増やす
会社が拠出したお金を自分で運用。「自己責任」だからこそ覚えておきたい

会社員の5人に1人が加入。「確定拠出年金(企業型)」のルールと、賢く使うポイントを解説

「年金」というと国から老後にもらうもの、というイメージがあると思います。しかし、民間の生命保険会社が販売している「個人年金」や、社員の定年退職後に会社が支払ってくれる「企業年金」というものもあります。今回はこのうち「企業年金」、特に「確定拠出年金(企業型)」について、上手な付き合い方を解説していきます。

企業年金には「確定給付」タイプと「確定拠出」タイプがある

日本の年金制度はよく「3階建て」の建物にたとえられます。このうち1階と2階は国の制度である「公的年金」です。1階部分の「国民年金」は20歳以上になると誰でも加入します。そして会社員になると「厚生年金」にもあわせて加入します(保険料は厚生年金保険料として2制度分をまとめて払います)。3階部分は公的年金に対して「私的年金」と呼ばれます。会社によっては会社独自の「企業年金」を用意していたり、個人が任意で加入する「個人年金」もあります。
参考:「年金っていくらもらえる? 『ねんきん定期便』の見方と、賢くもらうポイントを解説」

会社を退職した後の老後の生活に使えるように、退職金制度を用意している会社も多くあります。この制度を「年金」払いする方法は大きく2種類に分けられます。「確定給付」と「確定拠出」のタイプです。

確定給付型の企業年金は「給付額」が確定。運用は企業が行う

確定給付型の企業年金
・会社が積み立て、運用、支払いまで行ってくれる、いわば「給付」が確定している仕組み
(ただし企業業績が悪化した場合、給付額を減額することもある)
・資産の運用は会社(ないし会社が設立した基金)が行う。運用結果が悪い場合は原則として会社が穴埋めをする
・中途退職時などは、数割程度減らされることが多い(個々の企業の定めによる)

確定拠出年金(企業型)は「拠出額」が確定。運用は社員が行う

確定拠出年金(企業型)
・会社は毎月の掛け金の拠出を行い、社員が運用を行う、いわば「拠出」が確定している仕組み
・資産の運用は個人が行う。運用結果は自己責任となり、将来の給付額に1人ひとり反映される
・会社から拠出された掛け金については、勤続3年以上あれば減額されることはない

大企業も確定拠出年金を続々導入。会社員の5人に1人は加入

日本では、確定拠出年金制度が2001年にスタートしました。2019年2月末時点で689万人が確定拠出年金(企業型)に加入しており、2019年4月には、700万人を突破したのはほぼ確実と見られています。民間企業の会社員が約3900万人とされているので、5.5人に1人が加入している計算になります。

世界的には確定給付型の企業年金から、確定拠出年金に切り替える傾向があります。日本でも大企業のおよそ半数が確定拠出年金を採用しています。IT系企業や建築会社、電機メーカーなど、たくさんの企業で確定拠出年金が利用されています。実は中小企業でも広く利用されていて、一番人気のある制度となっています。

利用者数は、話題の「iDeCo(イデコ)」の5倍以上

税制優遇が有利であると、話題の「iDeCo(イデコ)」も確定拠出年金の仲間(個人型確定拠出年金)です。こちらの利用者数は約120万人ですから、実は企業型確定拠出年金のほうが5倍以上利用されているのです。

冒頭で説明したとおり、確定拠出年金(企業型)は基本的に会社の退職金・企業年金制度として導入されます。導入している企業に入社すると正社員は加入対象となることが多いので、新入社員の中には、入社後のガイダンスで「自己責任の資産運用」などと説明を受け、申込書を渡された方もいるかもしれません。

企業型の確定拠出年金との付き合い方は、老後の生活に大きく影響してきます。今回は新入社員や若手社員、そして会社に新たに確定拠出年金(企業型)が導入された人向けに、確定拠出年金の活用術を紹介したいと思います。

必ず覚えておきたい確定拠出年金の基本ルール

確定拠出年金の基本的な仕組みについては会社が説明会を開催し、社員に資料を渡します。必ず覚えておいてほしいのは、以下の3つのルールです。

ルール1:毎月の掛け金は、給料とは別に会社が拠出。昇格すれば増えていく

会社が拠出する毎月の掛け金は、職位や階級、あるいは給与に連動して決められることが一般的です。新入社員は少なく、役職が上がるごとに増額されていきます。拠出額を記した表もしくは計算式が、確定拠出年金のパンフレットなどに書かれていますので、新入社員はまずいくら出してもらえるのか確認しておきましょう。

最初は数千円ということはよくありますが、「給料とは別に会社が出してくれるお金」であることは覚えておきましょう。そしてあなたが仕事を頑張って昇格や昇給すると、この掛け金も増えていくことになります。

ルール2:運用は自己責任。どのような商品を選ぶかは自分で決める

確定拠出年金は自己責任型の制度、とよく言われます。これはお金の増やし方について自分で決めることができ、その結果が自分の退職時の受取額になる仕組みになっているからです。

先ほど紹介した、国が運営する公的年金や、確定給付型の企業年金は、自分で増やし方を考える必要はありません。この点は大きな違いです。

会社の確定拠出年金で提示された運用商品の選択肢の中には、元本が確保される定期預金などの商品と、元本割れの可能性があるが、運用成果によっては資産を増やせる可能性がある投資信託商品があります。これらを自分で好きな本数、好きな割合で組み合わせることができます。

大きく増やすも、堅実に増やすも自分次第というわけです。投資のやり方については基本的な知識について研修機会が設けられることが一般的です。

ルール3:中途解約は原則できない。60歳以降にしか受け取れない

退職金と言うと、その会社を中途退職したときなどに現金でもらえるイメージがあります。しかし確定拠出年金についてはこれは基本的にNGになります。

確定拠出年金は「60歳以降にしか受け取れない」仕組みであり、転職・退職時には、新しい会社の確定拠出年金の制度か、iDeCoに引き継ぐなどして資産を持ち運びます。これをポータビリティと言います(携帯電話の番号を持ち運べるナンバーポータビリティと同じです)。

会社を辞めるとき、確定拠出年金にまだ15,000円以下しか貯まっていない場合のみ解約できますが、それ以外は原則として、60歳より前にはもらえないと考えてください。むしろ老後の生活のために「取り置き」しておくものだと考えてみてください。

確定拠出年金を賢く活用するための3つのポイント

ポイント1:加入するかどうかを選べる場合、「加入」を選ぶのがおすすめ

確定拠出年金の活用法で、1番目のポイントは「入るか」「入らないか」の選択です。全員強制加入の会社が多いものの、会社によっては、確定拠出年金に「入るか」「入らないか」を選べるところもあります。「入らない」という選択をした場合、会社からの掛け金は毎月の給与かボーナスに上乗せされます。

一見すると手取りが増えるような気がするのですが、「確定拠出年金として積み立てた金額」と「給与に上乗せされた金額」は同額になりません。「給与に上乗せ」という形でもらうと所得税や住民税、年金や健康保険組合の社会保険料が引かれてしまうからです。

確定拠出年金の大きな特徴になりますが、積み立てたお金は課税されず、全額が口座にそのまま入金されるメリットがあります。その割合は年収にもよりますが、掛け金の20〜30%になることも少なくありません。このほか、運用によって得た収益についても非課税になるほか、受け取るときも各種控除を受けられます。

60歳になるまでは、中途解約できない制限がありますが、税金の軽減などのメリットを受けられるので、基本的には加入を検討するのがよいでしょう。

ポイント2:掛け金が少額だからこそ定期預金ではなく、投資信託などを選ぼう

新入社員の場合、毎月の掛け金は数千円くらいからスタートします。会社によっては、1,000円ということもあります。このとき、「どうせ数千円なんて増えても大した金額にならないのだから、運用なんてどうでもいいや」と思ってしまいがちです。

むしろ、逆の発想を取り入れてみてはいかがでしょうか。「数千円なんだから少しぐらい減っても気にならないし、100%投資してみるか!」と考えてみるのです。

たとえ少額だったとしても、投資を始めると「勉強」になります。株価がなぜ変動するのか、その背景にある世界中のニュースも気になり始めます。こうしたことに興味関心がわくだけでも、数千円を毎月投資する価値があります。

将来に向けた「経験」にもなります。アメリカのトランプ大統領と中国がケンカをして、アメリカの企業の株価が大きく値下がりしたり、その後、手打ちをしたら株価が回復したり、という実体験を若いうちに得ることは大きな財産になるでしょう。

投資する金額が少額であればこそ、「2,000円の20%ならマイナス400円だし、このまま放置してみよう」と考えられるはずです。その経験があると40〜50歳代になり、より大きな金額を投資したときも「500万円の20%、100万円分値下がりしたけれど、まあ過去に何度もあったことだし、株価が戻るまで数年待つか」と落ち着いて考えることができるようになるでしょう。

ポイント3:運用成績を毎日チェックする必要はない。月に1回程度でOK

確定拠出年金をスタートするとIDとパスワードを渡されてWeb上で初期設定するよう求められます。一度アクセスしてみると、株価の変動にしたがって、あなたの投資残高が毎日更新されます(投資信託を保有した場合)。

確定拠出年金は「昨日時点での時価」が毎日アップデートされます。これは今までの退職金制度や確定給付型の企業年金にはなかった仕組みです。しかし、だからと言って毎日残高をチェックする必要はありません。株価情報を毎日見る必要もありません。

「自己責任なのに大丈夫?」と思うかもしれませんが、チェックするのは月に1回か、数か月に1回でも問題ありません。運用は60歳まで続きますし、1日の値動きが与える影響はほとんど気にしなくても問題ないからです。

あなたが個別の株価をチェックせずとも、「日本の株全体に投資する投資信託」とか「世界中の株価に連動する投資信託」を買えば自動的に値動きに連動してくれます。そうした「日々の負担」を省ける商品を上手に利用していけばいいのです。

少なくとも年に一度は文書で運用報告書が届くと思います。そのときは開封し、運用状況を確認してほしいと思います。年に一度くらいなら、負担なくできるはずです。すぐに受け取るわけでもないし、毎日売り買い注文を出すわけでもありませんから(出す必要もありません)、のんびりと運用していけばいいでしょう。

ぜひ、上記のポイントを心に留めておいてください。特に株価が下がっている時期に、焦って失敗しないようにしてほしいと思います。基本的に「プラスになっているときしか売らない」「マイナスでも投資を続ける」ぐらいの心構えを持って、老後が近づいてきたときに、「全額売り」を出すくらいのつもりで、気長に焦らず確定拠出年金と付き合ってみてください。

山崎俊輔

山崎俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表。FPとして、現役世代のお金と幸せのバランスについてユニークな視点でアドバイスする。連載多数。アニメもゲームも愛するオタクで、マンガの蔵書は約4,000冊。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
ご利用上の注意
  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の保険商品や金融商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
  • 本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
  • 本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、価格.comサイト利用規約(http://help.kakaku.com/kiyaku_site.html)にご同意いただいたものとします。
関連記事
価格.comマガジン タイムセール
投資・資産運用のその他のカテゴリー
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る