個性的なキャンプ&アウトドアグッズを手掛けることで知られるDODが、2024年の秋より釣り業界に本格的に参戦。「もっとゆるくて気軽な釣りを」というテーマのもと、順次6アイテムを販売していく予定ですが、そのトップバッターとなるのが、この「釣りボトル」です。
キャンプ用の連結式スパイスケースにリールを取り付けたような構造。ボトルのサイズは4(直径)×13(高さ)cmで、250mL缶より気持ち小さいくらいです
本製品のキャッチフレーズは「ポケットに入るボトル型釣具」。要するに、釣具ケースにリールを取り付けて、竿なしで手釣りしよう、というコンセプトのようです。はたしてこれで釣れるのか……? さっそく現物を入手して、使ってみることにしました。
ボトルを見てみると、取り付けられていたのは、いわゆるギア比1:1の太鼓リール。魚を引っ張り上げるトルクや糸切れを防ぐドラグ性能は期待できませんが、そのぶん魚が掛かったときにはダイレクトでスリリングなやり取りが楽しめそうです。
スプールをフリーにするクラッチボタンもないため、仕掛けをキャストしたり落とし込んだりするときは、糸をガイドから外してフリーにしつつ、巻き上げ時にガイドにセットする、というやり方のようです。
リールの動きは思ったより滑らかで、かっちりとした質感も良好。ドラグの効きはそれなりにつき、あくまで合わせ切れを防ぐ程度に考えておいたほうがよさそう
手元に届いた時点で、すでにスナップサルカンが糸に連結してあるのはうれしいポイントです。釣り場に着いたらボトルから出して針を取り付け、餌orワームをセットすればOKという手軽さ。この点はまさに「気軽に釣りが楽しめる」と言えそうです。
ちょっと気になったのが針のチョイス。大小2種類のジグヘッドが付いていますが、すべてヘッド部分に返しが付いたワーム用。「釣りボトル」の場合はロッドでアクションを付けられない関係上、基本的に仕掛けを放り投げて放置orズル引き、もしくは足元に落としてボトムバンピングという方法のみ。つまり、動きで誘うワームには不向きな釣り方なので、ここは餌釣り用のジグヘッドを付けてほしいところ。餌釣り用ならワームを付けられますからね。
5gのジグヘッドと1gのジグヘッド、それにスナップサルカンが付属。100均のものと比べても針が鋭く、1つひとつのパーツの精度はよい
さっそく使ってみるべく、筆者のホームグラウンドである神奈川県・葉山港のケーソンにやってきました。ここは普段、胴付き仕掛けを投げ込めば、ハコフグ(美味しい)やサンバソウ(石鯛の稚魚)を狙いつつ、外道でタカノハダイやリリースサイズのカサゴ、クサフグなどが釣れるスポット。いつもなら1〜2時間もやればまずボウズはない、というポイントですが、はたしていつもと違う道具で釣れるのでしょうか。
この日は南向きの風が強く大荒れ。正直釣りがしやすい環境ではありませんでしたが、釣り客の中には石鯛と石垣鯛を両方釣っている人も
最初はとりあえず魚がいるかどうか確認したいこともあり、ムキアサリを餌に、小さい針で試してみることに。1gのジグヘッドを選べば、カサゴなどの口が大きめの魚なら釣れるでしょう。
おそらくこの場所なら魚のサイズから考えて小さいほうのジグヘッド一択。「釣りボトル」はゴカイなどの生きた虫餌に触れない方々がメインの商材だと思いますので、冷凍のムキアサリを用意してみました
エサの付け方は取水管やベロなどの硬いところから刺し、やわらかくて美味しいワタの部分に針先を隠すのがポイントです
本来ならばケーソンと外海の境目あたりに大きめの魚がいるのですが、竿がないためピンポイントに狙うのは難しく、さらに風が強い日だったことも災いして、1gのジグヘッドでは着底も感じられないというバッドコンディション。そこで、私物を使って仕掛けを変えてみることにしました。
リールから糸が出るように傾け、糸が止まって緩んだら着底。その後、少し巻き上げて糸を張る
オモリを変えると着底は感じられるようになりましたが、餌は取られるもののアタリの反応は感じられず……。てっきり手のほうがダイレクトに海中の動きを感じられると思っていたのですが、竿先に反応が出たりアタリを増幅したりして伝えてくれるぶん、竿のほうがわかりやすいようです。なお、つい手が滑って海に「釣りボトル」を落としそうになるのが怖かったので、ボトルに設置された専用穴を使って、ストラップなどを装着したほうがよさそうです。
ジグヘッドの代わりに4号のナス型オモリを装着し、枝ハリスを出した簡易胴付き仕掛け。ハリスはたまたまポケットに入っていたマス針の6号を使用
4号のオモリであれば、しっかりと着底を感じられるようになりました。人さし指で糸をコントロールするとよさそうです
結局、この日は風も強かったこともあって1時間ほどでボウズのまま撤退することに……。
使ってみた感想としては、「釣りボトル」は初心者が海水浴のついでに気軽に魚を釣って遊ぶための商品ではないかもしれないな、と。もちろん餌を付けなくても針に飛びついてくるぐらい魚の活性が高ければ、海水浴がてら短めのサビキ針を付けて小魚を釣ることも不可能ではありません。ただ、そういったアイテムが欲しい人は、今なら3,000円も出せばロッドとリールと仕掛けのセットが売っていますので、そっちを選ぶのがよさそう。
リールのギア比が低いため仕掛けを上げるのがちょっと大変ですが、魚がヒットした場合は小魚でも引きを楽しめそうです
むしろ、魚を釣るために「釣りボトル」を買うのではなく、「この道具でどうやって魚を釣るか」という“縛りプレイ”の方向にシフトしたほうが楽しそうです。なんと言ってもコンパクトさが最大の利点なので、たとえばカヌー遊びに持ち込んで、漕ぐのに疲れたら釣りボトルにエサやワームを付けて落とし込み、あとは波で流されるままズル引きすれば、洋上でぷかぷか浮いているだけでカレイやマゴチなんかを狙えそう。あるいは、河原で焚き火のついでにぶっ込み釣りでウナギを狙ったりするのもアリかもしれません。既存の釣りに囚われない、オリジナルな遊び方を見出したい人に「釣りボトル」はぴったりかもしれません!