コロナ禍によって、ビジネススタイルは大きく様変わりした。リモートワークの推進もそのひとつで、自宅やカフェといった場所をワークスペースにする人は増えている。
こうした変化にいち早く対応したのが、マスターピースのビジネスリュック「wall バックパック」だ。便利なワークパッドを装備することで、今時のビジネススタイルにフィットさせている。
マスターピース「wall バックパック No.02322」。公式サイト価格は36,300円(税込)
スッキリとしたフォルムで、スーツスタイルにもちょうどいい
◎本連載「デキる人はこれを背負う!」のアーカイブはこちら!
https://kakakumag.com/backnumber/?contents=161
マスターピースと言えば、根強いファンも多い国内屈指のバッグブランドだ。東京・原宿を中心にストリートカルチャーが盛り上がりを見せた1994年に誕生し、機能性とファッション性が融合したバッグの新しい世界観を主導。大阪府大阪市と兵庫県豊岡市の自社工場で製造する、メイド・イン・ジャパン品質も高く評価されている。
同ブランドは、カジュアルバッグのイメージが強いものの、ビジネスバッグも充実しており、 “刺さるギミック”を搭載した独自性の高いモデルも多い。この「wall バックパック」は、2021年に発売されたばかりの新作で、こちらにも心の琴線に触れるギミックが搭載されている。
まずは、基本的なスペックから紹介しよう。外寸は27(幅)×41(高さ)×9.5(奥行)cm。スリムでスッキリとしたフォルムだ。キレイな長方形をしていて、自立性もある。
外寸は27(幅)×41(高さ)×9.5(奥行)cm
重さは、1090g。化繊のビジネスリュックとしては、標準よりもやや軽い部類に入るだろうか。バックパネルやショルダーハーネスのクッション性は高く、ホールド感もよいので、背負った時に重くは感じなかった。
重量は、軽い部類と言える1090g
本体生地は、タテ糸1260d×ヨコ糸630dの強撚・高密度ナイロンを平織りにしたもの。強撚糸を使うことで生地に立体感が生まれ、ハリやコシもあってシワにもなりにくいという。表面にテフロン加工が施されており、下の写真のように水をしっかりと弾いてくれるのはうれしい点だ。これだけ生地に撥水性があれば、雨の日も気兼ねなく利用できる。
テフロン加工を施した高密度ナイロンオックス生地
一部のパーツにはレザーを用いており、ビジネスにふさわしいクラス感を醸成。さらに一部のレザーには、革の風合いを残しながらもリフレクトシートを貼り付けている。再帰反射機能により、遠方からも存在を認識されやすくなり、夜間の安全性も考慮されている。
付属の革。一部はリフレクターとしての効果も果たす
メインファスナーには、YKK社製の「METALUXE(メタルックス)」を採用。重量は金属ファスナーの約半分でありながら、メタルのような重厚感のある外観を持った素材で、デザインにこだわるマスターピースらしいディテールだ。
メタルのように見えるYKK社製「METALUXE」ファスナー
なお、今回は「ネイビー」を取り上げたが、このほか「ブラック」や「ダークグリーン」カラーも展開されている。
メイン収納は、大きく開く構造で目的の荷物を探しやすい。側面ファスナーのラインに傾斜をつけており、開けた時の視認性や安定性が高まっている。また、内装のポリエステル生地にブラウンカラーを採用したのも、視認性を高める工夫だ。
大きく開いて使いやすいメイン収納
収納できる荷物のサイズは、B4用ファイルケースがギリギリ収まるくらい。B4サイズの書類が入る角型0号(縦28.7×横38.2cm)は、一部を折り曲げないと収納できなかった。
B4用ファイルケースを収納可能
2段式ランチボックスも、押し込めば入るには入る。背面側のワークパッドにPCや関連ツールを入れていなければ、もう少し余裕は生まれそうだ。ランチボックスを入れると、空きスペースはB5のルーズリーフがおける程度で、A4サイズのファイルは難しそうだ。
2段式ランチボックスも、底部に何とか収納できる
次に、各種ポケットを見ていきたい。
なお、以下に掲載する俯瞰写真は、「写っているツールがすべて入る」のではなく、「こうした類のツールの収納に向いている」ことを示している。
今作最大の特徴は、着脱可能な独自のワークパッドを付属していること。上部は2か所のホックボタン、下部はループに通す形でバッグ本体に固定でき、必要に応じて取り外して利用できる仕組みだ。
ワークパッドを取り外したところ
さまざまなツールを集約できるワークパッド
●PC収納(写真・青)
前後にクッション材が配置され、PCやタブレットを収納できる。公称では、「MacBook Pro 13inch」を収納可能。試したところ、手持ちの14型薄型PCと10.5インチの「iPad Pro」を一緒に入れられた。【SPEC】留め具/面ファスナー付きストラップ、内寸/横24×縦31cm、間口/24cm
●ペンホルダー(写真・紫)
3本分のペンホルダー。伸縮するゴムバンド製で、ペン軸がやや太めの万年筆も入れられた。
●フラップポケット(写真・緑)
スマホやUSBメモリーなどの収納に最適。電波を遮断する特殊な生地を使用している。【SPEC】留め具/面ファスナー付きフラップ、内寸/横18×縦13cm、間口/18cm
●オープンポケット(写真・黄)
縦に細長い収納スペース。定規やブルーライトカットメガネを差しておくのによさそう。【SPEC】留め具/なし、内寸/横4×縦13cm、間口/4cm
●メッシュポケット×2(写真・赤)
ストレッチ性のある生地が使われ、中に入れた荷物を適度にホールドする。ケーブルやACアダプター、モバイルバッテリー、マウスなどのツールの収納に役立つ。 【SPEC】留め具/なし、内寸/各横12×縦12cm、間口/各12cm
メイン収納内の正面側
●メッシュポケット(写真・赤)
かなり大きく、ワークパッドに入り切らなかった、または入れる必要のない小道具を入れておくのによさそう。電卓や「アイコス」ケース、グルーミングセットなど、かさばる小物の収納に使いたい。【SPEC】留め具/面ファスナー、内寸/横26.5×縦17cm、間口/26.5cm
正面
●上段ポケット(写真・赤)
バッグ外寸とほぼ同じスペースを確保。長財布やコインケース、メモ帳、小型ポーチ、文庫本など、ひんぱんに出し入れする小道具を入れておきたい。【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横27×縦41cm、間口/13cm
●下段ポケット(写真・青)
間口が下のほうにあり、荷物を上に向けて突っ込む形状。ポケット生地には、撥水・防水性のある3レイヤーナイロンが使用されており、下部にササマチもあるため、濡れた折りたたみ傘やドリンクボトル、ペットボトルなどを入れておける。【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横18.5×縦26cm、間口/13.5cm
背面
●ポケット(写真・青)
向かって左の側面にあるファスナーから出し入れする。クッションは付いているものの、直接背中に当たるため、凹凸のあるモノは入れにくく、パスケースやスマホ、小型タブレットの収納に向く。【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横26×縦23cm、間口/17cm
●ハーネスポケット(写真・赤)
伸縮性のあるメッシュ素材でできたポケットスペース。小型のワイヤレスイヤホンケースやICカード、タブレット菓子などが入る。【SPEC】留め具/なし、内寸/横5〜7×縦10cm、間口/6cm
何と言っても、「wall バックパック」の最大の特徴は、独自ワークパッドの存在だ。
ワークパッドがリモートワークを支援
ノートPCやタブレットをはじめ、周辺機器やメモ帳類など、ビジネスで使う基本ツールをこれひとつに集約できる。着脱が可能だから、バッグ本体からワークパッドを抜き出すだけで、仕事の準備が済むのはわかりやすくていい。ハンドル付きなので、これだけを持って社内を移動できるし、TPOに合わせて別のバッグを使いたい時も、荷物の移し替えが容易だ。
ワークパッドだけをバッグ本体から抜き出せる
さらにすばらしいのが、このワークパッド、何と自立してくれる。背面のスタンドを傾かせ、下部のパネルを倒して固定させるだけでOKだ。
ワークパッドにはスタンドがあり、自立する
PCを卓上に起きつつ、そのかたわらにこのワークパッドを立たせておけば、ペンや周辺機器などを素早く取り出せる。背も高いので、周囲の目線を防ぐパーテーション的な役割もある程度果たしてくれるので、オープンスペースでも仕事に集中できそうだ。
ワークパッドが、パーテーション的な役割も担う
使い方を検証しているうちに、カバーを利用してタブレットをワークパッドの上にかける方法を思いついた。ふとした衝撃でタブレットが落ちる危険がある、ブランド側も推奨しないであろう自己責任の使い方だが、目線を高くできるので、オンライン会議や映像視聴によさそうだ。PCと組み合わせ、モニターを拡張する感覚でも利用できた。
タブレットとワークパッドを組み合わせれば、こんな使い方も可能
「ワークパッド」で面白いのは、中段のフラップポケットに電波遮断機能を採用したことだ。スマホを入れてフラップを閉じておくと、通話着信やメールが一切届かなくなる。実際に収納したスマホに通話を試みたところ、「電源が入っていないか、電波の届かないところにいるため、かかりません」という応答になった。資料作成など、集中して仕事したい時に重宝するギミックだ。なお、フラップを開けてスマホの一部が出ていれば電波は遮断されないので、挿しておくだけならスタンド代わりにもなる。
通信を一時的に遮断するには、スマホを「機内モード」に設定しておく方法もある。ただ、つい解除し忘れてしまい、その後ずっと「音信不通」状態になってしまっていた……というトラブルも起きやすい。その点、ポケットに入れる/出すによるオン/オフはわかりやすく、そうした問題を回避できそうだ。
このポケットにスマホを入れておけば、通話やメールをオフにできる
快適なリモートワークを実現するには、どうすればいいのか? そのためのアイデアが、このワークパッドに詰まっていた。
正面下部のファスナーポケットも、工夫を凝らしたギミックのひとつだった。
すでに解説したとおり、生地には撥水・防水性のある3レイヤーナイロンを使用。そのため、使ったばかりの折りたたみ傘や結露でびっしょりのペットボトルを入れても、ほかの気室に影響を与えない。
濡れた折りたたみ傘を入れておける
特に興味深いのが、ササマチだ。PVCのメッシュ素材になっており、ポケット内の水分がここから自重で排出される仕組みになっている。本体生地にも撥水性があるため、水分が生地に染みてしまうこともない。
PVCメッシュのササマチから、水分が排出されていく
当然、雨が降る日はあるし、喉の渇く暑い日は飲み物を持ち歩きたいもの。大切な書類やPCを守りながら、折りたたみ傘やペットボトルを気兼ねなく使えるというのは大きなアドバンテージだ。
小気味いいギミックとして推したいのが、ショルダーハーネスに付いているメッシュポケットだ。ストレッチ素材の小型ポケットがさりげなく付いており、ここにワイヤレスイヤホンやICカードなどを入れられる。バッグを肩から降ろさずにこうしたツールを出し入れできるのは、非常に便利だ。ホールド感が強く、少々の勢いでは中身が外に転落しないのも安心できる。ワイヤレスイヤホンの「AirPods Pro」を常用している身としては、とても便利に感じた。
左側のショルダーハーネスには、小型のポケットが備わっている
右側のショルダーハーネスには、ループが設けられていて、自分で用意したスマホホルダーを取り付けるのも容易だ。こうした拡張性を備えている点も、マスターピースの機能に対するこだわりをうかがわせる。
右側のショルダーハーネスにはループがあり、別売ホルダーを装着できる
かなり画期的な高機能バックパックだが、一部で気になる点もあった。
ひとつは、正面側外ポケットの収納性とレイアウトだ。
上部のポケットは、内寸約横27×縦41cmとかなりの広さを誇るものの、入れた荷物は底のほうにまで潜ってしまうため、取り出す際はかなり腕を突っ込まなくてはならない。いっぽうで、間口は約13cmと小さめで、厚みのあるバイブルサイズの手帳などは入らない。また、下部のポケットスペースと影響を受け合う構造のため、そちらに500mlペットボトルが入っていると、上部ポケットに入れられる荷物量も大きく制限される。
正面上部のポケットは、モノが奥まで入ってしまう
外ポケットは背面側にも付いているが、背中に近い位置にあるため、スマホなど、薄い小物に限られそうだ。外ポケットにたくさんの荷物をしまっておくというよりも、ツールを厳選し、シンプルかつスマートなスタイルを信奉するユーザーに向いたモデルと言えそうだ。
シンプルさとトレードオフしたパーツだと思われるが、ハンドルがかなり簡素だ。頑丈なナイロンテープを2つ折りにした幅1cmのハンドルで、指3本を通すのがやっとの大きさしかない。PCなど、それなりのビジネスツールを入れた状態だと、このハンドルで長時間持ち歩くのは現実的ではない。電車の網棚への上げ下ろしなど、ちょっとした時に利用するためだけのもののようだ。
ハンドルはかなり簡素
付いているだけありがたいのは確かだが、「時には手持ちスタイルで使いたい」というニーズには応えられない。手持ちもしたいのなら、同シリーズの「3WAYバッグ」「2WAYバッグ」を選択肢に加えたほうがいいだろう。
コロナ禍によってオフィス以外での仕事が推奨され、PCを持ち歩く/持ち歩かざるを得ないビジネスパーソンは増加した。マスターピース「wall バックパック」は、実用性の高い着脱式ワークパッドを装備し、さらにリモートワークを支援する部分にまで踏み込んだ点で、特別な存在感を発揮している。PCを持ち歩かず、リモートワークする機会もなければ持て余してしまうし、荷物もそれほど多くは入らないが、“刺さる人にはめちゃくちゃに刺さる”ギミックであることは間違いない。今後も、街中のカフェで仕事する機会がありそうなら、ぜひ検討してみてほしいバッグだ。
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。