ファイナンシャルプランナーの山崎です。前回は投資詐欺を見破るのに必要な4つのルールについて書きました(「怪しいもうけ話にダマされないための、4つのシンプルなルール」)。
今回は私たちにありがちな、「投資」についての誤ったイメージについて考えてみたいと思います。
日本証券業協会が2015年に行った全国調査で、投資のイメージについて尋ねています。「資産運用の一環」(43.5%)「経済・金融の知識が身につく」(18%)といったポジティブな回答の一方で、「難しい」(36.2%)「お金持ちがやるもの」(29.5%)「ギャンブルのようなもの」(27.6%)といった、ネガティブな答えも根強く存在しています。
この調査が物語るように、「投資」というとおそらく、多くの人は「怪しいこと」「ズルいこと」「悪いこと」というイメージが浮かぶのではないでしょうか。投資未経験の人ほどそう思う傾向が強いようです。
しかし、投資というのは本当にズルいことなのでしょうか。
確かに投資のニュースといえば不正を犯して捕まる人のイメージがあります。前回の記事で触れたように、事業の実態がないのに高利回りをうたってお金を集めたり、内部情報を事前に漏らして、もうけたりするインサイダー取引(内部情報を事前に知る立場の人は、当該銘柄の株式などの売買を禁止する法律)で逮捕されたニュースなどがその一例です。
こうした投資を悪用した悪いニュースは、むしろ「悪いことをした人はちゃんと捕まっている」と読み解くほうがいいのだと思います。不正を犯した人は相応の報いを受けている、ということです。
しかし、投資の「ズルいこと」「悪いこと」というイメージについてもっと本質的なところで考え直してみてはどうでしょうか。投資はむしろ世の中をよい方向に導く「よいこと」「正しいこと」なのかもしれません。
投資の具体的なイメージを聞くと、3〜4画面のモニターが接続されたパソコンから、秒単位で売買の注文を出すような映像を思い浮かべる人がいます。いわゆるデイトレーダーです。
何百万円あるいは何千万円もの軍資金を利用し、数秒ないし数分で売買、数%の短期的な値動きによって利益確定をするというイメージです。
あるいは投資の売買というのは、「全額買いだー!」「全額売りだー!」と電話に向かって叫ぶようなイメージを思い浮かべる人もいるでしょう。確かにテレビのニュースやドラマで出てくる投資の方法といえばこうしたドラマチックなものばかりですが、メディアのイメージに踊らされてはいないでしょうか。
投資はこういったものだけが、すべてではないのです。
「投資」は数秒、あるいは数日程度の短期で行うこともできますが、長期で考えることもできます。長期で投資をする人は、少なくとも数年以上を投資期間と考えます。なぜなら、企業が何らかの取り組みを起こし、成功を収めるまでには何年、時には何十年もかかかることを知っているからです。
たとえばトヨタ自動車が、世界初の量産型ハイブリッドカーとなる「プリウス」の開発にかけた時間は約2年間、構想期間まで含めると4年にもなります。NHKの「プロジェクトX」を作れるほどの苦労と時間を要しています。
しかし費やした時間とコストは報われました。
アメリカの女優キャメロン・ディアスが「プリウス」に乗っていることは知られていますが、ハリウッドのセレブは今や競って低燃費車に乗っています。単なる自動車にとどまらず、エコ志向をアピールできるアイテムになったのです。
このように、「プリウス」の存在は、毎年世界ナンバーワンの座を争う自動車会社にトヨタ自動車を成長させましたし、かつエコロジカルな車を世の中に誕生させることになりました。社会の環境負荷も大きく低減させました。その後、他社もハイブリッドカーに追随して新しい市場も切り開かれました。
「プリウス」開発前からトヨタ自動車に投資をしていた人は、そうした一連の流れを経済的にサポートしていたことにほかなりません。そしてトヨタ自動車の成功により、株価の上昇や配当により株主もリターンを得ています。
つまり
(1)「投資をした企業の成長」
(2)「企業の活動を通じた社会の発展」
(3)「株価上昇や配当による投資家の資産の増加」
という3つの「得」を、同時に生じさせるのが投資の本質的な役割なのです。
デイトレーダーなど短期で投資する人の様子をみていると、本質的な企業の成長ではなく、刹那(せつな)的な値動きで売買をしています。
たとえば2016年、スマホゲーム「ポケモンGO」が好調という報道を受けて、任天堂の株を買って、一時的な値上がりを狙った人がいます。しかし「ポケモンGO」は、アメリカのゲームベンチャーのナイアンティック社が開発・配信しており、任天堂は直接開発に携わっていませんでした。任天堂が自社の業績への影響は限定的である、というプレスリリースを出したところ一気に株価は下がりました。実態のない短期的な騰落に溺れた人は損をしたことになります。
しかし任天堂はその後、2017年に発売した「ニンテンドースイッチ」の成功で業績がV時回復。長い目でみて任天堂に投資をした人は、株価上昇による大きな利益を得たはずです。
ソニーもそうです。ソニーは2015年3月期に、大幅な赤字で初の無配(株主への配当金がないこと)となり「ソニーはもうダメだ」とニュースでさんざん煽(あお)られました。ところが、2018年3月期の決算では、20年ぶりに最高益を更新しました。
2015年ごろの業績不振のニュースに惑わされず、「そうはいっても基礎技術はしっかりしているし、ソニーに投資をしてみよう」と思った人は、わずか3年で2倍以上の株価回復の恩恵を手にすることができました。プレステ4やiPhoneなどのカメラユニットなど、自分たちの強みを伸ばすと同時に、不採算の分野は整理をしていったからです。
このように、企業に対して投資をするなら、数年ごしでチャレンジしてみてください。
今は投資への1歩は踏み出しやすくなっています。
個別企業の株を買うのであれば、5万円程度あれば、選択肢は何百社にものぼります。「環境問題は世界的な問題だから環境ビジネスを手がける企業に」「社会に欠かせないインフラ企業に」といった業種で選ぶこともできます。あるいは、上場投資信託「ETF」では、日本はもちろん、ブラジルなどの新興国の株価指数に連動する商品もあるので、発展を期待できる国を選んで投資することもできます。
また、ワンコイン投資、という方法もあります。証券会社の中には、毎月決まった日に決まったお金(100円以上)を口座から引き落とし、投資信託を買い付けするサービスを行っています。これらは、日本だけではなく、世界中に投資ができるようになっています。普段の買い物で貯めたTポイントや、楽天スーパーポイントなどを使って投資への1歩を踏み出すこともできます。
「なんだ、私でも100円ならできるよ」という人はぜひ無理のない金額から投資をスタートしてみてください。
「世の中が便利になり」「会社が大きくなり」「私の投資資金も値上がりや配当で増える」という「三方一両得」を目指して、世界を豊かに、成長させる仕組みに参加してみませんか。