オグさんです。今回はスリクソンの「ZX5アイアン」「ZX7アイアン」の試打レポートをお届けします。
スリクソン「ZX5アイアン」(左)、「ZX7アイアン」(右)
「スリクソン」は住友ゴムが有するワールドワイドブランド。ゴルフだけではなく、テニスでも展開しており、ゴルフをプレーしない方にも広く知られています。ゴルフでは、ツアープロやアスリート指向のプレーヤーに向けた商品展開となっており、日本では、世界で戦う松山英樹選手が契約していることで有名です。
今回試打させていただいたアイアンは2020年夏に発表になったばかりの最新モデル。前作までが「Z」シリーズと呼ばれていたのに対し、今作から「ZX」シリーズにネーミングが刷新され、新しさを前面に押し出してきています。ラインアップは2種類。どのような味付けになっているのかとても楽しみです!
アスリートモデルらしく、適度なサイズとシャープな形状を持ちながら、フェース素材にバネ鋼を使い、フェース厚に工夫を凝らすことで高い飛距離性能とミスヒットへの強さを両立させたモデルです。
デザインはアスリートモデルらしくシンプルなもの。鏡面仕上げとつや消し仕上げを使い分けていて、なかなかカッコイイ仕上がりです
ヘッドサイズは適度で、トップブレードは厚くも薄くもなくといったところ。適度なグースが付いていて、ヒール側の高さは低く仕上げられています
ZX5は「クロムバナジウム鋼」と呼ばれる、いわゆるバネ鋼をフェース素材に使用しています。ボディは軟鉄なので、ライロフトの角度調整が可能です
スリクソンのアイアンの伝統?とも呼べる、“2つの面”を持つソールをZXシリーズにも搭載しています。ヘッドがヌケやすく、ダフったときに刺さりにくい、高機能なソールです
シャフトはドライバー同様、三菱ケミカルと共同開発した「ディアマナZX」を採用しています。シャキッとした振り心地でミートしやすいシャフトです
ZX5アイアンは、アスリートモデルでありながら、飛距離と安定性を重視したモデル。フェースにはクロムバナジウム鋼と呼ばれるバネ鋼を使用し、独自の打点分布データをもとにフェースを偏肉にすることで高初速かつ、安定した弾道を実現させています。
また、4番から7番まではヘッド内部にタングステンウェートを搭載して重心位置を最適化することで、高い打ち出し角と最適なスピン量を狙った設計になっています。
構えた印象は、すべてが適度でリラックスできる顔といった感じ。アベレージモデルに多く見られる機能を強調したような形状や、アスリートモデルに多いシャープさを強調した感じがなく、とても自然でスッと構えられますね。
ロフト角は7番で31°。いまや寝ている部類に入ってしまうかもしれないロフト設定です。打ってみると、34°ぐらいあるんじゃないかと思うくらいの高弾道が出ました。スピン量は、アスリートが好むモデルとしては若干少なめ。ですが高さがしっかり出るので試合などで使っても不満はないでしょう。
飛距離性能を高めていないアスリートモデルと比べると、約1番手分ぐらい飛びます。ヘッドの操作はできなくもないですが、操作性が高いとは言えないですね。そのぶん打点のミスには強いので、安定したショットは打ちやすいクラブです。
バネ鋼でキャビティですから打感に期待はしていなかったのですが、軽やかな感じでとても気持ちいい感触! 直進性が高くミスに強くて、飛距離性能が高いアスリートアイアンです。今のドライバーに求められる性能に沿った作りになっていて、このモデルが市場にどのように受け入れられるのかとても楽しみです!
刺さりにくくヌケがいい2段ソール。ソール自体には厚みがあるのですが、接地面積が狭くなりやすいので摩擦が少なく、滑りやすい作りになっています
つかまり性能は、少しだけつかまる方向に味付けされている印象。ボールをつかまえた弾道でもしっかり高さが出るのはとてもいいですね。ライ角などで打ち出し方向を調整すると、直進性の高い弾道が安定して打てそうです
軟鉄鍛造のキャビティですが、3番から7番までにタングステンウェートをヘッドに内蔵し、より最適な重心を追求したモデル。こちらも独自のデータをもとに、ターゲットゴルファーの打点に合わせてヘッドの肉厚を変える凝ったデザインになっています。
デザインはZX5同様シンプル。飽きがこなくていいですね
やや小ぶりで、ブレード長が気持ち短く感じる形状。ZX5と比べると結構小さく感じます
こちらはフェースもボディも軟鉄製。もちろん、ロフトライの調整が可能です
ソール形状もZX5と同じ2段ソールを採用していますが、ソール幅がかなり狭くなっており、よりシビアなボールコンタクトやヌケのよさを追求した形状になっています
ZX7には標準でのカーボン設定はなし。この「ダイナミックゴールド D.S.T」が標準となります。従来のDGより軽やかに振り抜けるモデルです!
世界で戦うために、コントロール性能はもちろん、ミスへの強さを持たせた実戦的キャビティといったモデル。重心位置を調整するために一部タングステンウェートを使用していますが、基本はフィーリングを重視した軟鉄鍛造製法で作られています。スピン性能を重視し、技術の高い方ほどやさしいと感じるモデルです。
形状は、ZX5をやや小ぶりにして、ブレード長を少しだけ短くした感じ。形状はほとんど変わっていないので難しくなった感じはありません。
打ってみるとやはり打感がいいですね! キャビティではありますが、芯でとらえたときの重みのある感触は、さすが軟鉄鍛造といったところ。ZX5の軽やかな打感も爽快感があっていいですが、フェースに長い時間載っているような、ズシっとくる感触のほうがボールをコントロールできそうなイメージも湧きやすく、個人的には好きです。
ロフト設定は7番で32°と、ZX5と1度しか変わりません。ですがフェース素材が違いますし、狙っている性能も違いますので飛距離性能は若干落ちます。けれどもその分、操作性はバッチリ。打ち出し角もかなり高く、高弾道の球が打てます。この操作性で飛距離性能が高かったならば、調子の悪いときにミスの幅が大きくなってしまいますからね。そのあたりのバランスがとてもいいところに仕上がっていると思います。
打点のミスによる寛容性ですが、キャビティらしく少々の芯のズレは許容してくれます。個人的にとても気に入ったのが、芯を外したとき、左に行っても飛びすぎないこと。シビアな環境でプレーをしている方ほど、このよさを共感してもらえると思うのですが……競技に出る頻度の高い方ほどこのアイアンはオススメしたいですね!
ズシっとくる打感はキャビティらしからぬ重いもの。ですが芯を外したときなど、ミスへの寛容性はちゃんとキャビティのものです
ブレード長がやや短い設計でヘッドの操作性がよく、なおかつラフなどでのヌケがいいです!
高い打ち出し角でコントロールしやすい弾道が打てるZX7。飛距離さえ求めなければ、パワーがなくてもある程度使えそうなモデルになっています。軽量シャフトも用意されているので、気になる方はぜひ打ってみてください
ZXシリーズには、アイアンの新しい可能性というか、進化を続けているドライバーに似た次なる方向性を垣間見た気がしました。現代のドライバーの特性に合わせた、飛距離性能と直進性が高く、ミスに強いZX5アイアン。従来のアスリートが求める性能を追求しながら、それを失わずに安定感を加えたZX7アイアンと、どちらものアイアンに求められるニーズをうまく消化しつつ、個性豊かなやさしいアイアンに仕上がっていると思います。
ZX5は、ミズノの「JPX921ホットメタル」やプロギア「02」、タイトリストの「T200」あたりがライバル候補、ZX7ですと、ミズノの「JPX921ツアー」、ブリヂストンの「CB201」、テーラーメイドの 「P7MC」アイアンあたりでしょうか。興味があれば、他社のモデルも含めてぜひ打ち比べてみることを推奨します!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。