ランニングは時間と場所を選ばず気軽に始められる。いっぽうで、始めたい気持ちはあるけれど、継続できるかどうかが少々不安……という人も多いだろう。ケガなく快適にランニングを継続するには専用シューズが不可欠だが、ウォーキングやタウンユースにも活用できるシューズであれば、お買い得感は高い。事実、そんな汎用性の高いシューズはロングセラーとなっていることが多い。
ホカ(HOKA)の「クリフトン(CLIFTON)」シリーズも、そんなシューズのひとつ。2025年4月に発売になったばかりの最新作「クリフトン 10」も多くの人におすすめできるクオリティの高いシューズに仕上がっていた。
スポーツを楽しむすべての人に向けて革新的なパフォーマンスフットウエアおよびアパレルを展開するブランド、ホカのアイコン的存在である「クリフトン」は、2014年に初代モデルが誕生。多くのランナーに愛されているのはもちろんのこと、タウンユース用のシューズとしても高い人気を誇っている。
その記念すべき10作目となるのが本作だ。ホカのプロダクトチームは、アスリートや一般ランナーからのフィードバックを慎重に分析し、これまでで最もスムーズな走りを実現するために全面的なアップデートを行ったという。
ホカ「クリフトン 10」。公式サイト価格は19,800円(税込)。写真のカラーはホカ ブルー/スカイワード ブルー
いちばん大きな変更点は、前足部とかかと部の高低差、いわゆるドロップが5mmから8mmに変更されたことだろう。「クリフトン 9」のスタックハイト(ソールの厚さ)はかかと部が38mm、前足部が33mm(メンズの場合)だったが、「クリフトン 10」はかかと部が42mm、前足部が34mmとなった。
ホカのランニングシューズは、低ドロップ(一般的にドロップは8〜12mmに設定されているものが多い)と、「メタロッカー」と呼ばれる独自のソールのカーブ構造によってナチュラルかつスムーズな足運びをうながす点が特徴のひとつ。たとえばブランドを代表するハイクッションモデルである「ボンダイ 9」、軽量性とクッション性を両立した「リンコン 4」、反発性にすぐれたスピードモデルの「マッハ 6」といった人気モデルは、いずれも5mmドロップだ。
ドロップの変更は、推進力をより感じやすくなる効果も狙ったものだとは思うが、ブランド内での履き分け(ドロップの違いで履き味が変わる)や、他ブランドのシューズで走っているランナーがホカを試す際の入門モデル的位置付けといったことも意識したのではないだろうか。
かかと部は前作よりも4mm厚くなった
アウトソールには耐摩耗性にすぐれたデュラブレーションラバーを採用
「メタロッカー」と並んで、ホカのランニングシューズにおける重要なテクノロジーにあげられるのが、ミッドソールの「アクティブ フットフレーム」。ミッドソールが足全体を包むバケットシート型の構造になっており、踏み込んだ際の縦横の揺れやズレを防いでくれるものだ。
もちろん「クリフトン 10」にもこの「アクティブ フットレーム」が採用されている。アッパーには、通気性の高さとソフトなフィット感が特徴のジャカードニットを採用。ヒール部分が改良され、より確かなホールド感と快適なフィット感が得られるようになった。シュータンのシューレースを通す部分には、ダブルレースロックを採用することで、ランニング時のシュータンのズレを抑制する。さらに、前足部のフィット感や、安定性を高めるためのミッドソール構造の微調整も行われたとのこと。
長時間履き続けても、長い距離を走り続けても快適性が維持されるよう、足とシューズの一体感を高めるアップデートが随所に施されたというわけだ。
バケットシート型のミッドソールはホカのシューズの大きな特徴
かかと周辺のホールド力、フィット感が向上
アッパーは通気性にすぐれたジャカードニット製
前作からかかと部が4mm、前足部が1mm厚くなった効果もあり、クッション性がかなり向上した印象。接地はソフトで、長く走った際も脚へのダメージが少なそうだ。
ドロップが変更されたものの、「クリフトン」らしいスムーズなライド感、「メタロッカー」による滑らかな重心移動が行える感覚は変わらない。歩いていても、走っていても、無理なく足が前に出てくれる感覚がある。
2025年2月の記事で「ボンダイ 9」をレビューしているが、「クリフトン 10」は「ボンダイ 9」よりも軽やかに走れるシューズだ。「ボンダイ 9」のスタックハイトはかかと部が43mmで前足部が38mm(メンズ)と、「クリフトン 10」よりもかかと部が1mm、前足部が4mm厚い。重量は「クリフトン 10」が278g(メンズ28cm)で、「ボンダイ 9」が297g(同)となっている。
軽やかに走りたいなら「クリフトン 10」を、クッション性の高さを重視するなら「ボンダイ 9」をチョイスしたい。ウォーキングにより適しているのは「ボンダイ 9」のほうだろう。
軽やかでスムーズなライド感が得られる「クリフトン 10」
クッション性とフィット感が向上し、今まで以上に快適な履き心地とスムーズな走り心地を実現した「クリフトン 10」。自己記録更新を目指すランナーのトレーニングモデルとして、ダイエットや健康維持を目的とするランナーのパートナーとして大活躍しそうなシューズだ。
今回、ドロップが5mmから8mmに変更されたのは、「クリフトン」シリーズにおけるひとつのマイルストーンとなるのではないだろうか。とはいえ、「クリフトン」らしさは失われておらず、ナチュラルでスムーズなライド感が味わえる。
アイコンモデルらしく、カラーバリエーションが豊富。オールブラックに、ネイビー、グレーなどタウンユースしやすいカラーも多く、引き続きランナー以外からも支持されそうだ。また、この物価高のなか、価格が19,800円(税込)と、前作(税込20,900円)より抑えられている点もうれしいポイントだ。
写真のブルーはスポーティーな印象だが、タウンユースしやすいカラーも豊富に展開されている