主にインターネット上でサービスを提供する「ネット銀行」。大手銀行に比べてATMの入出金手数料や振込手数料などがおトクな場合が多いのが特徴です。ただし、ネット銀行はサービスによって使えるATMが異なり、かかる手数料もまちまちです。賢く使うには、各行の特徴を知る必要があります。
そこで本記事では、金融機関コード上で「インターネット専業銀行」に区分される「ソニー銀行」「PayPay銀行」「auじぶん銀行」「住信SBIネット銀行」「イオン銀行」「楽天銀行」の6行と、「支店数が最小限」「主にコンビニATMを利用」「従来型の銀行と比べて手数料や金利が有利」という、インターネット専業銀行と似た特徴を持つ「東京スター銀行」「新生銀行」の2行の、合計8つの銀行の手数料などを比較しながら、賢く使う方法を考えます(最終更新日:2022年5月14日)。
ネット銀行は、使えるATMや、入出金や振り込みにかかる手数料が違います。そこで、「ソニー銀行」「東京スター銀行」「新生銀行」「PayPay銀行」「auじぶん銀行」「住信SBIネット銀行」「イオン銀行」「楽天銀行」の使い勝手を比較! おトクに使いこなしましょう
まずは、ネット銀行の特徴を知っておきましょう。ネット銀行とは、原則として実店舗を持たず(一部例外あり)、インターネット経由で金融サービスを提供する銀行のことを指します。前出のとおり、金融機関コード上で「インターネット専業銀行」に区分される銀行や、金融機関コード上の区分は異なるものの、インターネット専業銀行と似た特徴を持つ銀行などがあり、総称して「ネット銀行」と呼ばれています。
ネット銀行を使う場合、利用者はスマホやパソコンを使って手続きを行います。既存の銀行と違い、ネット銀行には自行のATMはありませんが(一部例外あり)、現金を入出金する際は、コンビニなどに設置されている提携ATMで各ネット銀行が発行するキャッシュカードを使って手続きします。最近では、キャッシュカード不要で、スマホアプリを使ってATMでの入出金ができるネット銀行も増えつつあります。
ネット銀行は、既存の銀行と比べて、店舗運営のコストや人件費を抑えることができます。その、ATMの利用手数料や振込手数料が安く設定されている傾向があります。また、一部のネット銀行では普通預金の金利を高く設定している銀行もあります。
ただし、ネット銀行にはデメリットもあります。たとえば、ほとんどのネット銀行が対面でのサポートを行っていないため、サービスの利用方法やアプリの使い方などは自分で調べる必要があります。また、年金や税金の還付金など、「国庫金振込」に対応していないネット銀行もあるのでご注意ください。
さきほど、ネット銀行は手数料や普通預金金利の面でおトクなものが多いと説明しました。ひとつ注意したいのが、これらの条件は「申し込み時点の状態」と、「その後の利用状況」によって変わってくるという点です。たとえば「給与振込口座として使う」などの条件を満たすと、「ATMを無料で使える回数」が増えたり、「無料で他行に振り込める回数」が増えるといった優遇サービスを提供しているネット銀行もあります。
そこで本記事では、使い勝手を左右する「ATMの利用手数料」と「振込手数料」(ネットでの振り込み)を、各銀行の「申し込み時の状態」で比較しています(たとえば、「給与振込口座として使うと手数料優遇」などの条件を除外した状態での比較です)。ATMは、「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)の4つのコンビニATMの利用可否と手数料を掲載。また、大手金融機関として、メガバンク(「三菱UFJ銀行」、「みずほ銀行」、「三井住友銀行」)と「ゆうちょ銀行」のATMの利用可否と手数料もあわせて掲載してあります。優遇サービスについては後日「応用編」の記事で解説予定です。
ソニー銀行は、ソニーフィナンシャルグループのネット銀行です。さくら銀行(現・三井住友銀行)とJPモルガンの出資によって、2001年に開業しました。ネット銀行の中でも比較的歴史が古い銀行のひとつです。翌2002年にはネット銀行として初めて住宅ローンの取り扱いを開始。外貨預金の取り扱い数も豊富です。
※画像はソニー銀行公式サイトより
ソニー銀行は「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMで入出金ができます。各行のATMとも引き出しは月4回まで無料。5回目以降は1回110円の手数料がかかります。ATMへの預け入れは金額、回数を問わず無料です。
金融機関の中では「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「ゆうちょ銀行」のATMで入出金が可能です。手数料は上記のコンビニATMと同じで、引き出しは月4回まで無料(5回目以降は1回110円)で、預け入れは金額、回数を問わず無料です。
ソニー銀行宛であれば振込手数料は無料です。他行宛の場合は月1回まで無料で、2回目以降は110円かかります(「Sony Bank WALLET」 を持っている人は2回無料で3回目以降110円)。
東京スター銀行は、1999年に経営破綻した東京相和銀行の営業地盤を引き継ぎ、2001年に誕生した銀行です。金融機関コード上は「第二地方銀行」に分類され、実店舗も持っています。2014年に、台湾で最大規模の民間金融機関である「CTBC Bank」の完全子会社となっています。
※画像は東京スター銀行公式サイトより
東京スター銀行は、「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMが使えます。ただし、セブン銀行以外のATMでは預け入れに対応していません。引き出しは、東京スター銀行に設置されているATMの場合、所定の時間内に何度でも無料で使えます。そのほかのATMでも実質月8回まで無料(※)で使えます。所定時間外、あるいは月9回目以降の引き出しには110円の手数料がかかります。
※ATM利用時には手数料(110円)がかかり、翌月にキャッシュバックされる仕組み。ただしキャッシュバックの上限は、手数料が発生した月の預金平均残高の10%。月8回無料(880円分)にするには、月の預金平均残高を8,800円にしておく必要があります。
「三菱UFJ銀行」「みずほ銀行」「三井住友銀行」「ゆうちょ銀行」のATMが利用できます。ただし、預け入れに対応しているのは「ゆうちょ銀行」のみとなります。引き出しは、コンビニATMと同じく、実質月8回まで無料です。月9回目以降の引き出しには110円の手数料がかかります。
東京スター銀行宛であれば振込手数料は無料です。他行宛は1回110円の手数料がかかります(インターネットバンキングの場合)。ただし、インターネットバンキングの利用および、「スターワン口座取引明細書」の郵送設定を「郵送しない」と設定している場合は実質月3回無料になります(※)。
※振込時には手数料(110円)がかかり、翌月にキャッシュバックされる仕組み。
新生銀行は、1998年に経営破綻した日本長期信用銀行が前身です。国有化を経て2000年に新生銀行に改称されました。ほかの銀行に先駆けてインターネットバンキングに本格参入し、その後も、今では一般的なATMの24時間365日稼働や、ATM手数料の無料化などのサービスを先陣を切って導入してきたネット銀行として知られています。
※画像は新生銀行の公式サイトより
「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMで入出金ができます。引き出しは1回110円の手数料がかかります。預け入れは無料です。
「三菱UFJ銀行」「みずほ銀行」「三井住友銀行」のATMは引き出しのみ対応。「ゆうちょ銀行」のATMは、引き出しと預け入れ(無料)に対応しています。各行ともコンビニATMと同じく、引き出しには1回110円の手数料がかかります。
新生銀行宛であれば振込手数料は無料です。他行宛は月1回無料で、2回目以降は214円かかります(事前登録先への振り込みの場合。事前登録のない宛先の場合は529円)。
PayPay銀行は、日本初のインターネット専業銀行である「ジャパンネット銀行」が前身です。2014年にヤフー(現Zホールディングス)が主要株主に加わり、2018年2月にヤフーの連結子会社化。2021年4月に、スマホ決済の「PayPay」の名を冠した現在の銀行名に変更されました。
※画像はPayPay銀行公式サイトより
「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMで入出金が可能。入出金のいずれも3万円以上なら24時間365日、何回でも手数料無料。1回3万円未満の場合は月1回まで手数料無料で、2回目以降は時間帯に関係なく165円かかります。
提携金融機関の「三井住友銀行」、「ゆうちょ銀行」のATMでも入出金が可能です。コンビニATMと同様、入出金のいずれも3万円以上なら24時間365日、何回でも手数料無料。1回3万円未満の場合は月1回まで手数料無料になる点も同じです。2回目以降は時間帯に関係なく、三井住友銀行は165円、ゆうちょ銀行は330円かかります。
PayPay銀行宛であれば振込金額にかかわらず手数料無料。他行宛は振込金額にかかわらず、一律145円です。なお、PayPay銀行、三井住友銀行のいずれも本人名義の口座を持っている場合は、「PayPay銀行→三井住友銀行」間の振り込みが無料で行えます。
※PayPay銀行、三井住友銀行の双方とも本人名義の場合、手数料無料
auじぶん銀行は、KDDIと三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)が共同出資して設立したネット銀行です。創業時は「じぶん銀行」という名称でしたが、2020年2月に「auじぶん銀行」に変更されました。近年は、「auカブコム証券」や「au PAY」と組み合わせて使うと普通預金金利が上がるなど、同系列の金融サービスとの連携を強化しています。
※画像はauじぶん銀行公式サイトより
コンビニATMは「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イーネット」(ファミリーマートなど)が利用できます。手数料は、入出金とも1回110円です。利用状況に応じて変わる優遇制度「じぶんプラス」(ステージ1〜5。申し込み時はステージ1)の、ステージ2以上にならないと必ず手数料がかかる仕組みです。
「三菱UFJ銀行」および「ゆうちょ銀行」のATMが利用できます。三菱UFJ銀行ATMのルールは上記のコンビニATMと同じです。ゆうちょ銀行ATMの手数料は若干高くなっており1回220円です。金融機関ATMも「じぶんプラス」のステージ2以上にならないと手数料がかかります。
auじぶん銀行宛および三菱UFJ銀行宛であれば振込手数料は無料。他行宛は、金額にかかわらず一律99円です
三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同出資で設立したネット専業銀行。2007年9月に営業開始。SBIグループのネット証券「SBI証券」と連動させることで、普通預金の金利が上がります。2022年1月時点で、預金残高が7兆円を突破し、国内のネット銀行では最高額となっています。
※画像は住信SBIネット銀行公式サイトより
「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMが利用可能です。預け入れは無料で、引き出しは月2回まで無料。3回目以降は1回110円かかります。
「ゆうちょ銀行」のATMも利用可能で、ルールはコンビニATMと同じです。預け入れは無料で、引き出しは月2回まで無料。3回目以降は1回110円かかります。
住信SBIネット銀行宛であれば振込手数料は無料です(本記事の比較対象ではありませんが「三井住友信託銀行」宛も振込手数料は無料)。他行宛は月1回まで手数料無料で、2回目以降は1回77円です。
2007年10月に開業。イオンモールやダイエー、ミニストップなどでおなじみのイオングループのネット銀行です。ネット銀行ながらイオンモール内などにリアル店舗があり、店頭ではネット上と同様に、預金や住宅ローン、投資信託、外貨預金、iDeCoなど幅広い商品を取り扱っています。また、イオングループのクレジットカードとの連携サービスにも力を入れています。
※画像はイオン銀行公式サイトより
イオン銀行は、「イオン銀行」(ミニストップ)、「ローソン銀行」、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMが使えます。イオン銀行のATMでの入出金は24時間365日、何回でも手数料無料です。ローソン銀行、イーネットのATMでの入出金には、平日8時45分〜18時は110円、それ以外は220円の手数料がかかります。
提携している「みずほ銀行」、「三菱UFJ銀行」、「ゆうちょ銀行」のATMも、入出金にかかる手数料は「時間内無料」です(平日8時45分〜18時まで。ゆうちょ銀行のみ土曜9時〜14時も該当。これ以外の時間帯には銀行ごとに異なる手数料がかかかります)。「三井住友銀行」のATMは引き出しのみ対応しており、平日8時45分〜18時までは110円、それ以外の時間帯は220円の手数料で使えます。
なお本記事では比較対象としていませんが、メガバンクやゆうちょ銀行以外の地銀などを含めると、「時間内入出金無料」で使えるATMは全国約5万5,000台にのぼります。
イオン銀行宛であれば手数料無料です。他行宛は金額にかかわらず110円の手数料がかかります。
前身は2001年に開業した「イーバンク銀行」。その後、楽天が買収し2010年に「楽天銀行」となりました。最大の特徴は楽天経済圏内の銀行として、取引状況やキャンペーンなどで楽天ポイントを貯められる点です。2022年4月時点で、口座開設数は1,200万件以上となっています。
※楽天銀行公式サイトより
楽天銀行は「セブン銀行」、「ローソン銀行」、「イオン銀行」(ミニストップ)、「イーネット」(ファミリーマートなど)のATMで入出金ができます。手数料は下記のとおりで、セブン銀行とイオン銀行の手数料が若干安くなっています。
【セブン銀行、イオン銀行】
預け入れ:3万円以上……無料。3万円未満……220円
引き出し:金額を問わず220円
【ローソン銀行、イーネット】
預け入れ:3万円以上……無料。3万円未満……275円
引き出し:金額を問わず275円
「三菱UFJ銀行」「みずほ銀行」「ゆうちょ銀行」のATMで入出金が可能です。手数料は、預け入れが3万円以上で無料。3万円未満で275円です。引き出しは金額を問わず275円となっています。
楽天銀行宛であれば振込手数料は無料です。他行宛の場合は金額にかかわらず一律145円かかります。なお、楽天の会員情報と連携させることで、楽天ポイントを振込手数料に使うこともできます。
まとめとして、「ATM手数料」と「振込手数料」の項目ごとに、各ネット銀行を比較します。
ATMの手数料に関しては、「ソニー銀行」と「東京スター銀行」のおトクさが目を引きます。「ソニー銀行」はコンビニと大手金融機関を合わせて7行のATMに対応。預け入れが無料で、引き出しでの無料回数も月4回あります。
「東京スター銀行」は一部の金融機関で預け入れに対応していない点がネックになりますが、引き出しに関しては実質月8回まで無料になるのは魅力的です。
この2行に次ぐ存在なのが、預け入れが無料で、引き出しでの無料回数が月2回の「住信SBI銀行」でしょう。ただし、メガバンク3行のATMは対応していない点は注意が必要です。
手数料のおトクさという点で言うと「イオン銀行」も見逃せません。自行のATMが無料で使えるのに加え、複数のコンビニATMや金融機関のATMで、対象時間内であれば手数料無料で何度でも使えます。ただし、「セブン銀行」のATMに対応していない点は注意が必要です。
そのほかの4行に関しては、「3万円以上」の利用が条件だったり、手数料が必ずかかる仕組みだったりします。【応用編】で扱う「優遇サービス」などの活用を視野に入れながら利用されるといいでしょう。
8つのネット銀行のコンビニATMの対応状況と手数料
8つのネット銀行の大手金融機関(メガバンク+ゆうちょ銀行)ATMの対応状況と手数料
振込手数料は、同行宛なら各ネット銀行とも無料です。他行宛の場合は「実質月3回無料」の「東京スター銀行」が有利です。「ソニー銀行」、「新生銀行」、「住信SBI銀行」も月1回無料です。
また、2021年10月より、多くの銀行が他行宛振込手数料を引き下げていますが、1件当たりの手数料の安さで目を引くのが「住信SBI銀行」(77円)と「auじぶん銀行」(99円)です。他行への振込回数が多い人にとっては魅力的でしょう。100円を上回るものの、「ソニー銀行」(110円)、「東京スター銀行」(110円)、「イオン銀行」(110円)も十分安い金額と言えそうです。皆さんの利用状況を踏まえ、ベストなネット銀行を探してみてください。
8つのネット銀行の振込手数料 ※PayPay銀行、三井住友銀行の双方とも本人名義で、PayPay銀行→三井住友銀行宛の振り込みの場合、手数料無料
本記事では、各ネット銀行を「申し込み時の状態」の手数料で比較しました。実際は、「給与振り込み口座として使う」や「月末時点の預金額」などで特典が付くケースがあり、それによって「手数料無料」の回数が変わることがあります。また、使い方によって普通預金の金利が優遇されたり、各行が属するグループの共通ポイントが貯まったりするメリットもあります。これらの優遇サービスの情報は、後日【応用編】の記事で解説する予定です。
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