株式投資を始めてみたいけど、「損をするのが怖い」「株取引をどう行えばよいのかわからない」と思っている方も、少なくないのではないでしょうか。そういった方は、架空の投資資金を使って株取引の体験などができる「株のバーチャルゲーム」を利用するのもひとつの方法です。こうしたサービスには、現金が減る(なくなる)というリスクを負うことなく、株取引の知識や手法を覚えられる利点があります。今回は、なかでも人気のある4つのサービスを紹介します。
株のバーチャルゲームでは一般的に、実際のお金を使わずに、サービス内だけで使える架空のお金で投資体験ができます。サービスを提供する会社は多くあり、登録や利用に際して費用は通常かかりません。Webサイトで登録したり、アプリをダウンロードしたりすると「1000万円」などと、仮想の投資資金が提供され、個別株などを売買することができます。取引の手数料も仮想のお金から差し引かれます。
こうしたサービスの利点は、損失を出すリスクを負うことなく、株式投資の方法や注文の仕方を実践的に学べる点にあります。株式投資に興味があるけれども、実際に挑戦するのはハードルが高いと感じる人、まずは気軽に投資体験をしてみたい人におすすめです。
ひと口に株のバーチャルゲームといっても、提供する会社はさまざまです。そこで選び方がポイントになってきます。始める動機は人それぞれだと思いますが、自分が何を求めるのかによって、選ぶサービスの内容も変わってきます。
「近いうちに投資を始めよう」と思っていて、株取引の経験を積んでおきたいという方は、実在企業の銘柄を扱い、本番と似た環境で行えるサービスが選択肢に入ってくるでしょう。
「とりあえず投資体験をしてみたい」という方は、ゲーム性に富み、賞品が用意されるなど、モチベーションを上げるさまざまな仕掛けのあるサービスを選んだほうが長続きしそうです。「株式投資の面白さに触れてみたい」という方向けに、よりシンプルに、株価が上がるか下がるかを予想しながら、参加者同士で交流できるサービスもあります。ほかにも「スマホで気軽に楽しみたい」という方はアプリのサービスのほうが適しているでしょう。
始めようとしている株のバーチャルゲームに、自分が求めている要素があるのかを確認してから、スタートすることをおすすめします。
「株式投資とれーにんぐ」は、みずほ証券が委託し、投資情報サービスのK-ZONEが運営している株取引シミュレーションです。システムや取引方法などは基本的に、みずほ証券のオンライントレードサービス「みずほ証券ネット倶楽部」と同様のものになります。証券会社で使われているシステムを体験できるので、これから実際に株取引を考えている人にとっては、より実践的な経験を積むことができます。
会員登録をすると1000万円の仮想の投資資金が提供され、東証に上場する企業のリアルな株価で売買します。注文画面も「みずほ証券ネット倶楽部」と同じです。「現物取引」か、現金や株式を担保として証券会社からお金を借りて株式を買う「信用取引」を選択し、銘柄名(または証券コード)を打ち込むことでその銘柄の詳細画面に移ります。
そして、売買の値段を指定しない「成行注文」や、売買の値段を自分で指定する「指値注文」などを設定して注文します。株価情報は約20分のタイムラグがあり、注文から約定まで20分以上が必要となります。
毎月、月間利益の上位10名のランキングが発表されますが、賞品などはありません。ただ、上位10名のうち毎月3名をピックアップして、取引内容が公開されます。成績上位者の投資スタイル、たとえばニュースで話題になった銘柄をどう売買したのかや、特定業種のみ取引する人など、さまざまな手法を確認でき、自分の投資の参考にすることもできます。
また、銘柄を選択すると株価情報サイトに飛び、そこで投資先企業の情報を得ることができます。企業情報や財務情報なども正確に把握できるので、近く、株式投資を始めたいという人に向いているサービスです。
「トレダビ」はK-ZONEが運営し、15年間で65万人以上の利用実績がある株のバーチャルゲームです。パソコン版と、スマホ向けアプリがあります。上記で説明した「株式投資とれーにんぐ」同様、実在する東証の上場企業のリアルな株価で売買することが可能です。株価の表示に20分のタイムラグが生じ、約定が即時反映ではなく20分後になる点も同じです。
「株式投資とれーにんぐ」と異なるのは、ゲーム性をよりふんだんに取り入れている点です。トレダビでは年間4回、3か月間の成績を競う大会を実施しています。大会で10位までに入賞すると次のような賞金・賞品を獲得できます。賞品として現金が用意されていることで、モチベーションアップにつながりそうです。
1位:初めての株式投資支度金 現金10万円
2位:初めての株式投資支度金 現金5万円
3位:初めての株式投資支度金 現金3万円
4位〜10位:カタログギフト
飛び賞:100位以降100番刻みで3000位まで30名様に今治タオル
また、週間ランキングで上位3名に入り、アンケートに答えれば1000円分のQUOカードが当たります。またゲームを始めると、参加者のレベルに合わせて「新規注文を1回出す」「新規注文を1回約定させる」といったミッションが表示されます。レベルに応じて、やるべき項目が示されるのは、初心者にとってはありがたい仕組みでしょう。
買える銘柄は業種業績、社名、コードなどから検索可能で、各銘柄にはチャートも表示され、ほとんど証券会社のサイトと同じように利用することが可能です。銘柄選びに迷ったら「トレダビおすすめ銘柄」「ランキング上位者が注目している銘柄」などから売買することも可能です。
また、証券会社で信用取引を始めようと思っても、資産の状況や投資経験などについての審査があり、すぐに始められるとは限りませんが、トレダビであればそれも可能です。こうした点は、株式投資の未経験者だけではなく、始めて間もない人が練習として使うのにも役立つでしょう。
「iトレ2 バーチャル株取引ゲーム」はWeb制作会社のリンケージプラスが提供するスマホ向けアプリです。前作の「iトレ」は100万ダウンロードを記録したヒット作で、「iトレ2」はその後継となります。
提供される仮想の投資資金は100万円。銘柄の数は限られてはいますが、現物株に加え、信用取引、投資信託、バイナリーオプションの取引も可能です。
これまで紹介したサービスと異なるのは、投資対象がすべて架空の会社の銘柄となり、そのため市場のオープンに縛られることなく、24時間365日、株価が動き続ける点です。さらに現実の1週間が、アプリの中では1年に該当し、値動きがとても早くなります。つまり、現実の株価の1年分の値動きを1週間で実感することができるのです。また、大口投資家による介入情報が時間指定で予告されるなど、現実では起こりえない機能もあります。
「iトレ2」の株価は24時間、常に動いているのでチャートの動きを好きなタイミングで見たい人、夜間しかチャートを見られない人も好きな時間に取引ができます。ただし、あくまでも実在しない架空の銘柄なので、現実の取引において銘柄選びの参考にしたいという用途には、適していません。
フィンテックのベンチャー、Finatextが楽天証券と提携し、提供しているスマホ向けアプリです。
上記3つのサービスと違い、このアプリでは、架空の資金で株取引は行いません。よりシンプルに、アプリ内で1日1回、「あすかぶ!」指定の実在するひとつの銘柄の株価が、翌日(明日)上がるか、下がるかを予想します。どの程度値上がり(値下がり)するかといった点や、株価や途中の値動きは関係なく、単純に終値で上がっているか、下がっているかの2択になります。
2択で回答するだけという非常にシンプルな仕組みなので、とりわけ初心者が参加しやすい内容になっています。また、予想する企業のことをよく知らなくても、指定された企業の経営データや関連ニュースを確認でき、タイムラインで参加者同士が意見交換することも可能です。
このアプリの利点は、シンプルな仕組みでありながら、指定された企業のことや景気動向、市場の動き、ニュースなどをチェックする習慣を身に付けやすい点にあります。たとえば、2019年6月17日(月)の予想対象となった銘柄は「商船三井」。
おりしも、6月13日に、中東ホルムズ海峡付近で日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃を受けたばかりでした。アプリ内では、この事件に言及する参加者のコメントが多く見られました(結果は14日の終値との比較でプラスに。下がると予想した参加者が多く、正解率は31%でした)。予想を続けていくと自分の正解率が表示され、参加者の中でどの順位にいるのか知ることができます。
架空のお金を使って、株式投資の仕組みや方法を体験できる株のバーチャルゲームですが、実際のお金を使っていない、という点は、モチベーションに大きく影響を及ぼします。筆者も上記4つのサービスに登録、利用しましたが、仮想資金として「100万円」「1000万円」を与えられ、バーチャル投資の結果、資金の増減があっても、現実の取引ほどには「うれしい」「悲しい」といった気持ちを持つことはありませんでした。
これが実際の投資であれば、1時間ごとに株価をチェックし、含み損ならなぜマイナスになったのかを後悔の念とともに考え、目減りした投資資金を忸怩(じくじ)たる思いで眺めます。いっぽう、プラスであれば次に狙える銘柄はないか、税金はいくら取られるのか、もっといい戦略はないか、といった具体に、勝っても負けても真剣に投資に向き合うことになります。
そうした意味で、株のバーチャルゲームを投資の準備として始めるなら、モチベーションを維持することが、ゲームでの経験をより有効なものにするポイントになりそうです。筆者の実感として、モチーべーションのアップには「ランキングを上げる」「賞金を得る」など、自分なりの目標を設定して行うことが必要だと感じました。
現在の株式投資、投資信託は数百円といったごく少額での投資や、買い物で貯めたポイントを利用して投資を行う「ポイント投資」など、投資を始めるハードルが下がってきています。株のバーチャルゲームで、株取引に慣れてきたら、ポイント投資や少額で始められる投資など、よりリアルな形での投資を検討してみるのもよさそうです。
参考記事:「dポイント、楽天ポイントなどで投資デビュー! 現金ゼロでも始められる『ポイント投資』活用術」