南井正弘の「毎日走って、わかった!」
「アディゼロ プロ」と「クラウドブーム」は各ブランドらしさをキープ!

「アディダス」と「オン」のカーボンプレート入りランニングシューズを試走レビュー!

本来であれば、2020年7月24日に東京五輪が開幕していたということもあり、春から夏にかけて、スポーツシューズ業界は新作ラッシュとなった。そんな状況において、アディダスとオンという欧州を拠点とする2ブランドから、カーボン素材を用いたプレートを内蔵したランニングシューズがリリースされた。それがアディダス「アディゼロ プロ」とオン「クラウドブーム」だ。

アディダス「アディゼロ プロ」

アディダス「アディゼロ プロ」

オン「クラウドブーム」

オン「クラウドブーム」

それぞれのブランドがいかにしてカーボン素材を活用したかに注目が集まるところだが、実際に着用して走ってみた感想をレポートする。

カーボン配合プレートや新ミッドソール素材を搭載

「アディゼロ プロ」の「コアブラック/シグナルコーラル/フットウェアホワイト」(品番:FW7862)で機能をチェック。公式サイト価格は24,200円(税込)

「アディゼロ プロ」は、アディダスのランニングシューズとして初めてカーボン素材配合プレート「CARBITEXカーボンプレート」を内蔵したシューズ。「CARBITEXカーボンプレート」は、着地時にはダイナミックな柔軟性を、蹴り出し時にはエネルギーを与え、少ない力を大きな推進力へと変換する。

ミッドソールの外周には、新素材である「ライトストライク」を採用。一般的な素材のEVAよりも40%軽量ながら、エナジーリターンに定評のある同社のEVA系素材「バウンスフォーム」と同等の反発力を確保。安定性が高く、着地時の横ブレも少ないという。また、ミッドソールのコアにはクッション性と反発性を兼ね備えた「ブーストフォーム」が搭載されており、爆発的なエネルギーを生み出す。

新たに採用された「ライトストライク」をミッドソールの外周に配置

新たに採用された「ライトストライク」をミッドソールの外周に配置

アウトソール前足部には、グリップ性の高さで定評のある「コンチネンタルラバー」を採用。中心部は「ブーストフォーム」が露出しており、ミッドソールのコアに配されていることが視認できる

本モデルは、温度環境による影響を受けにくいため、ランニングシューズとして風や雪、太陽の日差し、雨など、あらゆる天候下で反発力を維持。長距離のランでも、EVAより劣化しにくく、「ブーストフォーム」は本来の性能を長く持続できる。なお「ブーストフォーム」は、2013年のリリース以来、数多くのアスリートを魅了してきたテクノロジーであり、本シューズでもフワフワとした独特なクッショニングの感覚は健在だ。

アッパーには、「セラーメッシュ」を採用。これはアディダスが採用するメッシュ素材の中でも最軽量でありながら、足をしっかりとホールドして、シューズと足のズレによるエネルギーロスを軽減する

シューレースホールをいくつも配し、あらゆる形状の足に対しても最適なフィット感が得られるようにしている

シューレースホールをいくつも配し、あらゆる形状の足に対しても最適なフィット感が得られるようにしている

シュータンの内側がインソールの下まで伸びている構造によって、中足部のフィット感がアップ

シュータンの内側がインソールの下まで伸びている構造によって、中足部のフィット感がアップ

プレートを挟むように2層の「クラウドテック」システムを搭載

「クラウドブーム」は写真の1色展開。公式サイト価格は21,780円(税込)

「クラウドブーム」は写真の1色展開。公式サイト価格は21,780円(税込)

いっぽう、オンのカーボンプレート内蔵プロダクト「クラウドブーム」は、世界中のトップレベルのアスリートたちから意見を集めて開発されたモデル。内蔵プレート「スピードボード」には、爆発的な反発力と適度なしなりを両立させるために最適と思われる比率でカーボンファイバーが配合された。

爆発的な反発力と適度なしなりを両立させるために最適と思われる比率で、カーボンファイバーが配合された「スピードボード」を初採用

また、黒い「スピードボード」を挟むようにして穴を備えているが、これが2層の「クラウドテック」システム。これは「クラウドブーム」専用の構造で、路面側に配置された「クラウドテック」は、これまでと同様、垂直方向と水平方向の衝撃を吸収し、足のダメージを最小化。着地の衝撃で潰れた「クラウドテック」はそれ以上潰れないため、アスリートの力強い蹴り出しのエネルギーをムダにしない。オンが考えるクッショニング思想「必要な個所に必要なだけのやわらかさを生むこと」を継承する。いっぽう、足側に配置された「クラウドテック」は、ランナーの快適性を目的としている。

「クラウドブーム」専用に開発された2層の「クラウドテック」システム

「クラウドブーム」専用に開発された2層の「クラウドテック」システム

なお同社いわく、「クラウドブーム」はエリートレベルの競技用シューズであり、オン史上最速のマラソンシューズにふさわしいスペックを結集しており、自己ベストを破るための1足になるという。

アッパーには、部位によって編み方を変えたエンジニアードメッシュを採用。通気性とフィット感を高い次元で両立することに成功している。つま先の形状は若干コンパクトだ

アディダス「アディゼロ プロ」を試走レビュー!

アディダス「アディゼロ プロ」に足を入れてみると、これまでのアディダスのシューズよりもつま先のゆとりがかなり設けられており、足長の長いシューズであることがわかる。今回履いたのが普段履いているメンズのUS8の26cmではなく、ウィメンズのUS9の26cmであったことが理由かと思ったが、同社に確認したところ、メンズとウィメンズの26cmサイズ表記の「アディゼロ プロ」はまったく同じラスト(木型)を使用しているという。

いずれにしろ、かかとから中足部、前足部まで足の形状に沿うようにピッタリとフィットしているので、走行中にシューズ内部で足がズレ、指がシューズ最前部に接触するということはなさそうだ。重量は、サイズUS9で230gを超えているが、シューズと足が一体化するようなフィット感のために、それよりも軽く感じられる。

実際に走り始めると、ゆっくりしたペースだと、「ブーストフォーム」特有のフワフワした走行感が強く、エリート向けシューズとは思えない。ミッドソール自体もヒール部21.5mm、前足部12mmと、ある程度の厚みがあるので、低速走行でも走りにくいことはない。実際走り始めからしばらくは5分30秒〜6分/kmのペースで走ったが、上級ランナー向けモデルであるにもかかわらず走りにくさはまったくなかった。アウトソール前足部に使用されたコンチネンタルラバーのグリップ性もあって、脚力の路面への伝達力は相当高い。

その後、徐々にペースを上げていったが、新たに採用された「ライトストライク」の効果もあって、従来の「ブーストフォーム」搭載モデルよりも足ブレが少なく、蹴り出しまでがクイックな気がする。最終的に4分5秒/kmくらいまでペースを上げると、アディダスが標榜する「着地時にはダイナミックな柔軟性を、蹴り出し時にはエネルギーを与え、少ない力を大きな推進力へと変換」の一端が垣間見えた気がしたが、「CARBITEXカーボンプレート」は、他ブランドのカーボンプレート内蔵シューズのプレートよりも自己主張が少ない気がした。これは、従来着用していたシューズの走行感からの極端な変化を嫌うランナーにはうれしいことだろう。

いっぽうで、ミッドソールのヒール部分は「ライトストライク」で囲われておらず、「ブーストフォーム」がサイド部分で露出している構造だが、ヒール着地した際の素材の沈み込みもあいまって、横揺れを感じたのも事実。「通常の『ブーストフォーム』ではなく、『ブーストHD』もしくは『ブーストライト』といった硬度の高い『ブーストフォーム』と組み合わせたらどうなるだろう?」とも思った。もちろん開発の段階でこれらの組み合わせもトライして今回のスペックが決定したのかもしれないが、個人的には「ブーストHD」や「ブーストライト」と「ライトストライク」のコンビネーションを試してみたいと思ったし、近い将来のリリースを期待したい。自分以外にも、この若干の揺れを気にするランナーは存在するはずだから。

オン「クラウドブーム」を試走レビュー

次に、オン「クラウドブーム」に足を入れてみると、かかと部分の高いフィット感を真っ先に感じた。こちらのシューズも足長は長めだが、「アディゼロ プロ」ほどではない。また、つま先の形状が細くなっており、この部分の容積が若干コンパクトなので足沿いがよい。幅広のランナーは実際に足を入れてからサイズ決定したほうがいいと思うが、筆者はいつもどおりUS8でジャストフィットだった。重量はサンプルサイズで225gとのことだが、実際に履いた感覚では210gくらいに感じた。これは前述のようにフィット感のよさが影響しているだろう。

実際に走り始めると、オンならではの自然な着地感と力強い反発性能はしっかりと継承されていた。また、これまでの「スピードボード」搭載モデルと同様に、足裏の安定感も確保されていた。

「クラウドブーム」は、これまでのオンのシューズと同様に、特定の着地位置を強制するわけではないが、中足部前方の外側が少し高くなっているのを感じ、ここを支点に体重移動することを意識すると、つま先がせり上がったロッカー構造もあいまって、着地から蹴り出しまでの走行中の一連の動作がとてもスムーズになった。これはヒール、ミッドフット、フォアフットといったすべての着地位置で適用できる。

徐々にペースを上げて4分/kmで走ると、これまでのオンのシューズよりも、高速域での着地から蹴り出しまでのムーブメントがスムーズであることが理解できた。また、速いペースで走って着地衝撃が大きくなった状況でも快適な走り心地だったのは印象深い。これは「スピードボード」がカーボンファイバー混になったことと、2層の「クラウドテック」システムを採用したことが大きいかと思う。

そして、もうひとつ特筆すべきはアウトソール。粘度の高い素材が使用されており、路面にくっつくようにグリップすることで、アスリートの脚力を路面にしっかりと伝達してくれる。ある程度の刻みの深さもあるので、公園の土の上でも快適に走ることができたのはうれしかった。エリートレベルのコンペティションシューズとして開発された「クラウドブーム」だが、レースシューズとは思えない足へのやさしさも兼ね備えているので、「今日はちょっぴり速めのペースで走ってみたい!」という日のランにもピッタリだと思う。1度目よりも2度目、2度目よりも3度目というように、履けば履くほど、そのよさがわかるシューズであった。

路面にくっつくようにグリップするアウトソールは、アスリートの脚力を効率よく伝達してくれる

路面にくっつくようにグリップするアウトソールは、アスリートの脚力を効率よく伝達してくれる

【まとめ】ブランド独自の走行感が「8」で、新提案が「2」

今回、アディダスとオンのカーボンプレート内蔵シューズを履いて走って感じたことは、両ブランドともにプレートの存在を主張させ過ぎないチューニングでシューズを完成させたということ。ナイキの一連のプレート内蔵シューズや、ホカ オネオネの「カーボンX」、ブルックスの「ハイペリオン エリート」、サッカニーの「エンドルフィン プロ」といったモデルが、プレートを強調した走行感を提供するのと比較すると、今回トライした2ブランドのシューズは、これまでのブランド独自の走り心地をキープしたうえで、プレート内蔵ならではのメリットをプラスしていると感じた。

個人の感覚でいうと、「アディゼロ プロ」も「クラウドブーム」も、ブランド独自の走行感が「8」で、新たな提案が「2」といったところか。まったく異なった走り心地を求めるランナーはともかく、そのブランドならではのテイストが好きで履き続けているランナーには、独自のテイストをガラッと変えられるよりもこうした提案のほうがうれしいだろう。

南井正弘

南井正弘

ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間52分00秒。

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