ワークアウトに役立つ機能とタフネスを備えた「G-SQUAD」シリーズより、角型デザインに初めてハートレートモニターを搭載したG-SHOCK「DW-H5600」が登場。2週間ほど実機を利用し、その使い勝手をレポートする。
角型デザインにハートレートモニターを初搭載したG-SHOCK「DW-H5600」
左から「DW-H5600-2JR」「DW-H5600-1JR」。ともに公式サイト価格は41,800円(税込)
G-SHOCK「DW-H5600」は、2023年5月に発売されたデジタルモデル。角型デザインにハートレートモニターを搭載した点が特徴だ。
G-SHOCKのDNAを感じさせる角型デザインは、ランニングなどのアクティビティーをサポートするために生まれた「G-SQUAD」シリーズにおいて、2021年7月発売の「GBD-200」が先に実現している。そして今回登場した「DW-H5600」はそのラウンド型の「GBD-100」よりも小径化を果たすことで“着けやすさ”を、またG-SHOCKファンになじみのあるデザインが“気軽さ”をもたらし、「G-SQUAD」をより身近な存在へと近づけた。
ただ、「GBD-200」は角型デザインとはいえ、フロントボタンを設けていたり、サイドボタンがスクエア型であったりとスポーツシーンを想定した独自設計で、G-SHOCKらしさはあっても「オリジンと同じ」とまでは言えないデザインだった。その点、「DW-H5600」は、その品番が示しているとおり、G-SHOCKのオリジンである「5600」の系譜を継いだモデルということで、「G-SQUAD」シリーズに新しい風をもたらしている。
たとえば、上下の一部が凸状になったベゼルや、ボタンガードの役割を備えたケースサイドの造形、そして機能表示がプリントされた文字板など、往年のスタイルをたっぷりと味わえる。今回、実際に着用していても周囲の人からは「いつもの『5600』だよね?」という反応が多かった。
G-SHOCKのオリジンである角型デザインを採用
いっぽうで、「DW-H5600」は従来の「5600」とまったく同じというわけではない。
たとえばサイズ。ベーシックな機能を有するスクエアモデル「DW-5600E-1」とケースサイズを比較してみると、「DW-5600E-1」が横42.8×縦48.9mmであるところ、今作「DW-H5600」は横44.5×縦51.1mmで、面積比としては約9%大きい。ケース厚も4mmほど厚くなっている。ハートレートモニターを始め、Bluetooth機能や3軸加速度センサーなど、いくつかの機能を追加で搭載させたことが理由だろう。むしろ、ここまで多彩な機能を追加していながら、コンパクトなサイズ感に抑えている点を評価したい。
また、ケースサイドにあるプッシュボタンの丸い形状やサイズ感も従来の「5600」と同様だが、モード切り替えに用いる左下のボタンだけ異なるカラーにアレンジされている。ささやかなディテールだが、特別感を覚えさせる工夫だ。
1つだけ色替えしたプッシュボタン
ディンプルや凹凸のあるバンド形状は、「5600」らしさを感じさせるデザイン。ただ今作の場合、心拍計の計測を正確に行うために肌に密着させる必要があり、バックルのピンを通せる穴のピッチが細かく、数も多い。また、サステナブルな仕組みの実現を目指す昨今の社会情勢を反映し、ベゼルとバンドの素材にはバイオマスプラスチックを採用している点も新しい。
バンドはこれまでの「5600」(右)と形状や素材が異なる
そして、裏ブタにはセンサーが露出している。G-SHOCKにて手首で計測する心拍計が初搭載されたのは2020年5月発売の「GBD-H1000」だが、今作では心拍数だけでなく血中酸素レベルを計測するためのセンサーも搭載。センシングパーツもよりスマートに組み込まれている印象を受け、長時間着用していても違和感を覚えることはなかった。
また、専用のUSBケーブルを使った充電にも対応している。今作にはタフソーラーも搭載されているが、定期的にアクティビティーを計測したいのならソーラー機能だけだとバッテリーが不足してしまう。週に1〜2回は充電ケーブルによる充電が必要だろう(よほどハードに運動している人なら、それ以上)。なお、バッテリー残量が「LOW」表示になると、使用できるのが時刻表示やアラームといった基本的な機能のみに制限される。ソーラー充電のみでも「LOW」状態を維持できる設計になっているため、登山など数日にわたって充電ケーブルによる充電を行えないような状況でも、腕時計として最低限の役割を果たせるようだ。
各種センサーや充電端子を備えるケースバック
画面には視認性の高い高精細MIP液晶が使われており、多彩な情報を一度に表示できる。
高精細で小さな文字も視認しやすいMIP液晶
ここからは、搭載されている機能や操作感について説明していく。なお、レビューに当たっては、メタルベゼル搭載の「DW-H5600MB-1JR」を使用した。
時計の基本的な機能や身体回復サポート機能などにアクセスできるウォッチモードは、時刻表示を含めて13種類も用意されている。気になった機能をチェックしてみた。
全部で12+時刻表示を備えるウォッチモード
「通知の確認機能」では、Bluetoothで連携させたスマホに届いた各種通知を確認できる。一般的なスマホ同様、時刻表示画面の状態でもプッシュ通知で送信者名や件名を1回表示し、その後にこのモードを選ぶことでもう少し詳しい内容を確認できる仕組みだ。ここで長文のビジネスレターをがっつり読めはしないが、画面では一度に4行も表示でき、あらかたの内容を理解できる。角型G-SHOCKでここまで情報を取得できるとは、数十年来のファンからしてみると隔世の感がある。
「通知の確認機能」でメールなどの内容を確認
「心拍計測」モードでは、心拍に関連するさまざまな情報を確認できる。表示されるのは、現在の推定心拍数、当日の最大/最小心拍数、最大8時間の心拍グラフだ。なお、ワークアウト中は動作させた各アクティビティーモードからリアルタイムの心拍データを取得できるため、あえてここの「心拍計測」モードを使う必要はない。過去の情報を振り返るほか、「実は緊張しているのだろうか?」など、今現在の自分が置かれている状態を客観的に知りたいときに使えそうだ。
「心拍計測」で自身の身体の状態を確かめられる
今作では「血中酸素レベル」の計測も可能になった。
これは血中に取り込まれた酸素のレベルを計測できるもので、計測を選択して十数秒で結果が表示される。95〜100%が正常と言われ、それを下回っていた場合は注意が必要だ。積極的に活用するモードではないかもしれないが、新型感染症が世界で猛威を振るった際は、本人の自覚のないまま血中酸素レベルが低下し、その後に急速に病状が悪化してしまうという症状が報告されている。血中酸素レベルを日常的に意識できるものとして、とても意義深いと思う。
定期的にチェックしておきたい「血中酸素レベル」
「ライフログ」では、当日の歩数や目標値の達成度、消費カロリー、アクティブ時間を確認できる。さらに日ごと、週ごと、月ごとの歩数の目標達成率も棒グラフで表示されるので、自分がこれまでどのくらい運動してきたのかが一目瞭然。歩くことは健康維持の大原則だ。目標未達のグラフを眺めれば、発奮するきっかけになりそうだ。
いつでも自分の活動量を振り返られる「ライフログ」
個人的に使ってみてなかなかよかったのが、「Nightly Recharge」だ。
これは、日中に受けた負荷からどれだけ回復できたのかを確認できる機能。寝ている間も「DW-H5600」を着用しておくことで、「睡眠の質(Sleep Charge)」と「睡眠の早い時間帯に自律神経系がどれだけ落ち着いたか(ANS Charge)」の2要素を計測し、グラフを用いて結果を教えてくれるというものだ。表示されるステータスは「VERY GOOD(とてもよい)」から「VERY POOR(とても悪い)」までの7段階で、2要素それぞれの傾向も矢印で示してくれる。ちなみに下の写真で示された「COMPROMISED」は「やや悪い」のステータス。睡眠時間をある程度確保したつもりでも、実際はそこまで質のいい睡眠が取れておらず、日中にダルさを感じることも少なくないもの。視覚化してくれる「Nightly Recharge」を活用することで、自分の身体の状態をより的確に理解できそうだ。
「Nightly Recharge」では自分の睡眠状態がよくわかる
なお、ウォッチフェイスには3パターンが用意されている。
「フェイス1」は、現在時刻を大きく表示したスタンダードタイプ。時計としての機能を期待したいときに最適だ。
「フェイス2」も、やはり現在時刻表示が大きいものの、右上に特定のデータを表示できる枠を設置。スマホアプリを使えばここに表示させるデータを選択でき、以下の項目のうちのいずれか1つを表示できる。
・当日の歩数
・カーディオ負荷ステータス
・当日の歩行距離
・心拍数
・最高最低心拍数
・睡眠スコア+レベル表示/睡眠時間/睡眠評価
・消費カロリー
・当日の身体を動かしていた時間
・日の出日の入り時刻
・月齢
「フェイス3」は、当日を含めた過去8日間の歩数達成率をグラフ表示でき、どれだけ身体を動かしてきたのかを常に意識できる。自分が重要視しているテーマに基づいて、計測データを常に表示しておけるのは「G-SQUAD」ならではのメリットだ。
3種類のウォッチフェイスが用意されている
なお、今回は触れなかったが、このほかにも「呼吸エクササイズ」「ストップウオッチ」「タイマー」「ワールドタイム」「アルマナック(日の出/日の入り時刻・月齢)」「カーディオ負荷ステータス」「アクティビティーログ」のモードが用意されている。
次にG-SHOCKならではの機能と言えるアクティビティーモードを試してみた。以下の4つのモードが用意されており、それぞれに見合ったデータを計測できる。
・ラン……ランニングを計測。
・ウォーキング……ウォーキングを計測
・ジムワークアウト……器具を使った筋トレなどのワークアウトを計測
・インターバルタイマー……インターバルタイマー(5本までのタイマーを最大10回繰り返し)を使って計測
4種類用意されたアクティビティーモード
実際にランニングで使ってみた。
以下の写真が、ランニング中に表示できる計測画面だ。
【上段左】「計測結果表示サマリー」……スプリットタイム、移動距離、ペース、アクティビティー計測日時など 【上段中】「心拍サマリー」……最大心拍、平均心拍、カーディオ負荷 【上段右】「消費カロリーサマリー」……計測期間中の消費カロリー、炭水化物・タンパク質・脂肪の割合 【下段左】「ピッチサマリー」……最大ピッチ、平均ピッチ、平均ストライド 【下段中】「ペースサマリー」……最高のペース、平均のペース、評価など 【下段右】「ラップサマリー」……ラップ回数
大小のメリハリをつけて計測数値を表示するデザインを採用しているため、決して大きくはない画面であっても必要な情報を確認しやすかった。また、健康増進目的で走ることが多い筆者としては、心拍の状況がよくわかる「心拍サマリー」はペースの目安となるため、便利に感じられた。
アクティビティー終了後は、以下の画面が表示される。走行距離やスプリットタイム、ペース、ラップ、心拍ゾーンや最大心拍数などで、成果をすぐに確認できるのはとにかく便利だ。
走り終わったあとは、詳細なリザルトをチェック
多彩なウォッチモードやアクティブモードを使ってみて感じたことは、操作感については一定の慣れが必要ということだ。これは多機能な腕時計全般に言えることだが、使える機能が多いほど操作は複雑化する傾向にあり、モデル(G-SHOCKでは具体的にはモジュール)ごとに設定されたルールを理解しなければならない。
今作の場合、画面のタッチ操作はなく、サイドに設置された4つのボタンですべての機能を操作することになる。文字板に書かれた機能名表示も参考に、それぞれのボタンの基本的な動作は次の内容になる。
・左上(ENTER)……決定する。機能を有効/無効にする
・右上(LIGHT)……バックライトの点灯
・左下(MODE)……モードを切り替える。次の選択肢へ送る
・右下(BACK)……1つ前の動作/階層に戻る
このうち、右上のボタンはバックライト専用なので、ほかの3つのボタンで各機能を操作することになる。慣れてしまえば混乱しないが、1つ注意したいのは「ひとつ戻る」ができないことだ。たとえば、アクティビティーモードから希望のモードを選ぶとき、左下(MODE)ボタンを押すごとに「ラン」→「ウォーキング」→「ジムワークアウト」→「インターバルタイマー」というように選択肢が表示されていくが、間違って希望のモードを飛ばしてしまった場合、再び表示されるまでもう1周分ボタンを押さなければならない。右下(BACK)ボタンだと「ひとつ上の階層に戻る」機能であるため、時刻表示画面などに戻ってしまうからだ。今作のウォッチモードは13種類もあるため、選択を1回ミスすると再び12回もボタンを押す必要が出てくる。
こうした選択肢はスマホアプリを介して表示/非表示を選べるので、不要な機能は非表示設定にしておいたほうが操作の手間が減る。特にアクティブモードの場合、運動しながら何度もボタンを押すことは運動に影響を及ぼすこともあるので、「このデータ、自分は見ないかな」というサマリーがあれば非表示にしておいたほうがいい。
上で触れてきたように、今作はBluetooth機能を使ってスマホと連動でき、正確な時刻の取得や各種設定が行える。
Bluetooth機能を使ってスマホと連動
時計の画面でも各種データを確認できるが、わかりやすさで言えば、やはりスマホアプリでの表示に軍配があがる。走行したマップ情報や、位置と連動してそのときのペースや心拍数を表示するグラフなど、アプリでしか確認できないデータもあり、アクティビティーの成果をより詳しく理解できる。こうしたデータはモチベーションUPにもつながりそうだ。
アクティビティーのログ1
アクティビティーのログ2
アクティビティーのログ3
過去を日/週/月単位で振り返られるライフログも搭載。歩数やカロリー、心拍数をまとめたグラフを見れば、自分がどれくらい動けたかがひと目でわかる。
ライフログ1
ライフログ2
睡眠時にも時計を着用していれば、「Nightly Recharge」の結果も表示。眠りの深さも視覚的に表示され、しっかりと眠れたのかがわかる。
「Nightly Recharge」の結果
特定のスポーツに特化したり、ハイテクなスマートウォッチをベースにしていたりと、多種多様なモデルが登場している今日のスポーツ向け腕時計。「G-SQUAD」の場合は、ランニングやウォーキングなど比較的ライトなスポーツを主眼に、かつデザインにもこだわりたい層がターゲット。従来の「G-SHOCKらしさ」にスポーティーな機能とデザインを加えたモデルを展開し、独自性を築き上げてきた。しかし、今回の「DW-H5600」が採用した角型デザインではスポーティーな要素は薄く、アクティビティーにそこまで興味のない層にまでターゲットを広げようという意志を感じる。日常的にも使いやすいし、まったく運動をしなくても、歩数や心拍数などのライフログは記録できる。使ってみてから自分の身体の状態に関心を持ち、アクティビティーを始めた……というケースもありうるだろう。スポーツをより身近にするきっかけとして、「DW-H5600」は新しい可能性を示してくれるはずだ。
カシオ「DW-H5600-1JR」「DW-H5600-2JR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂(バイオマスプラスチック)
●バンド材質:樹脂バンド(バイオマスプラスチック)
●ケースサイズ:44.5(横)×51.1(縦)×17.4(厚さ)mm
●重量:59g