2021年4月、G-SHOCKからスポーツラインの新モデル「GBA-900」が発売された。新たにドーナツ型液晶を採用し、運動時の情報をグラフィカルに表現する。
2021年4月に発売された「GBA-900」
「GBA-900」は、アーバンスポーツをコンセプトに、日常のトレーニングを快適にサポートするG-SHOCKのスポーツライン。G-SHOCK特有のタフネス性能に加え、以下のような機能を搭載している。
・距離計測(スマホのGPS機能と連携)
・走行時間計測
・走行ペース計測
・オートラップ機能
・歩数計測
・インターバルタイマー
・ラップタイム計測
・消費カロリー計測 など
「GBA-900-4AJF」。公式サイト価格は、18,700円(税込)
カラーバリエーションは全4色で展開
アナログ針仕様のスポーツラインとしては、2018年3月に発売された「GBA-800」が前身に当たり、針やインデックス、ベゼルの凹凸など、随所に類似点が見られた。ただ、「GBA-800」には、今作で採用されている「距離計測(スマホのGPS機能と連携)」、「走行ペース計測」、「オートラップ機能」、「消費カロリー表示」といった機能は搭載されていないことから、機能面は大幅に進化したことがわかる。
「GBA-800」シリーズ。生産終了品で、現在は在庫僅少
ちなみに余談ではあるがG-SHOCKは、2017年末からスポーツ機能に力を入れており、同時期に「G-SQUAD」と呼ぶスポーツラインを誕生させている。前身モデルである「GBA-800」も、「G-SQUAD」の一翼を担うモデルとして登場していたが、今作の「GBA-900」は同シリーズに含まれていない。「G-SQUAD」では、若干のリブランディングが行われたようで、現在は多彩なセンサーと高精細液晶を搭載した「本気のスポーツモデル」のみをラインアップ。今作はそれよりも「カジュアルなスポーツ用」という位置付けに当たるようだ。
本作のケースフォルムは、どの角度から落としても、風防やボタンに直接ダメージがいかないように計算されており、G-SHOCKらしさあふれるデザイン。ボタンは、左側に3つ、右側に2つ備え、押しやすさを担保しつつ、スッキリとまとめている。
計5つのプッシュボタンで操作
外装における最大の特徴は、ケースとバンドの接合面にベントホールを設けた点だ。ケース裏のラグ部分に設けたハーフクリア樹脂が表にまで貫通し、通気穴として機能している。スポーツで腕を振るたびにここから空気が送られ、汗の発生を抑制できる仕組みだ。
バンドに設けられたベントホール
バンドも、通常のG-SHOCKのものとは仕様が異なる。やわらかなソフトウレタンを採用し、フィット感を向上。さらに腕に触れる裏側には、微細なドット加工を施行したり、エッジを丸めたりすることで、不快感を最小限に留めている。また、バックルを留めるための穴のピッチも狭めで、腕の太さに合わせて細かな調整ができるようにした。スポーツラインらしい仕様と言える。
装着感のいいバンドを採用
もうひとつの特徴は、ドーナツ型液晶を採用していること。円型インジケーターを挟みつつ、9時位置から1時位置にかけて、文字盤外周に配置された液晶がそれで、アラームの有無、シグナルの有無、5段階の運動強度グラフ、そして設定した目標の達成率を表示する。
新型モジュールを採用し、ドーナツ型液晶でアナログブロックを取り囲んでいる
実際に使ってみて、機能の中でも特に5段階の運動強度グラフは便利に感じた。ランニング中、あらかじめ設定した個人情報と走行ペースなどを分析し、運動強度をリアルタイムで表示してくれる。具体的には、強度が高くなるほど、左から右に向けて液晶の目盛りが伸びていく。
自分の身体のことだからと何となくやっていては、効率のいい運動はできないもの。軽く流すなら「2」、少し心肺機能を強化したいなら「4」など、実際のグラフをリアルタイムで見ながらトレーニングすることができそうだ。
ランニング中、運動強度「4」を示している状態
文字盤の下部にある液晶では、ランニング中に走行距離やタイム、ラップを表示したり、1日のステップ数を表示したりできる。運動の成果を随時確認でき、モチベーションの向上につながる。
走行距離や経過時間などを確認できる
歩数の確認も可能
使っていて便利に感じたのが、針退避機能だ。右上のボタンを押しながら、左下のボタンをプッシュすると、長短針が2時10分の位置へと移動。これによって、液晶画面に針が被り、表示が見えづらい状態を回避することができる。液晶画面の実用性を担保するには必要不可欠な機能であり、比較的簡単な操作で実行できるのはありがたい。
さらにうれしいのは、この針退避状態が自動解除されるには、「何も操作しないで約1時間が経過」、または「モードの切り替え」が条件として設定されているので、たとえば、小1時間ランニングしている際も、液晶画面は見えやすい状態がキープされることだ。いくら針を退避できるとはいえ、ランニングしながらひんぱんに操作しなくてはいけないのなら、大変過ぎて“使えない機能”になってしまっていただろう。実用性をしっかりと配慮していることがうかがえる。
アナログ針が移動して液晶画面が見やすくなる針退避機能
また、今作はスマホと連動することで、そのGPS機能を活用したり、スマホのアプリ上でログの記録・閲覧を楽しめたりするが、スマホに届いたメールやメッセージの通知を液晶画面で知らせてくれる機能も付いている。いわゆるスマートウォッチとは異なり、届いた時にアイコンが点灯するだけで内容までは確認できないが、あるだけでも意外と便利だ。
メール(左)やメッセージ(右)が届くとアイコンが点灯
今作は、スポーツラインや「G-LIDE」の一部モデルのみに対応した専用アプリ「G-SHOCK MOVE」と連携することで、その魅力を最大化することができる。
いちばんの利点は、アクティビティの詳細な結果を確認できることだろう。各トレーニングの結果については、以下のデータを閲覧できる。
・走行した場所(GPS・地図情報を使った走路の表記)
・走行距離
・走行時間
・平均ペース
・最速ペース
・消費カロリー
・ラップタイム
専用アプリ「G-SHOCK MOVE」における、アクティビティの結果画面
また、1日/1週間/1か月ごとに、「歩数」や「カロリー」、「距離」の総量や目標達成度を各種グラフで表示。トレーニング状況をわかりやすく教えてくれるので、モチベーションの維持につながる。
グラフィカルにライフログを表示
また、モチベーションの視点で言えば、アクティビティの結果をSNSにアップしやすい画像形式で表示できるので、簡単にシェアできるのもうれしいポイントだ。
・実際に走行した場所の地図
・あらかじめ用意されたライブラリ画像
・カメラを起動しての写真撮影
アプリ上では、上のいずれかを背景に、「走路」や「走行距離」、「走行時間」、「消費カロリー」を埋め込んだ正方形の画像データを作成できる。目標を達成するのに仲間の支えはとても心強いものなので、この手軽さはありがたい。
アクティビティログを埋め込んだ画像データを作成可能
トレーニングに特化したG-SHOCKが誕生してから、およそ3年半。売り上げ的には、まだまだG-SHOCKの中核を担うまでにはいたっていないが、モデルのバリエーションは広がり続けている。
発売当時は、「スポーツ×G-SHOCK」という組み合わせ自体に違和感を覚えるユーザーもいたと思うが、健康志向が「一過性のブーム」から「当たり前」として定着したことも背景に、G-SHOCKのいちジャンルとしての認知は広まってきている。
多彩な機能を盛り込み、大幅に進化した今回の「GBA-900」も、“G-SHOCKのスポーツ利用”を推し進めるモデルとなるはずだ。普段は時刻を確認しやすいアナログ時計として愛用しつつ、オフはスポーツウォッチとしても利用する。いつも同じG-SHOCKを使い続けていたいという人にはぴったりだ。
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:51.3(縦)× 48.9(横)× 16.6(厚さ)mm
●重量:61g
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。