ロボット掃除機の世界的メーカーとして日本でも認知度の高いロボロックから、強力な水拭き機能やブラシの自動洗浄・乾燥機能を備えたスティック型水拭き掃除機「F25 RT」が発売されました。
ロボット掃除機の人気メーカー、ロボロックからコードレススティック水拭き掃除機の新モデルが日本上陸!
同社は、2023年7月にもスティック型水拭き掃除機「Dyad Pro」を発売しており、「F25 RT」は約2年ぶりの新モデル。本モデルでは、従来モデルに搭載されていた、床の汚れ具合を検知して吸引力・水量を自動調整するセンサー機能や、LEDパネル、スマホアプリとの連携機能が省略されているいっぽうで、吸引力がワンランクアップしているほか、ローラーブラシの毛がらみ防止機能を備えるなど、使い勝手も向上しています。価格が約4万円とお手ごろになったのも見逃せないポイントです。
今回は、そんな「F25 RT」の掃除性能に加え、取り回しのしやすさ、メンテナンスのしやすさなどをじっくりと検証します。
ロボロック「F25 RT」は、液体ゴミと固形ゴミを一度に掃除できる“乾湿両用”のコードレススティック掃除機。ロボロックのグローバルサイトを見ると、“乾湿両用掃除機”カテゴリには「Roborock F25」シリーズとして5モデルがラインアップされており、「F25 RT」はそのエントリーモデルという位置付けです。
ただ、エントリーモデルと言っても基本スペックは文句なし。吸引力は20,000Paで、「Dyad Pro」の17,000Paより約18%パワーアップしています。ローラーブラシも1分間に450回転し、床面の皮脂汚れなどを強力に拭き掃除できます。
また、本機はローラーブラシにからまる毛などをすくい取るスクレイパーと、ローラーブラシの汚水をしぼり取るスクレイパーを搭載。掃除後のブラシの毛がらみや水拭き跡を残さず、快適な掃除を実現しているそうです。
さらに、掃除後にローラーブラシを自動洗浄・乾燥する際、90度の熱風乾燥システムを新採用。ローラーブラシの清潔さをより維持できるようになりました。
「F25 RT」の本体サイズは、262(幅)×221(奥行)×1,100(高さ)oで、本体重量は4.1kg(水の質量は含まない)。充電時間は、3.5時間で連続稼働時間の目安は最長40分です。乾燥機能付き充電スタンドのサイズは、330(幅)×316(奥行)×110(高さ)o
以下では、こうした「F25 RT」の特徴的な機能が実際の掃除にどう寄与するかや、そのほかの使い勝手についても検証します。
今回「F25 RT」でチェックする項目は以下のとおりです。
【1】掃除性能
【2】操作性
【3】給排水・メンテナンスのしやすさ
【4】静音性と設置性
「F25 RT」は、20,000Paの吸引力と毎分450回転するローラーブラシで、汚水も固形ゴミもまとめて吸引・除去できます。
ヘッド部には、パイル地のローラーブラシに清水を注水する水流口を32個装備しており、ローラー全体にきれいな水を供給。ローラーブラシには毛がらみ除去用のギザギザ形状のスクレイパーと、ローラーブラシが吸い込んだ汚水をしぼり取る平型スクレイパーを搭載。平型スクレイパーで汚水を除去してから清水を供給するため、ローラーブラシが常にきれいな状態で水拭きできます。
ヘッド前部に、床の汚れとゴミを除去するローラーブラシを1個搭載
ローラーブラシを取り外すと、毛がらみ除去用のスクレイパーである黄色いギザギザパーパーツが中央に見えます。そして、下部の半透明の平型ツールが汚水除去用スクレイパー
実際にフローリングの床を掃除してみると、ペットの毛や床のベタつき汚れは1回の走行でしっかりと除去できている印象。本体が約4kgと重いことに加え、清水タンクがヘッドの上にあるため、床面に圧力をかけながら拭き掃除できているようです。
また、掃除中は、室温約25度、湿度64%という環境でしたが、水拭き後、5分ほど経つと床面は乾いていて、スムーズに掃除を進められました。
ヘッドを片足で押さえながらハンドルを倒すと、掃除機のロックが解除され、掃除を開始できます
検証テストではまず、乾湿両用掃除機としての実力をチェック。フロアシート上にこぼした牛乳とシリアルを除去してみました。
牛乳とやわらかくなったシリアルをフロアシートにまいて、除去テストを実施
「F25 RT」の掃除モードは、「MAXモード」と「エコモード」の2種類。今回は「MAXモード」で検証しましたが、掃除を始めると、なんと1往復で牛乳もシリアルもほぼすべて吸引! 見た目では汚れが完璧に除去できていました。
1往復でこのとおり! 驚いたのは、ローラーブラシが届いてない場所のゴミも取り除けていたことで、吸引力の強さを実感しました。3往復掃除したあと、試しにフロアシートのニオイを嗅いでみましたが、牛乳臭さはほぼ感じられませんでした
続いて、同じくフロアシートにコーヒーの乾き染みと、台所の床に落ちた油汚れを想定した疑似汚れ、そしてクレヨン(オイルパステル)の汚れを付けて、水拭き性能を検証しました。
左から、クレヨンの落書き、油に小麦粉と醤油を混ぜて煮詰めた疑似油汚れ、コーヒー。コーヒーの染みはドライヤーで完全に乾かしてからテストしました。油汚れもほぼ乾いた状態にしています
ここでも同じく「MAXモード」で検証。コーヒーの乾き染みは「8往復」、油汚れは「3往復」できれいに。クレヨンも「20往復」でほぼ汚れが落ちました。
こびりつき汚れ除去のテストも「MAXモード」で実施
ちなみに、フローリングに直接コーヒーの乾き染みと油汚れ、クレヨンの落書きを付けての検証も行いましたが、フロアシートよりかなり汚れを落とすのに苦労しました……。これはローラーブラシの抜き取り能力というより、拭き取り時の水の量が足りていないせいだと思います。
次にチェックしたのは、壁際の掃除性能。壁際に重曹と綿ゴミをまき、それらをどの程度除去できるか、それに加えて壁際をどこまで水拭きできるかを見てみました。
壁際に重曹と化粧落とし用のコットンを細かく千切ったものをまき、吸引と水拭きを行いました
まず、重曹と綿ゴミに関しては、どちらもほぼ完璧に除去できていました。わずかに残ったのは、壁と床のすき間に入った重曹だけ。拭き掃除に関しても、壁際から1cm程度の近さまで届いています。壁際の掃除に関しては、ほぼ問題ないと言えるでしょう。
ヘッドの端とローラーブラシの端との間には1cm程度のすき間が。その分だけ壁際に水拭きできていない場所が残りました
「F25 RT」を使いはじめてまず驚いたのは、自走性能のパワフルさ。本機は重さが4.1kgあり、清水タンク容量も870mLあるため、タンクを満タンにすると総重量は約5kgになりますが、ローラーブラシの回転力が強いため、ヘッドを前進させるのにほぼ力は必要ありません。むしろ、前に出たヘッドを手元に戻すのに力が必要なほどなので、左右への首振りを素早く行うのは難しいですが、ゆっくり動かすと適度な“しなり”もあってスムーズに首振りできます。ただし、ヘッドの大きさが約26×22cmと大きいため、家具の狭いすき間などの掃除はできませんでした。
首振りは左右約70度まで可能。それなりの重みはあるものの、自分の曲げたい角度や方向にヘッドが滑らかに追随してくれる感覚は心地よいです
テーブルの脚周りなども、ピッタリ密着させながら掃除できます
ソファやベッドの下を掃除したい人にとって気になるのは、ハンドルをどこまで倒して掃除できるか。本機は本体とハンドル部を床にベタ置きした状態でも掃除でき、その場合に侵入できるすき間の高さは約12.5cmです。ハンドルの下にはベタ置きして掃除するための小型キャスターも付いています。
本体を水平に倒すと、高さは最大約12.5cmに。脚が短めなソファの下にも侵入できます
清水タンクをヘッドの上に設置しつつ、汚水タンクが水平になっても逆流しない構造を採用することで、本体を床にピッタリ付けた状態でも掃除ができます
ハンドル下に付けられた小型キャスター
コードレススティック掃除機としては大きめサイズながら、ベッド下の掃除もラクラクでした!
清水タンクの脱着は、取り外しボタンを押しながらタンクを持ち上げるだけと簡単。また、タンクの給水口のキャップはカチッと閉まるため、水が漏れる心配がなくて好印象です。ただ、給水口は小さめで、若干給水のしにくさは感じました。
清水タンクは、手前のハンドルに指を掛けながら取り外しボタンを押せば、片手で簡単に外せます
清水タンクの給水口が小さめで、水がこぼれやすいのがやや残念でした
いっぽう、汚水タンクの脱着も快適。タンクのハンドル部を持ちながら取り外しボタンを押すだけで、片手で簡単に外せます。ちなみに、本機は固形ゴミと液体ゴミ、汚水をまとめて回収するため、汚水タンクの中ではそれらが混じっている状態。汚水を捨てる際は、固形ゴミをこし取れる水切りカゴのあるシンクに捨てる必要があります。
汚水タンクのカバーを外して汚水を捨てます。掃除後は汚水タンク内のニオイ発生を防ぐために、早めの排水とタンク洗浄がおすすめです
汚水タンクのお手入れは、特に食べ物や飲み物など、ニオイが発生しやすいゴミを掃除したあとは忘れずに行いましょう。汚水タンク内部は凹凸の少ない形状で、掃除しやすかったです。
ローラーブラシのお手入れは、充電ドックに自動洗浄・乾燥機能が付いているため、ほぼ手間なし。乾燥運転終了後にローラーブラシを触ってみましたが、完全に乾いていました。ギザギザ形状のスクレイパーがあるおかげで、ローラーブラシにも毛がらみは見られませんでした。ローラーブラシの自動洗浄時に、汚水タンクまでの経路も洗浄してくれるのも助かります。
ちなみに、ローラーブラシの毛がらみが本当にないのか検証するため、長めの綿糸を床にまいての吸引テストも行いましたが、ローラーにはまったく毛がからみませんでした。いっぽう、ギザギザ形状のスクレイパーにはわずかに綿糸が残る結果に。こうした毛がらみがスクレイパーに残るとそこにゴミが溜まりやすいので、スクレイパーのゴミの点検・除去も定期的に行うのがよさそうです。
フローリングの綿糸を掃除した際は、1ストロークですべての綿糸を吸引。特にローラーブラシが届かない外側の綿糸も吸引していたのが印象的で、本機の吸引力の高さを改めて見せつけていました
ギザギザ型のスクレイパーに綿糸が残っていました。また、その前に検証した油汚れや疑似汚れも一部残存
汚水タンク上部のフィルターは水洗い可能。洗ったフィルターは24時間以上乾かして完全に乾いてから装着します
本機には、汚水タンクや本体内の汚水パイプ、ローラーブラシなどの汚れを取るのに使う「お手入れツール」が同梱されています
本機の運転音をデジタル騒音計で計測したところ、「MAXモード」で67dB前後、「エコモード」で63.5dB前後(運転停止状態で36dB前後)という結果になりました。体感では「MAXモード」でややうるさいと感じる程度。家族がテレビを見ているなかでの掃除機がけは厳しそうです。
また、掃除機の自動洗浄時の運転音は最大約64dB(強力洗浄モード時)。乾燥中の運転音は48dB前後で、うるささは少し軽減されます。
設置性についてですが、「F25 RT」の乾燥機能付き充電ドックの設置面積はB4サイズの幅をやや短く、奥行きを長くした程度でそこそこコンパクト。ただ、ドックに厚みがあるせいで、存在感はあります。
また、本体に重量があり、ドックから持ち上げるのは少し大変ですが、ドックへの着脱はスムーズにできます。本体をドックに置くと、高さ約117cmと一段と存在感が増します。
ドックの大きさは幅33×奥行31.6cm。熱風乾燥機構を内蔵するため、11cmとそれなりに高さがあります。検証テスト中はリビングの窓際に本機を置いていましたが、生活していて“目につく存在”ではありました
ロボロック「F25 RT」は、固形ゴミの除去と水拭き掃除をパワフルに行えるのが魅力。特にゴミ除去力は強力で、床上に落ちた大量のシリアルと牛乳も一瞬で取り除けました。
いっぽうで、水拭きに関しては、ジュースの飲みこぼしやベタつき汚れなど日常的な汚れを取る分には文句なしの性能を見せてくれますが、頑固なこびりつき汚れを素早く落とす、とまではいきませんでした。水拭き水量を増やす機能が付いていれば、結果は変わったかもしれません。
壁際掃除に関しては、吸引も水拭きも文句なし。特にヘッドの左右からの吸引は強力で、壁際ギリギリの重曹除去は吸引専用の掃除機以上の性能を発揮。水拭きに関しても壁際1cmまでカバーできていました。
操作性に関しては、何より本体を床上まで倒しても掃除を続けられるのが便利。高さ12.5cm以下のすき間なら入り込めますし、ソファやベッドの下も奥まで拭き掃除できるのは助かります。
メンテナンス面では、ローラーブラシの自動洗浄・温風乾燥機能が付いているのが魅力。スクレイパーでブラシの毛がらみを抑える機能も、汚水経路の自動洗浄機能も、お手入れの手間軽減に大きく寄与していると感じました。
ちなみに、「F25 RT」を使っていて気になった点もいくつかあります。まずは「音声案内」。掃除開始時やローラーブラシの自動洗浄中に稼働モードの情報を音声で知らせるのですが、運転音がうるさくて内容がほとんど聞き取れません。本機は音声案内の音量を2段階調整できますが、「音量大」にして、さらにハンドル部のスピーカーに耳を近づけてやっと内容が聞き取れる程度でした。
掃除モードのバリエーションの少なさも気になるところ。掃除モードが「MAX」と「エコ」だけなのは、エントリーモデルならやむなし。ただ、前述したとおり、水拭きの水量調整ができない点は、しつこい汚れを掃除したい人には不満に感じるポイントでしょう。
以上の結果を踏まえ、本機がどんなユーザーに適しているかを考えてみました。
まず、パワフルかつシンプルな乾湿両用コードレススティック掃除機をお手ごろな価格で購入したい人にはおすすめできます。特に、比較的モノや家具が少ないリビングに住んでいる人には最適。特にペットがいて抜け毛掃除をひんぱんに行う家庭は、吸引掃除と水拭き掃除が同時にできるので、床掃除の手間が大幅に減ると思います。ただ、目についたゴミをサッと取り除く使い方をするには本機は大きく重すぎるため、ゴミ除去専用の掃除機は別で持っておいたほうがよいでしょう。
また、掃除機自体の清潔さが気になるけれど、そのためのお手入れは面倒、という人にも「F25 RT」は最適。ブラシの毛がらみが少ないのはペットのいる家庭では大きなメリットですし、ローラーブラシの自動洗浄・熱風乾燥でブラシの清潔さは保てるのもうれしいポイントです。
ちなみに、ロボロックは「F25 RT」発売後に、スティック型水拭き掃除機とスティック型吸引掃除機をセットにした「F25 Combo」を発売しました。スティック型水拭き掃除機のほうは掃除モードが「MAX」「エコ」「オート」「液体吸引」の4種類に増え、自動乾燥時間も「5分(高速乾燥)」「30分(静音乾燥)」から選択可。音声案内機能に加え、LEDパネルも搭載し、連続稼働時間も60分と、筆者が「F25 RT」に感じた“物足りなさ”をほぼ解消しています。
スティック型吸引掃除機のほうも、吸引力は25,000Paで最大稼働時間65分。床上のゴミ除去のほか、付属ツールを使って布団や天井、車内など、家中の掃除に対応できます。広めの家に住み、吸引掃除も水拭きも、より幅広いシーンに柔軟に対応したい人におすすめのセットと言えるでしょう。
3種類のノズルが付属する吸引スティック掃除機と、「F25 RT」のような多機能水拭きスティック掃除機がセットになった「F25 Combo」