節約
払い過ぎの「還付申告」は5年間まで有効です 【会社員のための確定申告入門 後編】

税金払い過ぎ? 「会社員でも確定申告したほうがいい人」8つの典型例

今年の確定申告シーズンもすでに中盤にさしかかりました(2020年2月17日〜4月16日 ※通常は1か月間ですが、新型コロナウイルス感染拡大の防止措置として2020年に4月16日まで延長されました)。年末調整との違いや、会社員でも確定申告が必要なケースについてお伝えした前編(※)に続き、本稿では「会社員でも確定申告したほうがいい人」について税理士の田中卓也さんに解説してもらいます。「会社員でも確定申告したほうがいい人」とは「控除できる支出を見逃している人」。つまり、税金を多く払っている可能性のある人と言えます。下記の目次で気になる項目だけでもチェックしてみてください。意外と当てはまる人がいるかもしれません。(聞き手:価格.comマネー編集部)

※【会社員のための確定申告入門 前編】会社員のための確定申告入門「年末調整との違い」や「必要な人」を解説
https://kakakumag.com/money/?id=15062

実は払いすぎていた! というケースも

実は払いすぎていた! というケースも

「確定申告が必要な控除」と「年末調整で漏れがちな控除」

確定申告をしたほうがいいか否かを分けるポイントは2つあります。会社員などの給与所得者は年末調整を行い、配偶者控除や扶養控除など各種所得控除を処理しますが、年末調整は勤務先が代行してくれる「簡易的な確定申告」という位置付けのため「医療費控除」など年末調整では処理できない控除もあります。このように「確定申告が必要な控除」がひとつ目のポイントです。本記事で紹介する【ケース1〜5】までがこれに該当します。

2つ目のポイントが「年末調整で漏れがちな控除」です。当人が見落としていたり、そもそも控除に該当する出費なのを当人が知らなかったりと原因はさまざまでしょうが、年末調整で漏れた控除は確定申告で処理できます。これは本記事の【ケース6〜8】の3つが該当します。

いずれも前編で紹介したような「確定申告をしなければいけない」ケースではありませんが、節税につながる可能性がありますので一度チェックしてみてください。なお、原則として今回の企画の対象としている会社員向けの書き方をしていますが(たとえば、所得 ⇒ 給与所得 など)、今回紹介する8つのケースの対象は会社員に限ったものではありませんのでご注意ください。

▼確定申告が必要な控除

まずは、確定申告をしないと受けられない控除を5例紹介します。

1. 医療費を10万円以上払っていませんか?【医療費控除】

まずは多くの人に当てはまりそうな「医療費控除」から。医療費控除は年末調整で処理できないため、確定申告が必要です。医療費控除の対象となるのは、病院に支払った診療費や治療費、入院費にはじまり、通院や入院のための交通費(タクシー、新幹線の場合やガソリン代の扱いなどには制限あり)、医薬品代まで多岐にわたります。これらに該当する出費が「医療費」となり、ここから保険金などで補てんされる金額を引いたうえで、10万円を超えた金額が給与所得から控除されます。ただし、医療費の中でも、美容整形代やサプリメント代など、病気やケガの治療、出産と関係のないものは対象になりません。また、対象となる医療費は申告者本人だけでなく、生計を同じくする家族の分も含みます。

具体例:年収500万円の会社員一家の場合

実際にどれくらい節税につながるのか計算してみましょう。年収500万円の男性会社員Aさんに、配偶者控除(38万円)の対象となる妻と、扶養控除(38万円)の対象となる子どもがひとりおり、一家で30万円の社会保険料を払ったと仮定します。この一家が、年間に20万円の医療費を支払ったとして(10万円を引いた残り10万円が控除対象)、医療費控除のあるなしでどれくらい所得税は変わるのでしょうか?

1. Aさんの給与所得
500万円(年収)−154万円(年収500万円の場合、必要経費と見なされる給与所得)=346万円

2. Aさんの課税所得
・医療費控除をしなかった場合
346万円(給与所得)−98万円(配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料30万円)=248万円
この場合の課税所得は248万円になります

・医療費控除をした場合
346万円(給与所得)−108万円(配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料30万円+医療費控除10万円)=238万円
この場合の課税所得は238万円になります

3. Aさんの所得税
・医療費控除をしなかった場合
248万円(課税所得)×10%−9万7,500円=15万500円

・医療費控除をした場合
238万円(課税所得)×10%−9万7,500円=14万500円

この家族の場合、医療費控除をすると、所得税が1万円安くなる計算です。
(本記事では計算の仕組みを説明するために復興特別所得税については割愛しています)

総所得金額等によって10万円以下で控除される場合もある

医療費が年間10万円を超えていなくても医療費控除の対象になるケースもあります。「総所得金額等」が200万円未満の場合、「総所得金額等×5%」を超えた医療費が控除の対象になります。総所得金額等とは「繰越控除」(ケース4で後述)したあとの10種類の所得(前編参照)を合計したもの。たとえば総所得金額等が150万円だとすると、5%の7万5,000円を超える医療費が控除の対象となります。仮に医療費を9万円支払っていた場合は、超過分の1万5,000円が控除の対象になります。

年間10万円を超える医療費は控除の対象に

年間10万円を超える医療費は控除の対象に

2. 対象市販薬を12,000円以上買うと控除対象【セルフメディケーション税制】

平成29年分の確定申告から、医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」が導入されています(令和3年12月31日まで適用)。これは、指定の市販薬を年間1万2,000円以上購入した場合、超えた金額分を所得控除できるものです(上限は8万8,000円)。たとえば、該当する市販薬を年間5万円分買った場合は、5万円−1万2,000円=3万8,000円が所得から控除されることになります。ほとんどの対象医薬品のパッケージには、下記のロゴが印刷されているので、選んで買うこともできます(マークの掲載は義務ではないので不安な場合は店頭で確認を)。また、下記の厚生労働省サイトでも対象品目一覧が確認できます。

※参考 セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

医療費控除との併用は不可

ただし、誰もが適用対象となるわけではなく、「健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行う人」が対象とされています。具体的には、申告を行う対象の年に健康診断や予防接種などを受けた人です。申告には該当商品購入時のレシートや健診結果などが必要になります。また、医療費控除との併用もできないのでご注意ください。

キャプ

セルフメディケーション税制に該当する商品にはこのロゴが付いているケースがほとんど。ただし掲載は義務ではないのでご注意ください

3. 住宅ローン残高の1%分、税金が安くなる【住宅ローン控除】

続いて「住宅ローン控除(減税)」です。正式には「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローンを組んで家を新築、購入、増改築などをした場合、一定条件を満たすことで控除が受けられます。住宅ローン控除は、各種所得控除が引かれた課税所得より算出された所得税額から引かれます。これを「税額控除」と呼びます。税額から直接引かれるので節税効果が大きくなります。控除されるのは「住宅ローンの年末残高(最高4,000万円)×1%」(認定長期優良住宅等に該当する場合は最高5,000万円×1%)です。控除額が所得税以上の額になる場合は、超過分が13万6500円を限度として住民税からも引かれます。会社員が住宅ローン控除を受けるには、住宅ローンを組んだ初年度に確定申告をしなければなりません。つまり、2019年に住宅ローンを組んだ人が住宅ローン控除を受けるには、今回の確定申告を行う必要があります。2年目以降は勤務先の年末調整で処理が完了します。

具体例:年収500万円の会社員一家の場合

住宅ローン控除がどれほど節税効果があるか、ここでも1.の医療費控除と同じく具体例で考えてみます(医療費控除の例と同様、復興特別所得税については割愛します)。

年収500万円の男性会社員Aさんに、配偶者控除(38万円)の対象となる妻と、扶養控除(38万円)の対象となる子どもがひとりいると仮定。一家で30万円の社会保険料と10万円の医療費控除を受けたものとします。さらに、年末時点で2,000万円の住宅ローンが残っていると仮定します。この場合、住宅ローン控除額は2,000×1%で20万円となります。

1. Aさんの給与所得
500万円(年収)−154万円(年収500万円の場合、必要経費と見なされる給与所得)=346万円

2. Aさんの課税所得
346万円(給与所得)−108万円(配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料30万円+医療費控除10万円)=238万円
Aさんの課税所得は238万円になります。

3. Aさんの所得税
238万円(課税所得)×10%−9万7,500円=14万500円

4.Aさんの住宅ローン控除
14万500円(所得税)−20万円(住宅ローン控除額)=−5万9,500円
※所得税額分の14万500円が還付されたうえ、5万9,500円が翌年度の住民税から控除されます。自治体への届け出は必要ありません。

期間が3年間延長

2019年(平成31年)の税制改正大綱で、消費税10%増税にともなう経済的な負担を軽減する目的で、住宅ローン減税の控除期間がこれまでの10年間から13年間に延長されました。適用されるのは、消費税10%で住宅を購入し、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に対象住居に住み始めた人です。控除額は、認定長期優良住宅等に該当しない通常の住宅の場合、当初10年間は従来どおり「住宅ローンの年末残高(最高4,000万円)×1%」で、11年目以降の3年間は、次の(1)、(2)のどちらか少ない金額となります。

(1)住宅ローンの年末残高(最高4,000万円)×1%
(2)住宅取得価格(最高4,000万円)×2%÷3

キャプ

住宅ローン控除を受けるには、ローンをを組んだ年の確定申告が必要です。仮に確定申告の期間が過ぎてしまった場合でも5年間まではさかのぼって「還付申告」(本文にて後述)ができます

4. 株式投資で損しても、節税につながる【損益通算・繰越控除】

株式や投資信託の売買で得た利益を「譲渡所得」といい、約20%の税率がかかります。配当と合わせて20万円を超える利益が出ると課税対象になり確定申告の必要が生じます(ただし「特定口座・源泉徴収あり」の場合は確定申告不要。証券口座の違いと確定申告の関係については下記参考記事参照)。

※参考 証券会社の選び方を解説!口座開設までの流れとは?(価格.com)
https://kakaku.com/stock/articleview/?no=325

では逆に株式の売買で損失が出たときはどうでしょうか? 実は確定申告したほうが節税につながる可能性があります。これには「損益通算」と「繰越控除」という仕組みが関係しています。損益通算は、利益と損失を相殺することを指します。仮に、1年間の株式売買の収支が「銘柄Aはプラス、銘柄Bはマイナス」だった場合、B銘柄の売買で生じた損失をA銘柄の売買で生じた利益(譲渡所得)や配当益(配当所得)と相殺することが可能です。つまり、A銘柄で得た利益にかかる税金を少なくすることができるわけです。なお、1社の証券会社の「特定口座」(上記参考記事参照)のみで取引している場合、証券会社が損益を計算し「特定口座年間取引報告書」が交付されますので確定申告の必要はありません。しかし、複数社の証券口座(特定口座、一般口座を問わず)を通算させる場合は確定申告が必要です。

損失を向こう3年間繰り越すこともできる

損益通算がその年の利益を上回っている場合は、繰越控除を利用しましょう。繰越控除は、本年分の損失を控除しきれないときに、翌年以降にその損失を繰り越せる制度です。株取引では3年間繰り越し可能となり、売却益や配当益と相殺することができます。たとえば、ある年に50万円の譲渡損失が発生し、損益通算後40万円の損失が残ったとします。その場合、

・翌年の株取引で10万円の利益が出ても、譲渡所得は0円(繰越残30万円)
・翌々年に15万円の利益が出ても、譲渡所得は0円(繰越残15万円)
・3年目に15万円の利益が出ても、譲渡所得0円(控除終了)

というように、繰越控除により、損失が生じた年も含め最大4年間にわたって税負担を軽減できます。

FXと株との間では損益通算はできない

注意したいのが、外国為替証拠金取引(FX)、株価指数先物取引(CFD、日経225先物など)、商品先物取引など。これらの投資で生じた利益は「先物取引にかかる雑所得等」として扱われ、株式や投資信託との間で通算することはできません。「先物取引にかかる雑所得等」内では株式・投信と同様、損益通算や繰越控除ができます。

※参考 先物取引にかかる雑所得等の課税の特例(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm

株や投信で損をしても、確定申告をすることで節税につながる可能性があります

投資で損をしたときは、確定申告をすると節税につながる可能性があります

5. 寄付先によっては控除の対象に【寄付金控除】

近年、巨大な台風や豪雨などの自然災害が日本各地を襲うケースが目立ちます。被災地の復興・復旧を願い、義援金を送っている人もいるのではないでしょうか。義援金を含めた「寄付」も、控除の対象になる場合があります。対象となるのは、国や地方公共団体、財務大臣が指定した公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人や学校法人、認定NPO法人などの「特定の団体」への寄附。2,000円を超えて支払った金額が「寄付金控除」の対象となります。

団体によっては対象外も

たとえば、義援金の送付先として知られる「日本赤十字社」は特定の団体に該当し、寄付金控除の対象となります。いっぽうで、国内外の遺児を支援する組織として一定の知名度のある「あしなが育英会」のように、特定の団体に該当せず、寄付金控除の対象とならないところもあります。寄付金控除の対象になるかどうかは、各団体のサイトに記載されていることが多いので、気になる人はチェックするといいでしょう。寄付金控除で控除される金額は、「その年に支出した特定寄付金の合計額」もしくは「その年の総所得金額等の40%相当額」のどちらか低いほうから2,000円を引いた額になります。確定申告する際には、寄付したことを証明する書類として、寄付先で発行される領収書が必要になります。

なお、好きな自治体に寄付する「ふるさと納税」も寄付金控除の一種です。通常、ふるさと納税では「ワンストップ特例」を利用することで確定申告なしでも寄付金控除が受けられますが、医療費控除を受けるなどほかの目的で確定申告した場合は「ワンストップ特例」が適用されないため、ふるさと納税で寄付した分についても確定申告する必要が生じます。

キャプ

ふるさと納税も寄付金控除の一種

▼年末調整で漏れがちな控除

ここからは、年末調整でも処理できる控除ながら、年末調整で漏れてしまいがちな3つの例です。年末調整で処理が漏れてしまっても確定申告することで控除を受けられます。

6. 転職時など意外と多い年末調整での記入漏れ【社会保険料控除】

健康保険や厚生年金保険、国民健康保険や国民年金保険などの社会保険料は、1年間に支払った全額が「社会保険料控除」の対象となり、年末調整で処理されます。したがって、基本的に確定申告は不要です。しかし年末調整で提出する「給与所得者の保険料控除申告書」への記入漏れも少なくないようです。

転職したときは要注意

特に注意したいのは、年の途中で転職したケースです。たとえば、5月までA社、9月から新たにB社で働き始めたとして、転職活動中は自分で国民年金や国民健康保険料を支払っていた場合、A社でもB社でもそのことを把握できません。B社での年末調整の際、保険料控除申告書に自分自身で支払っていた社会保険料を記載していればいいのですが、忘れてしまう人も多いようです。その場合、社会保険料を支払った事実がありながら、受けられるはずの社会保険料控除を受けられなくなります。また、社会保険料は申告者と「生計を同じくする家族」のために支払った分も控除対象になります。こちらも年末調整で記入を忘れてしまう人が多いケースです。その場合は確定申告をすることで控除が受けられます。

キャプ

転職活動中に自分で支払った国民年金保険料や国民健康保険料も社会保険料控除の対象です

7. 同居していなくても扶養対象【扶養控除】

子どもや両親など、親族を養っている人に適用されるのが「扶養控除」です。扶養控除は本来、年末調整で提出する「給与所得者の扶養控除等の申告書」に記載すれば確定申告の必要はありません。しかし年末調整では見落とされがちなケースがありますので、その場合、控除を受けたい方は確定申告が必要になります。

まずは扶養控除の基本を説明します。対象となる親族は「配偶者を除く6親等内の血族」および「3親等内の姻族(義父母や兄弟姉妹の配偶者など婚姻によってできた親戚)」です。控除を受ける条件は下記のようなケースです。

・扶養対象者が納税者と生計を同じくしていること
・扶養対象者の年間の年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること

この中で「生計を同じくしていること」が意外と見落とされがちなポイントです。親元を離れている大学生に仕送りしている場合や、離れて暮らす親に仕送りしている場合なども「生計を同じくしていること」と見なされます。特に後者は、年末調整での記入漏れが多いようです。

※参考 扶養控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1180.htm

控除額は年齢や同居の有無で異なる

扶養控除の金額は、扶養親族の年齢や同居の有無などによって下記のように異なります。

・一般の控除対象扶養親族(16〜18歳、23〜69歳) ⇒ 控除額38万円
・特定扶養親族(19〜22歳) ⇒ 控除額63万円
・老人扶養親族(70歳以上) ⇒ 控除額48万円(同居していない場合)、58万円(同居している場合)

たとえば、離れて暮らす年金生活の親に仕送りしている場合、親の課税所得が38万円を超えていなければ扶養控除(38万、親が70歳以上の場合は48万円)の対象になるわけですが、仮に「親の収入が年金だけ」として具体的に考えてみましょう。年金も会社員の給与と同じく年金額や年齢に応じた額が所得から控除されます。これを「公的年金等控除」と言い、年金収入から公的年金等控除を引いた額が親の課税所得ということになります(収入が年金のみの場合)。

公的年金等控除は年金額や年齢で額が変わりますが、特に65歳未満か65歳以上かによって算出方法が大きく変わります。具体的には、65歳以上になると控除額が大きくなります。下記はその一例です。

・64歳の親が120万の年金をもらっている場合
120万円(年金収入)−70万円(公的年金等控除)=50万円(親の課税所得)
65歳の親が120万円の年金をもらっている場合
120万円(年金収入)−120万円(公的年金等控除)=0円(親の課税所得)

この場合、親が64歳の場合は扶養控除の対象外に。65歳の場合は扶養控除の対象になります。算出方法の詳細は下記の国税庁のサイトに記載されていますので、対象となるかどうかご確認ください。

キャプ

離れて暮らす親に経済的支援している場合でも扶養の対象に

8. 死別・離別で控除の可能性あり【寡婦・寡夫控除】

最後に紹介するのは、夫や妻と死別、あるいは離婚した際に受けられる「寡婦・寡夫控除」です。こちらも年末調整での処理が漏れがちな控除のひとつです。寡婦と寡夫では控除を受ける条件が異なるので注意しましょう。

寡婦控除は条件によって2段階

寡婦控除は下記のいずれかの条件に当てはまる人が対象です。この場合「一般の寡婦」に該当し、27万円の控除を受けることができます。

・夫と死別あるいは離婚した後に結婚していない人(夫の生死が明らかでない一定の人も含む)で、扶養親族がいる人か生計を一にする子(総所得金額等が38万円以下。令和2年分以後は48万円以下)がいる人
・夫と死別した後に婚姻をしていない人(夫の生死が明らかでない一定の人も含む)で、合計所得金額が500万円以下の人

また、上記の条件のどちらにも当てはまる人は「特別の寡婦」の対象となり、控除額は35万円に拡大されます。

対して寡夫控除は下記の3つの条件すべてに当てはまる場合に27万円が控除されます。

・合計所得金額が500万円以下の人
・妻と死別、もしくは離婚した後結婚していない人(妻の生死が明らかでない一定の人も含む)
・生計を一にする子(総所得金額等が38万円以下。令和2年分以後は48万円以下)がいる人

なお、令和2年度の税制改正大綱で寡婦・寡夫控除の見直しが図られ、寡夫の場合でも生計を一にする子がいる場合は控除額が35万円へ拡大されたり、未婚のひとり親にも控除が適用されたりするようになります。上記は令和元年分(2019年1月1日〜12月31日)の確定申告まで当てはまる条件になりますのでご注意ください。

キャプ

令和2年度の税制改正大綱では寡婦・寡夫控除の条件が変わります

還付申告は5年間までさかのぼれる

本稿で紹介してきた控除漏れがある場合は、ぜひ確定申告をご検討ください。正しく控除が処理されれば、払い過ぎた税金が還付されます。令和元年(平成31年)分の所得税の申告期限は4月16日(金)(新型コロナウイルスの感染拡大の防止措置として2020年4月16日に延長)までとなっています。

申告期間が過ぎたら?

払いすぎた税金の還付を受けるための「還付申告」なら、過去5年間までさかのぼって申告することも可能です。税法上の規定では、控除漏れがあった翌年の1月1日から5年間はいつでも確定申告書が提出できるとされています。

たとえば、記事執筆時点では平成27(2015)年分までさかのぼることができます。もし医療費控除などの申告漏れに気づいた場合、平成28(2016)年1月1日から5年間、つまり、令和2(2020)年12月末日まで、通常の確定申告書の提出期限に関係なく、管轄の税務署でいつでも申告書を受け付けてくれます。

2020年2月25日の記事執筆時点で、平成27(2015)年分までの申告が可能。画像は、オンラインで申告書が作成できる「確定申告書等作成コーナー」より

税金は過不足なく正しく納めたいもの。皆さんも確定申告の要・不要を一度チェックしてみてください。

※参考記事:【会社員のための確定申告入門 前編】会社員のための確定申告入門「年末調整との違い」や「必要な人」を解説
https://kakakumag.com/money/?id=15062

※本記事は、取材者の⾒解です。

田中卓也

田中卓也

税理士。経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業承継対策などその活動は多岐にわたる。また、各種セミナーでの講演活動や講師、執筆活動にも力を注ぐ。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
ご利用上の注意
  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の保険商品や金融商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
  • 本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
  • 本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、価格.comサイト利用規約(http://help.kakaku.com/kiyaku_site.html)にご同意いただいたものとします。
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る