power Delivery(PD)にも対応しています。
さらに、DisplayPort 2.1にも対応しており、対応ディスプレイに画面を外部出力できます。
2つのポートは左右に1つずつ配置されているので、ケーブルの干渉がなくて使いやすいものの、USB Type-Aポートやイヤホン用コンボジャック、HDMI端子、メモリーカードスロットなどが非搭載なのはちょっと寂しいところだと感じました。
電源ポートがないため、当然片方のUSB Type-Cポートは電源に占有されてしまい、実質使えるのは1ポートのみです。ワイヤレス通信に関しては、最新のWi-Fi 7に対応しており、Bluetoothのバージョンは5.4です。
外部インターフェイスは、本体の左右にそれぞれUSB Type-Cポートが1つずつ
バッテリーは3セルの55Whで、実際にフルHD画質のYouTube動画を長時間再生してみたところ、約10時間5分で画面がオフになりました。
なお、テストは画面の輝度と音量を50%に設定し、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定。「画面のスリープ」や「バッテリー節約機能」はオフにしています。さらにBluetoothもオフにして、Wi-Fi 6でネット接続して実行しました。持ち歩き重視のノートパソコンと考えるとやや短めですが、本体が小さいので仕方ない部分でもあります。なお、電源モードを「バランス」に変更すれば、稼働時間はもっと延びるでしょう。
フルHDのYouTube動画を再生し続けたところ、約10時間5分で画面がオフに
今回レビューした、デル「XPS 13」は13型ノートパソコンとしてスペックは申し分ありません。また、3K 有機ELディスプレイは非常にきれいです。しかし、サイズ的に本体画面での本格的な写真編集や動画編集はやや厳しい印象。本格的なクリエイティブ作業を行う場合は、外部モニターなどを増設する使い方がいいでしょう。また、ポートが少ないためワイヤレス、あるいはUSB PD対応製品機首がポイントとなりそうです。逆に言うと本体に周辺機器がごちゃごちゃつなげないため、外出する場合は本体のみをさっと持ち出せます。外出先でもガンガン仕事をこなし、家に帰ったら作業スペースの中心にすえてしっかりと。そんな使い方をスタイリッシュな本体でできる贅沢な製品です。価格は高めですが満足度も高い製品と言えます。