2019年11月に発売されたG-SHOCK「GMW-B5000TCM-1JR」
カシオ計算機のG-SHOCKから、新モデル「GMW-B5000TCM-1JR」が発売された。
G-SHOCKのメタル5000シリーズとして初めて、ケースやベゼルにチタン素材を起用し、さらにレーザー彫刻によるカモフラージュ柄をあしらった意欲作だ。発売からまだ間もないが、すでに品薄状態になっているという。
「GMW-B5000TCM-1JR」。公式サイト価格は192,500円(税込)
G-SHOCKは、例年3月と9月に新作発表会を開催し、次の四半期にリリースする新作や大まかな開発テーマを掲げている。直近の2019年9月には「CMF=Color(色)、 Material(素材)、Finish(仕上げ)の進化」がうたわれ、見た目に個性のあるモデルがラインアップされた。
今回取り上げる「GMW-B5000TCM-1JR」は、今季テーマを代表するモデルだ。そこで、今作に施された「CMF」をひとつひとつひも解いてみたい。
今季のテーマである「CMF」にこだわった代表作
まずは「Material」(素材)。
素材に使われたのは、軽量かつ剛性の高いチタンだ。G-SHOCKでは、古くはフルメタルで初の耐衝撃性を実現した「MR-G MRG-100T/110T」(1996年発売)にチタン無垢バンドが使われ、以降もたびたび起用されてきた素材ではある。しかし、その大半は高級ライン「MR-G」に採用され、モデル数も限定的。G-SHOCKの中でメジャーと言える素材ではなかった。
今回は、ブランドの原点である「5000」シリーズをベースに、ケース、ベゼル、バンド、バックのすべてにチタンを採用し、素材感を前面に押し出している。
ブラックをベースにゴールドをアクセントとして配色
次に「Color(色)」。
引き締まったブラックをベースに、プッシュボタンやビス、機能表示の一部にゴールドを差し込んでいる。このアクセントカラーはやや淡いシャンパンゴールドといった色合いで、高級感を醸成するとともにチタンらしさも感じさせる。
バックルまでカモフラージュ柄で統一
最後は「Finish(仕上げ)」。
メタル素材でありながら、カモフラージュ柄を表現しているのが今作の最大の特徴だ。
3種類のドットパターンでカモフラージュ柄を表現
●写真=カシオ計算機提供
これは、レーザーによって表面をごくわずかに削り取り、大・中・小の3種類のドットパターンを組み合わせることで表現されている。いくつもの網点で表現されている写真の印刷物と同じ原理だ。ただ多くの印刷物は平面だが、時計パーツは小さいうえに造形も複雑な立体物だ。そこに1μのズレもなくレーザーを照射していくという、相当精密な加工が施されている。
BABY-Gの文字板に使われたレーザー加工技術
今回採用した高度なレーザー加工技術は、実は「BABY-G」で培われたものだ。
今作を手がけたカシオ計算機のデザイナー・池津早人さんは、「BABY-G」を担当していた時期があり、レーザーを使った加飾を採用していたという。
「見た目の個性や華やかさを演出するため、レーザーを使って織柄などの文字板のパターンを作ってきました。メタルでもおもしろい表現ができるのではないかと考えたのです」(池津さん)
レーザーで広範囲を焼き付ければ、一般的なカモフラージュ柄のような「黒ベタ」も表現できた。しかし、それではメタルの質感が損なわれてしまうと考え、すべてをドットで表現することにしたという。
なお、時計の加飾技術には「プリント」という方法もあるが、ベースがメタルだと塗料が剥がれやすいため、早々に不採用となったそう。
ケースは光沢のあるミラー仕上げ、バンドは光沢のないヘアライン仕上げ
さらに、パーツによっても仕上げを変えている。
時計の顔であるベゼルやケースには、ミラー仕上げを採用し、メタルの質感や立体感を向上。いっぽう、バンドには光沢を抑えたヘアライン仕上げを選択することで、時計全体が悪目立ちしてしまうのを防いでいる。
さらに細部に注目してみよう。
2種類の柄のパターンだけで構成されたアジャスト駒
バンドにも、こだわりを感じさせるエピソードがある。
本作はブレスレットタイプなので、長さ調節は駒の増減で行うが、駒の数がいくつになっても、また駒の順番が入れ替わってしまっても、違和感が出ないカモフラージュ柄のパターンを採用したという。それも、長さ調節で使う「アジャスト駒」の柄は2種類だけで、順番が「A・B・A・B」でも「A・A・B・B」でもそれらしく見えるようになっている。
文字板外周部にも精巧なカモフラージュ柄が施されている
また、サファイアガラスの風防には、機能表示やグラフィックがプリントされているが、文字板外周部には本体に施されたのと同じドットパターンのカモフラージュ柄があしらわれている。あまりに自然で見逃してしまうが、いっぽうはレーザー、もういっぽうはプリントと異なる加飾技術によるものであり、両者のドットのサイズ感や色合いを似せるのに苦労したという。
スマホと連携して、時刻修正や機能設定も可能
スマホアプリ「G-SHOCK CONNECTED」における操作画面
スペック面は、
・耐摩耗性にすぐれるDLC処理を施したスクリューバック
・世界6局の標準電波を受信できるマルチバンド6
・タフソーラー
・スマートフォンリンク
・フルメタルケースにファインレジン緩衝体を挟んだ耐衝撃構造
・高輝度なフルオートLEDライト
など、フルメタルのスクエアケース「GMW-B5000」シリーズとほぼ共通だ。
インパクトのある見栄え。軽さも魅力だ
フルメタルの「GMW-B5000」シリーズと大きく異なる点は、重量にある。同シリーズのステンレススチールモデルは重量167gであるが、チタンを使った今作は110gと2/3以下。フルメタルモデルは圧倒的な存在感があるいっぽう、その重さも相当なものだったが、このチタンモデルなら負担感が少なく、樹脂モデルから移行してきた人もなじみやすいはずだ。
「GMW-B5000TB-1JR」。公式サイト価格は165,000円(税込)
なお、同じタイミングでカモフラージュ柄を施していないフルチタンケースモデル「GMW-B5000TB-1JR」も登場している。こちらは、チタン素材の風合いを前面に表現したモデルだ。
ほぼ全体をマット仕上げに
ベゼルや駒のエッジ部分には、つややかなミラー仕上げを施すも、そのほかは広範囲にマット仕上げを採用。派手さはなく、奥底に横たわるメタルの力強さが漂ってくる。
ブラック×ゴールドのカラーリング
ボタンやビスなどには、先述の「GMW-B5000TCM-1JR」同様にゴールドを採用。
初代モデルを彷彿とさせる面構え
ブロックのようなグラフィックや防水性表示のブルーの彩色は、G-SHOCKの初代モデル「DW-5000C-1B」がモチーフ。文字板右上に入ったチタニウムの文字も印象的だ。
2018年、ブランドの原点である「5000」は、フルメタル化をステンレススチールで実現。それからは、多彩なカラーや異なるバンドの仕様でラインアップの拡充が図られた。今作もその延長線上にはあるが、「軽量&高強度なチタン素材」「ミリタリー由来のカモフラージュ柄の加飾」と大きくジャンプアップした。どちらの要素もタフネスをアイデンティティとするG-SHOCKと相性バツグンで、歓迎するファンも多いだろう。腕時計ブランド全体を見渡しても、メタル素材にここまで大胆な加飾を施したモデルはそうはなく、所有欲を満たせられるはずだ。
G-SHOCKの中ではだいぶ高価格帯に位置しているものの、生かされた素材や技術力に見合うものと言えるだろう。新たな可能性を示したひとつのエポックメイキングなモデルとして、名を残しそうだ。
【SPEC】
「GMW-B5000TCM-1JR」「GMW-B5000TB-1JR」
●充電システム:タフソーラー
●ガラス:内面無反射コーティングサファイアガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:チタン
●バンド材質:無垢バンド
●そのほかの機能:電波受信機能/モバイルリンク機能/ワールドタイム5本:世界39都市+UTCの時刻表示、ホームタイムの時刻入替機能付き/ストップウオッチ/タイマー/時刻アラーム5本・時報/バッテリー充電警告機能/パワーセービング機能/フルオートカレンダー/12/24時間制表示切替/操作音ON/OFF切替機能/日付表示/曜日表示/LEDバックライト
●ケースサイズ: 43.2(横)×49.3(縦)×13(厚さ)mm
●重量:110g