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新たなサービスが続々! 激動のカード業界の1年を振り返る

高還元カードが新登場、急拡大のタッチ決済。2020年クレジットカード5大ニュース

今や日本人ひとりあたり平均2〜3枚を保有しているクレジットカード。多くの人にとって利用機会の多い決済サービスですが、今年もさまざまな動きがありました。本記事では、2020年のクレジットカード業界で起きた5つの大きな出来事をピックアップして紹介します。

2020年もクレジットカードに関連して、さまざまな動きがありました

2020年もクレジットカードに関連して、さまざまな動きがありました

【1】新型コロナウイルスがカード業界に与えた影響は?

航空、飲食、小売りなど、多くの産業に今もさまざまな形で影響を与えている新型コロナウイルスですが、生活のさまざまなシーンで利用されるクレジットカード業界も例外ではありません。

カードショッピング取扱高は、緊急事態宣言が出ていた4月、5月は激減

経済産業省の調査(特定サービス産業動態統計調査)によると、2019年のカードショッピング取扱高は、多くの月で前年同月比2ケタの伸びを示してきました。しかし、感染拡大が目立ってきた2020年3月は前年同月比0.5%減、緊急事態宣言が出されていた4月は同16.3%減、5月は同17.7%減。5月の下げ幅は1994年以降で最も大きな数字だったといいます(その後、6〜9月は同4.2〜9.5%減、10月は同1.7%増で推移)。

ただし、影響はカードの特徴によって異なる

カード業界にとって厳しくも見える数字が並びますが、その影響はカード会社によって大きく異なるようです。たとえば、楽天市場での高いポイント還元率を大きな特徴とする楽天カード。楽天の決算資料を見ると、楽天カードは2020年1月から6月でカード会員数を100万人増やし、総会員数は2000万人を突破。新型コロナウイルスの感染が拡大していた2020年4月〜6月のショッピング取扱高は前年同期比14.4%増、7月〜9月は同20.7%増となりました。

いっぽう、商業施設と提携し会員数を伸ばしてきたクレディセゾンの決算資料によると、2020年4月〜6月のショッピング取扱高は前年同期比約15.4%減、7月〜9月は同12.3%減となっています。公表された数字がなく、断言はできませんが、JALカード、ANAカードといった航空系のカードも大きな打撃を受けた可能性があります。

高ステータスカードの特典の中身に変化が

航空系カードと並んで、もうひとつ大きな影響を受けたのが、数万円の年会費が発生する高ステータスカードです。これらは旅やグルメ、エンターテインメント関連の充実したサービスを特徴とするカードですが、コロナ禍ではそれらのサービスを利用する機会も限られてしまいます。

こうした状況を受け、高ステータスカードを提供するカード会社は新たな特典の提供を始めました。たとえば、アメリカンエキスプレスは夏に一定期間、Uber Eatsやビックカメラ.com、そして地域の中小店舗などで30%をキャッシュバックするキャンペーンを実施しました。同じく金属製の高級カードとして知られるラグジュアリーカードは、映像配信サービス「dTV」を最大4か月間見放題にする特典を追加しました。

大まかな傾向としては、従来の「T&E(トラベル&エンターテインメント)」のサービスに代わって、オンラインや身近な店舗で利用できる特典を用意して、会員の引き留めを図っているようにも見えます。ただ、国内外への旅の需要がコロナ前の水準に戻るのは数年かかるとの見通しもある中、年会費に見合うだけの特典をどういった形で用意していくのか注目しています。

【2】タッチ決済の利用が急拡大

2020年はさまざまな店舗でタッチ決済が利用できるようになりました

2020年はさまざまな店舗でタッチ決済が利用できるようになりました

今年大きく利用を伸ばしたのがクレジットカードの「タッチ決済」です。「タッチ決済」とは、対応している加盟店でカードリーターにカードをかざすだけで決済できる方法のこと。サインや暗証番号が不要で、海外の加盟店でも利用可能です。「Visaのタッチ決済」がよく知られていますが、Mastercardは「Mastercardコンタクトレス」、JCBは「JCB コンタクトレス」などと国際ブランドごとに異なる名称でサービスを提供しています。

Visaタッチ決済の取引数は15倍に拡大

Visaの2020年12月17日の発表によると、「Visaのタッチ決済」に対応した、2020年9月末時点のカード枚数は3230万枚で前年同月比2.3倍、取引数は同15倍にも伸び、普及が進んでいることが数字にも表れています。加盟店も増えており、対応端末の数は2020年9月末時点で前年同期比3.2倍に達し、セブン―イレブンやローソン、イオン、イトーヨーカドーなど身近な店舗でも使えるようになりました。

セキュリティに配慮。進んだ「カード情報の裏面集約化」

もうひとつ、今年目立ったのが「カード番号や有効期限の裏面集約化」です。これまでのクレジットカードには、表面に「カード番号」「有効期限」、裏面に「セキュリティコード」が記載されるのが一般的でした。何らかの機会にこれらの情報が盗み見されると、不正利用される可能性も出てきます。そこで、これらの情報を裏面に集約して、できるだけリスクを低減しようとする動きが出始めています。

約30年ぶりにカードデザインを刷新した三井住友カード。2つの機能を導入

この「タッチ決済の搭載」と「カード情報の裏面集約化」を同時に行ったのが三井住友カードです。同社は今年2月、約30年続いたパルテノン神殿を模した券面デザインを刷新。2月以降に発行される新たなカードには、「Visaタッチ決済」が標準搭載され、カード番号などは裏面に集約されています。ダイナースクラブカードも今年12月から同様に、タッチ決済の「ダイナースクラブ コンタクトレス」を搭載、カード情報を裏面に集約したカードの発行を始めました。「タッチ決済の標準搭載」と「カード情報の裏面集約化」という流れは今後も続いていきそうです。

【3】国のポイント還元事業によってどんな影響が?

「国のポイント還元事業」には多くのクレジットカード会社も参加しました

「国のポイント還元事業」には多くのクレジットカード会社も参加しました

消費税が増税された2019年10月から9か月間行われた、国の「ポイント還元事業」。対象の中小店舗でキャッシュレス決済をすると5%(コンビニなどのフランチャイズ店では2%)のポイント還元を受けられる事業でした。

クレジットカードはこの事業でどのように使われたのでしょう。
途中段階の数字ではありますが、経済産業省の調査によると、2019年10月1日〜2020年3月16日までの対象決済金額は約7.2兆円、還元額は約2,980億円。決済額の内訳は、クレジットカードが約4.6兆円(約64%)、QRコード決済が約0.5兆円(約7%)、その他電子マネーが約2.1兆円(約29%)、決済回数はクレジットカード約9.9億回(約29%)、QRコード決済は約5.4億回(約16%)、その他電子マネーが約18.7億回(約55%)でした。決済単価はクレジットカードが約4,600円、QRコードが約900円、その他電子マネーが約1,100円となりました。当然ではありますが、高額な決済にはクレジットカードが使われ、少額決済にはQRコード決済や電子マネーが使われたことが読み取れます。

経済産業省の別のアンケートでは、4割強の人が「還元事業をきっかけにキャッシュレス決済を始めた、または支払い手段を増やした」と回答。「還元事業終了後も、事業開始前と比べてキャッシュレスの利用頻度を増やしている」と言う人も全体の4割いました。このように、キャッシュレス決済全体では、普及にひと役買ったと言えそうです。

QRコード決済の利用者は4倍に増えたが…

ただ、フィンテック企業のインフキュリオン(東京)が2020年6月に全国2万人を対象に行ったインターネット調査によると、2020年6月時点のQRコード決済の利用率は48%と、2019年3月の4倍に拡大。これに対し、クレジットカードの利用率は77%とほぼ横ばいという結果が出ています。すでに多くの人が保有しているという面はもちろんありますが、QRコード決済と比較すると、ポイント還元事業の前後でクレジットカードは利用者のすそ野を大きく広げることはできなかったと言えそうです。

マイナポイント事業には、主要カード会社の中にも参加見送りの動き

もうひとつの国のポイント還元事業として、2020年9月から始まっているのが「マイナポイント事業」。これは、マイナンバーカードとひも付けたキャッシュレス決済を利用すると、国から最大25%、5,000円相当のポイント還元を受けられるものです。筆者の印象に残ったのは、この事業に対して距離を置くカード会社が少なくなかったことです。ポイント還元事業では主要カード会社がすべて参加したのに対し、ジェーシービーやクレディセゾン、三菱UFJニコスなどはマイナポイント事業への参加を見送りました。

報道で伝えられる内容を総合すると「(国からの)5,000円の還元額ではカードの発行枚数を増やすことができず、事業参加にともなうシステム改修費用の負担に見合わない」と判断し、不参加を決めた可能性があります。このことが、マイナポイント事業の利用者が伸び悩んでいることの要因のひとつだと指摘する声もあがっています。

【4】新登場の2枚の高還元率カードが話題に

2020年もさまざまな特徴の新たなカードがリリースされました

2020年もさまざまな特徴の新たなカードがリリースされました

2020年もさまざまなクレジットカードが新たにリリースされましたが、その中で話題を集めたのが高いポイント還元率を特徴とする2枚のカードです。

2021年4月まで3%還元の「Visa LINE Payクレジットカード」

1枚目は、LINE Payと三井住友カードなどが提携して4月にリリースした「Visa LINE Payクレジットカード」(年会費1,375円、初年度無料)です。元々はこのカード、オリコと提携して2019年中の発行を目指していましたが、リリースが延期され、ついには2020年1月にはオリコとの業務提携を解消。最終的に、三井住友カードと新たに提携してリリースしました。

このカードの目玉は、初年度(2021年4月30日まで)は利用金額に対して3%のLINEポイントが貯まること。ここ数年、1%台後半の還元率を売りにしていた「高還元カード」が軒並み改悪。今では1%が高還元率カードの基準とされています。そうした中で「3%」という数字は大盤振る舞いとも言える数字でしょう。

価格.comのユーザーレビューにも、「最大3%還元につられ作ってしまった」「当面は還元率最強」などと3%還元のインパクトを強調する声が掲載されています。Visaタッチ決済が搭載されているほか、カード利用ごとにLINEアカウントに決済通知が送られてくるなど、機能面も充実しています。

ただそのいっぽうで、レビューには「来年5月以降は還元率が悪くなると思う」などの声も。LINE Payの公式ブログには「基本還元率は1%、2021年5月以降は別途ご案内予定」と記載されているので、基本還元率の1%に落ち着く可能性が高いと思われます。加えて、「Visa LINE Payクレジットカード」で貯まるポイントはLINEポイントで、基本的には、使い道はQRコード決済「LINE Pay」での利用(1P=1円)に限られます。「LINE Pay」との併用が前提となるカードだけに、3%還元が終了した後、どういったサービスを用意していくのかが注目です。

ポイント特化型の「三井住友カード プラチナプリファード」

もう1枚は、9月にリリースされたプラチナカード「三井住友カード プラチナプリファード」です。通常のプラチナカードと比べて、旅や保険などの付帯サービスは限定的(海外旅行保険は最大5000万円、ラウンジ利用は国内主要空港およびハワイのみ)。その代わり、年会費を33,000円とプラチナカードとしては手ごろな価格に設定したうえで、ポイント還元に特化した新しいタイプのカードで、価格.comプラチナカードランキングでは、長期にわたり上位をキープしています。

特約店では還元率が1〜9%上乗せ
基本のポイント還元率は1%ですが、特約店ではポイントが最大9%上乗せされます。たとえば、コンビニ大手3社やマクドナルド、大丸松坂屋では3%還元、タクシーアプリ「GO」の利用では5%還元、オンライン宿泊施設予約サイト「Hotels.com」では10%還元などとなっています。また入会特典として、入会月の3か月後の月末までに合計40万円分を利用すると、40,000ポイントが付与されるほか、2年目以降も通常のポイント還元とは別に、前年度100万円のショッピング利用ごとに10,000ポイント(最大40,000ポイント)がもらえます。

メインカードとして、日常的に使っていれば年会費(33,000円)を超えるポイントを獲得することも可能です。コロナ禍で旅行に行く機会が減る中、旅行関連のサービスを縮小し、日常生活で使うお店でのポイントを貯めやすくしているのは、今の時代にあったカードとも言えます。

ただ、「プラチナカードでありながらポイントも貯めやすい」という位置づけは中途半端な感は否めません。もしポイント獲得のみに主眼を置くのであれば、楽天カードやdカードのように「年会費無料で基本還元率1%、特定のサービス・店舗ではさらに還元率アップ」するカードを選んだほうが、コスパにすぐれる可能性があります。話題になっているカードではありますが、どういった使い方をして、その場合にどの程度ポイントを獲得できそうなのか事前にしっかりと検討する必要がありそうです。

【5】共通ポイント、携帯キャリアごとの色分けが鮮明に

4大共通ポイントの携帯キャリアごとの色分けが明確になりました

4大共通ポイントの携帯キャリアごとの色分けが明確になりました

クレジットカードとも関係が深い「共通ポイント」。さまざまなサービスや店舗の利用で貯まり、支払いに充当することができるポイントです。ここでの大きな動きとして、5月にauのポイントプログラム「au WALLETポイント」が、4大共通ポイントのひとつ「Pontaポイント」に統合されたことがあげられるでしょう。

「au WALLETポイント」が「Pontaポイント」に統合

「au WALLETポイント」はそれまで、auの携帯電話料金の支払いや、KDDIのQRコード決済「au PAY」決済時などのシーンでポイントを貯めたりできる仕組みで、共通ポイントの仕組みはありませんでした。それが統合の結果、それらのシーンで貯まるのが「Pontaポイント」になり、auのサービスだけではなく、ローソンやケンタッキーフライドチキンなどの店舗で使えるようになりました。

今回の統合によって、auユーザーにとっては携帯電話料金の支払いなどで貯めたポイントの使い道が大幅に広がるメリットが生まれました。いっぽうのPontaユーザーにとっても、KDDIは現在、金融やECサイトなど通信分野以外のサービスを強化しており、それらのサービス利用時にポイントを使えるようになったのは利点と言えるでしょう。

今回の統合は、KDDIが4大共通ポイントの中で唯一、携帯キャリア大手と密接な関係を持っていなかったPontaポイントに目を付けた動きととらえることができます。この結果、4大共通ポイントは「NTTドコモ→dポイント」「au→Pontaポイント」「ソフトバンク→Tポイント」「楽天モバイル→楽天ポイント」と携帯キャリアごとの色分けが鮮明になりました。共通ポイントを貯める際、ひとつに集約したほうが効率的に貯められますが、自分が使っている携帯キャリアもその判断材料のひとつになるでしょう。

「楽天ペイ」のアプリ上でSuicaの発行・利用ができるように

「楽天ペイ」のアプリ上で発行されたSuica。「赤いSuica」と呼ばれることも

「楽天ペイ」のアプリ上で発行されたSuica。「赤いSuica」と呼ばれることも

もうひとつ、ポイント関連で気になったニュースは、5月にQRコード決済「楽天ペイ」のアプリ上でJR東日本の電子マネー・Suicaの発行やチャージ、利用が可能になったことです(おサイフケータイ機能が搭載されたAndroidで対応)。楽天ペイがあれば各地の鉄道やバスの利用が可能になるうえ、「楽天カード」から楽天ペイのSuicaにチャージすると、200円ごとに1Pの楽天ポイントも付与されます。さらに、12月9日からは、貯めた楽天ポイントを楽天ペイ上のSuicaに1P=1円としてチャージすることも可能になり、楽天ポイントで電車に乗ることができるようになりました(期間限定ポイントなどはチャージ対象外)。

「楽天経済圏」という言葉があるように、楽天は楽天市場をはじめ、金融や旅行、通信など生活のさまざまな分野でサービスを展開し、そこでの利用者に楽天ポイントを付与する囲い込み策を取っています。楽天経済圏にこれまで手薄だった鉄道・交通のサービスを加えることができたのは楽天にとっても好材料でしょうし、利用者にとっての利便性も高まりそうです。

まとめ

以上、2020年のクレジットカードとそれに関連する5つの大きな出来事を紹介しました。 2019年の民間消費に占めるキャッシュレス決済の比率は前年比2.7%増の26.8%と過去最高を更新しました。2020年はさらに伸びることが予想され、着々と浸透してきています。そして、QRコード決済の利用が急速に伸びてきているとはいえ、キャッシュレス決済の利用の大部分はクレジットカードによるもので(2019年のキャッシュレス決済の比率26.8%のうち、クレジットカードによるものが24%)、普及に重要な役割を果たしていくと思います。

クレディセゾンは11月に最短5分でスマホのアプリ上でデジタルのクレジットカードを発行し、プラスチック製のカードなしでも決済ができる新サービスを始めました。「タッチ決済」もそうですが、各カード会社は2021年も、このような「非接触・非対面」のサービスを強化していくでしょう。私たちユーザーも新しいサービスのよいところは取り入れつつ、セキュリティ面の目配せを忘れずに快適にカードを使っていけたらと思います。

岩田昭男

岩田昭男

クレジットカード評論家・早稲田大学を卒業後、月刊誌の記者を経て独立。クレジットカードのオピニオンリーダーとして30年にわたり活動しています。

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