ウォーキングやジョギングは時間と場所を選ばず、特別な道具を揃える必要もない手軽な運動。しかし、ケガの予防や快適性を考慮するなら、シューズは専用のものを選びたい。特に着地衝撃を緩衝してくれるクッション性と、着地時のブレやグラつきを抑制してくれる安定性をバランスよく備えたシューズが、最初の一足として理想的だ。
アシックス「ゲルニンバス(GEL-NIMBUS)」シリーズは、すぐれたクッション性に定評のあるロングセラー。これからウォーキングやジョギングを始めようとする人にとって、間違いなく最適なシューズのひとつにあげられるだろう。
アシックス「ゲルニンバス27」。公式サイト価格は20,900円(税込)。写真のカラーは「ウエーブティール×サクソングリーン」。タウンユースしやすいブラックやホワイトも展開されている
モデル名の「ニンバス(NIMBUS)」は、ラテン語で「雲」を意味する。1999年に登場して以来、文字どおり、雲の上を走っているような、やわらかい接地感と軽やかなライド感により、多くのランナーに支持され続けてきた。特にクッションシューズの市場が大きいヨーロッパやアメリカでは、高い人気を誇っているシリーズだ。
シリーズ最新作である「ゲルニンバス27」のミッドソールには、前作と同様、「エフエフ ブラスト プラス エコ(FF BLAST PLUS ECO)」という素材が採用されている。これは、軽量でやわらかく跳ねるように反発する「FF BLAST PLUS」機能はそのままに、約24%を植物由来に変えた環境配慮がなされたフォーム素材だ。そして、かかと部には、従来素材と比べて約65%やわらかく、約10%軽い「ピュアゲル(PureGEL)」が内蔵されていて、本作の高いクッション性に大きく寄与している。
とはいえ、「ゲルニンバス26」にも「ピュアゲル」は内蔵されていた。では、「ゲルニンバス27」は前作から何が変わったのだろうか。最も大きなアップデートポイントは、ミッドソールが全体的に2mm厚くなったこと。前作もクッション性が非常に高く、「ニンバス(雲)」の名にふさわしいやわらかさを備えていたが、ミッドソールが厚くなったことでさらにクッション性が増し、接地感もソフトになったのだ。
前作よりもミッドソール全体が2mm厚くなった
ミッドソールの素材は「エフエフ ブラスト プラス エコ」。かかと部には「ピュアゲル」が内蔵されている
「ゲルニンバス26」ではニットアッパーが使用されていたが、本作では部位によって編み方や孔の大きさを変え、高い通気性とサポート性を両立したエンジニアードメッシュが採用された。シュータン部分には変わらずニットが使われており、ソフトなフィット感は維持されている。
仕事中、立っているだけ、もしくは座っているだけでもシューズの中は蒸れるものだが、長時間ウォーキングやランニングをすれば、足がかく汗の量は当然多くなる。通気性が高くないシューズを履いているとシューズ内がすぐに蒸れてしまい、それは不快感やニオイの原因になるだけでなく、マメなどのトラブルにもつながる。通気性が高いということは、運動をした際、シューズ内の環境が長く快適に維持されるということなのだ。
最近は、春から秋まで気温が高い日が多いが、通気性の高さは、快適なウォーキング&ランニングライフを強力にサポートしてくれる(寒い日に運動しない場合の着用には不向きとも言えるが)。
アッパーにはエンジニアードメッシュを採用。通気性が高く運動時もシューズ内の環境が快適に保たれる
シュータン部分はソフトなニット素材
近年、分厚いミッドソールを採用した厚底のハイクッションモデルがランニングシューズのトレンドになっている。しかし、あまりにもクッション性を重視しすぎると、安定性やスムーズな重心移動が犠牲になってしまう。安定性に欠けると、着地時にブレやグラつきを感じるだけでなく、場合によっては、それが原因で脚が本来不要なダメージを負うこともある。
その点、「ゲルニンバス27」は、安定性にも十分配慮した設計になっている。ソール底面の幅が広くとられているため、着地時の接地面積が広く、ブレやグラつきが生じにくい。また、アウトソールには、さまざまな路面コンディションで高いグリップ力を発揮する「アシックスグリップ(ASICSGRIP)」と、耐摩耗性にすぐれた「エーハープラス(AHARPLUS)」を組み合わせた「ハイブリッド アシックスグリップ(HYBRID ASICSGRIP)」を採用している。高いグリップ力が地面をしっかりととらえることで安定性アップに貢献しながら、地面に確実に力を伝達することをサポートし、エネルギーロスを抑えてくれる。足運びもスムーズになる。
グリップ力と耐摩耗性の高さを両立したアウトソール
いざ「ゲルニンバス27」に足を入れてみると、まず感じるのが、足首周辺の快適なフィット感。かかとはしっかりと、でもソフトにホールドされる。かかとのホールド力が不足していたり、足首周辺がルーズだったりするシューズは、ウォーキングやランニングをするのにはおすすめできない。脱ぎ履きがしやすいというメリットはあるものの、運動時にシューズ内で足が動いてしまうと、靴擦れなどのトラブルの原因になる。シューズのサイズが足に合ってない場合も同様だ。大きすぎたり、小さすぎたりするシューズを選んでしまうと、シューズの持つ機能が十分に発揮されないため、シューズは必ず試着してほしい。
「ゲルニンバス27」を履いてみた。さて、前作との違いは?
歩き出すと、確かなクッション性を感じる。ジョギングまで速度を上げても、接地感はかなりソフトでアスファルトの硬さを感じない。ミッドソールが厚くなった分、これまでよりもっちりとした印象になったが、不安定さはない。
ソールの厚さが増したため、重くなるのでは? という心配もあったが、足運びはスムーズに行えた。ちなみに、ミッドソールの発泡のさせ方を進化させたことで、反発性やクッション性といった機能面はキープしたまま軽量化に成功。厚さは増したものの、シューズ重量は前作とほぼ変わらないということだ。
足首周辺のフィットがすばらしい!
これまで以上のクッション性と快適性を備えた「ゲルニンバス27」。ウォーキングシューズやランニングシューズに高いクッション性を求める人は、一度試しておくべきモデルであることは間違いない。
体重増がきっかけで運動を始めようとしている場合、着地衝撃を十分に緩衝してくれるクッション性は必須の機能。ダイエット目的の人には特に推したいシューズだ。
分厚いソールが着地した際の衝撃をやわらげてくれるため、足にかかる負担は軽い