トレーニング記録、ペース管理、回復状況の確認と、ランナーにとってスマートウォッチは効率的なパフォーマンスを高めるために欠かせないギアです。ですが、数あるモデルから最適な1本を選ぶのは難しい。そこで、日常的にランニングに励み、年間40本を超えるスマートウォッチをテストする筆者が、GPSや心拍センサーの精度と価格のバランスがよい、ミドルグレードの4本を厳選して紹介します。
3万〜6万円台の価格帯のランニング向けスマートウォッチのなかから、性能と価格のバランスがよいものを厳選しました
今回紹介する4機種は、機能性と価格設定が“ちょうどよい”ミドルグレードモデルです。どのモデルもランナーにとって重要な以下の5つのスペックを満たしています。
1.高精度なGPS
正確な距離、ペース計測はランニングの大切な要素です。環境に左右されず安定した位置情報を得られるGPS(GNSS)を搭載しています。
2.充実したランニングデータ
心拍数、ペース、距離などの基本項目だけでなく、ピッチ、ストライド長、トレーニング負荷、回復状況といった専門的なランニングデータが取得できます。
3.有機ELディスプレイ
日中の屋外でも視認性が高く、グラフや地図の表示も鮮明な有機ELディスプレイを搭載しています。
4.十分なバッテリー駆動時間
フルマラソンはもちろん、ウルトラマラソンでもバッテリー切れの心配がない十分な駆動時間を確保しています。
5.すぐれた操作性
ランニング中でも誤操作なく使用できる物理ボタンと、直感的なタッチスクリーンの両方に対応しています。
ランナーにとって重要な5つのポイントをクリアした優秀なランニングウォッチ
上記5つのポイントをクリアした厳選モデルをそれぞれ詳しく見ていきましょう!
ポイント
・鮮やかなディスプレイ
・充実したトレーニング機能
基本スペック
・ディスプレイサイズ:直径1.3インチ(32.5mm)
・重量:47g
・バッテリー稼働時間(GPS駆動時):約20時間
ガーミンの「Forerunner 265」は、充実したランニング機能のほかにも、身体のコンディションを可視化できるトレーニングレディネスや、自分の身体をバッテリーに見立てて数値化するボディバッテリーなど“回復”をサポートする機能を搭載するモデル。視認性の高い有機ELディスプレイも備わっていて、必要なものがすべて揃っているバランスのよさが魅力です。
身体の回復状態をスコア化するトレーニングレディネス
特に、すぐれているのが有機ELディスプレイの視認性の高さ。走行しながらのチラ見でもデータ確認がしやすいことは、ランナーにとって重要なポイントでしょう。さらに、GPSの精度が高く、ビルが立ち並ぶ都市部でも正確な位置情報を捕捉するので、ペースも距離もしっかりと記録できます。
視認性の高いディスプレイは重要なポイントです
ウォッチのディスプレイで「ピッチ」や「上下動比」など、ランニングのスキルアップに必要なデータを確認できることは、スマホを携帯せずに手早くデータを確認したいランナーにとって魅力です。
また、個人の走力や睡眠データなどの身体の回復状況に合わせたワークアウトメニューが毎日提案されます。「疲れている日は軽めのメニュー」、「元気な日は少しハードなメニュー」という具合に、蓄積したデータに基づいた“ちょうどよい”メニューを提案し、ランニングのレベルを次のステージへ引き上げてくれます。
公式スマホアプリ「Garmin Connect」のランニング結果画面
睡眠時に着用すれば、詳細な睡眠データを取得できます。データは翌日のトレーニングメニューに反映されます
また、バッテリーの駆動時間はGPSを使って最大20時間と十分なので、競技時間の長いマラソンなどのレース中でも充電を気にすることなく、ガンガン使える点も魅力です。
トレーニングからレース中、そして回復(リカバリー)まで、幅広くサポートするのが「Forerunner 265」です。価格は少し高いですが、間違いない選択肢と言えるでしょう。
ポイント
・驚異のロングバッテリー
・充実の無料マップ機能
基本スペック
・ディスプレイサイズ:直径1.3インチ
・重量:49g(シリコンバンド時)、37g(ナイロンバンド時)
・バッテリー稼働時間(GPS駆動時):約38時間(常時点灯時:28時間)
COROS(カロス)の「PACE Pro」は、「MIP液晶にこだわり続けてきたCOROSが、ついに有機ELディスプレイを手に入れた」とランナーの間で話題になったモデル。一般的に100Kmを走るウルトラマラソンの制限時間が約17時間なので、余裕をもって使用できるロングバッテリーを搭載しています。
写真のモデルは、あの人気ランナー大迫傑選手とコラボレーションした限定モデル「PACE Pro Suguru Osako Edition」。無印の「PACE Pro」とは、ひと味違ったシンプルなデザインが特徴です。
シンプルなデザインの限定モデル「PACE Pro Suguru Osako Edition」
「PACE Pro」は、COROSの歴代モデルで最も高性能なチップを搭載しているため、内蔵マップのスクロールや拡大縮小といった操作が非常にスムーズです。まるでスマホを操作しているかのようにサクサクと動き、ストレスフリーなマップ体験を実現します。そんな高性能でありながら、5万円前後の価格設定は、コストパフォーマンスを重視するランナーにとっても見逃せないポイントです。
また、別売りのアクセサリーと接続することで、その性能をさらに引き出せます。「COROS心拍センサー」は、手首よりも心臓に近い上腕に着用でき、より正確な心拍数の把握と、効果的なペース配分が可能に。「COROS POD 2」は、腰に付けることで、内蔵の加速度センサーにより、ランニングフォームを詳細に分析できます。
別売りのアクセサリー。写真左が「COROS心拍センサー」、中央が「COROS POD 2」
「COROS POD 2」でできることのひとつが、ランニングフォームテストです。ランニングを「スキル」「強度」「バランス」の3項目で詳細に解析し、現状の走力を可視化。課題を明確にすることで効率的なレベルアップをサポートします。
公式スマホアプリ「COROS」のランニングフォームテスト画面
「COROS」アプリ上でランニングルートを簡単に作成し、時計をナビとして使用できるのも魅力です
質実剛健&ロングバッテリーの「PACE Pro」は、筆者の回りでもガチなランナーが愛用しているイメージです。「しばらく充電しなくてもよいモデルが欲しい」「見知らない土地で迷わず走りたい」というランナーに適したモデルと言えるでしょう。
ポイント
・心拍計の精度が高い
・リカバリー重視のトレーニングに
基本スペック
・ディスプレイサイズ:直径1.3インチ
・重量:53g(バンド含む)
・バッテリー稼働時間(GPS駆動時):30時間(パフォーマンストレーニングモード)、70時間(省電力トレーニングモード)
Polar(ポラール)の「Vantage M3」は、光学式心拍センサーの精度に定評があります。特に正確な心拍データに基づいた詳細なトレーニング分析は、ランナーのパフォーマンス向上を強力にサポート。まるでパーソナルコーチがいるかのように、あなたのためのトレーニングと回復をガイドする一本です。
「Vantage M3」に搭載される光学式心拍センサーの安定性と精度は、業界トップクラスと言えます。トレーニング中のリアルタイムな心拍数はもちろん、睡眠中の心拍変動(HRV)などから、身体の疲労度や回復状況を正確に記録。睡眠と自律神経分析の「Nightly Recharge」や栄養補給リマインダー「FuelWise」といった機能は「健康な状態」を維持したまま走り続けられるようにサポートします。
公式スマホアプリ「Polar Flow」の睡眠分析画面
ランナーのパフォーマンス向上に不可欠な“回復”を可視化するのが「Nightly Recharge」です。睡眠中の心拍数や呼吸パターンから自律神経の状態を分析し、「自律神経ステータス」「睡眠ステータス」という、「心と身体」両面の回復具合を詳細に評価します。これにより、前日までの疲労が残っていないか、適切な休息が取れているかが一目瞭然! その日のコンディションに適したトレーニング強度を判断し、効率的かつ安全なトレーニングを後押しします。
「Nightly Recharge」の画面
「FuelWise」はレースやトレーニング中の心拍数から、必要な炭水化物量を推定し栄養補給が必要なタイミングを通知する機能です。ついつい走っていると補給を忘れがちになることも多いですが、パフォーマンスを高めるためにエネルギー補給は必須。この機能を活用すれば、「エネルギー不足でヘロヘロ」なんてこともなく、高いパフォーマンスを維持できることでしょう。
「FuelWise」の画面
ほかにも、一日のなかで、最も活性化している時間帯を予測する「日中活性ガイド」というユニークな機能を搭載。ランニングだけでなく、仕事の面でも有効活用でき、「数値がよい時間に、この作業を終わらせてしまおう!」なんて、効率的なスケジューリングにも役立ちそうです。
「日中活性ガイド」の画面
「Vantage M3」の最大の特徴は心拍計測の精度です。精度が高いゆえに睡眠スコアが厳しめ(苦笑)という特徴もありますが、身体が本当に休息できているのかを客観的に示されます。“心拍屋”を自負するPolarの専門的な心拍データに基づくトレーニングと最適なリカバリーが、日々のランニング力の向上に役立つでしょう。
ポイント
・おしゃれな北欧ビジュアル
・ボディの軽さ
基本スペック
・ディスプレイサイズ:直径1.32インチ
・重量:36g
・稼働時間(GPS駆動時):最大約20時間
SUUNTO(スント)の「RUN」は、北欧デザインのスタイリッシュさと、ランナーにストレスを感じさせない36gという軽さを両立したモデルです。アウトドアウォッチとしての長い歴史に裏打ちされた使いやすさがあり、日々のジョギングから本格的なマラソンまで、幅広いレベルのランナーをサポートします。
1.32インチの有機ELディスプレイは、昼夜問わずデータが非常に見やすく、グラフも精細に表示。ランニングウォッチとしての使い勝手を引き上げています。わずか36gという驚異的な軽さとナイロンベルトの装着感は、長時間装着していてもストレスを感じさせず、快適さを保ちます。
大きく鮮やかなディスプレイは、ランニング中でも見やすい
この「RUN」と組み合わせて使用したいのが、骨伝導イヤホン「SUUNTO WING」です。このイヤホンは、安全に周囲の音を聞きながら音楽を楽しめるうえ、首を振る動きで音楽を操作ができるなど、走りに集中できる機能がユニーク。カラーも秀逸で、スマートウォッチとイヤホンをトータルでコーディネートできます。音楽でモチベーションを高めるランナーには、かなり魅力的に映るでしょう。
別売りの骨伝導イヤホン「SUUNTO WING」
デザインとエンターテイメント、ランニングを別視点からアプローチをする「SUUNTO RUN」は、ランニングを楽しむ人に寄り添えるスマートウォッチでしょう。ガチで走りたいけれど、ファッション性や遊びの要素も意識したいランナーにおすすめです。
スマートウォッチは、装着した際のフィット感や、ディスプレイの見やすさ、ボタンの操作感など、数値では測れない感覚的な部分がとても重要です。長く使ううえで気になるところでもあるので、可能なら実物を一度手に取ってみることをおすすめします。
弱点の少ないガーミン「Forerunner265」、ロングバッテリーのCOROS「PACE Pro」、心拍センサーを重視したPOLAR「VANTAGE M3」、ファッションとエンタメ性も加味したSUUNTO「RASE」。それぞれ個性ある4製品の特徴を踏まえて、自分のランニングスタイルにぴったりなスマートウォッチを見つけてください。