こんにちは、オグさんです。
今回紹介するのは本間ゴルフの「TW747」シリーズのアイアンです。TWはツアーワールド(Tour World)の意で、アスリートの使用を強く意識したクラブです。
TW747シリーズについてはドライバーを中心に以前お伝えしていますが、新たに「TW747 V」が追加になりましたので、3種類になったアイアンを改めて比べるのが本稿の趣旨です。
本間ゴルフのアイアンは、昔からプロアマ問わず評価されています。ターゲットに合わせたていねいなクラブ作りはもちろん、20年以上前からストロングロフト化や低重心モデルを市販するなど、伝統と挑戦が共存した製品開発が特徴のメーカーです。
そんな本間ゴルフは2019年1月、当時世界ランキング1位にいたジャスティン・ローズ選手との用具契約締結を発表。そしてそのローズ選手は本間のクラブを使って当月末の試合でいきなり優勝、世界に本間ゴルフを知らしめました。
正確なショットが武器のジャスティン・ローズ(イングランド)。リオ五輪の金メダリストでもある。本間ゴルフとの契約発表は世界中のゴルフ業界関係者を驚かせた。写真提供:本間ゴルフ
そんなローズは、本間ゴルフのモノ作りに感銘を受けたとかで「本間のクラブはまるで『Japanese sword(日本刀)』のようだ」と評価しています。
今回試打させてもらったツアーワールドシリーズのアイアンは、鍛造製法いわゆるフォージドモデルの「TW747 V」「TW747 Vx」とステンレス鋳造ヘッド「TW747 P」の3種類をラインアップ、ターゲットによって素材や製法を使い分けています。
TW747 V #5
TW747 V #7
TW747 V #9
小ぶりでトップブレードが薄めに設計されたシャープな形状。ブレード長も3種の中で最も短く、コントロール性を重視したモデルというのがわかります。
TW747 Vx #5
TW747 Vx #7
TW747 Vx #9
Vと同じくフォージドモデル。上級者が好むシャープなフォルムですね。Vとの主な相違点は、バックフェースの肉厚部分がややトゥ寄りになっていること、ブレードが少し長くなっていること。この形状から、やや直進性に振ったモデルと読み取れます。
TW747 P #5
TW747 P #7
TW747 P #9
シリーズ共通のシャープな形状ですが、ブレード長が最も長くポケットキャビティ構造を採用。重心を深く低くすることで打点のミスへの許容度と直進性を高めたモデルになっています。
この3モデルの特性は「ロフト設定」に強く表れています。下記の表をご覧ください。
Vのロフトは、3モデルの中で一番多く設定されています。ロフトの設定はヘッドの構造にもよりますが、多く設定されるほどボールが上がりやすくスピンがかかりやすくなります。スピンはボールをコントロールするのに重要な要素ですので、操作性を重視したアイアンほどロフトが多く設定されることが多いですね。
VxはVと比べて1〜3度ほどロフトが立っています。ロフトが立つということは飛距離が出るということ。Vxは操作性も加味しながら直進性と飛距離をバランスよく考えたモデルといえます。ロフトが少なくなった分、ウェッジとのロフト差が大きくなっているので、つながりを考えてもう1本番手を増やしています(#11)。
PはVとほぼ1番手ズレているぐらいロフトが少なく設定されています。それだけ飛距離性能に振ったモデルといえますね。
VxはVと比べて1〜3度ほどロフトが立っています。ロフトが立つということは飛距離が出るということ。Vxは操作性も加味しながら直進性と飛距離をバランスよく考えたモデルといえます。ロフトが少なくなった分、ウェッジとのロフト差が大きくなっているので、つながりを考えてもう1本番手を増やしています(#11)。
PはVとほぼ1番手ズレているぐらいロフトが少なく設定されています。それだけ飛距離性能に振ったモデルといえますね。
TW747 VとVxは軟鉄鍛造モデルですが、Vが一体製造なのに対してVxはヘッド内部に比重の重いタングステンが内蔵されています。そうすることで打感などをできるだけ残しつつ、重心位置を調整して性能を変化させているのです。またVxは3番から8番までヘッド下部ややトゥ側にタングステンを搭載することで、よりボールを上がりやすく、直進性を高める効果を持たせています。
厚みのある位置が異なるV(下)とVx(上)。バックフェースのデザインからも重心位置が異なるのがわかります
TW747 Pは、ステンレスの鋳造製法で作られています。軟鉄鍛造では作りづらい複雑な形状でもステンレスを用いた鋳造だと精密に作れるからです。Pはポケットキャビティ構造になっています。バックフェースにハマっているバッジによってわかりにくいですが……飛距離を追求するモデルには欠かせない低重心、および深重心を実現するためです。低重心はロフトを少なく設定してもボールが上がりやすくなり、深重心は多少芯を外してもヘッドのブレを抑えてエネルギーロスを減らしてくれるのです。
指で指した裏側に大きなポケットが設けられています
それでは3モデルを打ち比べ。今回は7番同士で飛距離を比べてみました。
一番飛ぶ747Pから、ヘッドスピードは3モデル共通でドライバーで45m/sぐらい。私のいつもどおりのスイングで試してみました。
そしてすみません、今回も画面表示がメートルです。ヤード換算しておきますので飛距離はそちらをご参照ください。
170.9m → 186.9Y
試打モデルに装着されていたシャフトはN.S.PROの950GHのSです。これはよく飛ぶアイアンですね。5番アイアンで200ヤードは飛ぶ計算になります。特筆すべきは、飛距離よりも球の捻(ね)じれなさ。直進性が非常に高く、高さも十分。スピン量も適度にあるので、グリーンに着弾してちゃんと止まってくれそうですね。ミスへの許容度も高いです。特に強いのがフェース下部でのミスヒット。飛距離はさすがに少し落ちますが、ちゃんとボールが上がってくれるので大きなミスにはなりません。直進性が売りである最近のデカヘッドドライバーとの相性がよさそうですね。
165.9m → 181.4ヤード
これまた距離が出ましたね。シャフトはモーダス3 フォー ツアーワールドという専用設計のスチール。Vxは7番でロフト30度。普段私が使っているアイアンの7番のロフトが34度ですから1番手ぶん立っているとはいえ、普段より20ヤード以上飛んでいます。Pが飛ぶのは理解できますが、フォージドモデルのVxがここまで飛ぶのは驚きです。
Pよりもヘッドの操作性があり、ボールをつかまえやすかったです。お助け機能的なつかまりはなく、あくまで自分でコントロールしやすいといった感じ。上級者は扱いやすいと感じやすく、初級中級者には、過度なお助け機能がないのでテクニックが身につくアイアンといえますね。距離、適度な操作性があってミスに結構強い、バランスのいいモデルです。
159.7m → 174.7Y
シャフトは、トゥルーテンパーのAMT S200。いやー、なんでこんなに飛ぶんですかね。ロフト角32度は、それほど立ってはいないんですけど……スピン量はしっかり入っていますし、打ち出し角も高い。操作性も上々で、インテンショナルな曲げ性能も3モデルの中では最高です。それでもこの飛距離ですからね、飛ぶアスリートモデルが欲しい方は絶対打ってみるべきです。
さすがに芯を外したときの飛距離ロスは3モデルの中では一番大きいですが、それでも私は許せる範囲。ただ、飛距離が出るだけにミスヒット時の距離差が大きいと感じる人もいるかもしれません。
最後に、追加となったユーティリティーも打ってみました。
アイアン型UTにしては比較的ボールが上がりやすく、打点のミスにも強い。アベレージでも十分使えるモデルで、ウッドが苦手な人におすすめです。顔は完全にアイアン。UTっぽさがあまりないのもメリットですね。直進性の高いボールが自然に打てます。
ツアーワールド747シリーズのアイアン3種を打ち比べて思ったことは……どれも飛距離が出る! ということです。それぞれのターゲット層に合わせた味付けがちゃんとされているにもかかわらず、飛ぶんです。アスリートだけど「アイアンも飛ばしたいんじゃ!」というゴルファーは、腕前関係なくツアーワールドのアイアンを試打すべきだと思います。
ボールを曲げるテクニックを身に付けたい、ボールを操りたいなら「V」
うまくなりたい、長く使いたい、結果も出したいなら「Vx」
とにかく曲げたくない、飛距離が欲しいなら「P」
といった感じですので、参考にしてみてください。
最後に、この試打が終わった後に、「TW-MB ROSE PROTO」アイアンがラインアップに追加されました。その名のとおり、契約したローズが使うマッスルタイプのアイアンです。機会があったらこれもテストしてみたいですね。やっぱり飛ぶのかな……?
こちらが”ローズ・プロト”アイアン。7番のロフトは34度と、現代アイアンとしてはロフト多めの設定です。ローズいわく「各番手のスピンを100〜200rpm単位でコントロールできるクオリティがある」とのこと。恐るべき操作性です! 飛び方はどうなのか、早く打ってみたいですね! 写真提供:本間ゴルフ
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。