2020年11月、カシオ計算機のG-SHOCK「MT-G」シリーズから、最新作となる「MTG-B2000」が発売された。「カーボンモノコックケース」を始めとする先進素材と技術を活用することで、さらなる耐衝撃構造を追求している。
新たに「デュアルコアガード構造」を備えた「MTG-B2000」
「MTG-B2000BD-1A4JF」の公式サイト価格は137,500円(税込)
「MT-G」は、1999年にスタートしたシリーズ。元来、G-SHOCKは樹脂を使った時計作りを得意としてきたが、「MT-G」はメタルを加えて新たなるタフネスを提案してきた。搭載機能やパーツの仕上げにもこだわり、よりハイグレードなG-SHOCKとして市民権を獲得している。
今作「MTG-B2000」では、2019年3月発売の「グラビティマスター GWR-B1000」と、2020年6月発売の「フロッグマン GWF-A1000」でしか採用されてない一体構造の「カーボンモノコックケース」を採用。樹脂/メタル/カーボンの3素材の融合を実現させ、新たな耐衝撃性能を実現する「デュアルコアガード構造」を生み出している。
新たな耐衝撃性能を実現する「デュアルコアガード構造」
「カーボンモノコックケース」は、裏ブタと一体になることで内部のモジュールへの耐衝撃性を大きく向上させている。さらに、これをメタルのフレームでカバー。別体ベゼルとともに、4本のビスを通すことでも強度を高めている。
ベゼルと裏ブタを4本の柱で支えるという発想は、「コアガード構造」として2013年10月発売の「MTG-S1000D」から採用したものだ。さらに、2018年6月発売の「MTG-B1000」では、4本の支柱に加えて壁も設けた「新コアガード構造」へと発展させ、「カーボンファイバー強化樹脂ケース」も採用した。これらと同じく4本のビスで全体を支え、さらに最新の「カーボンモノコックケース」を採用した「MTG-B2000」の「デュアルコアガード構造」は、「MT-G」がこれまで歩んできた歴史に裏打ちされた技術であり、正統なる進化を感じさせる。
「カーボンモノコックケース」は、裏側から確認できる
バンドには、中空のムク駒にファインレジンのパーツを組み込む「新レイヤーコンポジットバンド」を新採用。軽量化に大きく貢献した。
「新レイヤーコンポジットバンド」を新採用
さらには、ケース側にスライドレバー構造を搭載。バンドを容易に交換できるようにしている。
2つのレバーをスライドすることで、バンドを着脱できる
「デュアルコアガード構造」と「新レイヤーコンポジットバンド」が使用者にもたらすメリットは、とにかくタフで壊れる心配が格段に少なくなったことと、全体的に軽くなったことだ。同じブレスレット仕様で重量を比較してみると、今作「MTG-B2000BD-1A4JF」は156gで、前作「MTG-B1000D-1AJF」は182g。約15%の軽量化を実現していることがわかる。G-SHOCK全体の中では特別に軽いわけではないが、重厚感のある見た目に対して意外な軽さを感じるはずだ。
また、裏ブタ部分にカーボン素材を使用しているため、寒い季節でも装着時にヒヤッと感じにくいのも利点だろう。金属アレルギーの心配がある人にも向いている。
重厚感と高級感のある見た目
従来の「MT-G」にはなかったような、大胆なデザインも魅力だ。
印象的なのが、12角形ベゼル。スクエアまたはラウンドが主流を占めるG-SHOCKの中でもひときわ異彩を放つデザインと言える。2019年8月に発売された「GA-2100」は、その8角形フォルムから「カシオーク」などと呼ばれてスマッシュヒットを記録したが、そうした挑戦的な意欲が今作にも見て取れるようだ。
ミラー仕上げの12角形ベゼルを採用
豊かな表現が可能となったのは、ケースとは別体のベゼルを起用したことにある。たとえば、「MTG-B2000BD-1A4JF」の場合、ケースはブラックIP、ベゼルはボルドーIPと、異なる処理を施して違いを際立たせている。細かな仕上げや切り立った造形を実現できたのも、別体仕様の恩恵だ。
ベゼルは、角が面取りされている
また、全体的にシャープ感のあるフォルムにまとまっている。スッキリしたケースサイドは、見ていて心地いい。部分ごとに異なる仕上げを組み合わせていることでもシャープな印象を高めており、そのアイデアと技術力の高さに感心する。
シャープな造形が洗練された雰囲気を生み出す
「カーボンケース」の採用により、サイドボタンは「ガードレス構造」を実現。G-SHOCKのタフネスさは顕在ながら、ゴテゴテとした印象を低減したことで、ハイグレードモデルらしい高級感を高めている。
サイドボタンは、ガードレス構造
フェイスデザインは、奥行き感があり、全体的にスッキリとした印象だ。3時位置に真円でないモード表示用の小針をあしらった点も、従来の「MT-G」にはない個性を感じさせる。
また、ワールドタイム用の都市コードを省略したことも「MT-G」としては珍しく、より洗練した印象をもたらしている。今作には、世界の時刻がわかる「デュアルタイム機能」が備わっており、時計単体でもタイムゾーンを設定できるが、スマホと連携すれば具体的な都市名を指定しての設定が可能になる。スマホの活用を前提とすることで、時にわずらわしくも見える都市コードを省略したものと思われる。現代の時計事情に合わせたアップデートと言えるだろう。
スッキリとした印象のフェイスデザイン
もうひとつの特徴としては、文字盤外周の見返し部やインデックスが大きく傾斜していることで、これが奥行き感を高めている。軽量な樹脂でありながら、高級感のあるメタリックな光沢を放つのは、カシオの華飾技術の高さゆえだ。
傾斜したインデックスが、奥行き感を見せる
能動的に利用できる機能は、「ワールドタイム」、「ストップウォッチ」、「タイマー」、「アラーム」とスタンダードな内容だ。
「ワールドタイム」は、8時位置のサブダイヤルで確認が可能。そのほかの3つの機能は、中央の秒針と8時位置のサブダイヤルを組み合わせて表示される。どのモードでも、中央の時分針は現在時刻を指し示す。
「ワールドタイム」
「ストップウォッチ」機能
「タイマー」機能
「アラーム」機能
本モデルは、針退避機能も備えている。左上のボタンをプッシュすると、中央の時分針がサブダイヤルにかからない位置へと一時的に移動し、各種情報が読み取りやすくなる。使ってみると意外と便利な機能だし、いちばん近くのジャマにならない位置に針がスーッと動いていく様子は、なんだか楽しい。
針退避機能用に独立したボタンを設けたことも、使い勝手を高めている。この機能自体は新しいものでないが、従来モデルではモード切り替え用ボタンを2秒長押しして起動させるものがほとんどだった。すぐに情報を確認したい時にその2秒間はもどかしいし、手間を感じて使わなくなった、存在を忘れてしまっていたという人もいるだろう。ワンタッチで針退避するボタンを新設したことで、この機能の便利さを改めて確認できた。
左上のボタンを押すと、針退避機能が動作する
ボタンプッシュで文字盤全体を照らし出す、LEDライトも搭載する。時分針とインデックスには、蓄光塗料も使われており、暗所での視認性を確保している。
夜光塗料とLEDライトで、暗所での視認性を確保
このほか、タフソーラーや、耐衝撃構造/耐遠心重力性能/耐振動構造を備えた「トリプルGレジスト」、世界6局の標準電波を受信できる「マルチバンド6」など、G-SHOCKが誇る先進機能も備えている。
本モデルは、Bluetoothを使ってスマホと連携できる「スマートフォンリンク機能」も搭載している。
専用アプリ「G-SHOCK Connected」を利用
アプリでは、デュアルタイムで表示させるタイムゾーンの変更や、アラームやタイマーの設定を簡単に行えるのが便利だ。
ワールドタイムやアラームなどを設定できる
さらにアプリでは、ソーラー発電量や、電波・Bluetoothによる時刻取得履歴、最新タイムゾーンの更新履歴のログも確認できる。バッテリーが少なく感じる、時刻がずれやすいなどの違和感を感じた時は、1度このログを見れば原因を推察できるかもしれない。
各種ログを確認することも可能
また、時計の各機能が正常に動いているかを診断する、セルフチェック機能も備えている。時刻やバッテリー、ソーラーセルの状態、針の動作などを1日1回、または手動でチェックする。これは「スマートフォンリンク機能」を備えたどのモデルでも利用できるものではなく、ハイグレードな「MT-G」シリーズらしい機能だ。
セルフチェック機能で、時計の状態を把握できる
「MTG-B2000」では、大人びた高級感を放つボルドーベゼルとブラックケースを組み合わせた「MTG-B2000BD-1A4JF」のほか、2モデルがラインアップされている。
グレーベゼルとシルバーケース&ブレスを採用したのが、「MTG-B2000D-1AJF」だ。今作らしい12角形ベゼルの存在感をきっちり表現しながらモノトーンでまとめることにより、着こなしを選ばずに着用できるのがポイント。ビジネスシーンにも合わせやすい。
「MTG-B2000D-1AJF」の公式サイト価格は、126,500円(税込)
モード針や右下ボタンの一部に、レッドの差し色をあしらった
ブルーをきかせた「MTG-B2000B-1A2JF」は、スポーティーな雰囲気だ。バンドにも装着感のいいラバーが使われていて、G-SHOCKらしい先進のラグジュアリースポーツを表現する。
「MTG-B2000B-1A2JF」の公式サイト価格は、121,000円(税込)
ラバーバンドを採用。連結部はメタルで強靭
2019年、「カーボンは、樹脂とメタルに次ぐ第3素材」と宣言して以降、さまざまな素材を駆使したG-SHOCKが生み出されてきた。しかし、「さまざまな素材を融合して耐衝撃ボディを進化させる」というテーマは、「MT-G」シリーズの存在理由そのものだ。“G-SHOCKのカーボン祭”にやや遅れての参加となったが、回数を重ねて熟練を増した「カーボンモノコックケース」の採用や、歴史を受け継いで進化させた耐衝撃技術は、「MT-G」の面目躍如といった内容で、まさに真打ち登場と言うにふさわしいデキだ。
G-SHOCKのハイグレードシリーズを支える新たな柱として、注目したい。
【SPEC】
●ガラス:内面無反射コーティングサファイアガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:カーボン/ステンレススチール
●バンド材質:レイヤーコンポジットバンド(MTG-B2000BD-1A4JF/MTG-B2000D-1AJF)、樹脂(MTG-B2000B-1A2JF)
●ケースサイズ:51(横)×55.1(縦)×15.9(厚さ)mm
●重量:156g(MTG-B2000BD-1A4JF/MTG-B2000D-1AJF)、127g(MTG-B2000B-1A2JF)
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。