人の手で部屋の隅々までかけられる従来の掃除機と異なり、機械やAI任せになってしまうのがロボット掃除機です。もちろん、任せられるからこそラクなんですが、ロボット掃除機を導入したことのない人にとっては「本当に部屋全体をしっかりと掃除機がけしてくれるのか?」は気になるところでしょう。
そこでチェックしておきたいのが、室内のクリーニングカバー率という数値。部屋の露出している床面積を「100」として、どれだけもれなく掃除できるか? をパーセントで表すもので、昨今の高価格帯モデルであれば、各メーカーともに99%以上は叩き出してくれます。
そんななかで、カバー率100%というとんでもない数字を打ち出してきたのが、エコバックスのハイエンドモデル「DEEBOT T30 PRO OMNI」です。
えっ……100%って、そんなデカいこと言って本当に大丈夫!?
クリーニングカバー率100%をうたう「DEEBOT T30 PRO OMNI」(エコバックス)
“クリーニングカバー率100%”は圧倒的に気になるところですが、その前に本モデルの全自動クリーニングステーションについて確認しておきましょう。
まずポイントとしてあげたいのが、サイズのコンパクトさ。昨今は各社ともにステーションの小型化が進んでいますが、それにしても、見た瞬間に「こんなに小さいの?」と感じてしまうレベル。
部屋の隅に置いても圧迫感の少ないコンパクトさ。サイズはロボット掃除機が35.3(幅)×35.1(奥行)×10.4(高さ)cmで、ステーションが40.9(幅)×49(奥行)×48(高さ)cm
特に全高は、前モデル「DEEBOT T20 OMNI」と比べ、10cm近くも低くなっており、部屋に配置したときの圧迫感がグッと減った印象です。全体の体積は30%減と驚くほどにコンパクト化しています。
加えて、上部前面の浄水タンクが透明化していることで、よりスッキリとして見えるほか、水の残量がひと目でわかるというメリットもプラスされました。
水の残量が目視できる浄水タンク。見えない裏側は汚水タンクです
ちなみに、ステーションの機能は、
・ゴミの自動回収(最大90日分)
・モップの温水洗浄&熱風乾燥
・洗剤の自動投入
と、小型ながらフルスペック。
特に、モップの洗浄は70度の高温洗浄で、モップに付着した汚れをしっかりと落として、雑菌の繁殖を防ぎます。
もうひとつ、個人的にいいなと感じたのが、ステーション内のベースプレートが簡単に取り外して洗えるというところ。汚水タンクへ流しきれなかった汚れがこびりついて残る部分なので、衛生的にも水洗いできると気持ちいいです。
ベースプレートは地味に汚れが溜まるので、簡単に取り外して洗えるのは意外と大きなメリット
さて、肝心のクリーニングカバー率100%という部分ですが、これはいくつかの要素が組み合わさっているものと思われます。
たとえば、吸引清掃のパワーですが、これが弱いと、そもそもゴミの吸い残しが発生しやすくなり、部屋の全域をくまなく掃除するためにむだな時間がかかってしまいます。そんななか、「DEEBOT T30 PRO OMNI」の11,000Paという吸引力は、市販のロボット掃除機としては現時点で間違いなく最強クラス。他社のハイエンドが大体8,000Pa台なので、数値的には飛び抜けています。
カーペットを認識すると、11,000Paの吸引力をフルに発揮して毛足の奥のゴミまでしっかり吸引。掃除後のサッパリ感は半端ないです
加えて、清掃ブラシにからまりがちな毛髪やペットの毛を内部のクシ構造で掻き取る機能「Zero Tangleテクノロジー」も、高効率な掃除に必要な要素のひとつ。これはメンテナンスの手間を減らすだけでなく、毛がからまることによるブラシの回転不良トラブルを未然に防ぐことで、掃除効率を落とさないという効果があります。
試しに我が家の猫の抜け毛をモサッとまとめて吸わせてみましたが、清掃後のブラシには毛の引っかかりがほぼゼロ。毛がからまりがちなブラシ軸もきれいなままで、これには驚きました。
試しに、猫の抜け毛を大量に吸わせてみたところ……
ブラシは回転軸を含めて毛がらみなし! 底部のクシ歯構造で、しっかり掻き取られたようです
もうひとつ大きなポイントが、水拭き清掃を行うモップが本体から大きく伸びる「TruEdgeアダプティブエッジモップ」でしょう。
これは、センサー類で家具や壁の壁面を感知すると、モップをグイッと伸ばしつつ接近する機能で、なんと隅からモップまでの距離を1mmまで近づけられるとか。これにより、部屋の四隅まで拭き残さない清掃が可能になりました。従来モデルだと、どうしても「四角い部屋を丸く掃く」的なやり残し感があったんですが、これなら問題はなさそう。
また、本体が「床の汚れがひどい」と判断した場合は、「MagiCleanモード」を起動し、モップがけをやり直すという徹底ぶり。実際に同じ場所を改めてモップがけしている場面を目撃すると、頼りがいがあるな〜と感心しました。
モップの回転軸が外側に向かって伸びる「TruEdgeアダプティブエッジモップ」。部屋の隅や壁際まで確実な水拭きが可能に
伸びたモップがこんな壁や家具の際ギリギリまで届きます!
こういったギミック的な部分もかなりスゴいのですが、実は「DEEBOT T30 PRO OMNI」を試用していたなかで最もインパクトがあったのが、障害物を検知するセンサーシステム「TrueDetect 3D 3.0」の優秀さと、それを生かして狭い場所にもガンガンと突っ込む、攻め気の強いAIシステムです。
本モデルが実際に掃除しているのを眺めていると、「えっ、そこ行く!?」というような家具下の狭いすき間にも、積極的に入り込んでいく様子が見られました。正直、他社のロボット掃除機よりもかなり攻め姿勢だな、という感じ。
それでいて、動けない場所にハマることもほぼなかったので、センサーの認識能力と、その正確性はかなり高いということになるでしょう
たとえば、これぐらいの家具下のすき間なら……
グイグイと身体をねじ込んで掃除してくれます。攻めの姿勢が強い!
つまり、「清掃能力の高さ」+「高精細なセンサー」+「AIによる積極的な清掃プラン」の組み合わせが、カバー率100%を生むということなのかも。
もちろん今回の試用で「スキなく正確に100%の清掃ができている」とは断言できませんが、視認した限り、「ほぼ100%と言っても間違いではないのでは?」ぐらいは言えそうです。実際、専用アプリでマップ上の清掃ルートを見ても、床の露出面はほぼ網羅できているな、という印象でした。
マップ画面中の白線が掃除中の移動ルート。家具のあるところ以外はみっちりとすき間なく埋めているな、という印象です。100%はハッタリではなさそう
とはいえ、気になった部分もないわけではありません。
個人的に少し疑問を感じたのが、起動初回のマッピングです。設置して最初に電源を入れると、レーザーセンサーによる室内マップを作成するべく動き回るのですが、微妙にマップを作りきらないままホームに戻ってきたり、再度のマッピングでも1つの部屋を2つに分割してしまったりなど、やや不明な動きがありました。
我が家は荷物が多いこともあって、少しマッピング難度が高かったのかもしれません……。ただ、何度か掃除をしているうちに、マップに修正が加えられて正確性が上がったので、さほど大きな問題ではなさそうです。
ただ、トータルで見ると、とにかく清掃能力の高さは抜群です。
毛足の長いカーペットでも、ホコリやペットの毛などを吸い残すことはなく、水拭きに関しても、“伸びるモップ”によって本当に壁ギリギリまでしっかりと拭けていました。ここまで掃除のやり残しがないのは、本当に優秀です。
最近は10万円前後のミドルクラス機でもスペック的に不満はなくなってきましたが、本モデルの「徹底的な掃除力」はさすがハイエンド機といったところ。隅までしっかり掃除を任せたいなら、「DEEBOT T30 PRO OMNI」を選ぶ価値はあると思います。
個人的に気に入ったのが、本体バンパーを足で軽く押してやると掃除が始まる「フットタッチコントロール」機能。気軽に起動できて、掃除へのハードルがめちゃ下がります
ちなみに、「DEEBOT T30」シリーズには、「PRO」と付いていない「DEEBOT T30 OMNI」というブラックカラーモデルもラインアップされています。こちらはオンライン直販モデルで、スマートスピーカーなどを経由せずに声で指示ができる「YIKO音声アシスタント」と、汚れた場所をモップがけし直す「MagiCleanモード」の2つが非搭載。それ以外の機能はまったく同じの標準モデルではありますが、自宅のインテリアとの相性としてブラックのほうがよさそうな人は、こちらも選択肢としては十分にありかも。
価格.com上の価格(2024年8月26日時点)では、ハイエンド機「DEEBOT T30 PRO OMNI」より1万円前後安いので、そのあたりも判断材料になりそうです。
機能がほんの少し減った標準モデル「DEEBOT T30 OMNI」