2023年4月、カシオはG-SHOCK誕生40周年を記念するモデルとして「リクリスタライズド」シリーズを発売。初代モデルをベースに、ステンレスの再結晶化と深層硬化処理を組み合わせた技術を初めて採用しているのが特徴だ。
2023年4月に発売されたG-SHOCK「リクリスタライズド」シリーズ
「リクリスタライズド GMW-B5000PS-1JR」の公式サイト価格は121,000円(税込)
ご存じの読者も多いと思うが、G-SHOCKは今年2023年で誕生40周年を迎えた。エリック・ヘイズとのコラボレーションモデルを皮切りに、これまでに太陽フレアをイメージした「フレアレッド」や鉱石をモチーフにした「アドヴェンチャラーズストーン」を発売。周年記念モデルを続々とリリースし、G-SHOCKが歩んできた偉大な軌跡を再認識させるとともに、タフで唯一無二の魅力を再認識させている。
ここまでリリースされてきた作品を振り返ると、近年カシオが注力してきた「CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)」こそが、“周年記念モデルならではの特別感”を生み出すカギであることがわかる。エリック・ヘイズとのコラボでは緻密なレーザー彫刻を見せ、「フレアレッド」のベゼルではカーボンとグラスファイバーによるランダムな模様&蓄光粒子による妖しげな発光を実現、そして「アドヴェンチャラーズストーン」ではまるで本物の鉱石と見まがう輝きや質感を表現していた。いずれも長い開発期間をかけて実現したCMF技術を、この40周年というタイミングに合わせて一挙に投入してきたのだ。今回の「リクリスタライズド」も、やはりG-SHOCKのCMF技術の粋を集めた特別モデルに仕上がっている。
ステンレス素材にG-SHOCKのCMF技術を注入
「リクリスタライズド」シリーズでは、ベゼルやバンドに用いたステンレス素材に再結晶化と深層硬化処理を施し、かつてない独創的な表情を生み出している。
再結晶化とは、金属をある一定の温度に加熱することで生じる自然現象のこと。温度上昇で内部に微小な結晶粒が生じ、次第に隣接する粒同士が合体して大小さまざまな結晶が現れるのだ。「リクリスタライズド」というシリーズ名も、「再結晶化」に由来する。
もうひとつの深層硬化処理とは、金属の表面層にガスを浸透させて硬質層を生み出す技術のこと。素材そのものを硬化させるのが特徴で、何らかの衝撃で剥げてしまう危険のある「被膜による保護」とは性質が異なる。G-SHOCKでは過去にハイエンドライン「MR-G」にて同様の技術を駆使したモデルが存在するが、そのときの対象はチタンだった。今回はステンレスの表面層に炭素を浸透させる深層硬化処理技術を独自に開発し、一般的なステンレスよりも約3倍もの硬度を実現させたという。そのうえで、シルバーカラーの「GMW-B5000PS」にはTIC(チタンカーバイド)処理を、ゴールドカラーの「GMW-B5000PG」にはIP(イオンプレーティング)処理を施して仕上げている。
結晶の形や大きさ、光沢具合はまったくの不均一。同じものはひとつとして作り出せないから、いわゆる“一点モノ”だとも言える。表面がゴツゴツしているように見えるかもしれないが、実際はフラット。“素のメタル感”が漂う仕上がりで、再結晶化ステンレスの質感を最大限に生かしている。
再結晶化したステンレス
なお、再結晶化は素材表面のみならず内部も含めての現象であるため、切削した部分にも特有の質感が現れる。ベゼル側面の凹凸やボタンガードにも、結晶が細かく表現されている。
細部にも再結晶化ならではの質感が見て取れる
ベゼルに刻まれたブランド名は色埋めせず、素のエンボスのみで表現
「リクリスタライズド」はG-SHOCKの初代モデル「DW-5000」がモチーフで、文字盤にはオリジンと同じブロックパターンをデザイン。外周部にはミラー仕上げを施し、メタリックな雰囲気を高めている。
オリジンを彷彿とさせるフェイスデザイン
バンドにも同じ処理を施したステンレスを採用。ディンプルは同じフルメタルの「GMW-B5000D」よりもソリッドに仕上げられた印象だ。
バンドにもベゼルと同じ処理を施したステンレスを採用
ワンプッシュ三つ折れ式中留も同様の素材で統一感を高めている
スクリューバック式のケースバックにも再結晶化を表現。さらに、アニバーサリーロゴを刻印し、特別感を演出している。
エリック・ヘイズがデザインした40周年ロゴを刻印
また、モードの切り替えなど、操作することの多い左下のボタンにも、周年記念モデルであることを表す星のマークが刻まれている。
星のマークが周年記念モデルであることの証し
さらに特別なパッケージも付属。鉱物を思わせるディテールを加えたケースには再生プラスチックを、外箱にはベジタブルインクを用いた再生紙を使用しており、環境にも配慮している。
環境に配慮した素材で作られた特別パッケージ
搭載された機能については、ほかの「フルメタル5000」と同様だ。スマホと連携できる「スマートフォンリンク」や、世界6局の標準電波を受信できる「マルチバンド6」、光で駆動する「タフソーラー」など、G-SHOCKおなじみの便利な機能を備えている。
「リクリスタライズド」シリーズでは、ゴールドカラーの「GMW-B5000PG」もラインアップされている。
シルバーカラーと同様に、ステンレス素材に再結晶化&深層硬化処理を採用。ゴールドということで、よりラグジュアリーな風合いを持ち合わせているのが特徴だ。
「リクリスタライズド GMW-B5000PG-9JR」の公式サイト価格は121,000円(税込)
大小さまざまな結晶が表に表れ、光を乱反射させることで独特のきらめきを放出。精細な輝きは金箔を用いた蒔絵を思わせるようで、これまでのゴールドカラーとはまた違う魅力を備えている。
細かな結晶が上品な輝きを放つ
再結晶化は、金属製品を安定化させるために用いられる重要な処理工程であるものの、その状態のまま製品として使われる例はあまり聞かない。そもそも再結晶化した金属は、硬さが低下した状態にあるわけで、時計として十分な硬度を備えていたとしても、タフネスをアイデンティティーとするG-SHOCKとしては、そのまま採用するわけにはいかなかったのだろう。再結晶化ならではの表情に惚れ込んだ開発陣は、一般的なステンレスの約3倍にまで硬化させる深層硬化処理技術を確立することで製品化を実現させるにいたった。
40年前、「絶対にできない」と言われながらも開発をあきらめなかったことで、驚異的な耐落下衝撃性能を備えたG-SHOCKは誕生した。この「リクリスタライズド」からも、同じ不屈の精神が伝わってくるようだ。
「リクリスタライズド GMW-B5000PS-1JR」
「リクリスタライズド GMW-B5000PG-9JR」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:ステンレススチール
●バンド材質:メタルバンド(ステンレススチール)
●ケースサイズ:43.2(横)×49.3(縦)×13(厚さ)mm
●重量:167g
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。