クレジットカードを使うと貯まるポイント。どんどん貯まっていくのはうれしいものです。
ところで皆さん、貯まったポイントは何に使っていますか?
ポイントには「有効期限」があります。有効期限は、一般カードなら1〜2年、ゴールドやプラチナカード以上で3〜5年といったところ。うっかり使わずにいて、失効させてしまった経験がある人もいるのではないでしょうか?
せっかく貯めたポイントも、有効期限切れでは残念すぎます……(画像はイメージです)
失効させてしまうのは、魅力的な使い道が見つからないのが原因かも。そこで本記事では、貯めたポイントの「使い道」から逆算してクレジットカードを選んでみたいと思います。当サイトでおなじみ、“クレジットカードの達人”菊地崇仁さんにお話をうかがいます。
70枚以上のクレジットカードを保有する"クレカの達人"、(株)ポイ探代表の菊地崇仁さんにうかがいます
――還元率はクレジットカードを選ぶうえで重要な要素だと思います。でも、貯めたポイントの使い道まで意識している人は意外と少なそうです。
菊地さん:「使われずに失効するポイントは、3〜5割と言われています。せっかくクレジットカードを使っているのに、ポイントをムダにしては本末転倒です。年会費無料のカードならまだしも、有料のカードだと目も当てられません。それを防ぐ意味で、貯めたポイントを何に使うか、自分なりのゴールを先に決め、それに応じてカードを選ぶのもいいでしょう。今回は4つの使い道から、それぞれおススメのクレジットカードを紹介します」
▼この記事で紹介する、クレカポイントの「4つの使い道」
▽使い道 その1 旅行
▽使い道 その2 ポイント投資
▽使い道 その3 自動割引
▽使い道 その4 イベント
――旅行好きの人はマイルを目的にクレジットカードを持つケースもあると思います。いわゆる「陸(おか)マイラー」も少なくありません。
菊地さん:「確かにマイルの人気は高いですよね。貯めたマイルは、特典航空券に交換できますし、エコノミークラスから、ビジネスクラスやファーストクラスにアップグレードすることもできます。
問題は、有効期限内にどれだけ貯められるかということと、うまく使えるかということ。国内の特典航空券でも、往復で1万2000マイルは必要です。仮にカード利用100円につき1P貯まるカードがあり、1Pを1マイルに移行できるとしても120万円分の決済が必要です。近年はポイント還元率が下がる傾向があり、0.5%を切るカードも珍しくありません。『マイルを使って家族旅行』となると、かなりハードルが高くなります。
また、座席のアップグレードも意外と難易度が高いんです。というのも、アップグレードは各社の搭乗実績が多い上級会員が優先され、一般の人は後回しになる可能性が高いからです」
――せっかくマイルを貯めてもうまく使えない可能性があるわけですね。
菊地さん:「しかもマイルの価値自体が、使い道によって変化するのも、初心者にはわかりにくい点です。以下の表をご覧ください」
――同じ1マイルでも、価値が違いますね。
菊地さん:「わかりやすくするために極端な例を挙げましたが、特典航空券に交換する際は、基本的に、搭乗距離が長く搭乗クラスが上位になるほど、1マイルの価値がアップします。少しでもおトクにマイルを使おうと思えば、それにともなって必要なマイル数が増えます。はたして、有効期限内にそれだけのマイルを貯められるかどうか……。
また、年末年始やお盆といった飛行機の繁忙期は、そもそも特典航空券の交換の対象外です。これらの点を考えると、マイルを貯めて旅行に使うのをおススメできる人は、ひとり旅が多かったり、飛行機の繁忙期をずらして休みを取れたりできる人、という結論になります」
――マイルにこだわらず、クレカのポイントで旅行を楽しみたい人におススメできるカードはありますか?
菊地さん:「視野を広げて『クレジットカードでおトクに旅行に出かけたい』ということなら、次のようなカードがおススメです」
――楽天カードとは少し意外なチョイスです。
菊地さん:「年会費無料ながらポイント還元率1%という高水準。加えて、楽天市場なら最大3倍、楽天トラベルでも最大2倍など、楽天系のサービスを使うとポイント付与率がアップ、ポイントアップキャンペーンも多く、ポイントが貯めやすいのが魅力です。
貯めたポイントを楽天トラベルで活用すれば、航空代やホテル代に充当できます。ただでさえ年会費無料&ポイント高還元とおトクなカードで、ポイントを使えば旅費も節約できますから、ある意味、最強のカードかもしれません。
楽天ゴールドカードなら、楽天市場の利用でポイントが最大5倍になります。かつ、国内空港ラウンジ・一部海外空港ラウンジが年2回まで無料で利用できます。少し年会費を払ってでも楽天市場でザクザクポイントを貯めたい、空港ラウンジをおトクに使いたいなら、一般カードよりゴールドカードがおススメです」
■楽天カード
発行元/楽天カード
国際ブランド/Visa、mastercard、JCB、アメリカン・エキスプレス
年会費/無料
ポイント(還元率)/楽天スーパーポイント(1%〜)
■楽天ゴールドカード
発行元/楽天カード
国際ブランド/Visa、mastercard、JCB
年会費/2000円+消費税
ポイント(還元率)/楽天スーパーポイント(1%〜)
ポイントを旅行に生かす場合、マイル以外の選択肢もあります
――最近は、クレカのポイントで投資ができると聞いています。
菊地さん:「自分のお金で投資すると、増減に一喜一憂してしまいますよね。カードのポイントなら、心理的なハードルが下がり、投資の初心者を中心にポイントでの投資の人気が高まっているようです。ポイントを自動で投資をしてくれるので、ポイント失効リスクも避けられます。投資先は投資信託やETF(上場投資信託)などになります。
運用がうまくいくとリターンが実感できるという面白さがあり、投資の勉強にもなりますので、資産運用について学びたいという人に向いています。おススメのクレジットカードを見ていきましょう」
菊地さん:「これは老舗ネット証券の松井証券と信販大手のジャックスによる提携カードです。
月間のカード利用100円ごとに松井証券ポイントが1P貯まり、貯めたポイントで投資信託を購入できます。投資対象は『ひふみプラス』、『eMAXIS Slim 先進国株式インデックス』、『eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)』から選ぶことが可能です。積立設定をすれば毎月自動的に全ポイントを投資(1P=1円。100円以上1円単位)するので、ポイントの失効もありません。
なお、松井証券ポイントは投資信託の購入だけではなく、3000種類の商品やAmazonギフト券とも交換できます」
■MATSUI SECURITIES CARD
発行元/ジャックス
国際ブランド/mastercard
年会費/1250円+消費税(初年度無料、年1回以上利用で次年度無料)
ポイント(還元率)/松井証券ポイント(1%〜)
菊地さん:「FXサービスで知られるインヴァスト証券とジャックスの提携カードです。カードの月間利用額100円ごとに1Pが貯まり、貯まったポイントは毎月現金化され、国内外のETFの積立投資に使うというもの。投資対象は『日経225ETF自動売買』、『S&P500ETF自動売買』、『世界株ETF自動売買』、『高利回り社債ETF自動売買』などから選択できます」
■インヴァストカード
発行元/ジャックス
国際ブランド/Visa
年会費/1250円+消費税(初年度無料、年1回以上利用で次年度無料)
ポイント(還元率)/インヴァストカードポイント(1%〜)
気軽に投資が体験できるポイント投資
――どうしてもポイントの使い道が思い浮かばなかったり、ついつい失効させたりしてしまう人におススメのカードはありますか。
菊地さん:「カードの利用料金の請求時に、自動的に割引になるカードはどうでしょうか。いわゆる『キャッシュバック系クレジットカード』です。
『請求時に自動的に割引になるカード』と、『貯まったポイントをキャッシュバックに申し込んだり、特定のポイントに移行することで割引が適用になったりするカード』の2種類がありますが、私のおススメは前者です。確実に適用されるので手間がかかりませんし、ポイントの有効期限切れの心配もありません。おススメのカードを見ていきましょう」
菊地さん:「『P-oneカード〈Standard〉 』は初年度から年会費が無料で、カードを使うだけで請求時に自動的に1%オフになるというカードで、ある意味、面倒くさがりな方にピッタリ。電話代や光熱費など公共料金、国民保険料も自動的に割引になり、100円の買い物でも問題ありません。割引に上限はありませんから、使えば使うほどおトクです。
なお、同カードには同じく年会費無料で、リボ払い専用の『P-one Wiz』もあります。こちらは自動1%オフに加えて、カードショッピング1,000円ごとにポケット・ポイントが1P貯まるというもの。貯まったポイントは、100PでTポイント500Pと交換ができ、割引と合計すると還元率は1.5%になるのです。リボ払い専用ですが、全額払いの設定ができるため、実質一括払いにすることもできます。Tポイントへ移行するには事前にYahoo!JAPAN IDの登録が必要で申請もしないといけませんが、Tポイントユーザーなら、こちらも選択肢に加えていいでしょう」
■P-oneカード〈Standard〉
発行元/ポケットカード
国際ブランド/Visa、mastercard、JCB
年会費/無料
ポイント(還元率)/自動割引(1%)
■P-one Wiz
発行元/ポケットカード
国際ブランド/Visa、mastercard、JCB
年会費/無料
ポイント(還元率)/自動割引(1%)およびポイント付与(約0.5%)
――最後はイベントですね。菊地さんも実際に体験されているとか?
菊地さん:「最近は、年会費の高いクレジットカードを中心に、独自の会員イベントを充実させる傾向があります。『モノからコト』が消費のトレンドですので、お金では買えないイベントを通じて、ホルダーの満足度を高めるのがカード会社の狙いでしょう。
イベントの内容は、花火大会、寺社・仏閣の特別拝観、一流シェフによるグルメイベントなど、多岐にわたります。イベントへの参加方法は『ポイント利用』や『カード決済した人の中で抽選』などがあります。
私もこれまでいくつか参加しましたが、どれもがすばらしい内容でした。昨年2018年であれば、アメリカン・エキスプレス主催で、横浜大さん橋でお弁当をいただきながら花火と有名アーティストのライブが楽しめる『AMEX会員限定シート&ライブSummer Festival 2018 at 横浜大さん橋』が印象的でした。花火が打ちあがるさまを近くで見ることができ、一緒に行った家族にも喜ばれましたね。
秋には、京都・清水寺を貸し切り、ライトアップされた境内を歩き、非公開エリアの国宝・内々陣の拝観、ジャズの生演奏、法話、落語などが楽しめる『秋の夜間特別拝観』にも参加しました。
こうしたイベントは、ほかの人とちょっと違う経験をしたい人にとっては、魅力的な使い道と言えるでしょう。定期的にイベントを開催しているのは以下のカードです。イベントの予定は各社のHPなどで確認することができます」
カード会員限定のイベントが広がりつつあります
菊地さん:「一般カードに相当する『グリーン』であっても、他社のゴールドカードに匹敵する付帯特典をそろえた、ハイクラスカードの定番。首都圏はもちろん、醍醐寺や清水寺など京都の世界遺産で特別拝観を開催するケースが目立ちます」
■アメリカン・エキスプレス・カード
発行元/アメリカン・エキスプレス
国際ブランド/アメリカン・エキスプレス
年会費/1万2000円+消費税
ポイント(還元率)/メンバーシップ・リワード(0.3%〜)
菊地さん:「アメリカン・エキスプレス・カードと双璧をなす、エグゼクティブ向けのクレジットカードです。世界遺産を舞台にした観桜会、ドレスアップナイト、ワインディナー、ゴルフコンペなど、さまざまなイベントを定期的に開催しています」
■ダイナースクラブカード
発行元/三井住友トラストクラブ
国際ブランド/ダイナースクラブ
年会費/2万2000円+消費税
ポイント(還元率)/ダイナースクラブリワードプログラム(0.4%〜)
菊地さん:「これは変わり種ですが、茨城県鹿嶋市にある鹿島神宮と、三越伊勢丹グループのエムアイカードによる提携カードです。ユニークなのは、年会費とカード利用で貯まったポイントを、式年大祭御船祭(12年ごと)の斎行および文化財の保護継承の財源として寄付するという点。5000Pごとに自動寄付され、その際は境内にある杉で作られた銘々皿が返礼品として贈られます。届くカードはお祓いがされていて、それ自体がお守りのようなもの。神職による境内の案内、カード提示で宝物館への入場が無料になるといった特典も用意されています。
カード会員向けのイベント招待も充実していて、地元の花火大会、伝統行事である大寒禊(みそぎ)への特別参加、昨年は将棋界最高位タイトル戦の『竜王戦 鹿島神宮対局』の特別参加枠も設けました。私もいくつ参加しましたが、どれも印象深く、一風変わったイベントに参加したい人に向いています。ある意味信仰心の試されるカードではありますが(笑)」
■鹿島神宮カード
発行元/エムアイカード
国際ブランド/Visa
年会費/5000円+消費税
ポイント(還元率)/鹿島神宮ポイント(0.5%)
菊地さんにご紹介いただいたもの以外にも、最近ではポイントを使った寄付も広がりつつあります。ユニセフや日本赤十字など、通年で寄付することができますし、東日本大震災以降は、大規模災害が起きるとポイントを使った寄付を募るカード会社もあります。
カードを作る際に、貯めたポイントの使い道を意識することで、本当の意味でクレカをおトクに使えるはずです。ぜひ、こうした視点でのカード選びを心がけてください。