オグさんです。
今回はミズノ「Mizuno Pro」シリーズから、2019年に発表となった3モデルの試打をさせていただきました。
ミズノには、古くから軟鉄鍛造アイアンを製造してきた歴史があります。軟鉄鍛造製法で作り上げたアイアンは、ていねいな作り込みによる製品精度の高さや、芯で打ったときのいい打感が、プロや上級者に好まれてきました。製造技術が進歩し、さまざまな素材や複雑な製法が可能になった今でも、それらは高い評価を得ています。
ミズノの軟鉄鍛造は素材からこだわり、同社のアイアン専用に調合された鉄を使用したり、鍛造製法においても独自の技術を持っていたりします。今回発表になった3モデルは、同社が誇る特許を持つ鍛造技術「グレインフローフォージド製法」が進化した「グレインフローフォージドHD」で作られたもの。
“鍛流線”という、鍛造時にできる繊維状の金属組織の流れを途切れさせずにアイアンを形成するため響きや打感に寄与していました。今回のHDではその鍛流線を打点付近に密集させることに成功し、打球音が長く響くことから打感のさらなる向上が実現したそう。打つのがとても楽しみです。
今回試打させてもらったMizuno Proシリーズは、同社のフィッティングを受けて初めて手にできるフィッティング専売ブランドになっています。これはゴルファーの個性に合わせて最大限性能を発揮するモデルを使ってもらいたいと思いからなのでしょう。
Mizuno Proシリーズのフラックシップモデルと呼べる120は、伝統のマッスルバック形状。非常に美しく、所有感を高めてくれます
ボールの操作性が重視されるモデルだけあって小顔でシャープな形状。ネックとフェースの間の懐も狭く、操作性のよさが顔から伝わってきます
ブレードが短く、かなり小ぶりなのがフェースを見てもわかります
直接ボールにコンタクトしやすくするためソール幅は狭め。リーディングエッジに丸みを持たせることで、ヌケのよさを演出しています
構えてみると、ヘッドの小ささが際立ちます。溝のあるフェース部分のサイズは、ボール幅とほぼ変わりません。さすがにちょっと気合いが入る顔ですが、打ってみるとこれが非常に気持ちいい。やや重めの打感、パシっという乾いた打音。芯で打ったときのやわらかさで「フェースに乗っている!」と感じさせてくれます。練習場で打っているだけでも飽きませんね。
機能としては「操作性」を大事にしているだけあって、とてもコントローラブル。フックもスライスも自由自在。ボールの高低も楽に打ち分けられます。大げさかもしれませんが、ドローやフェードは頭で意識するだけで自然と打ち分けられるぐらい、自分の意思をしっかりとボールに届けてくれるアイアンです。
半面、ミスすれば飛距離ロスはそれなりにありますが、個人的にはこれはいいことだと思っています。ミスしたときに想定以上に飛んでしまうのは、怪我をより大きくしてしまう可能性があるからです。テクニックをある程度持っていて、スコアにこだわる方にとっては、むしろやさしく感じるのではないでしょうか?
美しい伝統的なマッスルバック。しかし最新の技術と設計思想で作られていて、番手別にスイートスポットを最適化するなど、しっかりと進化しています
ぜひこの打感は皆さんに味わってもらいたいですね。病みつきになると思います
120の#7:意外とスピンが少なめでしたが、イメージどおり、狙ったところに打ち出した軽いドロー弾道が打てました。本来はもう少し高さが出てスピンも増えると思います
520は、バックフェースを削った部分に比重の軽いチタンを、長い番手のトゥ側には比重の重いタングステン合金をそれぞれ内蔵することでヘッド左右の慣性モーメントを高めています。芯を外しても飛距離ロスが少なくなるよう設計されたモデルです
120と比べると、シャープな形状はそのままですがブレードがやや長くなっています
フェース側から見てもブレードの長さ以外の形は120とほぼ同じ。洗練された形状です
ソール幅がやや厚くなりましたが、一般的なアスリート向けのモデルとしては標準的なサイズです
形状は120同様非常に美しいですね。ブレードが若干長くなった以外、ほとんど違いは感じません。早速打ってみると、これまた気持ちいい打感。120と比べると若干軽く、音も高め。120の重厚な打感とは異なった、爽快感のある感触でした。
操作性は120を10としたら7〜8ぐらいといった印象。十分コントロールはできますが、曲がり幅はやはり120のほうが大きいです。520の強みは、芯を外したときの飛距離ロスの少なさ。少々芯を外しても飛距離の低下は少なく、曲がり幅も少なめでした。さすがにアベレージ向けのアイアンと比べてしまうと違いはありますが、それでも効果は十分でしょう。
このステンレスプレートの中にはチタンが内蔵されており、ミスへの許容度を高めつつ、打感の低下を防いでいます
520の#7:ブレードが長いせいか、やや右に打ち出した軽いドローボールになりました。高さもしっかり出てスピンも十分。直線的に目標を狙うアスリートゴルファーにはおすすめですね
バックフェース下部を限界まで削り、やさしさと飛距離を追求した軟鉄鍛造モデル。ミズノの売りである軟鉄鍛造構造にこだわった“らしい”モデルと言えます
非常に長いブレードと厚めのトップブレードが特徴。ややグースネックにもなっており、ミスに強そうな顔ですね
フェース側から見るとブレードの長さ以外はほかのモデルと共通のフォルムをしています
520よりさらにワイドなソール幅で、ダフリのミスにも強そう。重心が低くボールが上がりやすそうです
アドレス時のヘッドは120、520と似たきれいなフォルム。ですが920は、ブレードを長くトップブレードをやや厚くすることで、安心感の高いやさしそうな顔になっています。特に意識することなく打った1発目は、やや右に飛び出した高い弾道でした。
120、520と比べてブレードが長い分だけ重心距離が長いのか、同じように打ったら、やや右に打ち出してしまいました。それを考慮してスイングすると、非常に直進性の高い弾道が打てます。左右の打点のミスにもかなり強く、少々のズレではほとんど曲がりませんでした。
飛距離性能ですが、通常のアスリートモデルよりは飛びますが、極端ではありません。何より、打点がズレても高さが簡単に出せるので、安定したショットを打ちやすいアイアンと言えるでしょう。
2段階で削られたポケット部分がこのアイアンのポイント。後から溶接するのではなく、一体で鍛造したヘッドに加工することで、打感とやさしさと飛距離を高い次元で両立させています
920の#7:重心距離が長い分、やや右に打ち出しやすいですが、慣れれば問題なし。高さがあって直進性の高い弾道を安定して打つことができます
この3モデルの発表に際してメディア向けの発表会が行われ、同社契約の原英莉花、吉本ひかるの2名のプロが登場、それぞれ使用モデルの試打デモンストレーションを行いました。
吉本ひかるプロ(左)、原英莉花プロ(右)
芝の上から、原プロの試打デモンストレーション
実戦で使用するという920を手にし、力強いインパクト音と鋭い弾道を披露
「(前モデルの)918より、打音が大きくなったように感じました。球は高くなりましたね。ヘッドは前作より少し大きくなったんですけど、大きく見えないのがいいところだと思います」
今回試打させていただいた3モデルはどれも、ミズノの武器である軟鉄鍛造にこだわり、その中で性能を追求した、ある意味“個性の強い”モデルです。機能だけを追求するなら、手間やコストのかからない素材や製法が別にあります。しかし、あえてそれを選択せず、感性やフィーリング面も大切にするために高価な素材や複雑な製法を選択しているのがMizuno Proのすごいところだと思います。
前述したようにMizuno Proブランドのこれらのアイアンは、同社のフィッティングを受けないと購入できません。購入を考えている方は、近くのショップでミズノのフィッティングが受けられるかどうか、チェックしてから来店したほうがいいですね。フィッティングを受ければ、自分にはどのヘッドが合うのか勧めてもらえますよ。
私が言うのは野暮だということを承知でおすすめモデルをあげるならば……ボールを操作してプレーしたい、1打1打を楽しみたいという方は「120」、ミスの幅を減らしたいがフィーリングも大事にしたいという方は「520」、やさしいアイアンを使いたいが、打感が悪いモデルは好ましくないという方は「920」、といった感じでしょうか。
もし試打できる機会があったら、ぜひ打ってみてください。特に120は上級者がこだわる“いい打感”を体感することができますよ。
写真:野村知也(クラブ)
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。