前回(連載4回目)は、Windows 11 PCの起動時初期設定と、データ復元前にやっておきたい環境構築について解説しました。第5回となる今回は、バックアップしたデータの復元方法を解説します。
Windows 10のバックアップデータ復元の順番ですが、まずは第3回で標準機能を使ってバックアップしたデータから復元します。その後、第2回でバックアップしたブラウザーやメーラー、IMEなどの細かいデータを復元するのがおすすめです。
なお、Windowsの標準機能を使ったバックアップのうち、「Windowsバックアップ」で保存したデータはWindows 11のインストール時に表示される初期設定ウィザードでしか復元できません。前回の初期設定時に復元し損ねている場合は、一度PCのリセットを行う必要があります。
「Windowsバックアップ」機能を使ってOneDriveに保存したデータは、現時点では、前回解説した「初期設定ウィザード」でしか復元できません。しかし、初期設定ウィザードで復元し損ねたという人もいるでしょうから、まずはその場合の対処法から解説してきます
前述のとおり、「Windowsバックアップ」機能でOneDriveに保存したデータは、Windows 11の「初期設定ウィザード」でのみ復元が可能です。このため、前回の解説時に問題なく復元作業を行った人はすでに、バックアップデータの復元は完了しています。
しかし、初期設定ウィザードで復元し損ねた人もいるでしょうから、ここでは、その場合の対処法を解説しておきます。といっても、やることは単純で、一度Windows 11をリセットするだけ。これで、初期設定ウィザードを再び表示できます。ただし、リセットすると、すでに行った各種設定もリセットされてしまうので、また最初から設定し直しとなります。
なお、「Windowsバックアップ」機能で保存されるデータは、OneDriveでバックアップ設定していた一部のユーザーフォルダーとWindowsの設定、インストール済みのソフト、Wi-Fi情報程度です。ユーザーフォルダーはOneDriveを使って後から同期できるため、残りは設定とソフトのみ。
そのため正直なところ、設定し直しやソフトの再インストールが苦でないなら、PCをリセットしてまで「Windowsバックアップ」のデータを取り戻す必要はありません。「それでもなんかモヤモヤするから、バックアップから復元したい」という人は、以下の手順でPCのリセットを行い、バックアップデータを復元しましょう。
スタートメニューから設定を開き、左のメニューで「システム」を選択。画面を下にスクロールしていき、「回復」をクリック
回復オプションの中に「このPCをリセット」という項目があるので、右にある「PCをリセットする」ボタンをクリック
オプションの選択画面が表示されますが、「個人用ファイルを保持する」を選ぶと、初期設定ウィザードが表示されません。必ず、「すべて削除する」を選択しましょう
再インストール用のWindows 11をインターネット上からダウンロードするか、PC内のものを利用するかを選択できます。インターネット上からダウンロードしたほうが最新版の可能性が高いので、今回は「クラウドからダウンロード」を選択しましたが、これはどちらでもかまいません
設定の確認画面が表示されるので、「次へ」をクリック
PCのリセットの確認画面が表示されるので、内容を確認して「リセット」をクリックします。これでPCのリセットとWindows 11の再インストールが開始されます
インストールが進んで何度かPCが再起動した後、初期設定ウィザードが表示されるので、画面の指示にしたがって初期設定を行います
Windowsバックアップの復元画面まで進んだら、上部に表示されているPC名と日付を確認します。Windows 10でバックアップしたデータで間違いなければ「続行」を、違う場合は「その他のオプション」をクリック
「その他のオプション」をクリックすると、バックアップデータの選択画面が表示されます。PC名と日付からWindows 10でバックアップしたデータを選択して「続行」をクリック。これで復元が開始されます
第3回では「Windowsバックアップ」だけでなく、「コントロールパネル」から利用できる「バックアップと復元(Windows 7)」を使ったバックアップ方法を解説しました。ここからはそのバックアップデータを復元していきましょう。
「バックアップと復元(Windows 7)」機能は名前からもわかるとおり、Windows 7時代の機能です。公式ではこの機能はもう古いため、新方式の「Windowsバックアップ」の使用を推奨しています。しかし、保存内容や保存場所を自由に選べるという点で、正直まだ古い機能のほうが使い勝手は上です。
「バックアップと復元(Windows 7)」機能では、バックアップデータは外付けHDDやSSD、USBメモリーなどの外部ストレージに保存されます。Windows 10のバックアップデータが入った外部ストレージをPCに接続し、バックアップ時と同様に「コントロールパネル」から復元していきましょう。
タスクバーのスタートボタン(Windowsのアイコン)をクリックし、スタートメニューを開きます。右上の「すべて」をクリックして一覧を表示し、「Windowsツール」をクリックします
「コントロールパネル」をダブルクリックして起動します
コントロールパネルが起動したら、「システムとセキュリティ」の下にある「バックアップと復元(Windows 7)」をクリックします
「ファイルのバックアップまたは復元」という画面が表示されたら、復元の欄にある「ファイルの復元元として別のバックアップを選択します」というリンクをクリックします
外部ストレージ内のバックアップファイルが自動検出されるので、日付とPC名を確認します。Windows 10でバックアップしたデータで間違いなければ、「次へ」をクリックして進みます
復元ファイルの選択画面が表示されます。もし、バックアップ内の全ファイルを復元する場合は、上部の「このバックアップからすべてのファイルを選択する」をクリックします。復元したいファイルを選びたい場合は、右の「フォルダーの参照」をクリックします。なお、バックアップ時にWindows 10のシステムイメージまで含めていた場合、全ファイルをまとめて復元するとOSがWindows 10に戻ってしまうことがあります。その場合は、「フォルダーの参照」でファイルを選ぶ方法でOS以外を復元してください
「フォルダーの参照」をクリックすると、フォルダー選択画面が開きます。バックアップデータの中から復元したいフォルダーを選択し、「フォルダーの追加」ボタンでリストに追加します
前の画面に戻ると、先ほどのフォルダーがリストに追加されています。これをくり返して、復元したいフォルダーをすべてリストに追加します。追加が完了したら、「次へ」をクリックして進みます
ファイルの復元場所を指定する画面が表示されます。Windows 10のときと同じ場所に復元したいなら「元の場所」を選択。場所を指定して復元したいなら「次の場所」を選び、「参照」ボタンで保存場所を指定します。最後に「復元」をクリックすれば、復元作業が開始されます
ここからは、第2回で解説したブラウザー情報やメールデータ、IMEのユーザー辞書を復元していきます。
なお、第2回の時点では標準メーラーの「Outlook」に、メールのバックアップ機能は搭載されていませんでした。しかし、その後に実装されたので、今さらではありますがバックアップ方法もあわせて解説しておきます。
また、Windows 11の環境を整えるため、Windows Updateの更新プログラムはすべて適用しておくと、前回では解説しました。しかしここ最近、一部の更新プログラムがSSDを破壊するという話が広がっています。Microsoftは公式に否定しており、特定のメーカーのSSDコントローラーが原因との噂も出ていますが、現在のところハッキリとした原因がわかっていません。
最後に特定の更新プログラムのアンインストール方法も解説しておくので、心配な人は念のため、該当の更新プログラムを削除しておくとよいでしょう。
近年のブラウザーの多くは、アカウントを利用した同期機能を搭載しています。このため、ブラウザー内に保存されているブックマークやパスワード、アカウント情報などの各種データは、バックアップの必要がありません。同期データの復元は、Windows 10で使っていたブラウザーに、同じアカウントでサインインするだけです。
なお、ここでは標準ブラウザー「Edge」で解説していますが、ChromeやFirefoxなどの主要なブラウザーであれば、ほぼ同様の手順で以前の環境を復元できます。
「Edge」を起動し、右上にある「…」をクリック。メニューが開いたら、「設定」を選択します
「プロファイル」設定が開きますが、ここにMicrosoftアカウントが表示されていれば、すでに以前の環境が同期されています。表示されていない場合は、「アカウントを選ぶ」のプルダウンメニューからMicrosoftアカウントを選んで「サインイン」をクリック
なお、同期する項目は、下のプロファイル設定の中にある「同期」から選択が可能。項目ごとにオン/オフを切り替えられます
IMAP方式に移行した後のメールは、メーラーにアドレスを登録すれば自動で同期されます。しかし、以前のPOP方式のメールは受信時にサーバーから消えている可能性が高いため、Windows 10のPCでエクスポートしたものを、Windows 11のメーラーでインポートする必要があります。
ここでは標準メーラーの「Outlook」の手順を解説していますが、「Thunderbird」などの主要メーラーであればインポート/エクスポート機能を搭載しているので、メニューや設定画面などを確認してみてください。なお、前述のとおり、Outlookにメールのエクスポート機能が搭載されたので、ここでその方法もあわせて解説しておきます。
Windows 10のOutlookでメールをバックアップする場合は、目的のメールを右クリック。メニューから「名前を付けて保存」を選び、「EMLとして保存」もしくは「MGS」として保存を選択します。これで保存画面が表示されるので、場所を指定して保存すればエクスポートが完了します
続いて、エクスポートしたメールをWindows 11のOutlookに取り込みます。まずはOutlookを起動して、サインインします
Outlookが起動したら、右上の歯車アイコンから設定を表示します
設定画面左のメニューで「ファイル」を選び、すぐ右の列で「インポート」を選択します。これでインポート画面が表示されるので、「インポートを開始」ボタンをクリックします
別ウィンドウで「メールのインポート」が開くので、右上の「参照」ボタンをクリックしてバックアップされたメールが入ったフォルダーを指定します。続いて、移動先のメールボックスをプルダウンメニューで指定し、「インポート」をクリック
指定したフォルダー内のメールデータが読み込まれ、アップロードの確認が表示されます。内容に問題なければ「アップロード」をクリック。これでバックアップされたメールがメールサーバーにアップロードされ、以降はIMAPメールと同じように扱えるようになります
続いて、Windows標準の日本語入力システム「Microsoft IME」のユーザー辞書を、Windows 11に復元します。ユーザー辞書を復元することで、Windows 10で登録した単語がWindows 11でもスムーズに変換できるようになります。
タスクバーの右側に表示されている「A」または「あ」を右クリックして、メニューから「単語の追加」を選択します
「単語の登録」というウィンドウが開くので、左下にある「ユーザー辞書ツール」ボタンをクリック
「Microsoft IME ユーザー辞書ツール」という画面が表示されますが、何も単語が登録されていない状態です。そこで、「ツール」メニューから「テキストファイルからの登録」を選び、Windows 10でバックアップしたユーザー辞書(テキスト形式)を読み込めば復元が完了します
ここで復元作業はひとまず完了しますが、前述のとおり、ここ最近少し気になる話が話題となっています。それが、「KB5062660」と「KB5063878」の更新プログラムがインストールされた環境下で大容量ファイルの転送を行うと、SSD内のデータが壊れるというもの。
Microsoftは公式で因果関係を否定しており、Phison製SSDコントローラーが疑われたりしましたが、現時点ではハッキリとした原因は不明のまま。エラーのほとんどが日本国内であることから、日本語などの文字の処理が関係してるのでは? との話もあります。
「KB5064081」を適用して不具合が解消したとの報告もありますが、心配な人は「KB5062660」と「KB5063878」の更新プログラムがインストールされているかを確認し、適用済みならアンインストールしておくとよいでしょう。
設定で「Windows Update」を開き、「更新の履歴」をクリックします
ここで更新の履歴を確認できますが、表示されているのは最近のものだけです。画面を下にスクロールし、「更新プログラムをアンインストールする」を選択します
ここで特定の更新プログラムのみをアンインストールすることが可能なので、もし「KB5062660」と「KB5063878」がある場合は念のためアンインストールしておくと安心です
今回Windows 10でバックアップしたデータをWindows 11で復元しましたが、ここまで終われば、移行は完了です。後はどんどんWindows 11を使い、1日でも早く慣れることが重要です。
なお、人によっては年賀状ソフトの連絡先や動画編集ソフトのプロジェクト、音楽プレーヤーのライブラリーなど、今回解説した項目以外にもまだ復元しなければならないデータがあると思います。使用しているソフトによって移行方法は違うので、ヘルプファイルなどをよく確認して作業してください。
なお、順番は前後してしまいますが、次回は通常の「アップデート」によるWindows 11への移行方法と、PCを一度初期化してWindows 11を新規インストールする「クリーンインストール」の方法を解説します。
Microsoftより発表された「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」による、Windows 10の1年間サポート延長の話にも触れたいと思います。