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「会社員でも確定申告したほうがいい人」8つの典型例を税理士が解説

今年も確定申告のシーズンがやってきました。令和3年分は2022年2月16日〜3月15日が申告期間です。ただし、新型コロナの影響により、簡単な手続きで4月15日まで延長することも可能です(前編参照)。

年末調整との違いや、会社員でも確定申告が必要なケースについてお伝えした前編(※)に続き、本稿では「会社員でも確定申告したほうがいい人」の8つの典型的な例を税理士の田中卓也さんに解説してもらいます。

「会社員でも確定申告したほうがいい人」とは「控除できる支出を見逃している人」。つまり、税金を多く払っている可能性がある人と言えます。下記の8つの例をチェックしてみてください。意外と皆さんも当てはまっているかもしれません。

※【前編】会社員のための確定申告入門「年末調整との違い」や「必要な人」を解説(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/money/?id=15062

実は税金を払い過ぎていた! というケースもありえます。ご自身の状況を本記事の8つの例に当てはめてチェックしてみてください

実は税金を払い過ぎていた! というケースもありえます。ご自身の状況を本記事の8つの例に当てはめてチェックしてみてください

「確定申告が必要な控除」と「年末調整で漏れがちな控除」

「確定申告をしたほうがいいか否か」を分けるポイントは2つあります。会社員などの給与所得者は年末調整を行い、配偶者控除や扶養控除など各種所得控除を処理しますが、年末調整は勤務先が代行してくれる「簡易的な確定申告」という位置付けのため、「医療費控除」など年末調整では処理できない控除もあります。このように「確定申告が必要な控除」がひとつ目のポイントです。本記事で紹介する【1〜5】の例がこれに該当します。

2つ目のポイントは「年末調整で漏れがちな控除」です。当人が見落としていたり、そもそも控除に該当する出費なのを当人が知らなかったりと原因はさまざまでしょうが、年末調整で漏れた控除は確定申告で処理することができます。これは本記事の【6〜8】の3つの例が該当します。

いずれも前編で紹介したような「確定申告をしなければいけない」ケースではありませんが、節税につながる可能性がありますので一度チェックしてみてください。なお、原則として、今回の企画の対象としている会社員向けの書き方をしていますが(たとえば、所得⇒給与所得など)、今回紹介する8つのケースの対象は会社員に限ったものではありません。

1. 医療費を年間10万円以上払っていませんか?【医療費控除】

まず、確定申告をしないと受けられない控除を5例紹介します。

医療費控除は年末調整で処理できないため、確定申告が必要です。医療費控除の対象となるのは、病院に支払った診療費や治療費、入院費にはじまり、通院や入院のための交通費(タクシー、新幹線の場合や、ガソリン代の扱いなどには制限あり)、医薬品代まで多岐にわたります。

これらに該当する出費が「医療費」となり、ここから保険金などで補てんされる金額を引いたうえで、原則10万円を超えた金額が給与所得から控除されます(控除額の上限は200万円)。ただし、医療費の中でも、美容整形代やサプリメント代など、病気やケガの治療、出産と関係のないものは対象になりません。なお、対象となる医療費は申告者本人だけでなく、生計を同じくする家族の分も含みます。

以前は医療費の領収書を添付して提出する必要があり面倒でしたが、平成29年分の確定申告より、「医療費控除の明細書」に記入し提出するだけでよくなっています(領収書などは5年間の保存が義務付けられています)。計算したら家庭の医療費が10万円を超えていたというケースもありえますので、治療にかかった金額は残しておくといいでしょう。

年間10万円を超える医療費は控除の対象に

年間10万円を超える医療費は控除の対象に

具体例:年収550万円の会社員一家の場合

医療費控除が実際にどれくらい節税につながるのか計算してみましょう。

年収550万円の男性会社員Aさんに、配偶者控除(38万円)の対象となる妻と、扶養控除(38万円)の対象となる子どもがひとりおり、一家で30万円の社会保険料を払ったと仮定します。この一家が、年間に20万円の医療費を支払ったとして(10万円を引いた残り10万円が控除対象)、医療費控除の有無でどれくらい所得税は変わるのでしょうか?

1. Aさんの給与所得
550万円(年収)−154万円(年収550万円の場合、必要経費と見なされる給与所得控除)=396万円

2. Aさんの課税所得

・医療費控除をしなかった場合
396万円(給与所得)−154万円(配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料30万円+基礎控除48万円)=242万円
この場合の課税所得は「242万円」になります。

・医療費控除をした場合
396万円(給与所得)−164万円(配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料30万円+基礎控除48万円+医療費控除10万円)=232万円
この場合の課税所得は「232万円」になります。

3. Aさんの所得税

・医療費控除をしなかった場合
242万円(課税所得)×10%−9万7,500円=14万4,500円

・医療費控除をした場合
232万円(課税所得)×10%−9万7,500円=13万4,500円

この家族の場合、医療費控除をすると、所得税が1万円安くなります。

(本記事では計算の仕組みを説明する趣旨から、復興特別所得税については割愛しています。実際には復興特別所得税として所得税に2.1%を乗じた金額を所得税と合わせて納税します)

「総所得金額等」によって10万円以下で控除される場合もある

医療費が年間10万円を超えていなくても医療費控除の対象になるケースもあります。「総所得金額等」が200万円未満の場合、「総所得金額等×5%」を超えた医療費が控除の対象になります。

総所得金額等とは「繰越控除」(ケース4で後述)した後の10種類の所得(前編参照)を合計したもの。たとえば総所得金額等が150万円だとすると、5%の7万5,000円を超える医療費が控除の対象となります。仮に医療費を9万円支払っていた場合は、超過分の1万5,000円が控除の対象になります。

※参考 総所得金額等(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/03/order3/yogo/3-3_y01.htm

マスクや消毒液の費用は?

なお、新型コロナウイルス感染症予防の目的で購入したマスク費用や消毒液の費用は、「治療」ではなく、「予防」なので医療費控除の対象となりません。また、PCR検査については「医師等の判断によるものなのか」あるいは「自己判断によるものなのか」で扱いが異なってきます。

「医師等の判断によりPCR検査を受けた」という場合には、治療に先だって行われる診療ということで医療費控除の対象になりますが、「自己判断によりPCR検査を受けた」という場合は、「陰性」であれば医療費控除の対象にならず、「陽性」と判断された場合のみ治療に先だって行われる診療ということで医療費控除の対象にすることができます。

2. 対象の市販薬を12,000円以上買うと控除対象【セルフメディケーション税制】

平成29年分の確定申告から、医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」が導入されています(令和8年12月31日まで適用)。これは、指定の市販薬を年間1万2,000円以上購入した場合、超えた金額分を所得控除できるものです(上限は8万8,000円)。

たとえば、該当する市販薬を年間5万円分買った場合は、「5万円−1万2,000円=3万8,000円」が所得から控除されることになります。ほとんどの対象医薬品のパッケージには、下記のロゴが印刷されているので、選んで買うこともできます(マークの掲載は義務ではないので不安な場合は店頭で確認を)。また、下記の厚生労働省サイトでも対象品目一覧が確認できます。

セルフメディケーション税制に該当する商品にはこのロゴが付いているケースがほとんど。ただし掲載は義務ではないのでご注意ください

セルフメディケーション税制に該当する商品にはこのロゴが付いているケースがほとんど。ただし掲載は義務ではないのでご注意ください

医療費控除とは選択適用

ただし、誰もが適用対象となるわけではなく、「健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行う人」が対象とされています。具体的には、申告を行う対象の年に健康診断や予防接種などを受けた人です。申告には該当商品購入時のレシートや健診結果などが必要になります。また、医療費控除とは選択適用(両方の控除は受けられない)となるのでご注意ください。

なお、確定申告において医療費控除を記載する場合の申告書記入上の注意点ですが、セルフメディケーション税制による医療費控除の特例を選択する場合は、確定申告書第一表の医療費控除の「区分」欄の□に「1」と記入します。忘れないように注意しましょう。

3.住宅ローンを借りていると税金が安くなる【住宅ローン控除】

続いて「住宅ローン控除(減税)」です。正式には「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローンを組んで家を新築、購入、増改築などをした場合、一定条件を満たすことで控除が受けられます。住宅ローン控除は、各種所得控除が引かれた課税所得より算出された所得税額から引かれます。これを「税額控除」と呼びますが、税額から直接引かれるので節税効果が大きくなります。

住宅ローン控除を受けるには、ローンを組んだ年の確定申告が必要です。仮に確定申告の期間が過ぎてしまった場合でも5年間まではさかのぼって「還付申告」ができます(本文にて後述)

住宅ローン控除を受けるには、ローンを組んだ年の確定申告が必要です。仮に確定申告の期間が過ぎてしまった場合でも5年間まではさかのぼって「還付申告」ができます(本文にて後述)

控除されるのは「住宅ローンの年末残高×1%」、または住宅取得価格の1%のうち少ない金額です(最高40万円、ただし認定長期優良住宅等に該当する場合は控除額が増加。詳細は国税庁のサイトでご確認ください)。控除額が所得税以上の額になる場合は、超過分が13万6,500円を限度として住民税からも引かれます。

住宅ローン控除を受けるには、住宅ローンを組んだ初年度に確定申告をしなければなりません。つまり、2021年に住宅ローンを組んだ人が住宅ローン控除を受けるには、今回の確定申告を行う必要があります。2年目以降は勤務先の年末調整で処理が完了します。

また、本来住宅ローン控除を受けるには、住宅を取得した年度に入居しなければいけませんが、新型コロナウイルスの影響などにより、新築の場合は2021年9月末までに、分譲住宅・既存住宅・増改築等の場合は2021年11月までに契約(取得)したものであれば、2022年12月末までに入居すれば住宅ローン控除が適用されます。

具体例:年収550万円の会社員一家の場合

住宅ローン控除にどれほど節税効果があるか、具体例で見ていきます(医療費控除の例と同様、復興特別所得税については割愛します)。

年収550万円の男性会社員Aさんに、配偶者控除(38万円)の対象となる妻と、扶養控除(38万円)の対象となる子どもがひとりいると仮定。一家で30万円の社会保険料と10万円の医療費控除を受けたものとします。さらに、年末時点で2,000万円の住宅ローンが残っていると仮定します。この場合、住宅ローン控除額は2,000万円×1%で20万円となります。

1. Aさんの給与所得

550万円(年収)−154万円(年収550万円の場合、必要経費と見なされる給与所得)=396万円

2. Aさんの課税所得

396万円(給与所得)−164万円(配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料30万円+基礎控除48万円+医療費控除10万円)=232万円
Aさんの課税所得は232万円になります。

3. Aさんの所得税

232万円(課税所得)×10%−9万7,500円=13万4,500円

4. Aさんの住宅ローン控除

13万4,500円(所得税)−20万円(住宅ローン控除額)=△6万5,500円
※所得税額分の13万4,500円が還付されたうえで、6万5,500円が翌年度の住民税から控除されます。自治体への届け出は必要ありません。

2022年より住宅ローン控除のルールが変更

今回の確定申告とは直接の関係はありませんが、2022年より、住宅ローン減税の内容が改正されています。主な変更点は下記のとおりとなりますので、住宅所得を考えている人はご注意ください。

・期間は4年間延長となり2025年まで適用(従来は2021年末で終了予定)。
・控除率が0.7%に(従来は1%)。
・控除期間は、「新築・買取再販」の住宅は13年間。「中古住宅」は10年間(従来は原則10年間。一定の条件を満たすと13年間)。
・住宅ローン減税が適用される借入金の上限は、一般住宅は3,000万円、認定住宅では5,000万円まで(従来は一般住宅は4,000万円まで)。

前出のとおり新型コロナウイルスの影響などにより入居が遅れ、2021年に契約した人が2022年に入居するケースもあるでしょう。2022年に居住を開始したからといって、改正税法の適用を受けるというわけではありません。契約した日にちにより、従来の住宅ローン控除が適用になる人もいますので、正しく確定申告するようにしましょう。

※参考記事
“改悪?” “改善?” 2022年の住宅ローン減税の変更点と、その影響を解説(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/money/?id=17957

4. 株式投資で損しても、節税につながる【損益通算・繰越控除】

株式や投資信託の売買で得た利益を「譲渡所得」といい、約20%の税率がかかります。配当と合わせて20万円を超える利益が出ると課税対象となり、確定申告の必要が生じます(ただし「特定口座・源泉徴収あり」の場合は確定申告不要。証券口座の違いと確定申告の関係については下記参考記事参照)。

※参考 証券会社の選び方を解説!口座開設までの流れとは?(価格.com)
https://kakaku.com/stock/articleview/?no=325

投資で損をした時は、確定申告をすると節税につながる可能性があります

投資で損をした時は、確定申告をすると節税につながる可能性があります

では逆に株式の売買で損失が出た時はどうでしょうか? 実は確定申告したほうが節税につながる可能性があります。これには「損益通算」と「繰越控除」という仕組みが関係しています。

まず損益通算ですが、これは利益と損失を相殺することを指します。たとえば、1年間の株式売買の収支が「a社で開設した特定口座内の銘柄Aはプラス、b社で開設した特定口座内の銘柄Bはマイナス」だった場合、銘柄Bの売買で生じた損失を銘柄Aの売買で生じた利益(譲渡所得)や配当益(配当所得)と相殺することが可能です。つまり、銘柄Aで得た利益にかかる税金を少なくすることができるわけです。

1社の証券会社の「特定口座」(上記参考記事参照)のみで取引している場合は、証券会社が損益を計算し「特定口座年間取引報告書」が交付されますので確定申告の必要はありません。しかし、複数社の証券口座(特定口座、一般口座を問わず)を通算させる場合は確定申告が必要です。

損失を向こう3年間繰り越すこともできる

損益通算がその年の利益を上回っている場合は、繰越控除を利用しましょう。繰越控除は、本年分の損失を控除しきれない時に、翌年以降にその損失を繰り越せる制度です。株取引では3年間繰り越し可能となり、売却益や配当益と相殺することができます。

たとえば、ある年に50万円の譲渡損失が発生し、損益通算後40万円の損失が残ったとします。その場合、
・翌年の株取引で10万円の利益が出ても、譲渡所得は0円(繰越残30万円)
・翌々年に15万円の利益が出ても、譲渡所得は0円(繰越残15万円)
・3年目に15万円の利益が出ても、譲渡所得0円(控除終了)
というように、繰越控除により、損失が生じた年も含めて最大4年間にわたって税負担を軽減できます。

FXと株との間では損益通算はできない

注意したいのが、外国為替証拠金取引(FX)、株価指数先物取引(CFD、日経225先物など)、商品先物取引など。これらの投資で生じた利益は「先物取引に係る雑所得等」として扱われ、株式や投資信託との間で損益通算することはできません。「先物取引に係る雑所得等」内では株式・投信と同様、損益通算や繰越控除ができます。

※参考 先物取引に係る雑所得等の課税の特例(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm

5. 寄付先によっては控除の対象に【寄付金控除】

近年、巨大な台風や豪雨などの自然災害が日本各地を襲うケースが目立ちます。被災地の復興・復旧を願い、義援金を送っている人もいるのではないでしょうか。義援金を含めた「寄付」も、控除の対象になる場合があります。対象となるのは、国や地方公共団体、財務大臣が指定した公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人や学校法人、認定NPO法人などの「特定の団体」への寄付で、2,000円を超えて支払った金額が「寄付金控除」の対象となります。

ふるさと納税も寄付金控除の一種

ふるさと納税も寄付金控除の一種

寄付金控除の対象となるかは団体のサイトなどをチェック

たとえば、義援金の送付先として知られる「日本赤十字社」は特定の団体に該当し、寄付金控除の対象となります。いっぽうで、国内外の遺児を支援する組織として一定の知名度のある「あしなが育英会」のように、特定の団体に該当せず、寄付金控除の対象とならないところもあります。寄付金控除の対象になるかどうかは、各団体のサイトに記載されていることが多いのでチェックするといいでしょう。

寄付金控除で控除される金額は、「その年に支出した特定寄付金の合計額」もしくは「その年の総所得金額等の40%相当額」のどちらか低いほうから2,000円を引いた額になります。確定申告する際には、寄付したことを証明する書類として、寄付先で発行される領収書が必要になります。

ふるさと納税の場合は?

なお、好きな自治体に寄付する「ふるさと納税」も寄付金控除の一種です。通常、ふるさと納税では「ワンストップ特例」を利用することで確定申告をしなくても寄付金控除が受けられますが、医療費控除を受けるなどほかの目的で確定申告した場合には「ワンストップ特例」が適用されないため、ふるさと納税で寄付した分についても確定申告する必要が生じます。

ふるさと納税で確定申告する際、令和3年分より、ふるさと納税の指定業者(「ふるさとチョイス」「ふるなび」「さとふる」などの仲介業者。下記リンク先参照)が発行する「寄付金控除に関する証明書」(年間の寄付額が記載されているもの)の添付が認められるようになりました。これにより、複数の自治体に寄付した人も、各自治体から寄付の受領書を取り寄せる手間が省けるようになりました。

※参考 国税庁長官が指定した特定事業者(令和3年11月12日現在)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo/kifukin/tokutei.htm

なお、手書きで確定申告書を作成する場合に忘れがちな点があるので触れておきます。ふるさと納税を確定申告する場合、確定申告の第一表の所得から差し引かれる金額の寄附金控除欄に記載漏れする人は少ないと思いますが、確定申告書の第二表、住民税に関する事項の都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)への記入を忘れてしまうと、住民税の節税に直結する箇所なので大変です。

たとえば、ある年に10万2,000円のふるさと納税を行った場合、確定申告書の第二表、住民税に関する事項の都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)へ10万2,000円を記入するとともに、確定申告の第一表の所得から差し引かれる金額の寄附金控除欄に10万円と記載することになります。

新型コロナで中止になったイベントチケットも寄付金控除の対象

令和2年分から引き続き、政府の自粛要請を受けて中止となった文化芸術、スポーツイベントなどのチケット代のうち、払い戻しを受けなかった分については寄付金控除を受けられる場合があります。そのイベントが文化庁やスポーツ庁から寄付金控除の対象として指定を受けていることが条件となりますので、詳細は各庁のサイトをご確認ください。

対象となるイベントの場合、主催者側に必要書類を発行してもらい、これを確定申告の申告書に添えて提出することになります。控除額は、チケット代から2,000円を引いた額の40%となり、たとえば、1万円のチケットなら3,200円が戻ってくることになります(税額控除の場合)。

6. 転職時など意外と多い年末調整での記入漏れ【社会保険料控除】

ここからは、「年末調整で漏れがちな控除」の3つの例を紹介します。

健康保険や厚生年金保険、国民健康保険や国民年金保険などの社会保険料は、1年間に支払った全額が「社会保険料控除」の対象となり、年末調整で処理されます。したがって、基本的に確定申告は不要です。しかし年末調整で提出する「給与所得者の保険料控除申告書」への記入漏れも少なくないようです。

転職活動中に自分で支払った国民年金保険料や国民健康保険料も社会保険料控除の対象です

転職活動中に自分で支払った国民年金保険料や国民健康保険料も社会保険料控除の対象です

転職した時は要注意

特に注意したいのは、年の途中で転職したケースです。たとえば、5月までA社、9月から新たにB社で働き始めたとして、転職活動中は自分で国民年金や国民健康保険を支払っていた場合、A社でもB社でもそのことを把握できません。B社での年末調整の際、保険料控除申告書に自分自身で支払っていた社会保険料を記載していればいいのですが、忘れてしまう人も多いようです。

その場合、社会保険料を支払った事実がありながら、受けられるはずの社会保険料控除を受けられなくなります。また、社会保険料は申告者と「生計を同じくする家族」のために支払った分も控除対象になります。こちらも年末調整で記入を忘れてしまう人が多いケースです。これらの場合は確定申告をすることで控除が受けられます。

7. 同居していなくても扶養対象【扶養控除】

子どもや両親など、親族を養っている人に適用されるのが「扶養控除」です。扶養控除は本来、年末調整で提出する「給与所得者の扶養控除等の申告書」に記載すれば確定申告の必要はありません。しかし年末調整では見落とされがちなケースがありますので、その場合に控除を受けたい人は確定申告が必要になります。

離れて暮らす親に経済的支援している場合でも扶養の対象に

離れて暮らす親に経済的支援している場合でも扶養の対象に

まずは扶養控除の基本を説明します。対象となる親族は「配偶者を除く6親等内の血族」および「3親等内の姻族(義父母や兄弟姉妹の配偶者など婚姻によってできた親戚)」です。控除を受ける条件は下記のようなケースです。

・扶養対象者が納税者と生計を同じくしていること
・扶養対象者の年間の「合計所得金額」が48万円以下(令和2年分より、従来の38万円以下より変更)であること

この中で、同居していなくても「生計を同じくしていること」が見落とされがちなポイントです。親元を離れている大学生に仕送りしている場合や、離れて暮らす親に仕送りしている場合なども「生計を同じくしていること」と見なされます。特に後者は、年末調整での記入漏れが多いようです。

※参考 扶養控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1180.htm

控除額は年齢や同居の有無で異なる

扶養控除の金額は、扶養親族の年齢や同居の有無などによって下記のように異なります。

たとえば、離れて暮らす「年金生活の親」に仕送りをしている場合、親の合計所得金額が48万円を超えておらず、親が69歳までなら38万円、70歳以上の場合は48万円が扶養控除額となります。

・一般の控除対象扶養親族(16〜18歳、23〜69歳) ⇒ 控除額38万円
・特定扶養親族(19〜22歳) ⇒ 控除額63万円
・老人扶養親族(70歳以上) ⇒ 控除額48万円(同居していない場合)、58万円(同居している場合)

仮に「親の収入が年金だけ」として具体的に考えてみましょう。年金も会社員の給与と同じく年金額や年齢に応じた額が所得から控除されます。これを「公的年金等控除」といい、年金収入から公的年金等控除を引いた額が親の「合計所得金額」ということになります。

公的年金等控除は年金額や年齢で額が変わりますが、特に65歳未満か65歳以上かによって算出方法が大きく変わります。具体的には、65歳以上になると控除額が大きくなります。下記は公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が1,000万円以下の人の例です。

・64歳の親が120万の年金をもらっている場合
120万円(年金収入)−60万円(公的年金等控除)=60万円(親の合計所得金額)

・65歳の親が120万円の年金をもらっている場合
120万円(年金収入)−110万円(公的年金等控除)=10万円(親の合計所得金額)

この場合、親が64歳の場合は扶養控除の対象外で、65歳の場合は扶養控除の対象になります。

※参考 公的年金等の課税関係(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

8. 死別・離別で控除の可能性あり【寡婦・ひとり親控除】

最後に紹介するのは、配偶者と死別、あるいは離婚した際に受けられる控除です。こちらも年末調整での処理が漏れがちな控除のひとつとなっています。

従来は、配偶者と離婚もしくは死別した人を対象に、性別ごとに「寡婦控除」と「寡夫控除」がありましたが、令和2年分より「寡婦控除」と「ひとり親控除」に整理されています。

令和2年度の税制改正大綱では寡婦控除・寡夫控除が改正され、新たにひとり寡婦控除・ひとり親控除となりました

令和2年度の税制改正大綱では寡婦控除・寡夫控除が改正され、新たにひとり寡婦控除・ひとり親控除となりました

令和2年分からの「寡婦控除」「ひとり親控除」のルールは下記のとおりです。

1. 婚姻歴や性別にかかわらず、生計を同じくする子(総所得金額等が48万円以下)を有する単身者(合計所得金額500万円以下)の場合、「ひとり親控除」(控除額35万円)が適用されます。
2. 上記の「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人を「寡婦」とし、従来と同じく「寡婦控除」(控除額27万円)が適用されます。
・夫と離婚した後に婚姻をしておらず、扶養親族(子以外)がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
・夫と死別した後に婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

従来は、女性であれば、合計所得金額が500万円を超えていても寡婦控除が受けられるケースがありましたが、令和2年分からの改正によって、合計所得金額が500万円を超えている場合は、寡婦控除、および、ひとり親控除が受けられなくなっています。

※参考
寡婦控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm
ひとり親控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm

還付申告は5年間までさかのぼれる

本稿で紹介してきた控除漏れがある場合は、ぜひ確定申告をご検討ください。正しく控除が処理されれば、払い過ぎた税金が還付されます。

申告期間が過ぎたら?

払い過ぎた税金の還付を受けるための「還付申告」なら、過去5年間までさかのぼって申告することも可能です。税法上の規定では、控除漏れがあった翌年の1月1日から5年間はいつでも確定申告書が提出できるとされています。

2022年2月16日の記事執筆時点で、平成29(2017)年分までの申告が可能。画像は、オンラインで申告書が作成できる「確定申告書等作成コーナー」より

2022年2月16日の記事執筆時点で、平成29(2017)年分までの申告が可能。画像は、オンラインで申告書が作成できる「確定申告書等作成コーナー」より

たとえば、記事執筆時点では平成29(2017)年分までさかのぼることができます。仮に、平成29年分の医療費控除などの申告漏れに気づいた場合、平成30(2018)年1月1日から5年間、つまり、令和4(2022)年12月末日まで、通常の確定申告書の提出期限に関係なく、管轄の税務署でいつでも申告書を受け付けてくれます。

税金は過不足なく正しく納めたいもの。皆さんも確定申告の要・不要を一度チェックしてみてください。

※本記事は、監修者の見解に基づくものです。

田中卓也

田中卓也

税理士。経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業承継対策などその活動は多岐にわたる。また、各種セミナーでの講演活動や講師、執筆活動にも力を注ぐ。

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