2023年以降、吸引掃除と水拭き掃除が同時に行えるコードレススティック掃除機が複数メーカーから登場し、話題になっています。そんななかダイソンは2023年、コードレススティック掃除機に水拭き専用ヘッドを付属した「Dyson V12s Detect Slim Submarine」と「Dyson V12s Origin Submarine」を発売しましたが、さらに2024年9月、ゴミ除去と水拭きを同時に行うコードレス掃除機「Dyson WashG1」を同社公式サイトにてリリース。同年10月からは家電量販店でも販売を開始しました。
ゴミの除去と水拭きが同時にできるコードレススティック掃除機「Dyson WashG1」がついに日本上陸!
今回は、その「Dyson WashG1」を実際に試用し、気になる掃除性能はもちろん、操作性やお手入れのしやすさなどを徹底検証します。
まず、「Dyson WashG1」の特徴を、同社が2023年に発売したモデル「Dyson V12s Detect Slim Submarine」(以下「Submarine」)と比較しながら解説しましょう。
「Dyson WashG1」の本体サイズは300(幅)×225(奥行)×1140(高さ)mmで、本体重量は4.9kg(水の質量は含まない)。運転時間の目安は最長35分、掃除可能面積は290uが目安です。充電スタンドの実測サイズは約300(幅)×238(奥行)×230(高さ)mm
「Dyson V12s Detect Slim Submarine」は、コードレススティック掃除機「Dyson V12 Detect Slim」に水拭き掃除専用ツール「Submarineウェットローラーヘッド」を付属したモデル。「Submarineウェットローラーヘッド」装着時はモーター吸引は行わず、毎分約900回のローラー回転により汚れを取り除きます
先述したとおり、「Submarine」の特徴は、ヘッドの交換により通常のゴミ吸引掃除と水拭き掃除の2通りの掃除ができること。それに対し、「Dyson WashG1」は、水拭き掃除とゴミの除去を同時に行えるのが特徴です。この点は、ハイアールやアクアの“水拭きできるコードレス掃除機”と同じタイプだと考えて問題ないでしょう。
また、「Submarine」および他社の同タイプのモデルにはない、「Dyson WashG1」のもうひとつの特徴は、ローラー型モップの「ウェットローラー」が2基搭載されていること。パワフルで効率のよい水拭き掃除が期待できます。
ヘッド部には逆回転する2つの「ウェットローラー」が装備されており、1ストロークで2回の水拭きを実現。また、26個の給水ポンプが搭載されており、「ウェットローラー」全体に均等に注水されます
さらに本機は、「Submarine」には非搭載の4段階の水量調節機能を装備。そのほか、掃除終了後にボタン1つで「ウェットローラー」を洗浄できるセルフクリーニング機能も「Submarine」にはない新機能です。
ではいよいよ、「Dyson WashG1」の性能・使い勝手をチェックしていきましょう。
チェックする項目は以下のとおり。
【1】掃除性能
【2】操作性
【3】使い勝手・静音性
【4】メンテナンス性
【5】設置性
【6】ランニングコスト
先述のとおり、本機には吸水性の高いマイクロファイバー素材を採用した「ウェットローラー」を2本搭載。水をたっぷりと含んだマイクロファイバーがホコリや髪の毛などのゴミと、床面にこぼれた液体や皮脂汚れなどをまとめてかき取ります。
「ウェットローラー」には1㎠あたり64,800本のマイクロファイバーが高密度に織り込まれており、高い吸水性を実現。たっぷりの水で床面を掃除します
ちなみに、2本の「ウェットローラー」はそれぞれ毎分250回転。ローラーに付着した固形ゴミは併設されたブラシバーでかき取られ、ダストトレイに送り込まれます。いっぽう「ウェットローラー」に吸い取られた液体汚れはアルミ製プレートでかき取られ、汚水タンクに送られます。そのため、「ウェットローラー」が常にきれいな状態で掃除を続けられるわけです。
「ウェットローラー」に付いたゴミはブラシバー(写真の青と赤のツイスト状ブラシ)が、汚水はプレート(写真の黒いパーツ)がかき取った後、きれいな水をローラーに供給。汚れを床に広げることなく、拭き掃除ができます
「ウェットローラー」に供給する水量は4段階で調節可能。ゴミ除去と水拭きを同時に行うときは水量を少なめに、頑固なこびりつき汚れを取り除きたいときは水量を多めにするなど、状況に応じて最適な量が選べます。
ハンドル部に搭載された「モード選択ボタン」を押すことで、水量をレベル1〜3の3段階で調整可能。さらに、水色の「最大ボタン」を押している間だけ、水量をMAXで給水できます
今回は、そんな本モデルの掃除性能をチェックするために、フローリングの床にペット用ドライフードをまいて固形ゴミの除去力を検証。加えて、コーヒーの渇き染み、クレヨン(オイルパステル)の汚れ、台所の床面を想定した油汚れも付けて、水拭き性能をチェックしました。
手前からコーヒー、油、クレヨン(3色)、ドライフード。油は、ラー油にスパイスを混ぜた“疑似油&コゲ”で検証します
ここでは基本「水量最大」で掃除。結果は……
コーヒーの半乾き汚れ:3往復
油の汚れ:3往復
クレヨン:19往復
ドライフード:1往復
ですっかりきれいになりました。
ちなみに、「見た目は取れているように見えて床面にうっすら残っているのではないか」という疑念から床を指で触って確認しましたが、ぬるつきやベタつきは残っていませんでした。
動画からもわかるように、クレヨンの汚れは手強くて、なぜか左右に描かれたクレヨンは5〜6往復で落ちましたが、真ん中の黄色のクレヨンは19往復ほどしてようやく汚れが落ちました。クレヨンの原材料はオイルやワックスなので水で落ちにくいのは当然なんですが、水量を減らしてみたら汚れが落ちやすくなりました。とはいえ時間がかかるので、床にしっかりと落書きされてしまったクレヨン汚れは、中性洗剤などを使って雑巾がけしたほうが手っ取り早く掃除できそうです。
最後に、ペット用ドライフード。掃除する際に「ウェットローラー」がドライフードの上に乗り上げる「ゴツゴツ」という感触があって不安でしたが、これは1ストロークですべて除去できました。
まとめると、本モデルはホコリなどの小さいゴミやコーヒー染み、油汚れに対しては抜群の除去性能を発揮。掃除した後はベタつきやざらつきもなく、サラッと心地いいフローリング床を実現します。この検証の後、自宅のキッチンの床を掃除したとき、料理中の油がはねて固まった頑固な汚れも数ストロークでしっかり取れ、「おお〜っ」と思わず声が出ました。キッチンの床にはいつくばって雑巾で汚れを落とす手間を考えたら、本モデルを数ストローク動かし続けるくらいのことは苦にはなりません。
次に、壁際を掃除する際にヘッドがどこまで近づけるかもチェック。
壁に向かって縦方向に掃除したときは、壁から約3〜3.5cmの距離まで水拭きが到達。いっぽう、壁に沿ってヘッドを動かしたときは、左右で到達できる距離が異なり、ヘッド右側では壁から0.5〜1cmの距離まで、左側では約2.5〜3cmの距離まで掃除できました。
ヘッドを壁に向けて走行させた跡。ヘッドカバーの前面とローラーの設置面の間のすき間約3cm分だけ水拭きできないスペースができます
ヘッドを壁と並行させたとき。左右で「ウェットローラー」の到達位置が異なります
この原因は、ヘッドの左側に「ウェットローラー」の駆動ユニットが搭載されており、ローラーが左端までカバーしていないからです。なるべく壁際まで掃除したいならヘッドの右側を使うように工夫するか、その場所だけ雑巾がけする必要があります。
本モデルは、重量が4.9kgで、給水タンクに最大水量1Lをセットすると、計5.9kgとなり、コードレス掃除機としてはかなり重いタイプに分類されます。ただ、掃除する際は、ローラーの回転が走行をアシストしてくれることもあり、ヘッドの押し引きは意外にスムーズ。左右への方向転換も比較的軽い力で行えます。ヘッドを素早く前後左右に動かすのは難しいですが、そもそも床の汚れをしっかり落とすには回転するローラーをゆっくりと動かすほうが効率的なので、「ヘッドを素早く動かせない」ことはデメリットとは言えません。
本体重量4.9kgとは思えないほど、掃除中の動きはスムーズ。斜め右や左に動かすのも予想外にラクでした
2本の「ウェットローラー」を並べることで汚れ除去の効率が上がっているいっぽう、狭いスペースの掃除は苦手。ヘッドの幅が大きく、家具のすき間など、入り込めない場所は多いかもしれません。
ヘッドの横幅サイズは30cm。横にも縦にも大きいため、狭い場所の掃除は不向きです。また、ヘッドを横向きにして動かすこともできません
ソファやベッドといった家具の下を掃除する際、ハンドル部はほぼ床と平行な角度まで倒せます。ただ、前面に水タンクが付いているため、侵入できる高さは20cm程度。家具の種類によっては、奥まで拭き掃除できそうです。
写真のソファ下のすき間は約15cm。水タンクが引っ掛かって、奥までは入れられませんでした
ちなみに、「掃除中は本体の重さは気にならない」と先述しましたが、唯一、掃除を始める際に本体を充電スタンドから持ち上げるときや、掃除後、充電スタンドに本体を戻すときにはその重さが気になりました。筆者は片手でぎりぎり持ち上げられました。
本モデルは、使用前にまず給水を行います。そのステップは、
・本体からタンクユニットを外す
・タンクユニットから給水タンクを外す
・給水タンクのフタを外して水を入れる
・給水タンクのフタを閉める
・給水タンクをタンクユニットにセットする
・タンクユニットを本体にセットする
と少々手間がかかります。
本体からタンクユニットを取り外したところ。これが給水タンク(上)と汚水タンク(下)に分離します
もうひとつ気になったのは、タンクユニットを本体にセットするときのハマり具合。カチッとハマる感触が弱く、しっかりとロックされているのかが不安になります。もしかしたら個体差かもしれませんが……。
水拭き掃除後の床面がどれくらいで乾くのかもチェックしました。水量レベル1〜2では、5分ほどで床が乾きました。水量レベルMAXの状態でも10〜15分程度で乾き、「床がビチョビチョのままで気になる」という印象は持ちませんでした。また、他社製品を以前試した際、掃除後に本体を持ち上げたときに床に水がこぼれるのが気になったのですが、本モデルではそういう問題は起きませんでした。
静音性もチェック。騒音計で運転音を計測したところ、約69〜72dB(運転停止状態では約33〜35dB)という結果に。一般的なコードレス掃除機とほぼ同等か、ややうるさいと感じる運転音で、特に風切り音のような高音部が少し気になりました。
吸引と水拭きを同時に行うコードレス掃除機は、2種類の掃除を一度に行えて効率的ではありますが、意外ととまどうのが収集した汚水の捨て方。他モデルだと、汚れが混ざった水と固形ゴミが汚水タンクにまとめて溜まっていくため、洗面台のシンクに捨てると排水溝が詰まる原因になりかねません。そうなると、ゴミ受けや水切りカゴのあるキッチンのシンクに捨てるしかないですが、汚水をキッチンのシンクに捨てるのは抵抗感がある人もいるでしょう。
その点、「Dyson WashG1」は、「ウェットローラー」を搭載したヘッド内部に、500ミクロンのメッシュフィルターを装備。フィルターで固形物を取り除いた汚水のみが汚水タンクに汲み上がるため、回収した汚水に固形物は混じりません。実際、掃除後の汚水タンクをチェックしても固形物は見当たらず、汚水を捨てた後も汚水タンクの底に泥状のゴミが残っているようなこともありませんでした。
掃除後のダストトレイをチェックしてみると、フィルターの上に固形ゴミが集められていました。ちなみに、ダストトレイの脱着はヘッドの横から引き出すだけと簡単です
汚水タンクのフタは、給水タンクのフタと同様、回転式でしっかりと閉まるため、持ち運び中に水がこぼれる心配はなし。固形ゴミも、ダストトレイから直接ゴミ箱に捨てられるので簡単です。
汚水タンクも回転式のフタを開けて排水。汚水に触れることなく、簡単・清潔に捨てられます
ただ、ダストトレイは、ご覧のとおり容量がそれほどなく、大量の固形ゴミを収容するのは難しそうです。また、菓子やペット用ドライフード、水に溶けるタイプのペット用トイレ砂などは、ダストトレイに長く放置しておくと、汚水に溶け出して細かい粒が汚水に混じる心配も。床上のゴミが多い場合は、まず通常の掃除機でゴミを取り除いてから本モデルを使うほうが安心でしょう。いっぽう、床上にゴミがそれほど落ちていないなら、本モデルだけでも事足りそう。
水拭き掃除ができる掃除機でもうひとつ気になるのは、モップのお手入れ。本モデルは、「ウェットローラー」のセルフクリーニング機能を搭載しており、充電スタンドに本体を戻してから自動洗浄のスタートボタンを押すと、約140秒間、きれいな水で「ウェットローラー」を自動洗浄します。また、セルフクリーニング中は、「ウェットローラー」だけでなく、汚水が通るチューブやダストトレイといった本体内の主要部分も洗浄してくれます。
スタートボタンを押すと、ハンドル部の液晶画面にて、ダストトレイのゴミと汚水タンクの水を捨て、給水タンクに水を補充するように指示が表示されます。ゴミ捨てと排水・給水を終えてタンクとトレイをセットすると、セルフクリーニングがスタート
ただ、セルフクリーニング機能があるとはいえ、水で洗浄しているだけなので、「ウェットローラー」のマイクロファイバーに染み込んだニオイの元などを完全に洗浄できるわけではなく、長く使い続ければいずれ雑菌臭が発生するでしょう。メーカーは掃除3回につき1回の「ウェットローラー」の手洗いを推奨しています。
「ウェットローラー」の洗浄は、シンクなどにぬるま湯を張って、台所洗剤や住居用洗剤で洗うのがおすすめ。バケツで洗う場合は、約30cmの「ウェットローラー」が入るものを用意しましょう
洗浄後の「ウェットローラー」はやさしく絞って水気を取り除いた後、乾燥させます。取扱説明書には「完全に乾燥する」ように書かれていますが、「ウェットローラー」は絞りにくくて水気をそれほど除去できず、さらにそれを自然乾燥させたところ、完全に乾くまで24時間以上かかりました……。
また、本モデルのヘッド内には、「ウェットローラー」とともにブラシバーが付いていますが、掃除後はここにもホコリや髪の毛、ペットの毛などがかなりからんでいます。「ウェットローラー」を洗浄するついでにブラシバーの毛がらみ除去もやっておいたほうがいいでしょう。
「ウェットローラー」の内側に搭載されたツイスト状のブラシバー。ペットを飼っている家では、ここにかなり毛がらみするはずです
本モデルの充電スタンドはコンパクト。底面は使用後の「ウェットローラー」で床が濡れないようにトレイ状で、その上に本体を充電用端子が付いているだけと、威圧感はありません。ネット上のクチコミでは、「本体を充電スタンドに置いたときに安定しない」との意見もありましたが、筆者は不安定さをそれほど感じませんでした。
充電スタンドから本体を外したところ。高さがないので、スタンドだけだと威圧感は少なめ
ただし、先述したとおり、本体が結構重いので充電スタンドに着脱する際にややストレスを感じます。また、本体を充電スタンドに戻すとき、充電用端子に本体を差し込むのがなかなかスムーズにできないのが残念でした。しばらく使っていれば慣れるのかもしれませんが、ここは初めてでも簡単にセットできる工夫がほしかったです。
本体側の充電用端子がスタンドの端子に差し込む際に見えないため、セットするのに最初はかなりてこずりました
「Dyson WashG1」の清掃性能の“キモ”である「ウェットローラー」は、マイクロファイバーなので長く使い続けていれば劣化は避けられません。取扱説明書によると、「ウェットローラー」の寿命は約25時間(1500分)とのこと。週に2回、1回30分掃除するとして約25週(約半年)で交換。毎日15分間掃除すると、約14週(3か月強)で交換することになります。交換用「ウェットローラー」は、ダイソン公式ストア価格が2本1セットで3,300円(税込)。ちなみに、交換時期になると、本体液晶画面にアラートが表示され、交換品注文のためのQRコードも合わせて表示されます。
「Dyson WashG1」は、パワフルな水拭き清掃が4段階で水量調整できるため、水拭きとゴミ除去を同時に行ったり、頑固な床の汚れを集中的に水拭き掃除したりと、幅広い清掃に対応できます。また、固形ゴミと汚水を分離して回収できるため、掃除後のゴミ捨てと排水がストレスなくできるのも大きなメリットです。
メンテナンス面では、セルフクリーニング機能が付いていたり、汚水タンクの洗浄が簡単だったりと本当に省手間設計。床の拭き掃除にありがちな面倒ごとをことごとく解決しています。過度な負担なく、床の清潔さをキープしたい人や、フローリング主体の家で暮らしている人におすすめ。また、小さな子どもがいる家庭や犬や猫などのペットと暮らしている家庭でも、毎日の生活の快適さを1ランクも2ランクも上げてくれるでしょう。
個人的には、床をどこまで掃除できているかわかりにくいロボット掃除機と異なり、汚れが多い場所を自分の気の済むまで掃除できる本モデルは、かなり魅力的に感じました。
ただし、ダストトレイが薄型なこともあり、たとえば床にまるごとこぼしたラーメンを本機ですべて回収して床の洗浄まで任せるのは難しそう。ゴミがそれなりに多く出る家だと、これさえあれば通常の掃除機は不要かというと疑問が残ります。やはり、ゴミ吸引用の掃除機は1台キープしたうえで、「Dyson WashG1」を導入するのがよいでしょう。
いっぽう、ゴミの全除去と水拭き掃除の両方に1台で対応しているモデルがどうしてもいいという人には、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」や「Dyson V12s Origin Submarine」がおすすめです。
ちなみに、水洗いした「ウェットローラー」がなかなか乾かない問題ですが、毎日水拭き掃除したい人は、解決策として予備の「ウェットローラー」を用意しておきましょう。「Dyson WashG1」の直販モデルには、予備の「ウェットローラー」2本が同梱されています。