スニーカーは、近年のアスレジャーの定着により、これまで以上にライフスタイルの一部として取り入れられるようになりました。しかし結局、ちまたで話題になるのは別注やコラボなど、価格もデザインも“Too Much”なモデルばかり。ゆえに、30〜40歳代を迎えたかつてのストリート世代でも、あの頃のように「カッコよければイイじゃん!」という衝動だけで突き抜けるのは厳しくなってきているはず。
本企画「Daddy’s Sneaker」は、30〜40歳代のパパにとって本当に使えるスニーカーを模索する連載企画。ここで言う同世代の平均的パパたちとは、以下のように定義づけています。
・平日はスーツ姿で出勤。休日は全身ファストブランドで無難な感じにまとめがち
・休日のお出かけは、家族や子供を連れて公園や地元のショッピングモールへ
・自由に使える1か月分のお小遣いは3〜5万円
そんなパパたちがスニーカー選びで押さえておくべきは以下の3点です。
・生活圏内でも浮かないデザイン
・公園でも子供と走り回れる機能性
・地方でも買えて、値段は10,000円台前半が理想
以上の条件から導き出されるのは「トレンドを超越したスタンダード」。履けば思わずテンションが上がり、とはいえ浮くことはない、ひと言で表すなら、“地に足のついたスニーカー”。ここでは、そのオススメモデルと、その履きこなし方を紹介します。
●第1回 やっぱり履きたいです、「エア マックス」! パパのスニーカーとしても最適なワケとは
●第2回 1万円切りのアディダス「スーパースター」! 夏の着こなしにもピタッとハマる
2020年の夏も猛暑の予感……。そうなるとお出かけする時の足元も、なるべく軽やか&楽チンが理想。なんて書くと「ビーサン(ビーチサンダル)を履けばイイじゃん」なんて声が上がるけど、急に走り出す子供を追っかけたと思ったら、疲れ果てておんぶのおねだり……が日常茶飯事のパパライフ。となるとやっぱり足元はスニーカーが正解! でも、アクティブなヌケ感とシャレっ気は欲しい。そこで頼りになるのがVANS(ヴァンズ)の「ERA(エラ)」です。
「ABC-MARTオンラインストア」のヴァンズ「エラ」のページ
本稿では、通年で買えるベーシックモデルに始まり、見た目そっくりな「オーセンティック」、機能性を高めたアップデートモデルを紹介しつつ、さらには「エラ」に最も似合うハーフパンツ丈についても考えてみました。
さて、まずは「エラ」というモデル自体について知るところから始めましょう。
誕生は1976年、第2次スケートボードブームの渦中にあったアメリカ・カリフォルニアでのこと。シンプルなデザインとグリップのあるソールが注目され、若者たちの間でその名を知られていたヴァンズ。同社の第1号モデルである「オーセンティック」をベースに、当時からプロとして活躍していたトニー・アルバやステイシー・ペラルタらといった、レジェンドスケーターのアドバイスを盛り込んで完成したのが「エラ」です(当時の名称は「#95」)。そのグリップ力と足にダイレクトに伝わる感覚は、瞬く間に話題に。誕生から50年近く経った今も、定番中の定番として不動の人気を誇っています。
ヴァンズ「エラ」(品番:V95CLA)の「ブラック」
フォルムは、いわゆるデッキスタイルのローカット。デザインは、ブランド名を綴ったピスネームやステッチ以外はシンプルそのもの。ゆえに合わない格好はほぼないと言えます。また、シューレースホールの位置が高いため、トゥ部分が長めに感じられる点にも注目。トゥから履き口にかけてのボリュームが抑えられているため、スケートシューズでありながら、フルレングスのパンツに合わせた際もスマートな印象に。
さらに税込5,000円前後というバリュープライスもパパにオススメ。ワンシーズンでガンガン履き潰しては新品に買い換えられます。このスケシューらしい気安さも「エラ」の人気の理由と言えるでしょう。
ヒール部分には「OFF THE WALL(風変わりな)」の文字と、スケートデッキが描かれたおなじみのロゴが。履き口のパッドはまさにジャストなボリューム
機能面における注目ポイントは、履き口部分の周囲に内包されたパッド。もちろんハイテクモデルにはかないませんが、普段履きという観点で言えば、むしろちょうどよい履き心地。では、実際に着用してみましょう。今回は夏ですし、アメリカ西海岸のスケーターよろしくハーフパンツ1択。まずは「ひざ上丈」から。
ひざ上丈
TシャツのプリントがKOBOちゃんなうえ、モデルの表情が険し過ぎることはさて置き……、やはりローカットにはハーフパンツが合いますね! 前回のアディダス「スーパースター」を紹介した時は、ソックスはくるぶし丈くらいだとバランスがよいと書きましたが、今回はサーフカルチャーをルーツに持つ「エラ」の雰囲気に合わせて、外からは見えないカバーソックスを選択。素足っぽさがヌケ感と夏っぽさに拍車をかけます。続いては、ハーフパンツの丈感による見え方の違いも検証。
ひざ丈
こちらはサイドにポケットがある分、ボリューミーな「ひざ丈」のカーゴタイプ。シューズとのボリュームの対比が強調されたからか、何となく野暮ったく感じるかもしれませんね。どちらかと言えば、アッパーにボリュームのあるスニーカーのほうが好相性かも。この場合は、逆にソックスをかませたほうが、ヒザ下のボリューム感も調整されていい感じになるでしょう。
もも丈
お次は、ガッツリ「もも丈」のハーフパンツにはき替えてみましょう。大胆に足見せすることに躊躇する人は多いかもしれませんが、これが結構アリ! いや、むしろTシャツと合わせた場合の夏っぽさと、「エラ」の雰囲気とのマッチング的にはこちらが正解か。肌の露出範囲が広くなる分、足長効果も見込めるので、季節限定(秋冬はトップスのボリュームが増すので、また見え方が変わります)でチャレンジしてみては?
せっかくなので、先述の「オーセンティック」との違いも知っておきましょう。こちらは「エラ」誕生からさかのぼること10年前、1966年のブランド設立時からラインアップ。今でもシーズンごとの新色や別注モデルがリリースされ続けており、シンプルかつ汎用性の高さが最大の魅力。取りあえず現物を見ていきましょう。
ヴァンズ「オーセンティック」の「ブラック」(品番:VN000EE3BLK)
あえて説明なく写真をざっと並べましたが、いかがでしょうか? そもそも本モデルをベースに、機能性を加えてモディファイしたのが「エラ」。なので、履き口部分にパッドが入っていない&ヒール部分のステッチが2重になっている以外、ルックスの違いはほぼ皆無。ちなみに着用時の写真がこちら。
やはり見た目はほぼ変わりません(笑)。違いを強いてあげるなら、こちらのほうが若干すっきりした印象はありますし、より夏らしく素足感覚を楽しみたいなら選択肢に加えるのもアリかな? というくらいで、どちらを選ぶかはもはや好みの問題でしょうか。さて、両モデルの違いもご覧いただいたので、最後は「エラ」に機能性を加えたアップデートモデル2種も紹介しておきます。
ヴァンズ「コンフィクッシュ エラ」の「ブラック/T.ホワイト」(品番:VN0A3WM9VNE)
“ちょうどよい履き心地”と先述した「エラ」ですが、さらなる快適な履き心地を求める声も。そんな人にこそ「コンフィクッシュ エラ」がイチオシ。こちらは、履くたびにズレてストレスを感じるシュータンをアッパーと一体構造にするなど、クラシックなデザインはそのままに現代のニーズに合った工夫を盛り込んだニュークラシックなモデル。実際に履けばわかるのですが、足入れ感覚に関しては完全に別物!
手に取ってみると、通常の「エラ」よりもライトウェイトに仕上げられているのがわかります
その秘密こそが、最新技術「コンフィクッシュ」。ソールの素材には、生ゴムを泡立てて凝固させたフォームラバーを採用し、ハイテクスニーカーにも負けない圧倒的なクッション性と軽さを実現。さらに、低反発素材のカップインソールでアーチサポート機能を追加。土踏まずがフィットすることで滑り止め効果を発揮し、シューズ内での足ズレを軽減してくれます。アクティブに動き回る人ほど実感できるコンフォータブルな履き心地。ぜひお試しあれ。
ヴァンズ「ショクニン エラ」(品番:V95CF H/SHIELD)の「M.ブラック」
「エラ」は好きだけど、どうせならできるだけ長く1足を愛用したい。そんな人に履いてもらいたいのが「ショクニン エラ」です。日本製素材を採用し、“新しく何かを生み出す職人のためのシューズ”をコンセプトとした新シリーズ「ザ・ショクニン」からの1足。汎用性の高いオールブラックのアッパーには、水だけでなく汚れも寄せ付けない防汚性を兼ね備えたキャンバス生地を使用。この素材は耐久性にもすぐれており、通常の「エラ」にはないタフさが実感できます。
アッパーにソール、さらにステッチまでブラック1色で統一。タフでクールな男らしいルックスも◎
同じくオールブラックのソールは、通常モデルの凸凹パターンを反転させたリバースワッフルパターンを採用。滑りにくく耐久性も高いので雨の日でも活躍します。インソールは、クッション性の高いカップソールで疲労感を軽減。さらに素材に活性炭を混ぜ込んでいるので消臭効果もプラス。職人のみならず、ビズスタイルの足元にも最適ではないでしょうか。
というわけで、今回はヴァンズ「エラ」をピックアップしました。
実際に履いてみて実感したのが、デザインと履き心地の双方からくる“ちょうどよさ”。これは、技術の進化が目覚ましいスニーカー業界にあって、「エラ」がオールドスクールなスケシューだからこそ。最新ハイテクモデルの快適過ぎるクッショニングや先進的なデザインも魅力的ですが、Tシャツにハーフパンツでちょっと近所をブラブラなんて時に、気楽に履くには“Too Much”。それならば、シンプルかつビーサン感覚で履けちゃう「エラ」にパパたちが流されてしまうのは、もはや必然。それは誰のせいか?と問われれば(筆者のせいですが)、“それはあれだ! 夏のせい”ってことで……。
メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する41歳。