バッグ業界は今、ライフスタイルの多様化にともない、大衆向け製品よりも個別のニーズに向けた製品の開発が進んでいる。にわかに盛り上がる「ビズリュック」においても同様で、さまざまなニーズに向けた新作が登場している。
そんな中、サムソナイトは、「今」という時代性に注目し、2021年2月に「サブ-リム」コレクションをスタート。デザインと機能、その両面を今の時代にマッチさせているコレクションだ。
現代的ニーズを集約したサムソナイト「サブ-リム」コレクションのひとつ「サブ-リム 2Wayバッグ M」。公式サイト価格は、35,200円(税込)
サムソナイトと言えば、1910年にアメリカで設立された世界有数のバッグメーカーだ。設立当初から高い人気を獲得してきたスーツケースの印象が色濃いが、近年はビジネスやカジュアル向けモデルも拡充。全世界に展開しているメリットを生かし、各地のリアルを吸い上げることで時代にマッチしたコレクションを次々と打ち立てている。
今回の「サブ-リム」も、そうしたサムソナイトらしさが顕著なコレクションだ。「SUBLIME(荘厳な、気品のある)」と、「SMART UTILITY BAG(現代的で機能性にすぐれたバッグ)」の頭文字を組み合わせたネーミングで、ビジネススタイルのカジュアル化や、働く場所にとらわれないワーキングスタイルの変化に合わせた機能性を提供する。
まず、基本スペックからチェックしていこう。
サイズはS/M/Lが用意されているが、Mのサイズは、28(幅)×41(高さ)×10(奥行)cm。一般的な電車の座席幅は、43〜46cmと言われているので、ヒザの上で横向きに置いても問題のない大きさだ。10cmという奥行も、格別にスリムというほどではないが、十分スマートでじゃまになりにくいサイズ感と言える。
本体サイズは、28(幅)×41(高さ)×10(奥行)cm
重量は、たったの約0.8kg。この手のビジネスリュックが大抵1kg強あることを考えると、かなり軽量の部類に入る。通勤など、毎日使うことを考えれば、この軽さは大きなメリットだ。
重量は、約0.8kg
リュックの顔となる正面には、強化ポリウレタンコーティングを施した合成樹脂素材「デューロン」を採用。ゴムに似たマットな質感で、通常のポリウレタンよりも強度や耐加水分解性にすぐれ、キズも付きにくい。側面には、撥水ポリエステル生地を採用し、正面生地と色を合わせることで統一感を出している。
ハンドルやファスナーの一部には、レザーを当てており、ビジネスに求められるフォーマル感もほどよく取り入れている。
生地に「デューロン」と撥水ポリエステルを採用
内装生地には、抗菌加工されたリサイクルPETの再生素材を採用。ニューノーマル時代に向けて高まりつつある衛生意識と、これからの環境や経済活動に不可欠なサステナブルな意識、双方に応えている点にも「今の時代」をとらえようという考えが表れている。
内装生地には、抗菌加工済みの再生素材を採用
ファスナーは、メイン収納などの目立つ部分には、グリップ部分を削った樹脂製のプルを採用。そのほか、つまみやすい形状のプルも併用している。
2種類のファスナープルを使用
次に、収納性をチェックしてみた。なお、どのような書類を収納できるかは、編集部調べとなる。
本作「2WayバッグM」は、B4サイズの書類を収納できる。角型0号(横28.7×縦38.2cm)の封筒も、端や角が多少曲がってしまうことをいとわなければ収納できた。メイン収納に取り付けられたファスナーが長く、大きく開閉させられるのも特徴だ。
B4ファイルの収納に適したメイン収納
2段タイプのランチボックスを入れた場合でも、その上にA4ファイルケースを収納できるだけのスペースは確保できた。
ランチボックスも難なく入る
リュックの開発コンセプトが最も表れやすいのが、ポケットレイアウトだ。本作は、複数のポケットを用意しつつも、用途を細かく限定せず、ユーザーに使い方を任せているのも“らしさ”を感じさせる。
メイン収納1
メイン収納内の正面側には、3つの内ポケットを装備。さまざまな小物を集約できる。
●メッシュポケット×2(写真・赤)
【SPEC】留め具/ゴム、内寸/横20×縦20cm、間口/17.5cm
中身が見えるメッシュ仕様。間口にはゴムが使われ、転落を防止する。ひんぱんに出し入れするほどではない小物の収納に。
●ファスナーポケット(写真・青)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横22×縦41cm、間口/37cm
大容量で、手帳やノートなど、絶対に紛失したくない薄型の荷物の収納に。
メイン収納2
メイン収納内の背面側には、PCが収納できるポケットを装備する。
●PCポケット(写真・赤)
【SPEC】留め具/面ファスナー付きストラップ、内寸/横27×縦41cm、間口/27cm
クッション入りで、ある程度の衝撃を吸収。ノートPCやタブレット、ファイルの収納に。
正面
正面ポケットは、上下2段で構成。3cmのマチが設けられているので、ある程度カサのある小物も収納できる。
●ファスナーポケット(写真・赤)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/28(幅)×16(高さ)×3(奥行)cm、間口/26cm
L字ファスナーで大きく開閉。さらに内部には、メッシュのL字ファスナーポケットも装備する。スマホやペン、モバイルバッテリー、ケーブル類など、出し入れ頻度の高い小物の収納に適している。
●ファスナーポケット(写真・青)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/28(幅)×21(高さ)×3(奥行)cm、間口/25cm
そこそこ大きめのサイズ。文庫本や長財布、A5判システム手帳などが入る。
「サブ-リム 2Wayバッグ M」という名のとおり、2WAYで使えるのが今作の最大の特徴だ。具体的には、リュックハーネスを使った“背負い”と、ハンドルを使った“手持ち”の切り替えが可能なのだが、実際に使ってみて驚いたのは、切り替えのスムーズさだった。
2WAYで持てるのが、今作最大の特徴
バックパネルには、スーツケースにセットアップさせるためのキャリーバー通しを備えており、こちらにリュックハーネスを挟んでおくこともできる。そうすることで、ブリーフケースのように本体を横持ちにしてもリュックハーネスが垂れ下がらず、フォーマル感が求められる状況でも粗雑な印象を与えずに済む。
一般的に2WAYないし3WAYモデルは、リュックハーネスを背面ポケット内に格納させる仕組みが多い。見た目にもスッキリするのは利点だが、実際には後端のナスカンを取り外したり、狭いポケット内にしまい込んだりするのは手間が結構かかり、結局「背負いでしか使っていない」という人も少なくない。今作の処理方法は実に簡単で、持ち方を難なく切り替えられた。感覚的な評価なら、今作の仕様のほうが10倍ラクだ。
リュックハーネスは、スリットに差し込むだけ
2WAYで使いやすいワケは、ポケットデザインにも表れている。特に、メイン収納内にレイアウトしたPC用ポケットの仕組みがスゴい。PCを縦方向に収納できるだけでなく、別の開閉ファスナーを設けることで、横方向からも出し入れできるようにしているからだ。
PCは、2方向からアクセス可能
具体的な使用シーンを考えると、リュックとして使っている時は、メイン収納を開けてからPCにアクセスでき、ブリーフケースとして使っている時は、メイン収納とは別の専用ファスナーから直接PCにアクセスできるというわけ。これなら、“背負い”でも“手持ち”でも、手間なくPCを取り出せる。
背負いと手持ちのどちらのスタイルでも、PCを取り出しやすい
2WAY対応は、ほかのポケットでも共通している。
メイン収納内のメッシュポケットの間口が、斜めにレイアウトされているのも、持つ方向を変えた時に荷物が転落しないためだ。
2WAYに対応したポケットデザイン
正面上段のポケット内に、別のファスナーポケットを加えているのも、バッグを持つ方向を変えても、モノが散乱しないようにするための工夫だ。
正面上段のポケット内には、別ポケットを用意
以上のような設計により、持ち方を切り替えることへのハードルが、物理的にも心理的にも低くなっている。
本コレクションの、「今」という時代にマッチさせようという開発コンセプトは、デザインにもしっかり表れている。
コンパクトながら収納力を最大化するためのスクエアフォルムや、装飾性を取り払ったオールブラックカラーなど、機能美にあふれている。いくらシンプルを目指していても、どこかに個性や主張を込めてしまうブランドは多いものだが、この「サブ-リム 2Wayバッグ M」は、潔いまでに無駄を排している。
シンプルなデザインも魅力
さらに、バッグの顔ともなるブランドロゴも、バッグ正面ではなく側面に配置するというこだわりよう。立体的なラバープリントでシックな印象を高めつつ、やはりオールブラックでまとめているだけに、シンプルな見た目を損ねていない。
ブランドロゴは、側面に配置
バッグは、服飾アクセサリーの一種で、個性を主張するツールとしての側面もある。その意味でも、現代は「主張を感じさせないほどにシンプル」であることがひとつの主張になっている。「サブ-リム 2Wayバッグ M」は、まさにそうしたニーズに合致するものだ。
たとえば、電車内で前抱えしながらメイン収納を開こうとした時、外ポケットに重いモノを入れていると、自重で勝手にファスナーが開いてしまうことがある。今作の場合、中の荷物が転落しそうなほど、不意に大きく開いてしまうことがあった。多くのバックパックのメイン収納部のファスナーは、“コの字”だが、2WAYである今作は縦方向でも使えるようにするため、より長いファスナーが配置されているのが要因のようだ。扱いに慣れれば、“ファスナーの止めどころ”がわかるようになるが、それまでは開き過ぎに気を付けたい。
2WAYがゆえに、メイン収納部は大きく開口する
手持ちするためのハンドルには、やわらかなクッションなどは入れられていない。そのため、重量がある時に長時間手持ちするのは、あまりおすすめできない。ただその半面、見た目がスッキリとしており、レザーを巻いたことで高級感も漂わせている点は悪くないし、耐久性の面でも申し分ない。2WAYとして実用的なモデルであることは事実だが、やはり基本的にはバックパックとして取り扱うのがメインになりそうだ。
ハンドルは薄手の作り
ビジネスのカジュアル化が進む現代においても、「バッグを背負ったまま客前に現れるのは失礼」と考える人は少なくない。身につけるべきビジネスマナーがリスクの最小化であるなら、ブリーフケースとしても使える2WAYバッグの有用性はかなり高いと言えるだろう。
あらゆる工夫によって2WAYのわずらわしさを取り除いた「サブ-リム 2Wayバッグ M」は、ビズリュックに慣れきった現代のビジネスパーソンが初めて触れる2WAYモデルとしても、ストレスなく導入できるはずだ。シンプルを極めたデザインも魅力的で、今の時代性がここに集約している。