新年度がスタートする4月やその直前の3月は、新制度がスタートしたり、企業が新たなサービスを始めたりと、社会生活を送るうえで大きな変化が起こる時期でもあります。こうした変化にうまく対応するポイントは、まずその中身を知ること。そこで今回は、私たちの生活に関わりが深く、新年度スタートにともなって知っておきたい10のマネー関連のトピックスを紹介。最新情報をキャッチして、新生活のスタートをスムーズに切りましょう。
2021年4月1日から、税別価格のみの表示はできなくなります
最初に紹介するのが「総額表示」の義務化。
2021年4月1日から、消費税を含めた「総額」での表示が義務化され、「198円+税」「198円(税抜き)」などの表示は違法となります。
消費税法ではもともと、総額表示は義務化されていました。しかし、消費税率が5%から8%に上がる前の2013年10月から値札張り替えなどの店舗側の負担を考慮し、税別価格での表示も認める特例措置を実施していたのです。この特例が2021年3月末で失効するため、事業者は消費税を含めた総額表示が必須になります。対象となるのは、店頭の値札やチラシ、ウェブサイトなど、不特定多数の消費者に対して表示するもので、見積書や契約書、請求書などは対象外です。
国税庁のHPによると、総額表示として認められるものは以下のとおり。税込価格を明示していれば、税別価格や税額を併記することも認められています。
〈総額表示に該当→OK〉
「220円」「220円(税込)」「220円(税抜価格200円)」「220円(うち税20円)」
〈総額表示に該当しない→NG〉
「200円(税抜き)」「200円(本体価格)」「200円+税」
義務化にともない、大きな動きを見せたのが「ユニクロ」や「GU」を傘下にもつファーストリテイリングです。2021年3月12日から、これまでの税別価格をそのまま税込価格に切り替え、実質的な値下げに踏み切りました。たとえば、これまで「1,990円+消費税」と表示していた商品は税込み「1,990円」に。税込み「2189円」だった商品が「1,990円(税込)」になり、店頭やオンラインストアの商品で実質約9%の値下げが行われた形となりました。
イートインは10%、テイクアウトは8%と、提供方法によって税率が異なる外食産業も対応に追われています。
「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは、2021年4月1日から価格を改定し、イートインとテイクアウトの価格を統一することを発表。看板商品のモスバーガーは、イートイン(改定前:税込377円)、テイクアウト(同370円)から、「税込390円」に値上げするいっぽう、モスチキンなどの一部商品ではテイクアウト価格(税込270円)に統一し、イートイン価格(改定前:税込275円)の値下げに踏み切ります。
総額表示の義務化は最終的に支払う価格が明示されるため、消費者にとってメリットと言えそうです。ただ、上記2社以外にもこれを契機に価格を改定する企業があるので、買い物の際には値段を注意して見ておいたほうがよさそうです。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行がコンビニATMの手数料を改定します
紙の通帳有料化を実施するなど、さまざまな手数料の改定を行っている銀行ですが、その流れはコンビニATMの手数料にも及んでいます。今回の改定は値上げがメインとなるものの、一部の日時では値下げになることもあるので、「有料」と「無料」の境目を把握しておくのが大事なポイントになります。
三菱UFJ銀行は、ローソン銀行ATMの手数料を2021年4月1日から改定します。給料日の多い毎月25日と月の最終日は引き下げるいっぽう、それ以外の日時は引き上げます。すでに、セブン銀行ATM、イーネットATM、ファミリーマートに設置のゆうちょ銀行ATMでは、2020年5月にほぼ同様の形の改定を行いました。今回、ローソン銀行ATMの手数料がこれらに合わせられる形です。
これにより、ローソン銀行ATMの平日時間内手数料(8:45〜18:00)は110円から220円に、夜間や土日祝日は220円から330円に値上げ、逆に、毎月25日と月の最終日の時間内手数料は110円から無料になります。銀行店舗のATMが混みやすい25日と月末はコンビニでの利用へと誘導、いっぽう、コンビニATMでの取引があると、銀行はコンビニATMの運営者に手数料を払う必要があるため、通常日は手数料の安い自行ATMに誘導する狙いがあるとみられています。
参考HP:三菱UFJ銀行の改訂のリリース(イーネットATM、ゆうちょ銀行ATMの手数料も記載)
同じく、三井住友銀行も2021年4月5日からコンビニATMの時間内手数料を110円から220円に、時間外手数料を220円から330円に引き上げます。対象となるのは、セブン銀行ATM、ローソン銀行ATM、イーネットATM。そのいっぽう、毎月25、26日は手数料を引き下げ、時間内手数料は無料、時間外手数料は110円とします。なお、みずほ銀行は現在、コンビニATMについて、平日の時間内は110円、時間外や土日祝日は220円という手数料にしています。
現金が必要になったときに、いつでもお金を引き出せるというのがコンビニATMの利点ですが、4月以降は平日の夜間や土日などは330円の手数料が発生することにも。三菱UFJ銀行・三井住友銀行を含むメガバンクでは、預金残高や給与口座の設定などで、コンビニATMの利用を月3回程度無料にする特典を用意していますので、「数千円を引き出すために330円の手数料を取られてしまった」といった事態を避けるには、こうした特典を利用したり、キャッシュレス決済の活用も有効な手段になるでしょう。
新型コロナウイルス対策のひとつとして、時差出勤が推奨されていますが、鉄道会社の中でもラッシュの時間を避けて乗車した人に対してポイント還元する動きが広がっています。
JR東日本は2021年3月15日から「オフピークポイントサービス」を実施。こちらは、Suica通勤定期券で平日の朝に時差通勤した人にポイント還元を行うというもの。ポイント還元を受けるためには、Suica通勤定期券を「JRE POINT」に登録し、公式HPからエントリーすることが条件になります。
ポイント付与の対象となる時間帯は「早起き時間帯」「ゆったり時間帯」の2つに分けられ、1回の利用ごとに早起き時間帯なら15ポイント、ゆったり時間帯なら20ポイントが付与されます。時間設定は駅ごとに異なり、早起き時間帯はピーク時間帯の1時間前、ゆったり時間帯はピーク時間帯の1時間後に設定されています。
たとえば、JR山手線の品川駅や東京駅なら、早起き時間帯は6時半〜7時半、ゆったり時間帯は9時〜10時に設定されています。これらのいずれかの時間帯に駅に入場した後、対象エリア内の駅で下車した場合に後日JRE POINTが還元されます。
時差通勤によるポイント付与ではありませんが、JR東日本は、もうひとつ「リポートポイントサービス」を2021年3月1日から始めています。詳細は下記をご覧下さい
〈リポートポイントサービス〉
同一運賃区間で月10回以上乗車した場合にポイント還元が受けられるというもの。10回乗車すると1回乗車分のポイントが還元され、11回目からは運賃の10%分が毎回還元されます。
東京―赤羽(IC運賃:220円)、品川―川崎(IC運賃:220円)のように、運賃が同じであれば区間は異なってもそれぞれ1回としてカウントされます。たとえば、運賃220円の区間を月15回利用した場合には合計330ポイントが還元されます。JR東日本のポイントサービス「JRE POINT」にSuicaを登録のうえ、Suicaのチャージ残高で繰り返し乗車すれば、事前エントリー不要でポイントが還元されます。
JR西日本も、時差通勤で同社のICOCAポイントを還元する「ICOCAでジサポ」を2021年4月1日からスタートさせます。これは、ICOCA通勤定期券を使い、平日朝9時15分〜10時30分に、大阪、天王寺など大阪都心部の33駅で下車した場合にポイントを付与するサービス。1回ごとに20ポイントが付与されるのに加え、毎月の時差通勤10回目・15回目にボーナスポイントとしてそれぞれ30ポイントが加算されます。たとえば月15回時差通勤すると、
「15日×20P+30P(10回目ボーナスポイント)+30P(15回目ボーナスポイント)=360P」貯まる計算になります。
JR東日本と西日本が3月、4月に相次いで時差通勤者へのポイント還元を始めるのは、両社が将来的な導入を検討している「時間帯別運賃」と関係があります。時間帯別運賃はラッシュ時と通常時の運賃に差をつけるもので、密を避けるとともに、乗客のピークの波をなだらかにすることで、用意するべき車両や人員体制を見直し、コスト削減につなげる狙いもあるとみられています。両社ともに今回のポイント還元は2022年3月末までの期間限定で行いますが、乗客の分散効果など「時間帯別運賃」導入に向けた実験の意味合いもありそうです。
「時間帯別運賃」もその一種ですが、需給バランスによってチケットなどの価格を変動させる変動価格制(ダイナミックプライシング)は、エンタメ業界などで先行して実施されています。
オリエンタルランドは2021年3月20日から、東京ディズニーランド/ディズニーシーのチケットについて、料金が曜日や時期に応じた変動価格制を導入し、以下のとおりとしました。
大人(1デーパスポート):8,200〜8,700円(改訂前:8,200円)
中高生(1デーパスポート):6,900〜7,300円(改訂前:6,900円)
4歳から小学生(1デーパスポート):4,900〜5,200円(改訂前:4,900円)
平日は従来の価格を据え置くものの、土日祝日やゴールデンウイークといった長期休暇などの混雑時は値上がりします。
一般的に、ダイナミックプライシングは利用者を平準化し、企業の収益の最大化に貢献するものとされています。繁忙期には、顧客が「この価格なら購入してもいい」と思える最高値で売ることができるいっぽう、閑散期には価格を下げることで利用してもらいやすくなるからです。
ダイナミックプライシングは、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)やサッカーJリーグの名古屋グランパスでも導入済み。小売りでは、家電量販店のノジマが全店で電子棚札を導入し、需給や競合店の状況に応じて、細かく価格変更できる体制を整えています。東京ディズニーリゾートの場合は、日にちや曜日による変化でしたが、今後は天候なども考慮した価格をAIがはじき出し、毎日価格が変動するような細かい料金体系を導入する企業も出てくるでしょう。状況によっては通常より安い価格で購入できるなど、消費者にとっては価格面で選択の幅が広がる半面、価格が妥当なものかを見極める力が一層、重要になりそうです。
2021年3月末とされていた「Go To イート」のポイントの有効期限が延長されました
飲食店に対する国の需要喚起策「Go To イート」は、オンライン飲食予約サイトを使って予約するとポイントがもらえる事業(プレミアム付き食事券の事業もあり、それは後述)。ポイント付与については、予算の上限に達したため2020年11月で終了しました。還元されたポイント利用の有効期限は2021年3月末を予定していましたが、緊急事態宣言は解除されたものの、飲食店に対して営業時間の短縮を要請している自治体も少なくありません。そこで、国は事業に参加するオンライン飲食予約サイトに、ポイントの有効期限を最大3か月間延長することを要請し、各サイトは対応策を公表しています。
このことは消費者にとって朗報と言えますが、気を付けたいのは各サイトによって延長への対応が異なること。たとえば、「食べログ」は公式サイトで「3月31日までに利用できなかったポイントは1度失効し4月上旬に再付与されます。再付与されたポイントの有効期限は6月末」と説明。いっぽう、「Yahoo!ロコ」は「ポイントの有効期限を5月31日」としています。このように、有効期限の延長期間など細かい条件が異なっている可能性もあり、自分が保有するポイントのサイトがどのような対応策を採るか確認したほうがよさそうです。
参考HP:食べログ「Go To Eatキャンペーンで付与されたポイントのご利用について」
なお、「Go To イート」には上記のポイント付与のほかに、プレミアム付き食事券を発行する事業も行われています。こちらは都道府県単位で実施されている事業のため、延長期間などの対応策もまちまち。東京都や大阪府は現在、食事券の有効期限を2021年6月末まで延長すると発表しています。今後の感染拡大の状況によっては、有効期限についてさらに変更することも考えられるので、各都道府県の公式HPなどで適宜確認したほうがよいでしょう。
政府が普及を強く押し進めるマイナンバーカード。現状、このカードを利用して、コンビニでの住民票取得や税金の電子申告が可能となっていますが、2021年3月4日からマイナンバーカードの健康保険証としての試験運用が始まりました。ただ、政府は当初、3月下旬からの全国での本格運用を目指していましたが、患者情報が確認できなかったり、個人番号が他人と取り違えられたりするなどのトラブルが相次ぎ、本格運用は先送りに。2021年秋ごろの本格運用を目指す考えのようです。
出鼻をくじかれた形になりましたが、政府はカードの情報を読み取る顔認証付きカードリーダーを医療機関に無償提供するなどして普及に向けた動きを進めています。私たちが健康保険証として利用するには、マイナンバーカードを取得したうえで政府運営のオンラインサービス「マイナポータル」で保険証としての利用申し込みをする必要があります。これを済ませておけば、医療機関に置かれたカードリーダーにマイナンバーカードをかざして受付を済ますことができます。
政府は、マイナンバーカードを健康保険証として使えることのメリットとして、以下の点をあげています。
・結婚や転職などの際に健康保険証の発行を待たずに医療機関を利用できる
・医療費控除申請の際、医療費の自動入力が可能になり、申請がスムーズに
・利用者が同意すれば、診察時に医師が過去に処方された薬や手術歴を確認することができ、より適切な医療が期待できる(2021年10月からの予定)
・限度額適用認定証がなくても、高額療養費制度における限度額以上の支払が免除される
マイナンバーカードの普及率は現状で約26.3%(2021年3月1日時点)。政府は2022年度末には、ほぼすべての国民に保有してもらう目標を掲げています。今後、運転免許証との一体化やスマホへのマイナンバーカード搭載なども予定されています。今回起きたトラブルに関して、ネット上ではセキュリティの不安を訴える声が聞かれましたが、政府の目標実現には、こうしたセキュリティ面の不安を払拭するとともに、利用シーンのさらなる拡大が求められそうです。
なお、マイナンバーカード普及のためのポイント還元策「マイナポイント」事業ですが、ポイント付与の期限が2021年3月末から同年9月末まで延長されることが決定しています。ただし、ポイントをもらうためは、2021年4月末までにマイナンバーカードを申請することが必要ですので、まだの方は急いで準備をしたほうがよいでしょう。
2021年度の自動車損害賠償責任(自賠責)保険の保険料が引き下げられることに
税金やガソリン代など、マイカー保有にはさまざまなランニングコストがかかりますが、ちょっぴりうれしいニュースが。2021年度の自動車損害賠償責任(自賠責)保険の保険料が引き下げられることになり、家計の負担軽減につながりそうです。
自賠責保険は自動車事故の被害者救済を目的として設けられた保険です。補償の範囲は対人賠償に限定され、自動車事故で死亡やケガをした被害者に対して補償が行われます(運転手自身のケガや死亡、また物損は対象外)。自賠責保険は強制加入であり、どこの保険会社で加入しても保険料は一律で、補償内容も同じ。死亡事故で最高3,000万円、後遺障害で最高4,000万円の保険金が支払われます。
自賠責保険は利益や損失が出ないように運営されており、毎年度の保険料は金融庁の審議会で決められています。自動ブレーキなどの自動車の安全性能の向上や、新型コロナウイルスで外出が減ったことで保険金の支払いが抑えられたことを受け、2021年4月からの引き下げが決定しました。自家用車(2年契約、沖縄県や離島を除く)の保険料は1,540円下がり20,010円に、軽自動車(同)は1,410円下がり19,730円になります。なお、自賠責保険は対人事故による被害者への必要最低限のリスクしか補償してくれないため、多くのドライバーが加入しているのが任意の自動車保険ですが、こちらについても、保険料の値下げを実施する大手損保会社が出てきています。
多くの人にとって、老後の生活費の基盤となる公的年金。支給額は毎年度改定されますが、2021年度(2021年4月〜22年3月)は4年ぶりに減額となり、0.1%引き下げられます。これにより、自営業者らが加入する国民年金は、40年間保険料を納めた満額のケースで66円減の月額65,075円に。会社員らが加入する厚生年金(会社員の夫と専業主婦の妻のモデル世帯)は228円減の月額220,496円になります。
公的年金は現役世代の支払う保険料を、その時点の高齢者に仕送りする方式が採られています。そのため、年金制度を支える現役世代の賃金と、高齢者の暮らしに影響する物価の変動を踏まえて、毎年度改定されています。今回の改定の基になった数値は以下のとおり。
賃金の指標:−0.1%(2017年〜19年の賃金改定率)
物価の指標:前年比0.0%(2020年の全国消費者物価指数)
従来は賃金が物価よりも下落したとしても、物価のほうを重視し、物価に合わせて据え置きや改定をしていました。しかし、賃金が物価以上に下落した状態で、支給額を物価に合わせると、原資となる賃金部分は減っているので年金財政は悪化してしまいます。このため新たに導入された、賃金を重視するルールが今回初めて適用され、減額という結果になりました。なお、年金の支給額を物価や賃金の伸びより抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みもありますが、こちらはマイナス改定になったので適用されません。
今回は0.1%の減額で、月額で数十円〜数百円減っただけで、生活に大きな影響を与えるものではないかもしれません。しかし、賃金の指標は2〜4年分の数値で計算されます。新型コロナウイルスの影響で賃金が減った2020年の結果は2022年以降の年金支給額に反映され、さらに抑制される可能性があります。公的年金が老後の生活の大きな柱であることには変わりありませんが、老後の資産形成については、自分自身で取り組むことも必要と言えそうです。
当たり前の話ですが、老後資金対策の有効な手段になるのが「長く働くこと」。それを後押しする法制度が2021年4月から施行され、70歳になるまでの就業確保の努力義務が企業に課せられます。
2013年の高年齢者雇用安定法の改正により、現状で企業は希望する従業員を65歳まで雇用しなければなりませんが、これに加え、2021年4月からはそれが70歳までに引き上げられます。ただし、今回の70歳までの就業確保は現状では努力義務にとどまっていることと、雇用確保の方法として企業側に裁量の幅を一定程度、与えていることは覚えておきたいポイントです。
厚生労働省の指針などでは、70歳までの就業確保にあたって、企業は以下の選択肢から選ぶことができます。現状の65歳までの雇用確保は企業の直接雇用が原則でしたが、2021年4月から始まる、65〜70歳までの雇用確保の際は、(4)や(5)のように業務委託を締結してフリーランスとして勤務してもらったり、会社が関係する社会貢献団体で働いてもらったりすることが可能になります。
(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に、事業主や委託先、出資先などが行う社会貢献事業に従事できる制度の導入
「70歳までの就業確保」について、受け止め方は人それぞれかもしれませんが、今回の法改正は「70歳現役社会」の一歩と言うことができそうです。生涯の働き方、ひいてはライフプランを40代、50代のうちからしっかりと考えておく必要があるのかもしれません。
教育資金や結婚・子育て資金を一括して非課税で贈与できる制度がありますが、2021年度の税制改正によって、一部が変更されます。
教育資金については一定の条件のもと、子や孫などにひとりあたり1,500万円まで一括して贈与した場合に贈与税が非課税になる優遇措置があります。非課税で贈与できる期間が2021年3月末まででしたが、2年間延長され2023年3月末までになりました。
これは利用者にとってメリットになりますが、適用条件は厳しくなります。現状では、祖父母などの贈与者が亡くなった時点でお金が残っていた場合、それが贈与を受けてから3年以内の場合のみに相続税が発生してきました。法改正によって、「3年以内」という制限がなくなり、いつ贈与しても残額分に相続税がかかるようになります。ただし、贈与を受けた子や孫が23歳未満だったり、学校に在学中だったりした場合は、引き続き課税対象になりません。
また、通常、祖父母から孫に資産を相続する「世代飛ばし」の場合、子どもが相続する場合に比べて税額が2割加算されるルールがあります。現状の教育資金の一括贈与の仕組みでは、「2割加算」が免除されていましたが、この点も見直され、使い残しがあれば2割加算が適用されます。
結婚や子育て資金についても同様の特例制度があり、こちらは1,000万円まで子や孫に一括して贈与した場合、贈与税が非課税となります。こちらも2021年3月末までの期限が2023年3月末まで延長されますが、適用条件は厳しくなり、孫への相続税について2割加算が適用されることになります。なお、結婚・子育て資金については現状でも、何年前に贈与を受けたものでも、祖父母らが死亡した時点の使い残しは課税される仕組みになっており、この点について変更はありません。
以上、10のマネートピックスを紹介しました。
新型コロナウイルスにより私たちの生活は一変しましたが、「〈3〉の時差通勤でポイント還元」「〈6〉のマイナンバーカード」のように、コロナの出現によって注目され、新たに生まれるサービスは今後も出てくるものと思われます。また、「〈4〉の変動価格制」のような新たな仕組みも登場し、「〈8〉の公的年金が減額」「〈9〉の70歳までの雇用確保」が示すとおり、社会保障の制度や働く環境も大きく変わってくるでしょう。社会のさまざまなシーンで起こる急速な変化に対応するには、新制度についてのニュースをしっかりキャッチアップすることが必要になってきますが、この記事もそれに少しでも役立つことができれば幸いです。
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