本企画「Daddy’s Sneaker」は、30〜40歳代のパパにとって本当に使えるスニーカーを模索する連載企画。ここで言う同世代の平均的なパパたちとは、以下にように定義づけています。
・平日はスーツ姿で出勤。休日は全身ファストブランドで無難な感じにまとめがち
・休日のお出かけは、家族や子どもを連れて公園や地元のショッピングモールへ
・自由に使える1か月分のお小遣いは3〜5万円
そんなパパたちがスニーカー選びで押さえておくべきは以下の3点です。
・生活圏内でも浮かないデザイン
・公園でも子どもと走り回れる機能性
・地方でも買えて、値段は10,000円台前半が理想
以上の条件から導き出されるのは、「トレンドを超越したスタンダード」。履けば思わずテンションが上がり、とはいえ浮くことはない。ひと言で表すなら、“地に足のついたスニーカー”。ここでは、そのオススメモデルと、その履きこなし方を紹介します。
【連載アーカイブ】
●第1回 やっぱり履きたいです、「エア マックス」! パパのスニーカーとしても最適なワケとは
●第2回 1万円切りのアディダス「スーパースター」! 夏の着こなしにもピタッとハマる
●第3回 夏はヴァンズ「エラ」が履きたくなる!? 合わせるハーフパンツ丈の最適解は?
●第4回 名作のサンダル仕様「インスタポンプフューリーサンダル」は夏こそ“プッシュ”したい!
●第5回 親子で履けるコンバース「ブレイクスター」はクリーンでスマートなスケシュー!
●第6回 コスパ最高! 着こなしのバイプレイヤー「キッチェ」は全色大人買いもアリ
ファッション好きからスポーツファンまでを虜にするニューバランスから、オススメのモデルを紹介!
パパ世代のスニーカー選びにおいて、最も重要なのは“コスパ”にほかなりませんが、履き心地をおろそかにするのは本末転倒。せっかくなら、履き心地がよく、どんな着こなしにも似合う汎用性の高い1足が欲しいですよね。そこで今回は、オーバー30歳から絶大な人気を誇るNew Balance(ニューバランス)に注目。税別1万円以内で“らしい”雰囲気が味わえる、「ML574」をピックアップしました。
さらに、隠れた人気作「MW880G」も押さえておけば、周囲のパパからも1歩リード確実。両モデルとも、履き心地のよさはもちろん、シンプルなデザインでウィークデイのみならずカジュアルビズコーデの足元にも対応可能。というわけで、人気の理由がどこに隠されているのかも踏まえつつ、買いのポイントを検証してみました。
1980年代後半、ニューバランスは、未整地の野山などを舞台とした「オフロードランニング(今でいうトレイルランニング)」という新たなフィールドを開拓。その時に誕生した「500」シリーズの代表選手が、「576」です。舗装されていない地面でも高いグリップ性を発揮する「ラグアウトソール」を装備しているうえ、トゥ部分にゆとりを持たせたボリューミーなフォルムにより安定性が高いことから人気を獲得しました。
その高い人気は、デザインや機能性を踏襲しつつ、製造背景をアメリカからアジア圏に移すことによってお手頃価格を実現させた“兄弟モデル”を世に生み出すこととなります。それが「574」。さまざまなブランドやショップが別注モデルを作る際のベースとしても頻用され、ニューバランスのファン拡大に貢献した1足となりました。ではここからは、「574」の現行モデルである「ML574」の実物をご覧いただきながら、細部を掘り下げていきます。
ニューバランス「ML574」の「グレー(EGG)」
「ML574」は、見る者が懐かしさを覚えるランニングモデルらしいシルエット。
アッパーのサイドパネルには、大きめの「Nロゴ」が鎮座し、カラーはブランドを象徴するグレー。ご覧のとおりルックスは、誰しもが思い描く“正しきニューバランス”のそれです。とはいえ、定番でありながらも、見えない部分は、時流に合わせてアップデートさせているのがデキるブランド。スエード×メッシュ素材のコンビネーションで通気性を確保したアッパーは、構造を根本から見直してパーツの数や工程を削減したことで、足なじみのよい快適なフィット感と履き心地を実現させています。
シュータン部分に刻まれた「Classic」の文字が、いかに人々に愛されているモデルかを物語っています
見た目からはわからない改良点は、ほかにもまだまだあります。
「574」の特徴のひとつであるトゥ部分は、幅広でゆったりとしたシルエットのラスト「SL-2」に微調整を加えることで、ホールド性がアップ。足幅の広い日本人の足に合いやすく、万人に愛されるフォルムを手に入れました。
オリジナルモデルの特徴であるボリューム感は残しつつも、すっきりしたフォルムに
もちろん、ソールも見逃せません。
ミッドソールには、衝撃吸収性にすぐれたEVAという樹脂を、頑丈なポリウレタン素材に封入した独自テクノロジー「エンキャップ」を搭載。軽量性と安定性を兼ね備えつつ、各パーツの硬度を調整し直したことでクッション性とグリップ性も従来のものより向上しています。
インソールも、EVAからPUに素材変更し、グレードアップ。この快適な履き心地を追求し続ける姿勢こそが、ニューバランスの魅力でもあります。では、各部のこだわりをしっかりチェックしたところで、いつもどおりに着用サンプルといきましょうか。
ミッドソールのヒール部分には、ブランドロゴをデザイン。ヒール部分はリフレクターなので、夜道も安心です
秋が深まってきましたので、トップスはクルーネックのスウェット。ボトムスは、パパ世代の皆さんにとっても心強い味方であるユニクロの「スキニーフィットチノ2WAYストレッチ」を選びました。こんなシンプルな着こなしにこそ、シューズが重要! これに「ML574」を合わせてみると……!?
白トップス×黒ボトムスという、ある意味主張の強いモノトーンスタイルを、“こなれ感”のあるグレーで緩和。デザインがシンプルでアクがないので、どんなテイストの服とも相性よし。ほどよくボリューム感のあるフォルムは、ゆったりめスウェット&細身でストレッチのきいたチノパンという、パパ世代の定番スタイルに特にハマります。クリーンな顔立ちに忘れがちですが、出自がオフロードランニングなので、子どもと公園に遊びに行った際には、しっかり走れちゃうのもうれしいですね。
今回はもう1足、隠れた人気作を紹介しちゃいます。
皆さんはウォーキングシューズって普段チェックしたりします? もしかしたら、そんなカテゴリーが存在したことすら知らない人も少なくないでしょう。
ここで紹介する「MW880G」は、そんなウォーキングカテゴリー「880」シリーズの1足。同カテゴリーにおいて、2013年から日本国内での販売足数・売上額No.1を記録し続けている「MW880v4」というモデルに、あの「ゴアテックス」が搭載されたアップグレードモデルです。そうご明察! モデル名の「G」は「ゴアテックス」を表しているというわけです。
ニューバランス「MW880G」の「ブラック(B4)」
ご存じの人も多いとは思いますが、「ゴアテックス」はすぐれた防水透湿性を備える高機能素材の代表格。これを搭載したうえで、アッパーには水濡れに強い人工皮革を使用し、トゥ部分は外からの水の侵入を防ぐ仕様を採用しているので、不意な雨でも問題なし。写真ではわかりづらいですが、シュータンもストレッチ仕様で同じく防水性をキープしています。光沢を抑えたマットなブラックカラーにオレンジの挿し色という今季のシーズナルカラーをまとった本モデルは、タフさにも憧れを抱くパパ世代に好印象を与えます。
水が最も染み込みやすいトゥ部分も、しっかりと防水処理が施されていて心強い限り
ヒールサイドには、「ゴアテックス」のタグが鎮座。これがあるだけで信頼度は高い!
もちろん、ウォーキングシューズだけに履き心地が最重要事項ですよね。そこで採用されているのが、卓越したクッション性と安定性を発揮する「トゥルーフューズ」ミッドソール。やわらかく衝撃吸収性にすぐれる「アブゾーブ」素材と硬めの「アクティバ」素材の上下2層構造を採用することで、長時間・長距離の歩行でも足ブレせず、自然で心地よい歩行をアシストしてくれます。
スプラッターペイントにより、黒を基調としたデザインにアクセントを添えているアウトソールは、グリップ力を高める特殊配合ラバーと独自のアウトソールパターンを組み合わせており、オフィス街でよく見かける濡れたタイルでも滑り知らず。カジュアルビズの足元にもってこいと言えます。では、こちらもいざ着用!
やはり、黒はどんな格好にも合いますね。「もしかしたら派手かな?」と危惧したスプラッターペイントも気にならず、むしろファッション性を高めています。というか、改めて言われなければ、ウォーキングシューズだと全然気づかないくらいスタイリッシュじゃないですか!? 事実、筆者もこのモデルを知ったのはごく最近。それも、人気ファッションブランドを数多く担当する、PR企業勤務の同世代パパさんからの熱烈プッシュから。プロが認めるくらいですから、間違いないのは当然のこと。本モデルは、人とカブらないモノを探している人はぜひ!
というわけで、今回はニューバランス「ML574」と「MW880G」をピックアップしました。
“スタンダードとして愛されているには、その確固たる理由がある”ということを、実際に履くと再認識できるのがニューバランス。まだ挑戦したことがないという人は、まずこの2足から始めてみてはどうでしょうか。“気負わず取り入れられて、ライフスタイルになじむ”という「ダディーズスニーカー」の理想形のひとつが、ここにもありました。
メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する本厄41歳。