ビジネス系のライターとして、20年間以上「会社員の副業」を取材してきました。「もっとお金が欲しい」という直接的な願望が取り沙汰される時代もあれば、現在のように「働き方」そのものが注目される時代もあります。そして、それに応える形で副業のジャンルは拡大し、方法も多様化しているのを実感しています。
今注目すべきはアプリやWebサイトを通じて「仕事をしたい人」と「仕事を頼みたい人」をつなぐ「副業マッチングサービス」でしょう。この記事では下記の副業マッチングサービス4社に直接取材をし、サービスの仕組みや使い方、そして、現在進行形で次々に生まれつつある副業のチャンスについてじっくり聞いてきました。まだまだ副業を認めている企業は少ないものの、働き方の多様化のなかで、徐々に認められるケースも増えてきています。ぜひ、今後のご参考に!
【本記事で紹介する「副業マッチングサービス」4社】
◆あなたの「スキル」を商品にできる「ココナラ」
◆あなたの「時間」を30分単位で自由に売れる「タイムチケット」
◆自宅の「空きスペース」を収納場所として貸せる「モノオク」
◆「すき間時間」にアルバイトができる「タイミー」
トップバッターは、自分の「得意なこと」をネット上で販売できるココナラ。仕事や趣味などで培ったスキルを出品し、それが購入されると収入を得ることができる仕組みです。株式会社ココナラ広報担当の古川芙美(ふみ)さんに話を聞きます。
「ご自身が持っている知識や経験、スキルを『商品』として1回500円から出品できます。自分の得意なことや好きなことを武器に、手軽に始められるのがココナラの魅力です」(古川さん)
その言葉どおり、ココナラには、「似顔絵やロゴ、キャッチコピーの作成」「動画やHPの制作」「占い」「ビジネスの相談」まで、全22ジャンル、20万件以上のサービスが出品されています。現在、登録会員は約100万人。サービス開始からの累計の取り引き成立件数は210万件以上と、一大市場に育っています。
ココナラは出品から購入者とのやり取り、納品まで、すべてオンライン上で手続きが完了するのが特徴です。時間や場所の制約がなく、いつでもどこでも自分のペースで取り組めるのはココナラならではの利点と言えそうです。販売代金は500〜100万円まで自由に設定することが可能(出品するカテゴリにより異なる)で、販売代金から【手数料25%+税】(出品金額やサービス提供形態によって変動)を差し引いた金額が出品者の報酬になります。
「正確に統計を取っているわけではないのですが、月5万円前後を稼いでいる方が多いと思います。弊社でインタビューした例では、副業として取り組んで月20万〜50万円程度を得ている方もいらっしゃいました」(古川さん)
株式会社ココナラ経営企画グループ広報担当の古川芙美さん
具体的に、どんなスキルがお金になっているのでしょうか? 古川さんに印象的な例を挙げてもらいました。
「最近は転職や起業の足がかりにココナラを利用される方が増えています。たとえば、営業の仕事のかたわら趣味でイラストを描いていた方が、ココナラで『イラスト作成』を出品。収入を得ながらそのスキルに磨きをかけ、デザイン会社への転職を実現しました。また、定年後の仕事作りを目的とするケースも多くなっています。ある企業の人事担当として活躍されてきた50代の方は、その企業で働きながらキャリアカウンセラーの資格を取得。定年退職後はココナラで『キャリア相談』を販売しつつ、大学のキャリアセンターに在籍して学生のキャリア相談にも乗るという二足のわらじで、充実した第2の人生を過ごされています」(古川さん)
さらに、最近は少し変わったニーズも注目されているそう。
「【音楽・ナレーション】カテゴリ内にある『仮歌・歌入れ』は、新たなニーズのひとつです。プロの作曲家の方が作ったコンペ用の楽曲の『仮歌』(曲が完成するまでの過程のひとつ。正式な歌詞がついていない曲に、適当な歌詞をあてがい、コンペに出したり実際に歌う歌手の練習用に使われたりする)や、オリジナル楽曲に歌を入れるというニーズです。もちろんプロの歌手の方のほうが仕事を得やすいですが、アマチュアの方でも音楽活動の経験やスキルをうまく伝えられれば、歌って稼げる可能性が高いですよ」(古川さん)
あなたの歌を出品できるかも(画像はイメージです)
ココナラでは、当初、出品者、依頼者ともに個人の利用が大多数を占めていました。しかし、その状況に近年変化が起きていると言います。
「依頼者に法人が急速に増えています。背景にあるのはおそらく人手不足の問題でしょう。業界・職種を問わず、企業の人手不足が深刻化しているのは周知のとおりで、アウトソーシング先のひとつとしてココナラに目が向けられているのです」(古川さん)
この流れは、出品する側にとってもチャンスです。古川さんによると、資金力のある法人の需要が増えることで、販売単価が全体的に上がっていると言います。
「ココナラもこうした動きに対応し、法人ニーズに応えるべく2018年から『PRO認定制度』を導入しました。これは、特定分野のプロフェッショナルとして活躍され、クオリティや信頼性が高い方を『PRO』として認定する制度です。PRO認定者の方は、法人とのマッチングが促進されるなどのメリットがあります」(古川さん)
ココナラへの登録、出品料は無料。まずは気軽に自分のスキルを出品し、ニーズを探ってみてはいかがでしょうか?
ココナラ
●運営会社:株式会社ココナラ
●サービス開始時期:2012年7月
●登録会員数:約100万人
●アドレス:https://coconala.com/
次は、個人が気軽に自分の時間を売り買いできるタイムチケット。売る側は30分単位から「チケット」という形で時間を販売し、その時間を使ってスキルや知識、ノウハウなどを販売できる仕組みです。
一見、ココナラと似ていますが、異なるのが商品の提供方法。オンラインで完結するココナラと違い、タイムチケットは対面でのサービス提供を基本としています(オンライン、電話、メッセージなどでの提供を選択することも可)。
「1対1でていねいに教えたかったり、人とコミュニケーションを取るのが好きだったりする方はタイムチケットと相性がいいと思います」と話すのは、タイムチケットのコミュニティマネージャーを務める大底(おおそこ)春菜さんです。
チケットの販売価格は1時間5,000〜8,000円が一般的(5,000〜100万円まで設定可能)。手数料は販売価格に応じて変わり、5万円以下の場合は【25%+税】です。そこから、寄付金(売る人が寄付率を決められ、寄付先も教育支援や環境事業など、いくつかの寄付先から選択可)が差し引かれ、残りが報酬になります。
「個人の働き方が多様化するなか、タイムチケットは新しい働き方を試す場所として、また、副業のファーストステップとして利用される方が増えています。ランキング上位の方は、月平均で数十万円の売り上げを得ている方が多いですね」(大底さん)
株式会社グローバルウェイ グローバルウェイラボ タイムチケットコミュニティマネージャーの大底春菜さん
売られているチケットのジャンルは現在約300種類。「キャッチコピー、ネーミングを考えます」「就職、転職の相談に乗ります」などの各種相談から、「ワードプレスの立ち上げをお手伝いします」「プログラミング開発の相談に乗ります」など本格的なスキルの提供まで、多種多様なジャンルが並びます。
「最近人気なのは、『マッチングアプリの写真を撮ります』というチケットです。これは、恋愛や婚活のためにマッチングアプリを利用する方が、プロフィールに使う写真の撮影を依頼するもの。写真は出会いの機会を大きく左右するため、重要ですよね。撮影するには実際に会う必要があるので、タイムケットならではの商品と言えます」(大底さん)
この「顔写真をきれいに撮ります」は、実際にタイムチケットで買って、「出会い」の効果があった人がSNSでその経緯を発信したことで、需要が広く認知され、チケットを販売する人が増えたそう。撮影するのはプロのカメラマンかと思いきや、一眼レフでの撮影が趣味という会社員も少なくないそうです。
「同様に、恋愛相談系のチケットも人気ですね。マッチングアプリで出会いの機会を得られても、その次のステップであるデートに成功しないと付き合うまでには至りません。どうすればいいの!? となって、異性に好かれる方法をあれこれ知りたくなる人が多いようです」(大底さん)
チケットを買った人に対面(非対面も選択可)でサービスを提供するのがタイムチケットの特徴です(画像提供:タイムチケット)
ちなみに、大底さん自身が最近購入して役立ったチケットが、「イタリアンレストランのモテ食事デート講座(3時間3万円。食事、飲み物込み)」というもの。
「女性をイタリアンレストランに誘ったときの、“恋愛必勝食事パターン”をマンツーマンで食事をしながら教えていただきました。男性向けのチケットでしたが、女性の私にも『なるほど』と思うことがたくさんありました。マナーから店選び、会話の展開などイタリア流のテクニックが満載。チケットを販売していたのはイタリアンレストランのオーナーの方です」(大底さん)
タイムチケットでうまく稼ぐためのコツは?
「まずは信用を積み重ねることが大切です。売り出したチケットをSNSなどでシェアし、頼みやすい友人など2〜3人に実際に購入してもらい、正直なレビューを書いてもらうこと。レビューがつくことでチケットも売れやすくなります。実績とレビューを積み、ファンがある程度ついてきたタイミングで、商品に付加価値をつけて販売単価を上げるのが次のステップになります」(大底さん)
やりたいことがあるけれど、会社のなかで実践するのは難しいし、いきなり会社の外に飛び出るのもリスクが高い。そんな人は、まずタイムチケットで試してみてはいかがでしょうか? 可能性があれば、その後の転職や起業の自信になりますし、仮にダメだったとしても、需要がないことを知るのも成果と言えます。タイムチケットは市場の反応をダイレクトに感じられる絶好の場と言えるのかもしれません。
タイムチケット
●運営会社:株式会社グローバルウェイ
●サービス開始時期:2014年7月
●登録会員数:約14万人
●アドレス:https://www.timeticket.jp/
「シェアリングエコノミー」という言葉をご存じでしょうか。カーシェアリングに代表されるように、物・サービス・場所などを、多くの人と貸し借りして利用する、社会的な仕組みのことです。この仕組みが副業の世界にも広がってきました。そのひとつがモノオクです。荷物の置き場に困っている人と、余ったスペースを活用したい人をつなぐ、いわば「物置」のシェアサービスです。モノオクを運営する、モノオク株式会社代表の阿部祐一さんに登場してもらいましょう。
「モノオクは、個人の使っていない部屋や押し入れ、倉庫などを『物置』として提供するサービスです。荷物を預かるだけなので、初期投資もスキルも必要ありません。空きスペースさあれば、誰にでもできるのが特徴です」(阿部さん)
仕組みはシンプルです。ホストユーザーが、空きスペースをモノオクに登録。そのスペースに荷物を預けたいユーザーとの間で、荷物の内容、料金、預かる期間などをやり取りし、条件が合意すれば実際に物を預かります。手続きはすべてWeb上でできて、荷物の受取りは郵送でも可能です。
物置として貸す相場は1畳当たり5,000〜6,000円(画像は、モノオクHPより)
「料金は1か月3,000円から設定できます。相場の参考として、『1畳当たり5,000〜6,000円』と案内しています。預かる期間は1か月単位で設定が可能です。ここから【手数料20%+税】を差し引いた額がホストユーザーの収入となります。平均すると月2万〜3万円程度を稼いでいる人が多いと思います」(阿部さん)
この、ありそうでなかったサービス。阿部さんはどのような経緯で思い付いたのでしょうか?
「私はもともと自宅で民泊をやっていたんです。その際『ここで家電を預かってもらえないか』と聞かれ、『そう言えば、気軽に物を預けられるサービスがないな』と気付きました。そこである実験を思い付きます。『ジモティ』や『メルカリ』に『うちの押し入れを使いませんか?』と出品してみたんです。すると『使わせてほしい』という問い合わせがものすごく多く、実際に取り引きに至ったケースもありました。『これはいけるぞ』と思い事業化したんです」
モノオク株式会社代表の阿部祐一さん
引っ越し、リフォーム、出張、転勤、留学など、荷物を預ける人の利用目的はさまざま。長期の利用の場合、キャンプ用品など、「時々使うけど捨てられない」といった趣味の道具を預ける人が多いそうです。いっぽう、荷物を預かる側のホストユーザーは、子どもが小さく、まだ子ども部屋としては使っていない部屋を提供するというケースが多いと言います。
「使っていない空間をそのままにしておくのはもったいないですから。小さなスペースでもきっと誰かの役に立てますよ」(阿部さん)
モノオク
●運営会社:モノオク株式会社
●サービス開始時期:2018年4月
●登録ユーザー数:約7,500人(登録スペース数は全国に約2,200か所)
●アドレス:https://monooq.com/
ココナラやタイムチケットには、スキルや知識などがある程度必要ですし、モノオクの場合は空きスペースが必要です。その意味で、次に紹介するタイミーは、体ひとつと、あとはスマホさえ持っていればお金を稼ぐことができます。「この時間だけ働きたい」というユーザーと、「人手が足りないからこの時間だけ働いてほしい」という企業を、専用アプリでつなぎ、ユーザーは働いたその日にお金を得られます。株式会社タイミー広報の釡谷実希さんに聞きます。
「ユーザーが働きたい時間を入力すると、その時間に働ける仕事がすぐに見つかります。場合によっては即日勤務も可能です。仕事の内容は、レストランや居酒屋など飲食店での配膳、流通系の事務作業や梱包(こんぽう)など簡単なもの。好きな時間・好きな場所・好きな職種で自由に働けるというのがタイミーのウリです」(釡谷さん)
報酬は、ユーザーの勤務終了後、タイミーが一時的に立て替えてアプリ内に入金します。その後、ユーザーが働いた企業からタイミーに対し、入金額に30%の手数料を加えた金額が入る仕組みになっています。
働きたい条件を入力すると、勤務可能な案件と場所がアプリ上に表示されます(画像提供:タイミー)
タイミーを発案した同社代表の小川嶺(りょう)さんは現役の大学生で、自身の経験がこのサービスの土台になっていると言います。
「アルバイトのシフトはかなり前から提出しなければならず、しかも希望どおりに入れるとは限らないので、先々の予定を組みづらいという悩みが小川にはあったそうです。もっとうまく時間を使ってアルバイトをしたいという悩みが原動力になって、このサービスが生まれました」(釡谷さん)
報酬は、時給換算で1,000円程度のものが中心で、なかには2,000円を超える“お宝アルバイト”もあるとか。基本的に早い者勝ちで仕事が決まるため、稼げるかどうかは、いい条件の案件をいかに早く見つけられるかにかかっています。
「気になる案件をお気に入り登録すると、案件が出た瞬間に通知されるようになっています。この機能をうまく使っていただければと思います」(釡谷さん)
現在、ユーザーの大部分は大学生が占めているそうですが、なかには、"社会人になった今、久しぶりにアルバイトを経験してみたい”と応募するケースもあるそうです。
タイミー
●運営会社:株式会社タイミー
●サービス開始時期:2018年8月
●登録ユーザー数:約60,000人(導入企業店舗は約1,000か所)
●アドレス:https://taimee.co.jp/
あなたのスキルを誰かが求めている!?
今回は、「ココナラ」「タイムチケット」「モノオク」「タイミー」という4つの副業マッチングサービスを紹介しました。副業で得られるものとして真っ先に浮かぶのは、間違いなくお金でしょう。しかし、今回の取材を通じ、副業マッチングサービスの使い方次第で、お金以上の価値を得ている人が多いことが見えてきました。
スキルアップ、キャリアアップ、転職、起業、第2の人生を輝かせる定年後の仕事作りなど、副業で何が実現できるかは、その人の工夫次第。個人の可能性を広げてくれる副業の世界を、一度のぞいてみはいかがでしょうか。
※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。