偶然か、必然か――。世界に誇る三大国産時計メーカーとしておなじみのセイコー、シチズン、カシオが、2024年10月下旬〜11月上旬にかけて、ほぼ同時期に黒文字板のクロノグラフをリリースした。年末に向けたタイミングでの発表ということもあり、来季のトレンドも予感させる“黒のグラフ”(クロノグラフ)。はたして各メーカーが打ち出す新作黒クロノの実力はいかに? 気になる各モデルをレビューしていく。
多機能をまとめた洗練デザインにより、時計好きからファッション好きまで幅広く魅了するクロノグラフ。スポーティーなデザインがベースゆえ、たとえば「オン/オフ使える」と謳っているにもかかわらず、何となくカジュアルに寄りすぎ? なモデルもチラホラ見受けられる。しかし、文字板もインダイヤルもブラックに統一した黒クロノなら、いわゆるパンダ文字板のようなメリハリが抑えられ、ビジネススタイルにも違和感なくなじむのは一目瞭然だ。黒文字板が時計全体の雰囲気をほどよく引き締め、ダーク系ジャケットとの好相性をかなえてくれる。
カジュアルスタイルにおいても黒クロノの活躍は止まらない。これからの寒い時季はボリュームのあるコートやブルゾンがコーディネートの主役となるが、適度に主張がある黒クロノであれば、重くなりがちな冬アウターを着用しても埋没せず、腕元のアクセントをしっかり担ってくれる。
複雑顔なクロノグラフも、黒文字板だとグッと引き締まった印象に。ベルトも黒で仕上げると、よりシックな雰囲気が加速する
各メーカーがこぞって打ち出した、端正なビジュアルを纏う黒クロノ。パッと見の印象は同じ、なんて侮るなかれ。さすが世界に誇るジャパンブランドらしい、それぞれオリジナリティがあふれる、魅力の詰まった新作モデルは必見だ!
多針ながらスッキリしたフェイスデザインが印象的な「アストロン」の新作黒クロノ。なんと言ってもケース、ダイヤル、ブレスレットといったすべてのパーツの、まるで金属の塊を削ぎ落としたかのようなソリッドで硬質感がある仕上がりに目を奪われる。また細身のチタンベゼルによるスッキリした見た目やていねいな磨き込みによる美しい光沢など、圧倒的な技術力で洗練された機能美を表現するあたりは圧巻のひと言だ。さらにケースの外装をギリギリまで削り、シリーズの中でも過去最小サイズ を実現。そんな小ぶりな点も、シャープでスタイリッシュな印象を際立たせるのに一役買っている。
エッジのきいたシルエットにより、凛とした美しさと品格を両立している
ダイヤルには、セイコーのこだわりでもある硬質感を強調すべく、ケースの仕上げと相性のよいヘアライン調の型打ちパターンが施されている。さらにブレスレットはピッチが短く、フラット面が大きい駒を採用。金属の存在感を高めるとともに、手首に吸い付くようなストレスフリーの着用感を味わえるのもうれしい限り。また、デュアルタイム表示機能を搭載したり、タイムトランスファー機能に要する時間を従来モデルから大幅に短縮したりと、使い勝手も大幅に進化している。そんな世界をしっかり視野に入れた機能性の高さも見逃せないポイントだ。
ケースに沿うように配置されたプッシュボタンは、スムーズな操作が可能なうえ、クリック感も抜群だ
ソリッドな質感が強調されたエレガントな仕上がりは、知的な雰囲気を醸成する
【SPEC】
駆動方式:GPSソーラー
駆動持続時間:フル充電時約6か月間/パワーセーブ時約2年
防水性能:日常生活用強化防水(10気圧)
ケース&バンド素材:純チタン(ダイヤシールド)
ガラス材質: サファイアガラス(スーパークリア コーティング)
ケース径:42.0mm
ケース厚:12.4mm
“漆黒の宇宙”をコンセプトに掲げたシチズンの新作は、黒クロノらしさが全開だ。本作は、おなじみ「アテッサ」のフラッグシップモデルをベースに、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」が挑む宇宙に広がる闇と、闇の先に見える光をテーマに製作されたコラボ第5弾の一本(世界限定2,300本展開)。よく見るとブラックの文字板には結晶チタンをイメージした柄が施され、その上にブラックの小部品を重ねるという、細部にまでこだわった精巧な作りは、まさにシチズンが長年培ってきた技術の賜物だろう。また、サファイアベゼルにはミラー仕上げの都市名が輝いて闇の先に見える光を表現するなど、随所で闇と光がモダンに表現されたモノトーンクロノは、男らしさや強い意志を持つビジネスパーソンを印象づける腕時計として大きく貢献してくれるはずだ。
モノトーンで統一されたクロノは格別の高級感と力強い存在感を放つ
そして、ケース&バンドには、艶のあるブラックカラーが特徴の表面硬化技術「デュラテクトDLC」加工を施した「スーパーチタニウム」を採用。ただのオールブラックではない、シチズンが独自に開発した技術や素材が本作にはしっかりと注入されている。さらに、代名詞とも言える光発電の「エコ・ドライブ」をはじめ、ワールドタイム、デュアルタイムなど、すこぶる高い機能性が備わり実用性も申し分ない。
ブレスレットの中駒に結晶チタンを採用。さまざまな黒の色調が、ブレスからも豊かな表情を生む
スタイルも気持ちもグッと引き締まるオールブラック仕様
【SPEC】
駆動方式:光発電エコ・ドライブ
駆動持続時間:光発電約5年(パワーセーブ作動時)
防水性能:10気圧防水
ケース&バンド素材:スーパーチタニウム
ガラス材質: デュアル球面サファイアガラス
ケース径:44.6mm
ケース厚:16.0mm
フルメタルの造形美により高級感あふれる外装を纏ったG-SHOCKの新作黒クロノがこちら。アイコニックな八角形ベゼルやヘアライン加工、ミラー研磨の美しい仕上げなど、まさに“ラグジュアリー”と“本格機能”を見事に両立させている。またタフネスウォッチの金字塔と呼ばれるだけあって、ベゼルとケースの間にファインレンジ製の緩衝パーツを実装してモジュールに伝わる衝撃を緩和させるなど、まさに煌めき・質感・強度の三拍子が揃い踏み。
実用性と高級感ただようルックスを高次元で満たした極上顔
ほどよく存在感を発揮してくれるのはもちろん、多針、多機能、フルメタルでありながら従来モデル(GM-B2100)のサイズ感をキープ。厚みが抑えられているため着け心地は快適なうえ、スリムケースだから袖口への収まりもいい。シーンや装いを問わず着用できて、適度に存在感を発揮してくれるという高いポテンシャルを持ったG-SHOCKの黒クロノは、特に没個性になりがちなスーツスタイルのアクセントにもってこいの一本である。
ネジロック式のリューズは、ベゼルと同じ八角形デザインを採用
黒文字板を基調にした精悍な顔つきながら繊細さもあり、嫌みなく個性を発揮してくれる
【SPEC】
駆動方式:タフソーラー(ソーラー充電システム)
駆動持続時間:約5か月 ※機能使用の場合
防水性能:20気圧防水
ケース&バンド素材:ステンレススチール
ガラス材質: 無機ガラス
ケース径:46.3mm
ケース厚:12.4mm
黒クロノがビジネスシーンに合うのは十分にご理解いただけただろう。とはいえ同じ“黒文字板×クロノグラフ”と言っても、もたらす印象は千差万別。そのなかでもあえてテイスト別に診断するならば、無難に決めたいなら主張控えめでスタイリッシュなセイコー、精悍なオールブラック+特別感を求めるならシチズン、スタイルだけなくアクティブさ重視ならタフに使えるカシオ、と分けられる。どのモデルもオン/オフで使える万能時計であるのは間違いないだけに、各モデルの特徴をしっかり把握して自分にあった一本を選んでほしい。
左からカシオ、シチズン、セイコー。どのモデルも精悍な面構えだが、それぞれに個性が感じられる
写真/村本祥一(BYTHEWAY)