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マイナンバーカードが健康保険証に! 総務省と専門家に「持つメリット」を聞いてみた

今後、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになるのを知っていますか? 本格稼働は今年2021年10月以降に延期となりましたが(※)、カードの利便性が増し、現状、約26.3%(約3,334万枚。2021年3月1日時点)に留まっている普及率の向上の起爆剤となることが期待されています。いっぽうで、「実のところ何がどこまで便利になるのか?」「やっぱりセキュリティが不安」と、マイナンバーカードの発行に二の足を踏む人が多いのも事実。そこで本企画では、総務省や専門家への取材を通じて、「マイナンバーカードでできること・今後できるようになること」と、「マイナンバーカードのセキュリティ」について整理してみました。カードを作るか否か迷っている方、必読です。

※2021年3月時点では一部医療機関等でのプレ運用中。利用できる医療機関の情報は厚生労働省のサイトをご確認ください。システムの安定性確保やデータの正確性担保を経て、2021年10月頃以降の本格稼働が予定されています。

マイナンバーカードの健康保険証利用がスタート。あらためて、マイナンバーカードで「できること」を整理してみた

今秋よりマイナンバーカードの健康保険証利用がスタート。あらためて、マイナンバーカードで「できること」を整理してみました

「マイナンバー」と「マイナンバーカード」の違いを知ろう

まずは基本のおさらいから。「マイナンバー」と「マイナンバーカード」を混同している方も多いので、そこを区別しましょう。マイナンバーとは、日本に住民票を置く人全員(外国人含む)に割り当てられている、12桁の個人番号のことです。マイナンバーカードを持っていようがいまいが、日本に住む人なら、0歳だろうが100歳だろうが、すでにこのナンバーが割り振られているわけです。

マイナンバーの3つの目的

マイナンバーは2016年から運用されていますが、その目的は3つあります。

1. 国民の利便性の向上
2. 行政の効率化
3. 公平・公正な社会の実現

これまで日本では、国や地方公共団体、そして社会保険事務所や税務署などがそれぞれ別々に個人の情報を保有や管理していました。仮にAさんが住む市区町村で登録された「住民票コード」が「12345678912」だとしても、社会保険事務所で登録されている基礎年金番号は「abcd-12345」だったりします。

同じAさんなのにバラバラの数字で管理され、ひも付いてもいません。そのため、私たちは何かの手続きをするときに、各所それぞれに足を運び、何度も本人確認をしながら、必要書類を別々に申請する手間がありました。

マイナンバーひとつにひも付け

しかし、12桁のマイナンバーは、Aさんが持っているバラバラの数字をひとつにひも付けることができます。マイナンバーの12桁の数字さえ照合できれば、市区町村でも社会保険事務所でも「この人はAさんである」と特定することができるのです。

つまり、いくつもの行政機関をまわらずとも、年金や児童手当などの手続きが簡単かつスピーディーにできるようになり、「1. 国民の利便性の向上」をスマートに成し遂げられるわけです。もちろん、行政側の手続時間や労力も大幅に減るので、「2. 行政の効率化」も近づきます。また行政側では、納税状況や正確な所得額などを把握できるため、不正受給などの不公平な事態を減らせるようになり、「3. 公平・公正な社会の実現」にもつながるというわけです。

マイナンバーカードは、マイナンバーを証明するカード

では、「マイナンバーカード」の役割は何でしょうか? ひと言で表すと、「自分のマイナンバーを証明するためのカード」となります。カードの表面には「氏名」「住所」「生年月日」「性別」と顔写真が記載されています。裏面には12桁のマイナンバーと、さらにクレジットカードなどと同様に、金色の四角いICチップなどが組み込まれています。

マイナンバーカードは運転免許証などと同様に、「顔写真付きの公的な本人確認書類」として使うことができます。「年齢に関係なく、誰もが持つことができる顔写真付きの本人確認書類として使えること」、これこそがマイナンバーカードのひとつめのメリットと言えます。

出典:マイナンバー(社会保障・税番号制度)〜もっと便利に暮らしやすく〜(内閣府)

出典:マイナンバー(社会保障・税番号制度)〜もっと便利に暮らしやすく〜(内閣府)

ICチップでオンライン申請も便利に

価格.comマガジンの読者の方ならご存じの人も多いと思いますが、ICチップは、クレジットカードや、Suicaなどの交通系ICカードにも搭載されている記録媒体です。小さいながら大量の情報を記録できるのが特徴です。マイナンバーカードのICチップには、「氏名」「住所」「生年月日」「顔写真」など、カードに記載されている情報がデジタルデータとして記録されています。

また、これに加えて、「公的個人認証サービスによる電子証明書」も記録されています。

「公的個人認証サービス」とは、オンラインによって申請や届け出などの各種行政手続を行う際、他人による「なりすまし」やデータの改ざんを防ぐために用いられる本人確認の手段のこと。また、「電子証明書」とは、本人であることを電子的に証明するもので、書面の取引における印鑑証明書に変わる存在となります。公的個人認証サービスを利用する際には電子証明書が必要となり、これが外部から読み取れない形でマイナンバーカードのICチップに記録されているわけです。

「つまり、カードに記載された情報を目視で確認しなくとも、カードリーダーにかざすことで本人確認ができることを意味します。これは、マイナンバーカード利用の大きなメリットのひとつだと思います」と話すのは、野村総合研究所の上級コンサルタントでクレジットカードやキャッシュレス決済サービスなどにくわしい冨田勝己さんです。

冨田勝己さん。株式会社野村総合研究所上級コンサルタント。専門はマーケティングや事業戦略の立案・実行支援。ポイントプログラムやクレジットカードなど、会員組織を活用したサービスの立ち上げや改善・改革に関するコンサルティングを多数手がけるほか、新規事業の立案・立上げ〜実行支援も手がけている。小売全般、運輸・交通、金融(クレジット、銀行)旅行代理店、通信、エネルギーなど、主にBtoC業界を幅広くカバーしている

冨田勝己さん。株式会社野村総合研究所上級コンサルタント。専門はマーケティングや事業戦略の立案・実行支援。ポイントプログラムやクレジットカードなど、会員組織を活用したサービスの立ち上げや改善・改革に関するコンサルティングを多数手がけるほか、新規事業の立案・立上げ〜実行支援も手がけている。小売全般、運輸・交通、金融(クレジット、銀行)旅行代理店、通信、エネルギーなど、主にBtoC業界を幅広くカバーしている

コンビニで住民票の写しを取得

「マイナンバーカードでできること」にはさまざまなものがありますが(下記ボックス参照)、たとえば住民票の写しや印鑑登録証明書など、各種証明書をコンビニなどで取得することができる「コンビニ交付サービス」の場合、作業はコンビニのマルチコピー機で行います。コピー機にカードリーダーが設置されており、ここにマイナンバーカードをかざすだけで、その情報がオンラインで認識されます。市区町村の窓口での待ち時間なしで、近くのコンビニで各証明書類を受け取れるわけです。

マイナンバーカードでできることの一例(2021年3月時点)


▼さまざまな行政手続

・各種証明書をコンビニで取得
住民票の写しや印鑑登録証明書をはじめ、各種証明書がコンビニで6時半から23時まで取得可能。コンビニ交付は全国835市区町村(2021年3月31日現在)が導入済み。市区町村によっては窓口に比べて発行手数料が安く設定されているケースも(※市区町村によってサービス内容が異なる)。

・確定申告をオンライン(e-Tax)で
マイナンバーカードを用いることで税務署に行くことなく、オンライン申請システム「e-Tax」で確定申告の手続が可能。

・マイナポータルで子育てや介護の手続きを自宅でできる
政府が運営するWebサイト「マイナポータル」では、子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップで行えるほか、行政機関からのお知らせも確認できる(※市区町村によってサービス内容が異なる)。


▼本人確認書類として活用

・本人確認書類として官民問わず広く利用可能

・マイナンバーの提示が必要な手続がスムーズに
行政手続や金融機関での口座開設等、マイナンバーの届出が必要な場合にも、マイナンバーカードがあれば、マイナンバーの提示と本人確認が1枚で完結。

・オンラインでの本人確認も確実、迅速に
本人確認にマイナンバーカードを活用することで、厳格な本人確認が行えるようになり、インターネットバンキングで口座開設までの期間を短縮したり、なりすましや情報の改ざん防止にもなる。

「こうした各種証明書を発行する機会は年に1〜2回と、決して多くないと思います。逆に言うと、これまではこの1〜2回のためだけに、市区町村の窓口まで出かけていたわけです。この時間が解消されるのは、地味ながら見逃せないメリットです。私も実際に使う機会がありましたが、一度体験すると、本当に便利になったと実感できます。また、『確定申告をオンラインでできる』(e-Tax)メリットも同様です。税務署に行かずとも、ICチップ読み取りに対応したスマホか、PCに接続するカードリーダーがあれば、自宅にいながら本人確認ができるので便利です。これらは実際にやってみると、文字で表す以上のメリットが実感できるはずです」(冨田さん)

健康保険証と一体化。何が便利に?

この、「かざすだけで本人確認ができる」便利さの延長線上に、今後導入予定として注目の機能「健康保険証としての利用」もあります。マイナンバーカードを持っている人は、医療機関で健康保健証を提示するとき、顔認証付きのカードリーダーにそれをかざすことで本人確認ができるようになるのです。「ん?」と少し心にひっかかった読者もいるかもしれません。この文章だけを見ると、医療機関側は手間が減ってラクになれども、利用者側のメリットがあまりないようにも見えます。

健診情報や薬剤情報をオンラインで確認可能に

患者側のメリットはこれ以外にあります。たとえば転職する場合。これまでは、それまでの勤務先に健康保険証を返し、転職先で新たな健康保険証を発行する必要がありました。しかし、マイナンバーのポータルサイト「マイナポータル」上で事前にマイナンバーカードを登録しておくことで、この作業が不要になります(※医療保険者への加入の届け出は引き続き必要です)。また、これまで自分で書類として保管するしかなかった健康診断の結果の情報が、マイナポータル上でいつでも閲覧できるようになります。

さらに2021年10月からは、これまでは「お薬手帳」で管理するしかなかった薬剤情報も、マイナポータル上で確認できるようになる予定です。健康診断の情報や薬剤情報は、本人が同意すれば医師とも共有することができるので(2021年10月開始予定)、初めてかかる病院での初診時はもちろん、災害時などにも自分の正確な医療情報を伝えられ、いつ、どこででも適切な診療や治療を受けられることにつながりそうです。

このほか、支払った医療費の情報もマイナポータルで見られるようになり、2021年度の確定申告からは、医療費控除の手続きでマイナポータルを通じて医療費情報を自動入力することが可能になる予定です。

高額療養費制度もスムーズになる

当事者となった際に大きなメリットを受けられるのが、入院などで医療費が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される「高額療養費制度」です。これまでこの制度を利用するには、一時的に高額の費用を自己負担し、あとから手続きして払い戻しを受けるか、事前に、加入している健康保険組合から、窓口で支払う額が自己負担額まで減額となる「限度額適用認定証」の交付を受けるなどの手間がかかっていました。

しかしマイナンバーカードの健康保険証利用では、これらの手続きも手間も必要なし。すぐさま高額療養制度が適用されます。こうしたことをあらかじめ知っておけば、いざというときでも、大きな安心感につながることでしょう。

健康保険証利用の申し込みは「マイナポータル」から

マイナンバーカードを健康保険証として利用するには申し込みが必要です。マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンか、パソコンとマイナンバーカードの読み取りに対応したICカードリーダ・ライタを利用し、前出のマイナポータル(※)から行うことができます。また、一部の薬局チェーンでも申し込みサポートを行っているほか、2021年春からは、セブン銀行ATMでも健康保険証利用の申し込みができるようになる予定です。

出典:マイナポータル(画像は2021年3月時点のもの)

出典:マイナポータル(画像は2021年3月時点のもの)

※マイナポータル:https://myna.go.jp/SCK0101_01_001/SCK0101_01_001_InitDiscsys.form

マイナンバーカードのセキュリティは?

国や地方公共団体での本人確認、健康保険証としての利用――。利便性が高まり、マイナンバーカード1枚に機能が集約されていくほど心配になるのが、セキュリティの問題です。紛失や盗まれた場合のリスクをどう考えればいいのでしょうか。

「確かに、マイナンバーカードを落としてしまい、悪意のある人に拾われた場合に、なんらかの技術で顔写真を貼り変えるなどして『なりすまし』などに悪用される可能性はゼロではないでしょう。しかし、そのリスクについては、多くの人が常に持ち歩いている運転免許証についても同じです。マイナンバーカードだけに付随するリスクではないと考えます」(冨田さん)

また、12桁のマイナンバーだけを知られても、それだけで、オンライン上で誰かになりかわって不正にサービスを受けることはできません。実際にサービスを受けるには「パスワード」による認証が必要だからです。マイナンバーカードに搭載されている電子証明書は、カード受け取りの際に自分で設定したパスワードで守られています。これを数回(利用者証明用は3回、署名用は5回)連続で入力ミスすると、カードの機能がロックされるのです。

まるでスパイ映画! 自動的にICチップの情報が消失

さらに、マイナンバーカードは「耐タンパー性」も備えています。聞きなれない言葉ですが、タンパー(Tamper)とは「改ざん」の意味。たとえば、ICチップを取り出し、電気的、物理的に情報を不正に読み出そうとされた場合には、

・光が当たるとメモリ内容消去
・メモリ回路素子が表面から観察できない
・電圧異常、クロック異常等の検知で動作停止
・メモリ素子の物理配置ランダム化&暗号化

により、情報の解読が行われないようになっているといいます。

また、ICチップの消費電力や処理時間などを測定・解析し、情報を推測しようとする場合には、消費電力、処理時間を”かくはん”することで、読み取った信号の統計的な解析を困難にするそう。このように、マイナンバーカードには、スパイ映画さながらの高度なセキュリティテクノロジーが施されています。

「このあたりは、念には念を入れた情報セキュリティ対策が講じられていると評価できると思います。そのため、個人が注意すべき点としては、『パスワードの取り扱い』というアナログ面になるでしょう。自分が設定したパスワードを不用意に誰かに教えたり、メモ書きして一緒に財布に入れておいたりといったことは当然避けるべきです。これらのことは、銀行のキャッシュカードや、クレジットカードなどで、皆さんすでに気を付けていることと同じだと思います」(冨田さん)

マイナンバーカードを紛失した場合は?

マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に連絡し、マイナンバーカード機能停止の手続きが必要。あわせて、自宅以外で紛失した場合は警察に遺失届を提出し、受理番号を控えておくこと。その後、住んでいる市区町村の窓口へ届け出て、マイナンバーカードの再発行の手続きを行う。

今後はスマホ搭載や運転免許証との一体化も

今回紹介してきたこと以外にも、マイナンバーカードは今後も「できること」が増えていく予定です。

まず、2022年度からは、マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載することが目指されています。これが実現すると、マイナポータルへのログインなどの本人認証のほか、さまざまなオンライン申請もスマートフォンひとつでできるようになります。また2024年度からは、運転免許証との一体化が予定されています。これにより、住所変更手続のワンストップ化や、居住地外での迅速な運転免許証更新、オンラインによる更新時講習の受講などができるようになると見込まれています。

マイナポイントをもらうには4月中に申請を

2020年11月から、まだマイナンバーカードを取得していない人宛に、QRコード付き交付申請書が順次送付されました。これを使うと、スマートフォンや郵送などでマイナンバーカードの申請ができます。もちろん、マイナンバーカードの申請は任意なので「まだどうも信用できない」「理解したうえで、私には必要ないかな」と感じた方はほうっておいてまったく問題はありません。ただし、もし「けっこういいかも」「ひとまず申請しておくか」と考えているなら、2021年4月末までに申請したほうがおトクになることは覚えておきたいところです。

「マイナンバーカードを持っている人が、マイナポイントの申し込みを行い、選択したキャッシュレス決済サービスでチャージ、またはお買い物をすると、付与率25%、ひとりあたり上限5,000円相当のポイントをもらえる『マイナポイント』は皆さんご存知だと思います。この制度を利用するには、2021年4月中に、マイナンバーカードの交付申請まで済ませる必要があります」(冨田さん)

ちなみに、マイナポイント自体の申込期限は2021年9月末までとなっています。ひとまず今月、マイナンバーカードを申請するか否かを考えてみてはいかがでしょうか?

※参考:マイナポイント「上乗せキャンペーン」で本当にお得なのはどれ? その見極め方(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/money/?id=15632

箱田高樹

箱田高樹

ビジネスマン向けの媒体を中心に手がけるライター・編集者。単著「カジュアル企業 ”好き”を究めて自分らしく稼ぐ」、共著「図解&事例で学ぶイノベーションの教科書」など。カデナクリエイト所属。

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