早朝も日暮れ後も、さほど寒さが気にならなくなってきた。ダイエットや健康目的でウォーキングやジョギングを始めようとしている人にとっては、最適な季節が到来したと言えるだろう。もちろん、夏のように動いたらすぐに汗だくなんていうことがないのもうれしい。
ウォーキングやジョギングは時間と場所を選ばず、特別な道具を揃える必要もない手軽な運動だが、ケガの予防や快適性を考慮するなら、シューズだけは自分の足にフィットした専用のものを選びたいところ。コストパフォーマンスの観点から「最初の1足はできればタウンユースしやすいデザインのものがいい」という人もいるはず。アシックスの「ゲルニンバス 26」は、これからウォーキングやジョギングを始めようとしている人におすすめしたいシューズの一足だ。
アシックス「ゲルニンバス 26(GEL-NIMBUS 26)」。公式サイト価格は19,800円(税込)。写真のカラーは「フレンチブルー/エレクトリックライム」
モデル名の「NIMBUS(ニンバス)」は、ラテン語で「雲」を意味する。文字どおり、雲の上を走っているような、やわらかい接地感と軽やかなライド感により、多くのランナーに支持され、ロングセラーとなっている。特にクッションシューズの市場が大きいヨーロッパやアメリカでは、高い人気を誇っているシリーズだ。
「ゲルニンバス」シリーズのすぐれたクッション性能を支えているのは、やわらかなフォーム素材と、かかと部に搭載されたクッション素材の「GEL(ゲル)」。この「GEL」が25周年のアニバーサリーモデルであった前作「ゲルニンバス 25」のときに大きくアップデートされた。その新素材「PureGEL(ピュアゲル)」は、従来素材と比較して約65%やわらかく、約10%軽い。
この「PureGEL」は内蔵式で、かかと直下に搭載されている。歴代の「ゲルニンバス」シリーズでは「GEL」をビジブル化し、その存在とクッション性をアピールしていたが、「PureGEL」はフォームと接着してビジブル化するのが困難なほど繊細な素材であるため、内蔵式になったという。
実際に足を入れてみると、少し歩いただけでそのクッション性の高さに驚かされた。ミッドソールに大ボリュームで採用された、軽量でやわらかく跳ねるように反発する「FF BLAST PLUS ECO(エフエフ ブラスト プラス エコ)」と、「PureGEL」の組み合わせによるクッション性は非常に心地いい。アスファルトからの突き上げを感じることはほぼなかった。
従来の「GEL」よりも約65%やわらかく、約10%軽い「PureGEL」がかかと部に内蔵されている
前足部、かかと部ともに厚みのあるミッドソール。「FF BLAST PLUS ECO」は再生可能なサトウキビ由来の素材を約24%使用した、環境にもやさしいフォーム材
クッション性を重視しすぎると、安定性やスムーズな重心移動が犠牲になり、着地時にブレやグラつきを感じたり、走っているときにシューズが重いと感じたりすることがあるが、「ゲルニンバス 26」は、そのあたりも十分に配慮された設計だ。そのひとつが、ソール自体の幅を広くし、受け皿を広くすることで安定性を確保したうえで、スムーズな足運びをサポートするアウトソール形状を採用している点。
もうひとつは、今作からアウトソールには独自開発のラバー素材2種類を配した「HYBRID ASICSGRIP(ハイブリッド アシックスグリップ)」を採用していること。中部には、さまざまな路面コンディションで高いグリップ力を発揮する「ASICSGRIP(アシックスグリップ)」を、そして着地と蹴り出し時に力がかかりやすい爪先部とかかと部には、同社の従来素材と比較して約3倍の耐摩耗性を誇る「AHARPLUS(エーハープラス)」を使用している。グリップ力の高さは、不要なスリップを予防するだけでなく、しっかりと地面をとらえることで安定性にも寄与するものだ。
ブルーの部分がグリップ力にすぐれた「ASICSGRIP」で、グリーンの部分が耐摩耗性にすぐれた「AHARPLUS」
アッパーには、1枚の生地の中で編み方を変えることで、足の部位によってフィッティングと通気性を適正化するエンジニアードニットアッパー構造を採用し、快適な履き心地を提供。加えて、履き口部分とシュータンにはやわらかく足あたりのいいニット素材を採用することで、心地いいフィット感を実現している。
ちなみに、ストレッチが効くやわらかい素材をアッパーに使えば、当然足当たりは心地よく、足にフィットしている感覚も得られるが、着地時や蹴り出し時に足がブレやすくなる。足のブレは疲労につながるので、長時間快適に走るためには抑制しなければならないもの。“本当の快適”を追求するために、素材選びや編み方の調整などの試行錯誤が繰り返され、最終的に本モデルの形にたどり着いたという。
足を入れてみると、アッパーのソフトさはすぐに感じられた。特に足首周辺のフィットは、筆者の好みにかなりマッチしているし、多くの人が快適だと感じるだろう。かかとをしっかりと、そしてソフトにホールドしてくれるので、足とシューズの一体感が感じられるし、靴擦れの心配もなさそうだ。
エンジニアードニットのアッパー。部位によって密度を変え、通気性とサポート性を両立している
初登場から四半世紀以上、アップデートを繰り返しながら、ランナーの足元を支え続けてきたロングセラーシリーズだけあり、ジョギングシューズとしては申し分ない機能を備えている。
抜群のクッション性がありながらも、着地時に過度に沈み込んだり、大きくブレたりということがなく、快適に走れる。ラスト(足型)も、細い、あるいはかかと部がゆるいといったことはまったくなく、多くの日本人の足にフィットするのではないかと思う。
何度かウォーキングも試してみたが、歩いていても「ゲルニンバス」特有のやわらかさ、軽やかさが感じられる。重心移動もスムーズに行え、歩きにくさもない。ウォーキング用としても優秀なシューズだ。
足首周りのフィット感がすばらしい!
クッションシューズの代名詞的な存在の「ゲルニンバス」シリーズの最新作は、「ニンバス(雲)」の名にふさわしいやわらかさを備えていた。
ウォーキングシューズやジョギングシューズにクッション性の高さを求めるのならば、最有力候補の一角となるシューズだろう。欧米で非常に人気が高い理由は、おそらく大きな体格のランナーが多いからだが、特に体重増がきっかけで運動を始めようとしている人にとっては、「ゲルニンバス 26」のクッション性が、ウォーキングやジョギングの習慣化に役立ってくれるはずだ。