「Zenbook SORA UX3407QA Snapdragon X X1-26-100・16GBメモリ・512GB SSD搭載モデル(以下、Zenbook SORA)」は、PCやその周辺機器を製造しているASUS(エイスース)が日本におけるモバイルノートパソコンの実用調査を行い、「持ち運びやすさ」「作業性能面」「バッテリー駆動時間」をバランスよく取り入れた14型のノートパソコンです。薄型かつ900gを切る重量ながら「Copilot+ PC」に準拠する注目の製品となっています。そんな「Zenbook SORA」の使い心地をレビューしていきます。
ASUS「Zenbook SORA UX3407QA Snapdragon X X1-26-100・16GBメモリ・512GB SSD搭載モデル」、161,820円(税込/価格.com最安価格。以下、ページ内のすべての情報は2025年2月27日時点のもの)、2025年2月5日発売
はじめに「Zenbook SORA」について使ってみた印象をまとめました。
・日本市場を意識した、軽量&高性能モバイルノートパソコン
・独自素材「セラルミナム」とニュアンスカラーによる上質なデザイン
・Snapdragon Xによるサクサク動作と、長いバッテリー駆動時間
「Zenbook SORA」筆者による評価チャート
価格.com「ノートパソコン」でのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けたレーダーチャート
評価チャートについて
・実際に製品を使用して、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けました。
評価項目:満足度、デザイン、処理速度、グラフィック性能、拡張性、使いやすさ、持ち運びやすさ、バッテリー、画面、コストパフォーマンス
点数:5点満点(標準点は3点)
・製品カテゴリーや価格を考慮して評価しています。ノートパソコンとしての絶対的な評価ではありません。
・本記事を執筆した筆者による個人的な評価です。評価は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にとどめてください。
価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビュー一覧
「Zenbook SORA」の重量は約899gで、超軽量と呼べるほど軽いノートパソコンです。いっぽうで重量以外の要素も抜かりがなく、独自素材を活用した高いデザイン性、長いバッテリー駆動時間、クアルコムの新しいCPU「Snapdragon X」による処理速度とAI性能など、多くの要素が高水準にまとまっている総合力の高い「Copilot+ PC」と言えます。なおコスパや、「Snapdragon X」ゆえの互換性などはやや気になる点ではあります。とはいえそこまで足を引っ張る要素ではありません。
まとめると「Zenbook SORA」は14型ながら1kgを切る軽さと、バッテリー駆動時間の長さによる「持ち運びやすさ」、さらに必要十分な「処理速度」や「グラフィック性能」とモバイルノートパソコンに必須の条件を高水準で満たしています。日々持ち歩くけれど、できるだけ軽快に、それでいて作業効率も追求したい人にはぴったりの製品かと思います。
ここからは「Zenbook SORA」について実際触ってみた感触や検証結果など詳しく解説していきます。
ASUSは「Zenbook」以外にも、手ごろな価格と豊富なバリエーションが特徴の「Vivobook」、クリエイター向けの高スペックモデルが揃う「ProArt」、そしてハイパフォーマンスなゲーミングモデルを取り扱う「ROG」シリーズなどのノートパソコンブランドを展開しています。「Zenbook」もこうしたブランドのうちのひとつであり、その特徴は薄型軽量と高いスペックにあります。軽くて持ち運びしやすいことから、ノートパソコンを毎日持ち歩くビジネスマンや学生にとっては魅力的なブランドでしょう。
ASUSのノートパソコンラインアップ。メーカー公式サイト(https://www.asus.com/jp/)から作成しています
特に今回のモデルは日本市場を強く意識した製品となっており、「Zenbook SORA」という名前は日本独自のマーケティングネームでもあります。日本ユーザーのニーズをじっくりと分析しており、「持ち運びやすさ」「作業性能面」「バッテリー駆動時間」など真の意味で使いやすいノートパソコンを目指して開発されました。スペックについてもAI機能がサクサク動作する「Copilot+ PC」の要件を満たしており、申し分ありません。
「Zenbook SORA」の大きな特徴が、ASUSが独自開発した新素材「セラルミナム」を外装に採用している点です。この素材はセラミックとアルミニウムを融合させたもので、軽さと堅牢性、それから見た目の美しさに大きく貢献しています。サラッとした手触りと独特の質感は、まるで陶器のよう。
ロゴは鏡面仕上げでキラッと光ります
カラーについても定番のブラックやホワイトとはひと味違う、やわらかなニュアンスカラーを採用。インテリアのような上質な佇まいで、野暮ったい印象は一切ありません。ざっくばらんに表現するなら「若者が好みそうなガジェット」といったところ。
レビュー機のカラーは「ザブリスキーベージュ」。もう1色には「アイスランドグレー」があります
セラルミナム製のボディはスレ傷にも強く、スリーブやケースを使わずに持ち歩け、結果として持ち物の重量削減につながります。「ノートパソコンだから見た目よりもスペックが大事なのでは?」と思われるかもしれませんが、やはり気に入ったデザインのノートパソコンのほうが使いたくなるものでしょう。
プラスチックやマグネシウム合金とも異なる、独特な外装です
キーボードの質感も良好。キー周辺のフレームにもセラルミナムが採用されています
本機の重量は約899gで、スペックとディスプレイが違う上位モデル「UX3407RA」でも約980g。どちらも1kgを下回る超軽量ノートパソコンです。この軽さはノートパソコンを持ち運ぶことが多いビジネスマン、あるいは学生などにとっては大きな利点。セラルミナムの外装は滑りにくいため、写真のように片手で持ち歩くのも容易です。
いっぽうで軽量ノートパソコンと言われると「そんなに外に持っていく予定はないから軽さはあまり気にしないかな」という考え方もあるでしょう。ですが、何も外への持ち出しに限った話ではありません。
片手でも余裕で持ち上げられるほどの軽さ
家の中であっても、リビングやダイニングテーブル、ソファ、あるいは自室のデスクなどなど、ノートパソコンを移動させる機会は少なくありません。ノートパソコンが軽ければ、こうしたちょっとした移動のストレスが軽くなります。たとえば1kgを超えるノートパソコンでも膝上に置いて作業できますが、やはり軽ければ軽いほど億劫な気持ちも小さいもの。感覚としては雑誌を持ち歩くような感覚でノートパソコンを持ち歩けます。
膝上に置いての作業もこの軽さなら気軽にできます
同梱されている充電器も小型軽量で、アダプターの重量は実測値で約100g、ケーブルは約75gでした。市販の軽量充電器と遜色ないほど軽いので、そのままメイン充電器として使っても問題なさそうです。USB Type-Cケーブルは用途に応じてより短いものを購入すれば、さらに軽量化できるでしょう。
同梱物はノートパソコン本体のほか、65Wの充電器とUSB Type-Cケーブル
端子類は左側面に、USB4対応のUSB Type-Cが2ポート、HDMIポート、ヘッドホン/ヘッドセット・コンボジャックを搭載。右側面にUSB 3.2対応のUSB Type-Aポートを搭載。どちらのUSB Type-Cポートも上述の65W充電器で充電できます。
USB4は映像出力も可能なためHDMI端子は不要のようにも思えますが、たとえば会社で使う外部ディスプレイがHDMIにしか対応していない場合でも接続可能です。出先でのプレゼンやレガシーデバイスとの接続など、あって困るものではないでしょう。欲を言えばSDカードスロットがあればデジタルカメラのデータも簡単に取り込めたな、と。まあ、最近のデジタルカメラは無線転送などにも対応していますし、困ることはないでしょう。
写真上は左側面。HDMIとUSB4ポート、ヘッドホン/ヘッドセット・コンボジャックを搭載。写真下は右側面でこちらはUSB3.2 Gen2ポートのみです
「Zenbook SORA」のスペックは、CPUがクアルコム「Snapdragon X X1-26-100」、メモリーが16GB。GPUはCPU内蔵の「Qualcomm Adreno」です。軽量ゲームならできそうかなといったところですが、さっそくベンチマークをとっていきましょう(ベンチマークは電源を接続した状態で実施)。
総合的な性能を評価できる「Geekbench 6」での測定結果は、「Single-Core Score」が2078、「Multi-Core Score」が10226、グラフィック性能を示す「OpenCL Score」が9724。「Single-Core Score」「Multi-Core Score」は筆者が以前レビューした「Pavilion Aero 13 Ryzen 7(Single-Core Score:2159、Multi-Core Score:10453)」に近く、同モデルがコスパのよさで人気なことを思えば、Officeなどのアプリもストレスなく使えると言えるでしょう。ただしグラフィック性能は控えめです。
Geekbench 6のベンチマーク結果
ゲーミング性能を評価する「3DMark Fire Strike」でのベンチマーク結果は3584。こちらもグラフィックは中程度という評価。
3DMark Fire Strikeのベンチマーク結果
CPUとGPU性能をテストする「Cinebench 2024」でのベンチマーク結果は、「Single Core」が95pts。Multi Coreが418pts。スコア集計サイトなどを参照するとそれぞれ「AMD Ryzen 7 5800X」「AMD Ryzen 5 5500U」に近い成績でした。
Cinebench 2024のベンチマーク結果
ちなみに本機に搭載されている「Snapdragon X X1-26-100」は、2025年1月に発表されたばかりの新しいCPU。立ち位置としては「Snapdragon X」シリーズの最廉価モデル(X Elite、X Plusの下)に当たり、最大クロックとGPU性能が上位機に劣ります。
ですが、NPU性能は上位モデルと同様の45TOPSを維持しており、メモリーの最大構成も最上位モデルと同数値です。総合的な性能こそ上位の製品に劣りますが、そこまで高負荷な作業を想定していないユーザーにとっては、コスパを優先した構成とも言い換えられます。また、現状では一部アプリがNPUで処理されていますが、もしNPUを使うアプリが増えていけば廉価モデルのCPUでも快適なPC体験が得られるようになるかもしれません。
「Snapdragon」搭載を示すステッカー
最後に、他ソフトやドライバーとの互換性について解説しましょう。本機は、「Snapdragon X」を採用していることからArm版Windowsを搭載しています。このArm版Windowsは、従来一般的だったインテルやAMDと異なるアーキテクチャのArmプロセッサー用OSとなります。Arm版Windowsには従来のアーキテクチャ向けのソフトを動作させられるエミュレーターを搭載していますが、一部のソフトやドライバーなどに不具合が発生しています。そのため特定のプリンターやアプリなどを利用しているユーザーは購入前に確認すべきですが、一般的な事務ソフトしか使う予定がないのならそこまで懸念するほどではないかと思います。PCゲームとの互換性についても、そもそも本機のスペックで遊べるゲームはかなり限られるので、結果として本機のターゲット層にとってARM版であることはそれほど問題にはならなさそうです。
そもそも高度なゲームプレイにはCPU処理能力と同時に筐体やCPUファンなど含めた強力な冷却性能や大型のバッテリーが必要で、それらは当然重量アップにつながります。そのため持ち運びやすさやバッテリー駆動時間のバランスを重視する本機にとってゲームプレイはそもそもコンセプト外と言えるでしょう。
本機の特徴に省電力な「Snapdragon」を採用したことによる長いバッテリー駆動時間があります。公称値では約23時間、JEITA3.0による計測だと、約16.2時間 (動画再生時)となっています。
そこで今回はYouTubeの4K動画をフルスクリーンで10時間連続再生し、バッテリー残量をチェックしました(画面輝度は最大、スピーカーはミュート)。バッテリー残量は100%から38%まで減っています。単純計算であと6時間の動画再生が可能であり、合計すると16時間。そのため少なく見積もっても半日以上は余裕で連続使用ができることがわかりました。
バッテリー残量の変化
本機のディスプレイはTFT液晶ですが、上位モデルには有機ELが採用されています。有機ELのモデルのほうが色鮮やかな映像なのは間違いありません。しかしTFT液晶である本機はノングレア(非光沢)パネルになっており、低反射で画面が見やすい利点もあります。このあたりは利用環境や好みで選んで問題ないでしょう。
ディスプレイは見やすく、ベゼルもシャープ
「14インチのノートパソコンに求める要素」をしっかりと理解しており、ここ数年見てきたノートパソコンの中では最も気に入ったモデルでした。むやみに高性能とするよりもそのリソースを軽量性やバッテリーに割り当てることで、地に足の着いた使いやすいノートパソコンに仕上げようじゃないか、という意気込みが感じられます。
超軽量ノートパソコンというジャンルで見れば、本機のデザインやバッテリーライフはとても魅力的で、比肩するような個性を持ったモデルはなかなか見当たりません。「軽さが最優先で、用途的にそこまでの高性能は求めていない」こういったニーズは少なくないでしょうから、価格面での競争力も意外とあるのではと? と個人的には思います。なんなら上位モデルの「UX3407RA」はSnapdragon X Elite搭載で性能も申し分ないですし、かなり広いターゲットを取り込めそうなモデルかもしれません。日本市場を深く分析したというのは伊達ではありませんね。