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Bluetoothは時刻のため!? カシオG-SHOCK「GPW-2000」のこだわりがスゴイ

カシオ計算機(以下、カシオ)が2017年5月19日に発売した腕時計「GPW-2000」は、Bluetoothでスマートフォンとつながるが、スマートウォッチのように着信を知らせてくれたり、歩数を記録してくれたりはしない。時計の本質である、正確な時を刻むためにスマートフォンとつながるのだ。どうしてこのような「G-SHOCK」が誕生したのかカシオに話を聞いた。

Bluetoothを搭載するGPSハイブリッド電波ソーラーウオッチ、GPW-2000。発売されたばかりだが、価格.comの「腕時計」カテゴリーの人気売れ筋ランキングでは12位に入っている(2017年6月6日時点)。価格.com最安価格は76,980円(同)


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・「カシオトロン」から続く完全自動化への新たな一歩! カシオが3つの時刻取得システムを搭載した「G-SHOCK」を発表(2017年3月2日公開)

完全自動腕時計を目指して

カシオは40年以上前の1974年に時計事業に参入。電卓で培ったデジタル技術を生かし、自動で月・日・曜日を表示する世界初のフルオートカレンダー機能を備えたデジタル腕時計「カシオトロン」を発売した。そのときに目指したのが、利用者の手をわずらわせずに、あらゆることを“自動”にする「完全自動腕時計」だった。「(GPW-2000に搭載した新開発のエンジンで)時計事業に参入したときの目標に一歩近づけた」と語るのは、同社でモジュール開発を担当する小島直氏。

時計事業部モジュール開発部モジュール企画室の小島直氏

時計事業部モジュール開発部モジュール企画室の小島直氏

GPW-2000は、世界中どこにいても常に正しい時を刻み続けるための最新モジュール「Connectedエンジン 3-way」を搭載する。これまでもG-SHOCKは標準電波とGPS衛星電波で、世界中どこでも正しい時刻は取得できていたが、これだけでは世界中で変化するタイムゾーンやサマータイムに対応できなかった。タイムゾーンが1つで、サマータイムもない日本で暮らしていると実感しにくいが、ほかの国や地域では、国の施策や政治情勢でタイムゾーンやサマータイムが変わることがある。たとえば、旅行先でタイムゾーンやサマータイムが変わってしまうと、利用者が時刻を調べて手動でその時刻に合わせるしかなかった。この問題を解決するために、Bluetoothで接続したスマートフォンを経由してタイムゾーンやサマータイムの情報を自動更新する機能を開発し、標準電波とGPS衛星電波、そしてBluetoothの3つの時刻取得システムを採用するConnectedエンジン 3-wayが誕生したのだ。

ただ、今まであった技術を詰め込んだだけでは、腕時計としてのサイズが大きくなり、見た目や装着感が悪くなってしまう。そのため、モジュールをレイヤー構造とした上で、干渉を防ぐために各アンテナの距離を離すなど細部までこだわって作り込んでいる。「できることをとことんやろう」(小島氏)と、GPSはみちびき衛星に対応し、耐磁の性能も盛り込んだ。さらに、GPS衛星電波受信システムを従来の1/4に省電力化し、電池の小型化を実現。この省電力化により、ソーラーパネルの上に配置する文字盤の透過率を下げることが可能となり、結果、色の濃い文字盤が使えるようになり、デザイン性が高まっている。また、パワーが強く回転速度の速いデュアルコイルモーターを1個追加して表現力も高めている。たとえば、左上のUTCボタンを押すと、文字板の裏で大型のディスクが回転し、6時側の表示が切り替わる。また、その上の小針も素早く動き、機械的にピタッと止まるのではなく、フワッと止まる。細かい点だが、ユーザーが気持ちよく使えるための配慮だ。

右が以前の基板、左の2枚がGPW-2000の基板。2枚のレイヤー構造となっている

右が以前の基板、左の2枚がGPW-2000の基板。2枚のレイヤー構造となっている

G-SHOCKのオーバースペック気味の演出

航空コンセプトの“GRAVITYMASTER(グラビティマスター)”シリーズは、飛行機のパイロットの声を聞きながら開発しているという。「パイロットが腕時計に何を求めているかというと、見やすくて使いやすい時計。さらに、プラスαでいろいろな意見が出てきて、それがG-SHOCKのオーバースペック気味の演出につながっている」。こう語るのは商品企画部の斉藤慎司氏だ。

時計事業部商品企画部第一企画室の斉藤慎司氏

時計事業部商品企画部第一企画室の斉藤慎司氏

GPW-2000は、普通の人は使う機会がほとんどない、UTC(協定世界時)の時刻表示用のボタンを左上に搭載する。飛行機はUTCを元にして飛んでおり、素早くUTCを確認できるのはパイロットにとって便利な機能だという。UTCボタンを1秒間長押しするとUTCが表示されるのだが、腕時計で長押しという操作は実はあまりしない。パイロットに話を聞くと、長押しでもいいので、ひとつのボタンに機能が割り当てられているほうが使いやすいということで、このような操作方法となっているのだという。

構造面では、振動の影響によって緩むネジを極力使わない構造に挑戦。最終的にはネジを使っているが、バンドの周りからネジを離すことで、ネジが緩んだとしてもバンドが外れない新しい構造を生み出した。具体的には、バンドを固定するパーツとしてネジを使用せず、ピンとファインレジンとカーボンファイバーを使ったパーツで固定している。アワーマーク(時字)を裏側でつなげて衝撃などで落ちるのを防いだり、ボタンの誤操作がないように大きめのボタンカバーをつけたりといった、G-SHOCKの“タフさ”につながる構造もしっかりと引き継いでいる。

左上のUTCボタンを1秒間長押しすると、6時側の小針がUTC時刻に素早く変わる(真ん中の針は常にホームタイム。6時側の針はUTC時刻になり、ホームタイムは変わらない)

GPW-2000のパーツ。サファイアガラス(左下)やぐるりとつながった時字(左から2列目の最上段)など、耐衝撃性を高める多くのパーツで構成されている

ピンとファインレジンとカーボンファイバーのパーツで固定し、ウレタンカバンーをネジで止める構造。製造現場の意見も聞きつつ、新しい構造を生み出し、それがG-SHOCKの新しいデザインにつながっているという

アプリを活用した「フライトログ機能」と「ガイド機能」

Bluetoothを使ったスマートフォンとの連携は、時刻合わせ以外にも使われている。それが「フライトログ機能」と「ガイド機能」だ。「フライトログ機能は、パイロットに昔言われた話がきっかけで生まれたもの」(斉藤氏)。パイロットはどこからどこまで、何時間飛んだかを記録管理している。メモをとったり、飛行機自体に記録機能が付いていたりするが、「腕時計に覚えさせられない?」とパイロットに言われたことがあったという。しかし、当時の技術では記録することも、それを表示するのも難しく、どうにもならなかった。Bluetoothでスマートフォンを介して、あのときできなかったことをやろうということで今回実装したという。

フライトログ機能は、時計の右下のボタンを押すと時刻と位置を記録し、地図上にプロットできるというもの。3Dマップで、飛行機が飛ぶようなグラフィックで移動履歴を確認できる。パイロットではない普通のユーザーでも、バイクのツーリングやウォーキングなどでも活用できるという。「旅行に行くからG-SHOCKを購入するという方も多い。この時計であそこに行った、ここに行ったと記録できれば、より愛着がわいてくるはず」(斉藤氏)

取り扱い説明書がいつも手元にあるようなガイド機能は、地味だがかなり便利な機能だ。ワールドタイムを設定するときや、アラームを使うときなど、ときどきしか利用しない機能だと、どうしても使い方を忘れてしまうときがある。そんなときに、すぐにガイドが見られるのは心強い。今回レビューのためにいろいろと機能を試すときも非常に役立った。もちろん、ガイドを見ながら時計を簡単に操作できるし、さらにスマートフォンと接続することで、アプリ上でワールドタイムを約300都市から選んだり、アラームなど各種機能の設定を行ってGPW-2000にその情報を送信するということもできる。このアプリは、操作をサポートするという役割も持っているのだ。

時刻と位置を記録し、地図上にプロットできるフライトログ機能。3Dマップで、飛行機が飛ぶようなグラフィックで移動履歴を見られる

スマートフォン側でワールドタイムをスペインのマドリッドに設定し、それをGPW-2000に転送することが可能。時計で操作するよりも断然簡単に設定できる

ガイド機能では各ボタンの機能や操作方法を確認できる。使い始めてすぐに役立つのは言うまでもないが、ときどきしか使わないタイマーやアラーム、ワールドタイムの入れ替えなどの使い方をすぐに確認できるのは便利だ

まとめ 明日から日本でサマータイムがはじまっても問題なし

Connectedエンジン 3-wayはGPW-2000を皮切りに、“OCEANUS”シリーズの「OCW-G2000」など他ブランドにも搭載していく予定だが、ターゲットやブランドによって味付けを変えながら取り組んでいくという。「スマートフォンを使い慣れている若いユーザーなら、アプリでもっといろいろやりたいでしょう。各ブランドで提供すべきアプリの機能も違ってくると思います。それぞれのユーザーが一番望んでいる形に近付けていければ」と斉藤氏は語る。

「極論を言えば、これまでの腕時計は、古くなるいっぽうでした。それに対してGPW-2000は常に最新のムーブメントでいられるので、もしも日本で明日からサマータイムがはじまっても対応できます」(斉藤氏)。常に正しい時刻を表示できるようになったGPW-2000は、時計事業参入時の目標である「完全自動腕時計」に近づく大きな一歩と言える。ここまで正確な時刻にこだわった腕時計はほかにはないと思うが、「ボタンの操作が必要で、まだまだ進化の余地はあります」(小島氏)と、カシオの目標はまだまだ高いところにあるようだ。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。

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