オリエントスター「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン リミテッド」。2024年10月24日より数量365本限定(国内200本・海外165本)で発売
オリエントが1964年に同社初のダイバーズウォッチを発売してから、今年で60年。2024年もいよいよ終わりが見えてきたこのタイミングで、ついに60周年を記念した限定モデルが発売された。今回はその限定モデル、オリエントスター「M42ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン リミテッド」をレビューしていこう。
さっそくだが、限定モデルの正体は、すでに発売されているレギュラーモデルのオリエントスター「M42ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン」(以下、レギュラーモデル)をベースに、随所にゴールドが散りばめられた機体だ。
2023年に発売されたレギュラーモデルは、1964 年に発売されたダイバーズウォッチ「カレンダーオートオリエント」を現代仕様にして復刻させた「M42 ダイバー1964 2nd エディションF6 デイト 200m」(2022年発売)にチタンを採用したモデルである。つまり今回の限定モデルは、「カレンダーオートオリエント」をベースとしたモデルの3作品目にあたるというわけだ。
1964年に発売されたオリエントの自動巻きダイバーズウォッチ「カレンダーオートオリエント」。現在は販売終了
限定モデルのベースになった、オリエントスター「M42 ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン」(2023年発売)
前述のとおり、今回の限定モデルがレギュラーモデルから変化した個所は、差し色として配されたゴールドだ。このゴールドは渋みのある色合いで、多くの人が金色に対して抱くであろう煌びやかなイメージとはやや異なる。では、この落ち着きある色調はどのように創出されているのか? 文字板に近づくと、その答えに辿り着く。
ゴールドに色付いた逆回転防止ベゼルの目盛りや数字の表面には、細かい凸凹がある。これは梨地仕上げという加工方法で、表面に細かな凹凸を出すことで光が乱反射し、柔らかな輝きを生む。また、インデックスや針の縁取り、ロゴのゴールドは艶が抑えられている仕様だ。これらの仕上げが、ゴールドを使っても落ち着いた雰囲気を醸し出し、ダイバーズウォッチの武骨な“道具感”を引き立てている。
しかし、本作は“道具感”だけで終わらない雰囲気がある。筆者はこの時計に上品な空気を感じてならないのだ。
逆回転防止ベゼルの目盛りや数字は梨地仕上げ。文字板上のゴールドがあしらわれたパーツは艶が抑えられている
この上品な空気の正体。それは、チタンとゴールドの組み合わせだ。チタンとゴールドの組み合わせが、ここまでの効果を生むとは想像できなかった。ケース&バンドに採用されたチタンの暗灰色と渋いゴールドが織りなすカラーリングは、エレガントなタッチを添える。
そして、文字板に配されたパワーリザーブインジケーターにも注目したい。この扇形の機構は、オリエントスターのほとんどの機体に備わっているアイコニックなパーツだ。機能はもちろんだが、デザイン面でも十分な役割を担う。他ブランドのダイバーズウォッチではパワーリザーブインジケーターが備わっているモデルはほとんど見られないが、さすが独創的な時計を生み続けるオリエントスターだ。この機構を置くだけの一手で、本作に独自性を体現させてみせた。
チタン×ゴールドが全体にエレガンスを添える。ダイヤルの12時位置には駆動残時間を表示するパワーリザーブインジケーターが座る。本作はパワーリザーブ約50時間を誇るので、目盛りの最大数値は50の表示
ケース&バンドに採用されたグレートーンのチタンはプロテクトコーティングによるチタン表面の硬化処理によって過酷な環境に耐える強さもあわせ持つ。またステンレススチール製モデルに比べて約35%も軽量
本作はダイバーズウォッチの国際規格「ISO6425」に準拠したプロ仕様の一本だ。200mスキューバ潜水用防水・ねじ込み式リューズ・逆回転防止ベゼル・ルミナスライト・スクリューバックなど、本格的なダイビングをするに必須の機能を搭載している。しかし、現代ではダイバーズウォッチをダイバーズウォッチとして使うユーザーは少数派だろう。どちらかと言えば、重圧な見た目や視認性が高いダイヤル、回転ベゼルなど、とりわけダイバーズウォッチの見た目を好んで着ける人が多いはず。そういう意味で、本作は日常使いする人にとってはオーバースペックかもしれないが、こういった語れる機能たちに想いを馳せることができるのも、所有者だけの愉しみである。
深海など、暗所での視認性を高めるルミナスライト
スクリューバックには、200m防水の刻印とともに、「LIMITED EDITION」の文字と限定シリアルナンバーが。内部では約50時間のパワーリザーブを誇る自社製キャリバー「F6N47」が鼓動を刻む
では着用といこう。黒ジャケットと白Tシャツ、それぞれに合わせてみた。
ジャケットを羽織ってスマートにキメたいシーンでは、チタン×ゴールドの組み合わせが役割を果たす。渋みのあるゴールドが腕元にエレガンスをまとわせ、ジャケット&Tシャツのシンプルコーデに華を添える。悪目立ちせず、全体を落ち着いた雰囲気にキープできるのもうれしいところだ。
ビジネスにも合うチタン×ゴールドの組み合わせ。チタンはPC作業中も煩わしく感じないほど軽量だ
いっぽう、カジュアルなシーンではダイバーズウォッチとしての武骨なイメージが引き立ってくる。袖を少しまくり上げた長袖Tシャツに、バンドをやや緩めにして装着してみた。すると、ほどよいラフ感のなかにダイバーズウォッチのスポーティーさがアクセントになる。印象がダラっと崩れすぎないのも、本作の絶妙なデザインのおかげだ。
休日のきれいめカジュアルにも十分マッチする
今回の「M42ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン リミテッド」は、限定モデルならではのゴールドの差し色や裏ブタに刻印された「LIMITED EDITION」など、特別感あふれる装いだ。しかし、特別感があるだけで収まらず、日々のさまざまなシーンに対応する実用時計としての顔もあわせ持つ。限定作として大切に保存しておきたい気持ちと、毎日ガシガシ使いたい気持ちの葛藤に苦労しそうだ。
オリエントスター「M42ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン リミテッド」
●駆動方式:機械式
●駆動持続時間:約50時間
●防水性能:200mスキューバ潜水用防水
●ケース&バンド素材:チタン(プロテクトコーティング)
●ガラス材質: 両球面サファイアクリスタル(ARコーティング)
●ケース径:41.0mm
●ケース厚:14.3mm
写真/村本祥一(BYTHEWAY)