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実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト

踏んでも壊れず、フィット感もバツグン! アメリカ軍御用達のサングラス、ESS「クロスブレイド」

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耳や鼻といった人体の感覚器官の中でも、外界に無防備に露出している「目」は特殊な場所である。その繊細な器官を守るためのサングラスは、網膜に日焼けをもたらす紫外線を遮るフィルターの役割のみならず、角膜を傷つけるものから目を守るスクリーンの役目も果たさねばならない。活躍の機会は季節を問わないが、雪面からの照り返しがきつい冬山では非常に重要だ。悪天候時にはゴーグルの役目も期待したい。

カスタマイズでフィット感を高める仕様のタフすぎるサングラス

街中でも使用するサングラスを山道具として使う際の大きな問題は、破損しやすいことだ。岩の上に落としたり、踏みつぶしてしまったりと、なかなか長くは使えず、人によってはサングラスを消耗品ととらえているほどである。しかし山道具の中でも高価なものゆえ、破損しにくいに越したことはない。

今回取り上げるサングラスは、アメリカのメーカー「ESS」の「クロスブレイド」。アメリカのミリタリーに加え、警察や消防隊にも採用されるなど、タフであることを追求した同社が2017年秋に発売した新製品である。

さまざまなパーツを組み合わせられるクロスブレイドの標準的なセット「クロスブレイド 2LS」。黒いフレームに、クリアーとスモークグレイの2つのレンズがつき、ノーズピースやストラップ、ハードケースなどが含まれる

ESSのサングラスの特徴のひとつは、さまざまなパーツを組み合わせ、自分の顔の形状や好みに合わせてカスタムできること。クロスブレイドにはブラックとテレインタン(カーキ)という2色のフレームに加え、好みに合わせて7タイプから選べるレンズのカラー、高さが異なる2種類のノーズクリップが交換用パーツとして揃えられている(別売)。さらに、レンズ幅が左右ともに5mmほど狭く、女性や小顔の人に向くナロータイプもある。

これからクロスブレイドを特徴づける各部のパーツを説明していくが、各写真でレンズの色が異なるのはカラーバリエーションをわかりやすく伝えたいという撮影上の都合であり、特別に大きな意味があるわけではない。

今回は標準セットのクリアーとスモークグレイのほか、別売のハイデフイエローとハイデフコッパーのレンズもテストに加えた。いずれも紫外線カット率100%である

レンズの左右にある突起をフレームに差し込み、上部のクリップで固定するという簡単な仕組み。これだけの作業でレンズ交換が完了する。少し慣れれば、交換には10秒もかからない

先ほど、クロスブレイドは2017年秋の“新製品”と書いたが、元になるモデルは以前から販売されていた。その名は「クロスボウ」で、同社の定番かつ人気のモデルである。実は、クロスブレイドはクロスボウのディテールを変更したものなのだ。

では、どこが違うのか? 簡単に言えば、クロスブレイドはクロスボウの「アジア人用モデル」といえるデザイン。欧米人に比べて鼻が低く、平面的で顔の凹凸が少ない人にも合いやすい形状をしているのである。

僕も昨年まではクロスボウを使っていた。しかし、完全に満足していたとは言いがたい状況だったのだ。その理由は、まさに僕がアジア人的な平面的な顔つきだから。フレームで顔を挟み込むと、鼻がノーズクリップに触れてはいるものの、しっかりとかかっている感じがせず、完全にフィットしているという実感がもてない。それでもトラブルなく使うことはできたが、帽子でフレームが押されたり、動作の上下動が大きかったりするとずれてしまうこともあり、少々問題があると言わざるを得なかったのである。

これはESSに限らず、海外メーカーのサングラスを日本人がかけようとする時に多発する問題だ。人によってはノーズクリップが鼻から完全に浮いてしまってサングラスを顔面に固定することができず、購入を断念したこともあるだろう。

クロスブレイドのフレームを上から見た様子。フレームはクロスボウよりも細身で薄く、軽量化されているが、頭部を立体的に包み込むフォルムは同様だ。レンズ部分の湾曲も同様に大きいため、このままでは相変わらず僕の顔にはフィットしないはずだが……

フレームは耳にかける部分までストレートだが、頭部を挟み込むようにフィットするため、そう簡単には外れない

フレームの末端には小孔が設けられ、紛失防止のための付属ストラップを取り付けられる

フレームの末端には小孔が設けられ、紛失防止のための付属ストラップを取り付けられる

しかし、クロスブレイドが従来モデルのクロスボウと異なるのはここからだ。まずは、レンズ。クロスブレイドのレンズは頬にあたる部分(フレームの下部)の切れ込みが深く作られており、その分だけレンズを目に近付けられる。レンズが目に近付くということは、ノーズクリップも鼻に近付くということ。つまり、フィット感の向上に役立つのである。

左が従来のクロスボウのレンズで、右がクロスブレイドのレンズ。クロスブレイドのほうが切れ込みが深くなっていることがわかるだろう。その差は2mmほどだが、このわずかな違いがフィット感を大きく左右するのだ

さらに、ノーズクリップ自体の高さもハイ、ミドル、ローの3サイズからセレクトでき(別売)、鼻筋が低い人でもますますフィットしやすい。いちばん低いローは元より合うはずがないので、今回はスタンダードであるミドルに加え、ハイを用意。ミドルではうまく鼻にかからなかった僕でも、ハイならば調子がよさそうだ。

左がハイで、右がミドル。ハイのほうが4mm程度高くなり、より鼻にかかりやすくなる。このノーズクリップもフレームと同様に、簡単にレンズから脱着できる

上がハイで、下がミドルのノーズクリップを装着した状態。ちなみに、フレーム、レンズ、ノーズクリップなどの各種パーツはクロスボウと互換性があり、以前からクロスボウを使っていた人もいくつかのパーツを買いなおせば、費用をあまりかけずにフィット感の向上が期待できる

そしてとうとう、僕はノーズクリップも変更したクロスブレイドを実際にかけてみた。

なるほど! いかにも欧米人向けのデザインだったクロスボウと異なり、フィット感が劇的によくなっている。レンズの湾曲が顔に沿い、ゴーグル代わりに使えそうなほど、顔との隙間もなくなった。さすがアジア人の顔の形状を意識したデザインである。

悲しいほどに平面的な僕の顔にも十分にフィット。似合うかどうかはさておき、実用性にはまったく問題ない。僕が帽子の上に乗せているサングラスは、かけ具合の変化を確かめるために持参したこれまでのクロスボウである

4種類のレンズで視認性をテスト

さて、ここからは各カラーのレンズの比較だ。カメラのレンズを覆うようにサングラスを固定し、まるでフィルターのようにして撮影してみた。

まずは、紫外線カット率100%、可視光線透過率90%のクリアーレンズから。クリアーレンズはまぶしさを軽減させる効果は低いが、その代わりに自然そのものの色合いを楽しめる。真夏や雪上では目が疲れそうだが、ほかの季節にはよさそうだ。

レンズ越しに見える風景の色合いは肉眼で見るものとほとんど変化はなく、サングラスをかけている感覚は非常に少ない。一般的なメガネと同様だ

次に、スモークグレイのレンズ。クリアーレンズと比べるとスモークグレイのレンズから見える風景は、単に光が暗くなっただけといってよい。晴れている時は、かけていることを忘れそうだ。なお、可視光線透過率は15%。クリアーレンズに比べ、格段に可視光線をカットできる。

薄暗く見えるが、風景の色合いは損なわれていない。目を守りながらも、自然ならではの景色を楽しむのに適した色なのである

3番目のテストは、かなりハッキリした色のハイデフコッパーのレンズ。可視光透過率は32%だ。ハイデフコッパーのレンズ越しに見える風景の色合いは、かなり異質である。遠方の景色は判別しやすいものの、雪がない地面では土の色の濃淡がわかりにくく、濡れている場所がすぐには把握できない。無雪期の山には向かないだろうが、遠くまで開けた雪原では有効だ。

この系統のカラーにはコントラストを高める効果がある。特に青色を効果的にカットし、遠くのものが視認しやすくなる

最後に、ハイデフイエローのレンズを試す。深みがある黄色で、可視光透過率は85%。ハイデフイエローのレンズをかけると、当たり前だが風景が黄色くなる。これを写真で表現すると黄色すぎるようにも思えるのだが、実際に目に入ってくる風景の色合いは、ここまで違和感があるものではなく、思ったよりも使いやすい。曇天時に有効そうである。

この色も青い光を遮断する効果が高い。暗い場所や薄暗い時にもあまり見えにくくならず、視界の明るさをキープできる

アウトドア、特に山歩きに出かけることを考えると、これら4色の中でもっとも必要なレンズの色は、やはりスモークグレイだろう。まぶしさを極める晴れた雪山では大活躍するはずだ。ただし、欧米人に比べると瞳の色が黒っぽく、「目が強い」といわれる日本人には、クロスブレイドのスモークグレイは少し濃すぎるかもしれない。日差しが陰っている時には、周囲が暗く見えすぎるのだ。そう考えると、もう一段階ほど薄いグレーがあると、もっと便利そうである。アジア人に合わせたレンズの形状や高さがあるノーズクリップを作っているのだから、明るいライトグレーのレンズも作ってほしい。

また、天然の色合いをほぼそのまま楽しめるクリアーも有効だ。雪山ほどまぶしくない無雪期には、これで十分という人も多いと思われる。僕自身の目は比較的まぶしさに強いこともあり、メインにはこのクリアーを使い、極度にまぶしい時にだけスモークグレイにするだろう。

ハイデフコッパーとハイデフイエローは色が大きく変わってしまうため、自分が求める視認性の方向性に合わせてチョイスしたい。今回は持っていかなかったハイデフコッパーや調光レンズを含め、いくつか試着して自分の目に合うものを探すとよさそうだ。

このようなクロスブレイドには、偏光レンズも用意されている(別売)。これも手元にあると便利そうだ。海辺を歩いたり、カヤックなどで川下りを行うことも多い僕は、いずれ偏光レンズも手に入れたいと考えているが、それなりのお値段(21,800円/税別)がするのが悩みどころである。

また、クロスブレイドのレンズの長所のひとつは、レンズ内の視界の上下左右、どこにもほとんど歪みがないこと。これも評価できるポイントだ。長く使っていてもストレスがなく、疲れ方が違ってくる。

踏んでも壊れないタフさを実証

アメリカ軍御用達のESSのモデルだけあり、クロスブレイドのウリはタフであること。よほどのことがなければフレームは折れず、レンズも割れないと言われている。レンズにいたっては弾丸さえ通さないというバリスティックレンズであり、いわゆるミルスペックレベルなのである。だが、実際はどうなのか?

クロスブレイドを力いっぱい握ってみるとフレームの部分は大きく曲がるものの、レンズはいくらか歪む程度。人間の力ではまず壊れない

雪の上に落としたものを踏んでしまったという想定で、思いっきり体重をかけてみる。写真では撮影の関係上、雪上にサングラスを露出させているが、実際は深く雪の中にめり込んでしまったが、どこも壊れず、レンズに傷もない

雪よりも格段に硬い、汚れたコンクリートの上でも踏みつけてみた。こうするとさすがにフレームからレンズが外れ、レンズには傷がついてしまった。だが、それでもどこかが折れたり、割れたりするわけではない。この強靭さは驚異的である

クロスブレイドのレンズの外側には、アンチスクラッチレンズコートという加工が施されている。コンクリートの上で踏みつけるとブーツについていた土で傷ついてしまったが、それもわずかな部分のみ。フレームに損傷はなく、クロスブレイドのタフさを実感することができた。高価なものなのに破損することが多く、何度も買い直す人も多いサングラスというものの性質を考えれば、クロスブレイドは最終的にはリーズナブルな選択になるのではないだろうか。

クリアな視界を確保する曇りにくいレンズ

クロスブレイドに使われているレンズのもうひとつのウリは、フロウコートという加工によるアンチフォグ、つまり曇りにくさである。事実、今回のテストでも歩行中に曇ることはなかった。だが、それではどれだけの実力を持っているのかわからないので、別の機会に強制的に曇らせるテストを行なってみた。

電気ポットでお湯を沸かし、その蒸気をレンズで受け止めて曇り具合をテスト。比較のために某メーカーのサングラスも一緒に試してみた

写真では少々わかりにくいが、上のレンズだけが曇り、下のクロスブレイドはまったく曇らなかった。この差は思いのほか大きい

この結果には驚いた。確かにクロスブレイドのレンズは曇らないのだ。いや、正確に言えば少しは曇るのだが、すぐに白っぽさが取れてクリアになっていく。なかなか大したものだ。僕はほかのサングラスを冬に使う場合、いつも曇り止めのスプレーを利用しているが、クロスブレイドならば必要がない。

ゴーグルに変身させられるユニークな機構

ところで、前述のとおり、クロスブレイドはクロスボウと互換性があり、クロスボウ用に開発されたパーツを組み合わせることができる。その中でも雪山で使うことを考えた場合に便利なのは「クロスボウガスケット」だ。これはサングラスをゴーグルとしても使えるようになる別売品である。もともとクロスボウ用ということもあり、組み合わせた時にピッタリとハマる感じではないが、実用には問題がない。

上がこれまでに紹介してきたクロスブレイドで、下がそれに組み合わせられるクロスボウガスケット。やわらかな素材でできている

クロスブレイドのフレームを、クロスボウガスケット上部に引っかけて固定するだけで取り付けは完了。簡易的なゴーグルとはいえ、肌の上にぴったりと合って隙間がなくなり、ゴーグルとしても十分に機能する

クロスブレイド単体でもレンズと肌との隙間は少なく、雪が吹き込むことは少ないデザインだったが、クロスボウガスケットを取り付ければますます確実だ。しかし、これだけ顔に密着させると、いくらアンチフォグのレンズでも汗をかくと湿気がこもり、曇ってしまう。この問題を解消するために、クロスボウガスケットにはひとつの工夫が加えられている。

通常の状態。クロスボウガスケットとサングラスの間の隙間はごくわずかだ。汗ばむほどの行動をしない時や極度の悪天候でもなければ、このまま使えばよい

クロスボウガスケット上部をスライドさせると、隙間が広くなる。これで適切な換気ができるようになり、曇りが少なくなる

空気を遮断する効果が高いゴーグルは、やはり換気できるようになっていると使いやすい。このクロスボウガスケットがあれば、悪天候が見込まれる時に、サングラスのほかにゴーグルを持っていく手間はなくなる。それ以前に、山歩き以上にゴーグルを必要としているスキーやスノーボードの愛好家にはうれしい機能だろう。

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山行を終えて

これまでに多くのファンを獲得していたクロスボウを進化させたクロスブレイドは、ますます日本人に使いやすいものになった。今後、さらに人気は高まりそうである。要望があるとすれば、薄いグレーなどのレンズカラーの追加くらいだろうか。ミリタリーテイストで少々無骨なデザインは好き嫌いが分かれるかもしれないが、機能的には申し分ない。サングラス選びの際には一度試してみてほしい。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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