ゴルフ大好きな元サッカー日本代表の城彰二さんによるゴルフクラブ試打企画の第10回。長距離を安定して打てるユーティリティーを探している城さん、今回3モデルを打ち比べてみたところ……?
じょう・しょうじ 1975 年北海道室蘭市出身。中学生のときに父親の出身地である鹿児島県に帰省し、当地の鹿児島実業高校に入学し、サッカーの技術を磨く。高校 3 年時には冬の選手権大会でベスト 4 入り。卒業後は J リーグのジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)に入団し、デビュー戦から 4試合連続ゴールを挙げて注目される。また、各年代の日本代表としても活躍。1996 年のアトランタ五輪ではブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献、A 代表では 1998 年フランス W 杯に出場した。現在はテレビ解説や、北海道社会人チーム「北海道十勝スカイアース」の統括ゼネラルマネージャーに就いている。JFA 公認 S 級ライセンス保持。ゴルフを本格的に始めて 5 年、平均スコアは 85 くらいで、元サッカー選手の仲間とラウンドし、ゴルフ談義で盛り上がっているとのこと。最近ではサッカーの現場でもゴルフの話題で持ちきりだとか……。
編集N:今回は、城さんがかねてより探しているという「ユーティリティー」です。3メーカー4モデルをお借りしたので、合うものが見つかれば何よりです。
城:そうなんですよ、ユーティリティーを探していまして……。
編集N:飛距離の出る城さん(ドライバーでのヘッドスピードは50m/sに迫る!)が、やさしく飛ばせるクラブを探しているのが少し驚きでした。230ヤードくらいまではロングアイアンでいくのかな、などと勝手に想像していたのですが。
城:いやいや(笑)、ロングアイアンはそんなに得意じゃないんですよ。で、フェアウェイウッドだと飛び過ぎちゃうんで、ウッドと5番アイアンの間のクラブがなくて実は困っているんです。
編集N:パワーヒッターのアマチュアならではのお悩みですね。
城:ヘッドスピードが速いからといって、そこはアマなんで、すべてのクラブが打ちこなせるというわけでもなく(笑)。普通の人に比べると飛距離のアドバンテージがある場合もありますが、持つクラブに困る飛距離もあるというわけです。
編集N:なるほど。ちなみに、ユーティリティーではどれくらいのレンジを打つ感じですか?
城:だいたい、200〜230、もしくは240ヤードくらいまでですかね。たとえば530ヤードのパー5で、ドライバーが成功すると、残りが240とか、そのくらい。で、いっちょ2オン狙ってやろうとなると、フェアウェイウッドやロングアイアンだと力んじゃってね……(笑)
編集N:力まずに打てる、やさしいクラブがいいと。
城:まさに!
編集N:では、試打にまいりましょう。“やさしさ”と言ったらこちらのメーカー、キャロウェイ。モデルは「EPIC FLASH STAR ユーティリティー」です。
EPIC FLASH STAR ユーティリティー
城:お、これは安心感のある顔です。
編集N:こちらは、2019年初頭に発表された「EPIC FLASH」シリーズの、遅れて登場したユーティリティーです。ゴルフクラブの開発に“AI”が初めて使われたというセンセーショナルな事実が話題をさらいました。そのAIが導き出した「FLASHフェース」をこのユーティリティーも搭載しています。
どうぞ、打ってみてください。
城:あー、例の(笑)。サブゼロのドライバーは、めっちゃ飛んだ記憶があるなあ……これはどうなんだ?(EPIC FLASH STAR ユーティリティーを何発か打つ)
とにかく、ミスに強くつかまる印象
城:おおー、やさしいね、やっぱり。
編集N:さすがキャロウェイというところでしょうか。
城:今のは#5で220ヤードくらい飛んでいると思います。フルスイングしなくてもこれだけ飛べば、僕にとってはいいんじゃないかと。
編集N:パー5で2オンが狙えそうですね。狭いホールでのティーショットにも使えそう。
城:ソールの広さが、合うっていうか、芝の上をちょっと滑らせながらインパクトに向かうのがウッド的ですよね。やさしくて打ちやすい、いいなこれ。
ダフっているわけではなく、広めのソールでやさしくインパクトできるという
編集N:いきなり、お気に入りですね。
城:僕にはロフトが多め、今打った23°くらいがよさそうです。
編集N:ラインアップには17°からそろっていて、城さんだとそれでも打てるでしょうが、ロフトが多くやさしいスペックで適正飛距離を打つのが正しい使い方でしょうね。
城:そうそう、飛ばそうとすると力むから、そう思わないクラブがいいかなと。打ったのは純正シャフトですが、もっと重くて硬いシャフトを入れれば安定すると思うので、機会があれば試してみたいです。
編集N:では続いてタイトリストです。
城:タイトリストって、ユーティリティーのイメージはあんまりないですよね。
編集N:まあ、確かに……。伝統的にアイアン、そしてドライバーに強いアスリートイメージがありますね。ウェッジとパターは別ブランドで展開していて、それらもプロツアーの雰囲気満点。でも、ユーティリティーもツアープロの間で評価が高く、契約外の選手が好んで使っていたりします。
城:なるほど。
編集N:今回は「TS2」「TS3」の2モデルをお借りしました。TSとは「Titleist Speed」の略で、ボールスピードを高めて飛距離を向上させるいくつかの新技術の総称ととらえればいいかと思います。ドライバーにはTS1からTS4までのラインアップがあるのですが、ユーティリティーはTS2とTS3の2つ。TS2はヘッドが大きく寛容性を、TS3はシャープな見た目で操作性をそれぞれ感じさせるモデルとなっています。
城:そこはドライバーと一緒なんですね。どれどれ?
TS2とTS3のユーティリティーを見比べる
タイトリスト・TS2 ユーティリティー メタル
城:見るからに、狙った性能が違いますね。まずはTS2から行きます。(TS2を何発か打つ)
編集N:いかがですか?
城:TS3を見ちゃったから言うわけではないんですが……ヘッドは大きいほうがやっぱり安心感があっていいですね(笑)。
TS2ユーティリティーでは高い弾道を連発
城:このTS2ユーティリティー、意外って言ったらアレですが、操作性も結構あるように感じます。割と思ったとおりの球筋を作れました。
編集N:そうなんですね。安心感も操作性もある、ほかにいらない(笑)。
城:まあ、そうっちゃそう。さすがタイトリストだなあ。
編集N:TS2がお気に召したところで、一応、TS3を……。
城:いやいや、こっちはこっちで、アスリート然としていていいじゃないですか!(TS3を何発か打ってみる)
タイトリスト・TS3 ユーティリティー メタル
編集N:どうでしょう?
城:構えてみると、やっぱり顔が小さいですね。この見た目だと、飛ぶっていうイメージが出ない。アイアンでいうならマッスルバックみたいな感じです。
編集N:そうですか。このTS3には「マグネティックSureFit CGウェイト」という、可変ウェイトシステムが搭載されていまして、ボールのつかまり具合を2つのポジションから選べます。
城:それ、めっちゃおもしろい! さっそく変えてみよう。
トゥ側からウェイトを抜き差しし、好みのつかまり具合を選ぶ
編集N:ウェイトは両端の重さが異なっていまして、先ほどまでは重いほうがネック側に来る“つかまる側”に入っていました。そこでウェイトを上下入れ替えることでトゥ側が重くなる“つかまらない側”に変更します。ヘッドの返りがゆるやかになるので、フェードが打ちやすいというか、左に行きにくいとうか、そういう傾向になるかと。
城:(ウェイトを入れ替えたTS3を打つ)うお! めっちゃ挙動が変わりました!
編集N:よさそうですね!
城:いや、こっちがいいかどうかはまだ……(笑)。もう1回、つかまるほうで打ってみます(ウェイトを元に戻して再度打つ)。うーーん、やっぱりこっちだ!
編集N:つかまる側のほうがよかった理由は何ですか?
城:こっちのほうが、操作性がいいんですよ、当たり前ですけど。こっちで、フェードをイメージして打つと一番よかった。ウェイトは、つかまる側とつかまらない側、その“間”が欲しい(笑)。
編集N:そこはちょっと、難しい……(笑)。
城:小さいヘッドだと、ウェイトの違いが顕著に出ますね。これはおもしろい。微調整という感じではないんで、一度決めたら動かさないほうがいいかもしれないです。僕はTS3を“アイアンっぽく”打つといい結果になりました。
編集N:タイトリストのユーティリティーはTS2、つかまるTS3、つかまらないTS3と、選択肢が多いので、慎重に選ぶべきですね。
城:ハマるとすごく重宝しそうです。間違いない!
TS3をつかまる側にして打つコントロールショットを気に入った様子
編集N:最後に、ピンの「G410ハイブリッド」です。G410は、ドライバーを中心とする、もはや言わずと知れた人気シリーズ。こちらはそのユーティリティーで、ピンではハイブリッドと呼びます。同社得意の深くて低い重心設計を継承し、ミスに強く球を上げやすいヘッドです。
城:G410は売れてますよねえ〜。
編集N:大人気ですよね。G410には「クロスオーバー」という、アイアン型のユーティリティーもラインアップされているので、ハイブリッドはウッドに近いユーティリティーとして設計されているはずです。今回は純正のカーボン(ALTA J CB)とスチール(モーダス3)、2種類のシャフトをお借りしました。ヘッドは19°になります。
ピン・G410ハイブリッド
城:(G410ハイブリッド、カーボンシャフトを打つ)お、バチッと強くはじく感じがします。打ちやすいなあ、さすがピン。続いてスチールはどうだろう?(同スチールシャフトを打つ)
編集N:いかがでしょうか? パワーのある城さんだと、スチールシャフトの剛性が気に入ったのではないでしょうか?
城:いや……逆です。
編集N:え!
城:僕は、ユーティリティーはカーボンのほうがいいなあ。スチールは、どうもつかまらないというか、スライス系になるんですよね。カーボンのほうが挙動が素直で、気持ちよく振れる。ピンの純正カーボンはさすがです、すごいしっかりしてます!
編集N:これは、意外な結果です……。
「トゲがあって、ワルそうな顔(笑)。飛びそうなイメージです」
城:やっぱり、決めつけないで実際に打ち比べてみてこそわかることがあるんですねえ……。G410の顔はゴツくて、いかにも飛ぶって感じ。実際の飛距離も満足のいくものでした。つかまりも十分で、つかまりすぎず、逃げすぎずのちょうどいい感じ。このへんもうまい。
編集N:今回4本を打ちましたが、いかがでしたか?
城:そうですね、それぞれのモデルの特徴がハッキリわかった打ち比べでした。総合すると、ロフトがそれなりに多めで、重めのカーボン、つかまり具合がニュートラルなユーティリティーが使いやすかったです。
編集N:やさしくてつかまるキャロウェイ、ミスに強く大きな飛びのTS2、アイアンみたいに打てるTS3、バランスよく打てるG410と、どれも持ち味がありますね。今回は、1本には絞れない感じですか?(笑)
城:うーん、どれもいいんで、ここから先はコースで使わないとわからないですが(笑)、コントロールできるって意味ではTS3がよかったかな。
写真:中居中也