レビュー

履いているのに裸足感覚! ニューバランス「ミニマス」で弱った“歩く力”がよみがえる

運動不足の解消やダイエット、健康維持を目的にウォーキングを始めるとき、ケガの予防や快適性を最優先に考えるなら、ウォーキング専用設計のシューズが望ましい。適度なクッション性を備えながら、安定性があり、前方への重心移動がしやすいシューズであれば、足腰への負担が小さく、少々距離が長くても心地よく歩ける。歩く距離が長くなると当然消費カロリーが増えるので、効率よく脂肪燃焼させたいのであればウォーキング専用設計のシューズで歩くのがベストであろう。

いっぽうで、現代人はシューズで足を守りすぎているという考え方もある。人間の足の裏には内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチという3つのアーチがあり、体重(荷重)の分散、着地衝撃の吸収、前へ進む推進力の補助、身体バランスの安定化といった役割を果たしている。足裏のアーチは、運動不足や加齢による筋力低下、肥満などが原因で崩れてしまうのだが、そもそも靴を履いている時間が長い現代人は、アーチの機能が低下しがちなのだ。

また、裸足であれば、着地や蹴り出しの際にみずからの力で横ブレを抑制しながらバランスをとり、足を前へ運んでいく必要がある。高機能なシューズはそれらをサポートしてくれるわけだが、見方を変えれば、本来やるべき仕事を足がサボっている状態と言うこともできる。

ニューバランス「ミニマス」は裸足に近い履き心地を目指した画期的なシューズ

ニューバランスの「ミニマス」シリーズは、シューズ自体の機能を最小限に削ぎ落とし、裸足に近い履き心地を実現することで、本来人間の足に備わっている力を最大限に引き出すことを目的としたコレクション。快適性を追求する高機能シューズとは考え方が異なっている。

シューズ自体の機能を削ぎ落とし、裸足に近い履き心地を実現。ニューバランス「NB ミニマス トレイル」の公式サイト価格は16,500円(税込)

シューズ自体の機能を削ぎ落とし、裸足に近い履き心地を実現。ニューバランス「NB ミニマス トレイル」の公式サイト価格は16,500円(税込)

一般的なウォーキングシューズやランニングシューズは、着地から蹴り出しまでの重心移動をスムーズにするため、かかと部と前足部で厚みに差が設けられている。かかと部と前足部の高低差は、ドロップまたはオフセットと呼ばれ、一般的なウォーキングシューズやランニングシューズは10mm前後に設計されていることが多い。

ドロップのあるシューズは重心移動を助けてくれるので、前方に進みやすい。しかし当たり前ながら、かかと部と前足部の高低差がない裸足の状態とは遠くなる。いっぽう、「ミニマス」シリーズのドロップは4mmと、裸足で地面に接するのに近い状態を実現。着地時の衝撃を足裏全体に分散させる着地方法に導きながら、ダイレクトな接地感が得られる仕上がりとなっている。

ベアフットファンが待ち望んでいた「ミニマス」の復活

ニューバランスの「ミニマス」シリーズが初登場したのは、2011年春。当時、裸足で走るベアフット・ランナーについて書かれた「BORN TO RUN」(クリストファー・マクドゥーガル著)がベストセラーとなっていたこともあり、同シリーズはランナーを中心に大きな注目を浴びた。一時期は、ライフスタイルカテゴリーでも「ミニマス」シリーズと同じソールユニットを搭載したモデルが展開されていたものの、世の厚底トレンドへのシフトもあり、日本での展開が休止。そして2024年7月、「New Balance Minimus is back.」のコピーとともに復活を果たしたのだ。リリースされたのは、トレイルランニングモデルの「NB ミニマス トレイル」と、トレーニングモデルの「NB ミニマス トレーニング」。今回筆者がウォーキング用シューズとしてテストしたのは、「NB ミニマス トレイル」だ。

「NB ミニマス トレイル」は、トレイルランニングやクロスカントリーなど、不整地を走ることを想定して開発されたモデル。ミッドソールには、エネルギーリターンにすぐれた「フューエルセル(FuelCell)コンパウンド」が採用されている。ロードランナー、トレイルランナーのトレーニング用シューズとしても活躍するだろう。

ミッドソールにはクッション性と反発性にすぐれた「フューエルセル コンパウンド」を採用

ミッドソールにはクッション性と反発性にすぐれた「フューエルセル コンパウンド」を採用

タフな山道も走破できるようアウトソールはグリップ力にすぐれている

タフな山道も走破できるようアウトソールはグリップ力にすぐれている

爪先部分には3層構造のトゥプロテクションを搭載

爪先部分には3層構造のトゥプロテクションを搭載

履いてみると普段あまり使われていない筋肉に刺激が入る印象

履き口周辺はソフトでストレッチ性のある素材が使われているので、足入れがしやすく、靴擦れの心配は少ないと思われる。前足部は少し広めの設計で、足指の自然な動きを妨げることはなさそうだ。

近年、ウォーキングシューズやランニングシューズは厚底なモデルが多いので、それらに履き慣れていると、足裏と地面が近く、薄いと感じるだろう。しかし、ミッドソールの「フューエルセル」のおかげか、接地感はソフト。筆者は初代「ミニマス」が好きでよく履いていたのだが、それと比べると(記憶は古いものの)かなりやわらかい印象だ。

ドロップが4mmでフラットに近いため、普段ドロップの大きなシューズで歩いている人や、ヒールの高いシューズを履いている女性は、履き慣れるまでは違和感があるだろう(極端なことを言うと、自分が後傾しているような感覚があるかもしれない)。

何度か数kmのウォーキングで試し、取材で終日外を歩き回るときにも着用。2か月ほど日常使いもしてみたのだが、一般的なスニーカーで歩くときや、ランニングシューズで走るときとは異なった刺激が脚にある。筆者の場合は、内転筋と大臀筋にいつも以上に刺激が入った。また、体が自然とよい姿勢をとろうとするような感覚もあり、履き続けることで、本来機能するべき機能、もっとあるべき筋力が得られるのではないかと思えた。

履き口はソフトで足入れしやすく、足首周辺にやさしくフィットする

履き口はソフトで足入れしやすく、足首周辺にやさしくフィットする

現代人の日常生活ではあまり刺激されない筋肉を刺激してくれる印象

現代人の日常生活ではあまり刺激されない筋肉を刺激してくれる印象

【まとめ】「ミニマス」は健康維持の役に立ってくれるはず!

「NB ミニマス トレイル」を履いて歩くと、サポート力にすぐれた高機能シューズを履いたときには得られない刺激が体に入る。それは、姿勢維持やスムーズな歩行動作をするために、本来使うべき筋肉なのだと思われる。

この靴で毎日長距離を歩く必要はないかもしれないが、定期的に活用してそれらの筋肉に刺激を入れることは、長く健康でいるため、自分の脚で歩き続けるための役に立ってくれるだろう。

注意してほしいのが、普段ほとんど運動をしていない人がいきなり「NB ミニマス トレイル」で長距離を歩くと、負荷が大きくなりすぎる可能性がある点。短い距離(かつできれば公園や河川敷などの不整地で)で慣らしてから、少しずつ距離を延ばしていくのがベストだろう。

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神津文人
Writer
神津文人
雑誌編集者(3媒体でトータル15年。モノ雑誌では副編集長を務める)を経て、フリーランスのライター&エディターに。ヘルス&フィットネス、スポーツ領域を中心に活動中。書籍の構成も手掛ける。趣味は柔術。ときどきランニング。
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岡田 太(編集部)
Editor
岡田 太(編集部)
雑誌とWebでファッション/ライフスタイル系メディアの編集長を務め、「価格.comマガジン」へ。被服費&趣味関連の散財でクレジットカードを使い倒してきた経験を生かし、現在はクレカを中心としたマネー記事を担当。
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