オグさんです。今回はタイトリストのウェッジ「ボーケイSM10」シリーズの試打レビューをお届けします。
ボーケイの新モデル「SM10」
「ボーケイ」は、「タイトリスト」ブランドを展開するアクシネット社に属するウェッジのブランドで、名前はクラブデザイナーであるボブ・ボーケイ氏に由来します。ボーケイ氏は、ツアー会場に幾度となく足を運び、ツアープロからウェッジにまつわるたくさんのニーズを蓄積しました。それらを反映したクラブを作ることで、ツアープロはもちろん、アマチュアからも絶大な信頼を得ています。
「SM」は「スピンミルド」の略で、ボーケイウェッジの代表的なモデルです。最新モデルは「SM10」で、初代から数えて10代目に当たります。
「SM」シリーズは、ツアープロのニーズに合わせて代を重ねるごとに進化しており、最新の「SM10」は、前作と比べて溝を精密化し、従来から搭載されている番手ごとの重心最適化により、スピン量の増大に成功。さらに特殊な熱処理によって、溝の耐久性を大幅に高めています。
バックフェースは、シンプルなデザイン
また、「SM10」は、ロフトごとの最適なスピン量を実現させるために、ロフトによって重心位置を変える「プログレッシブCG」という考えの基に設計されています。
厳しいライからボールを止めるためにスピン量が要求されるロフトの多いモデルは重心を高く前方に、ある程度のスイングスピードで振ることが多く、過剰なスピンがいらないロフトの少ないモデルは重心を低く設計しています。
ロフトによって重心位置を変えた設計。写真はタイトリストHPより
また、「SM10」にはソールの形状「グラインド」が6種類用意されています。複数のグラインドを用意することで、プレイヤーごとのさまざまな打ち方やコースコンディションに対応できるようになっています。
では、6種のグラインドをそれぞれ解説していきましょう。
やや丸みを持たせながらも、接地したときにソール全体が触れるように平面に仕上げたグラインド。フルスイングや、フェースを目標に向けたスクエアなショットに向いたソール形状です。
ソール全体が接地するため、スイングスピードの速いフルショットなどで刺さりづらくなります
トレーリングエッジ側、トゥ側、ヒール側を削り落としたグラインド。ソールが接地したときの跳ね返りが少ないのが特徴で、フェースを開いたショットや、地面を薄く削り取るようなロブショットなどに有効。テクニックを使いやすいグラインドと言えます。
ソールの後方、ヒール側、トゥ側が大きく削られているため、ヘッドが突っかかりにくく、ヌケがよいグラインドです
トレーリングエッジ側全体を削ったソール形状。ショット後の突っかかりが軽減され、ヌケがよくなっています。フェースを開いたショット時にソールがしっかり接地する形状です。
ソール後方だけを削っているため、スクエアなショットではヌケがよく、フェースを開くなどのテクニックを使うショットではソールが仕事をしてくれます
トレーリングエッジ側とヒール側、トゥ側を削ったソール形状で、「Mグラインド」とよく似ています。最も大きな違いはソールの張り出し具合を表すバウンスの大きさ。プレイヤーのテクニックをサポートするグラインドの中でも、ミスしたときに助けてくれる度合いが大きいのが特徴です。
削っている面積は広いのですが、削っていないソール部分が大きめに張り出しているため、開いたりするショットのときはじゃまをせず、スクエアなショットやミスしたときの刺さりすぎを防いでくれます
ソール幅が広く、削られている面が少なく、バウンスが大きめ。こういったソールはバンカーショットに向いており、特にボールを飛ばすのが難しい、砂粒が小さいフカフカのバンカーで効果を発揮します。
幅が広く、ほぼ削られていないソール。刺さりづらく、バンカーや、ボールが浮く日本の野芝のラフからでもやさしくアプローチできます
トレーリングエッジ側、ソール側、トゥ側と、ソールの半分以上を削り落としたソール。細かなテクニックが使いやすくヌケもよいので、悪いライからでも起死回生のアプローチが可能です。半面、ミスへの寛容性はやや厳しいところがあります。
大胆に削られたソールが、悪いライでもボールへのシビアなコンタクトを可能にしてくれる、テクニックのある上級者に向けたソールです
「SM」シリーズは、非常に細かなラインアップを誇ります。カラーバリエーションは3種類あり、明るいシルバーの仕上げの「ツアークローム」、いわゆるガンメタリック風な「オールニューニッケル」、そして漆黒の「ジェットブラック」が用意されています。
ロフト構成は、46〜62度まで2度刻みで用意され、グラインドが生きる最適な組み合わせが揃います。
ロフトの選び方は、自分の使っているアイアンのいちばん下のアイアンのロフトに合わせて選ぶのが一般的です。選ぶ基準がないなら、ロフトピッチを均等にして選ぶとよいでしょう。
左から、「ツアークローム」「オールニューニッケル」「ジェットブラック」。日光下で見ると印象がけっこう異なります
いくつかのロフトとグラインドを、グリーン周りのラフや花道、バンカーから試打させてもらいましたが、モデルによって印象は結構変わります。
「Mグラインド」や「Tグラインド」は色々なことができる半面、ミスに強くはありません。
「Fグラインド」や「Kグラインド」はミスに強く安定したショットができるのですが、細かなテクニックを使うには不向きです。
ミスを軽減させたいのか、それともテクニックを使いたいのかでも、選ぶグラインドは変わってきます。
バンカーは圧倒的に「Kグラインド」がやさしかったです。少々手前から入ってもボールの高さを出してくれました。細かなスピンコントロールなら「Mグラインド」がよかったです
個人的に扱いやすかったのは、「Mグラインド」でした。色々なライでも扱いやすく、ミスもそれなりに助けてくれました。
撮影は日が傾いた夕方に行ったのですが、場所によってはフェースに光が反射して少し気になった場面がありました。反射を気にするなら、「オールニューニッケル」や「ジェットブラック」がおすすめです。
グリーン周りの芝の薄いところでは「Tグラインド」が扱いやすかったのですが、失敗するとちょっとザックリ気味にヘッドが刺さってしまいました。少々ミスしても助けてくれたのは「Dグラインド」でした
タイトリストはウェッジフィッティングを各地で行っており、グラインドやロフト構成など、最適な組み合わせを提案してくれます。
簡単な流れは、まず問診で現状の問題をヒアリング。そして、今使っている自分のウェッジでデータを計測し、問診時の問題点の確認や、スイングの特徴を確認します。その後、各自の症状に合わせてロフト構成やグラインドはもちろん、シャフト違いまで試打し、そのプレイヤーにピッタリのウェッジ構成を提案してくれるのです。
ウェッジフィッティングは完全予約制で、全国で受けられます。受けられる場所は、タイトリストのHPに記載されているので、興味があればチェックしてみてください。
また、同社のHPでは「ウェッジセレクター」なるものが用意されています。8つの質問に答えるだけで、プレースタイルやコースコンディションに合わせたウェッジの組み合わせを提案してくれるすぐれもの! なかなかフィッティングに行けないとか、自分に合ったウェッジの組み合わせを知りたいゴルファーにおすすめです。
ウェッジフィッティングでのひとコマ。弾道測定器を使い、細かな分析を行います
計測したデータを見ながら、どうすればよりよくなるのかを細かく説明してくれるので、上達のヒントにもなります
計測したデータや好みなどを反映した、ウェッジのベストの組み合わせを提案してくれます
「SM10」は、ツアープロからのフィードバックに基づいた情報を基に開発され、さまざまなゴルファーの打ち方にマッチできるように、細かく細分化されたバリエーションが用意されています。
さらに、その細かなバリエーションを適切なゴルファーに届けるべく、メーカーみずからフィッティングを行うなど、非の打ちどころがないウェッジのシリーズだと感じました。
「ボーケイ」ブランドのウェッジは、たびたび「ウェッジの王者」などと呼ばれますが、それに恥じないクラブであり、販売体制だと思います。
ウェッジはスコアメイクには欠かせないクラブで、ある意味、ドライバーやアイアンよりも重要なクラブと言えます。腕前に関係なく、スコアにこだわるのであれば、ぜひ「ボーケイ」のウェッジフィッティングを受け、自分のプレースタイルに最適な「SM10」ウェッジを手にすべきだと思います。
写真:野村知也