2023年1月、カシオは40周年を迎えるG-SHOCKの限定モデル「Adventurer's Stone Series(アドベンチャラーズ ストーン シリーズ)」全6モデルを発売。同ブランドの華飾技術の粋を集め、鉱石をコンセプトとした独特の質感が特徴だ。
G-SHOCK40周年記念の「アドベンチャラーズ ストーン シリーズ」の6モデルを一挙紹介!
「アドベンチャラーズ ストーン」、すなわち冒険者たちの石。40周年という節目を迎え、G-SHOCKはこれからもチャレンジし続ける人々の“道しるべ”となり続けることを、この特別なシリーズで宣言した。
古来、冒険者たちは石に導かれて旅路を歩んでいたという逸話がある。方位磁石が発明されるよりも昔、北欧のバイキングたちは太陽の位置がわからない曇り空のもと、鉱石の力を借りて太陽光の偏光度を確認し、大海原を航海したという。このとき使われたのが、複屈折現象を起こす鉱物だ。光が透過する際、複数の方向に屈折して分けられる性質を持っており、この複屈折を利用して曇天時も太陽の位置を調べたと言われている。
この「アドベンチャラーズ ストーン シリーズ」でモチーフとなった「コーディエライト」「カルサイト」「サンストーン」も、複屈折現象をもたらす鉱石だ。もちろん見た目に美しく、自然の偉大さを感じさせる鉱石は、身につけているだけで心強いお守りに。「コーディエライト」は「道を示す」、「カルサイト」は「成功に導く」、「サンストーン」は「勝利をもたらす」という石言葉も持っている。
シリーズの各ベースモデルは、スクエアケースの「5600」、八角形ベゼルで大人気の「2100」、無骨で堅牢なフォルムの「110」、女性にも着けやすいように小型・軽量化した「S5600」「S2100」「S110」の6モデル。品番の頭に「GM」が付いていることからわかるように、ベゼルをメタル化させた「メタルカバード」シリーズの延長線上に位置している。
詳細は後述するが、本シリーズの最大の魅力は、モチーフの鉱石を彷彿とさせる華飾技術にある。専用の金型を使った鍛造成形やマスキングを駆使したIP処理によって、まるで鉱石からG-SHOCKが作り出されたかのような表現を実現させている。ここまで大胆にアレンジしたデザインは珍しく、周年記念シリーズならではのこだわりを感じさせる。
このほか、全モデル共通のディテールとして、文字盤に40周年を記念する「SINCE 1983」のサインをレイアウトし、さらにケースバックにはG-SHOCKの25、30、35周年のロゴデザインも手がけたエリック・ヘイズ氏による40周年ロゴを、遊環には「40」を表現するスターマークを刻印し、限定モデルらしい仕様に仕上げている。
文字盤には、G-SHOCKの誕生年を記載
遊環には4つのスターマークを刻んだ
エリック・ヘイズ氏がデザインした40周年ロゴも刻印
ここからは、シリーズ全6モデルを順に紹介していく。
「GM-2140GEM-2AJR」は、人気の八角形ベゼルをベースにしたモデルだ。
「GM-2140GEM-2AJR」の公式サイト価格は38,500円(税込)
モチーフの鉱石は「コーディエライト」。和名は「菫青石(きんせいせき)」で、宝石の世界では「アイオライト」「ウォーターサファイア」とも呼ばれている。和名にあるとおり、スミレの花びらのような淡いブルーカラーが特徴だ。
「GM-2140GEM-2AJR」のモチーフは「コーディエライト」
ベゼルは、鍛造+ブルーIPを施したもの。鉱石をイメージした荒々しい造形で鍛造成形したベゼルに、「コーディエライト」らしいブルーIPを施した。
ベゼルは鍛造→ブルーIPの順で制作された
ベゼルの各所には、鉱石らしい荒々しい凹凸を表現。正面はヘアライン、サイドはミラー、さらに凹凸部分は光沢ホーニングによる仕上げと、質感もさまざまで、これまでのメタルカバードシリーズで行われてきたどの表現とも異なっている。
大きく削れたようなベゼル下部
仕上げの違いが立体感を高めている
文字盤には偏光蒸着を採用。見る角度により異なる輝きを放つ様子は、モチーフとした「コーディエライト」の複屈折現象を彷彿とさせ、世界観を高めている。
偏光蒸着を採用した文字盤
バンドは、ブルー+ブラックのガラール成形。2色の樹脂を混ぜ合わせることで、鉱石のような自然な質感を表現している。
ガラール成形で自然なマーブル模様を描いたバンド
「GM-2140GEM-2AJR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:44.4(横)×49.3(縦)×12.1(厚さ)mm
●重量:72g
G-SHOCKのオリジン「5600」ベースのモデルでは、過去に例のないデザインが施されている。
「GM-5640GEM-1JR」の公式サイト価格は41,800円(税込)
モチーフの鉱石は「サンストーン」。和名は「日長石(にっちょうせき)」で、別名に「ヘリオライト(太陽石)」。赤やオレンジ、褐色のものが多く、中にラメが入っているようなキラキラとした輝きを放つ鉱石だ。
「GM-5640GEM-1JR」のモチーフは「サンストーン」
ベゼルは、鍛造+レインボーIP+ブラックIPを施したもの。レインボーカラーを施した鍛造ベゼルにランダム状にマスキングし、その上からブラックIPを処理。特徴的な光のきらめきを表現した。
ベゼルは鍛造→レインボーIP→ブラックIP→総仕上げの順で制作
レインボーIPの上にあえてブラックIPを重ねることで、レインボーが放つ極彩色にスポットを当て、その特徴的な色合いをより印象的なディテールへと昇華。それぞれの“窓”から見える表情は、「サンストーン」が放つさまざまな輝きを切り取ったかのようだ。
レインボーIPの上にブラックIPを処理
ラグやケースサイドは、鉱石のような凹凸を表現
バンドは、グレースケルトン。わずかに透けて見える樹脂素材で、ちょっとしたニュアンスを加えている。
わずかに透けたグレースケルトンのバンド
「GM-5640GEM-1JR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:43.2 (横)×49.6(縦)×12.9(厚さ)mm
●重量:78g
「GM-114GEM-1A9JR」は、G-SHOCKらしいタフネスさを感じさせる大型ケース「110」がベースだ。
「GM-114GEM-1A9JR」の公式サイト価格は40,700円(税込)
モチーフの鉱石は「カルサイト」。和名は「方解石(ほうかいせき)」。無色や黄色を主に、さまざまな色や形が見られる鉱石だ。「GM-114GEM-1A9JR」は、そのなかでも黄金色を帯びたカルサイトを表現している。
「GM-114GEM-1A9JR」のモチーフはゴールドカラーの「カルサイト」
ベゼルは、鍛造+ゴールドIP+ブラックIPを施したもの。全体をゴールドIPで着色したあと、一部にマスキングしてからブラックIP処理を施すことで、鮮やかなコンビカラーを表現した。
ベゼルは、鍛造→ゴールドIP→ブラックIP→総仕上げの順で制作
また、ベゼル上で段差を設けることで、ザラザラとした「鉱石」部分を表現。それも、ゴールドとブラックの2色で分けられているので、見た目のインパクトは大きい。
ブラックのベゼルの下からゴールドの鉱石がのぞいているような表現
「鉱石」をブラックカラーで表現した部分も
ラグにも細かな凹部がつけられている
「110」を象徴する文字盤のY字ブリッジやインデックスは、ゴールドカラーで蒸着。ベゼルのカラーとリンクし、大きな存在感を発揮する。
ゴールド蒸着を施した文字盤
バンドは、ブラック+ホットスタンプ。加圧・加熱によって表情を加える手法で、岩肌のような凹凸を生んでいる。
岩肌のようなゴツゴツとした質感を表現
「GM-114GEM-1A9JR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:48.8(横)×51.9(縦)×16.9(厚さ)mm
●重量:99g
「GM-S2140GEM-9AJR」は、上で紹介してきたモデルと同じく鉱石をモチーフにしているが、力強さや雄大さよりも上品さを感じるデザインに仕上がっている。
「GM-S2140GEM-9AJR」の公式サイト価格は33,000円(税込)
以下で取り上げる3モデルはいずれも、大型ケース「110」がベースの「GM-114GEM-1A9JR」と同じ「カルサイト」がモチーフ。「GM-S2140GEM-9AJR」は透き通った黄金色の「カルサイト」を表現している。
「GM-S2140GEM-9AJR」のモチーフは、ゴールドカラーの「カルサイト」
ベゼルは、鍛造+ゴールドIPを施したもの。専用の金型を使って鍛造成形したベゼルに、ゴールドIPを施している。
ベゼルは鍛造→ゴールドIPの順で制作
同じ八角形ベゼルの「GM-2140GEM-2AJR」同様に、ベゼルには鉱石を思わせる凹凸を設けているものの、今作に見られる荒々しさは少なめ。仕上げの違いが貴金属品のようなきらびやかさを生み出しており、アクセサリーとしての存在感を見せつけている。
メンズモデルに比べ、凹凸を程よく抑えたベゼル造形
ラグ付近のミラー仕上げも効いている
文字盤はサンレイ仕上げで、ベゼル同様のゴールドカラーを採用。やわらかなイエローゴールド寄りの色合いなので、やさしさがあり、かつトレンドのニュアンスカラーとも合わせやすいのが魅力だ。
トレンド感を感じさせるカラーリング
バンドはホワイト。凹凸などをほとんど省略したシンプルなデザインで、エレガンスな雰囲気を高めている。
バンドはシンプルなホワイトカラー
「GM-S2140GEM-9AJR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:40.5(横)×46.2(縦)×11.3(厚さ)mm
●重量:58g
本シリーズの中で唯一、ベゼルに鉱石らしい凹凸を設けない造形を採用しているのが、「GM-S5640GEM-7JR」だ。
「GM-S5640GEM-7JR」の公式サイト価格は35,200円(税込)
「GM-S5640GEM-7JR」は「カルサイト」の中でも、無色透明なものに名付けられる「氷州石(ひょうしゅうせき)」を彷彿とさせるカラーリング。レインボーIPを施すことで、結晶模様や光の屈折を表現する。
「GM-S5640GEM-7JR」のモチーフは無色透明な「カルサイト」
ベゼルは、レーザー刻印+レインボーIPを施したもの。多方向にレーザーによる彫刻を加えたうえで、レインボーIPを施している。
ベゼルは鍛造→レーザー刻印→レインボーIPの順で製造された
プリズムレンズを通したときに見られる光のスペクトルのように、淡くも多彩なレインボーカラーはまさに方位磁石代わりに用いたとされる「カルサイト」らしい彩色。全体にマットな質感だが、幾重にも刻まれたレーザー彫刻によるライン部分は、メタル本来の光沢を見せており、そこでも「光」の世界を表現している。
鮮やかな色合いを見せるレインボーIPのベゼル
レーザー彫刻によるラインも印象的
文字盤はホワイト一色だが、ここにもレーザー彫刻と同じような幾何学模様が刻まれている。
文字盤にも幾何学模様が施されている
バンドは、ホワイトスケルトン+ホットスタンプ。透明度が高く、さらにベゼル&文字盤と同様のラインが刻まれており、ここにも「カルサイト」の世界観が宿っている。
透明で模様付きのバンドを採用
「GM-S5640GEM-7JR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:38.4(横)×43.8(縦)×10.9(厚さ)mm
●重量:50g
最後に紹介する「GM-S114GEM-1A2JR」は、艶やかなパープルカラーをした、アナログとデジタルのコンビネーションモデルだ。
「GM-S114GEM-1A2JR」の公式サイト価格は36,300円(税込)
「GM-S114GEM-1A2JR」は艶やかなパープルカラーの「カルサイト」がモチーフ。
「GM-S114GEM-1A2JR」のモチーフはパープルの「カルサイト」
ベゼルは、鍛造+パープルIP+グレーIPを施したもの。全体にパーブルIPを施したあと、鉱石のような凹凸部分にマスキングを施したうえでグレーIPをかけ、複層的な色合いを表現している。
ベゼルは鍛造→パープルIP→グレーIP→総仕上げの順で制作
図らずも露出してしまったようなベゼルの凹凸部分は、パープルに着色。鮮やかなライトトーンで、ほどよい光沢感を放っている。
2つのIP処理により、パープルとグレーで表現されたベゼル
ライトトーンなので、重たい印象は受けない
文字盤のY字ブリッジやインデックスにも、同じパープルを採用。G-SHOCKらしい力強さだけでなく、女性らしいチャーミングさも感じさせる仕上がりだ。
G-SHOCKらしいタフネスさに、パープルが妖艶さを加味している
バンドは、ブラック+ホットスタンプ。鉱石を彷彿とさせる質感に仕上げられている。
ブラックの樹脂バンドを採用
「GM-S114GEM-1A2JR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:42(横)×46(縦)×13.1(厚さ)mm
●重量:58g
カシオが2019年頃より対外的に言及し始めたのが、G-SHOCKにおける「CMF」=「カラー・マテリアル・フィニッシュ」の重要性だ。このキーワードのもと、時には挑戦的なアイデアも積極的に製品化し、業界のパイオニアで唯一無二のG-SHOCKらしさを追求してきた。
そして、40周年という節目に登場した「アドベンチャラーズ ストーン シリーズ」では、専用金型を使ったベゼルの鍛造成形や、2度のIP処理で生み出した特殊な彩色、微細なレーザー彫刻など、これまで積み重ねた技術力が遺憾なく発揮されていた。周年を祝うにふさわしい特別感満点なシリーズで、ここで実現した造形技術は今後の製品にも応用されていくだろう。そうした意味でも、“道しるべ”となるシリーズだ。
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。