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“ウクライナ危機・インフレ・金利”波乱の2022年に日本株はどう動いたか?

2022年は、今も続くロシアのウクライナ侵攻やインフレなど、私たちの生活に大きな影響を及ぼす出来事が起こりました。そんな中、日本の株式市場はどんな動きを見せたのでしょうか? 昨年に引き続き、「相場の福の神」こと人気マーケットアナリストの藤本誠之さんに、来年の見どころとともに解説いただきます。

波乱の年となった2022年、日本株はどんな動きを見せたのか?

波乱の年となった2022年、日本株はどんな動きを見せたのか?

2022年の日本株は「冴えなかった1年」

「正直、あまり冴えなかったですね」

マーケットアナリストの藤本誠之さんがこう評する2022年の日本の株式市場。まずは2022年の日経平均株価を振り返ってみましょう。新年早々の1月5日、株価は2万9,388円を付けます。これが2022年の最高値です。その後は下降トレンドに入り、3月9日には2万4,681円まで落ち込みこれが今年の最安値に。そこから再び上昇するものの伸び悩み、3,000〜4,000円程度のレンジ(値幅)でのもみ合いが続きました。

「2022年の日平均株価はこのレンジから抜け出せず、全般的に低調でした。株価が伸び悩んだ背景にはいくつかの複合的な要因があります」(藤本さん。以下同)

2022年1〜12月までの日経平均株価の推移と主な動き

2022年1〜12月までの日経平均株価の推移と主な動き

要因1:ロシアによるウクライナ侵攻

まず今年を振り返るうえで欠かせないのが、2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻です。

「年始の時点では誰も予想していなかった出来事でした。これによって市場がリスクオフ(相対的に安全性の高い資産に資金を移すこと)に傾き、株価的にはマイナス要因となりました。また、ロシアは天然ガスや原油、ウクライナは小麦やトウモロコシなどの穀物と、両国とも重要な資源国です。ロシアの軍事侵攻によってこれらの供給がとどこおり、価格が高騰。影響はさまざまな範囲に及び、急激なインフレが世界的に広がることになりました」

解説:藤本誠之さん
「相場の福の神」の愛称を持つマーケットアナリスト。年間300社を超える上場企業経営者とのミーティングを通じて、個人投資家に真の成長企業を紹介。ラジオNIKKEIで5本の看板番組を持ち、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。日興証券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジスト

要因2:世界的な金利引き上げ

ロシアのウクライナ侵攻による急激なインフレは、各国の金融政策にも影響を及ぼします。

「ここ2年あまり、先進各国はコロナ対策として大幅な金融緩和を実施してきました。市場に出回るお金の量を増やすことで、新型コロナの影響で停滞した経済活動を活発化させる狙いがあったわけです。その効果もあり、徐々に景気が回復しつつあったところに起きたのが、前出のロシアによるウクライナ侵攻です。

これで各国の想定以上にインフレが一気に加速。市民生活への影響が無視できなくなってきたことから、世界各国は金融緩和策を転換します。具体的には、金利を引き上げ、市場に出回るお金を減らすことでインフレの鎮静化を早期に図ろうとしたわけです。金利が上がると企業や個人が新規の借り入れを控えるようになったり、個人が預貯金にお金を回したりすることで経済活動が抑制され、株価が下落する傾向があります。特に、将来の成長を期待して買われる傾向の強いグロース(成長)株を中心に株価低迷の一因となりました。

なお、日本は先進国で唯一金融緩和を継続していましたが(12月20日に日銀が金融緩和策を修正し、長期金利の変動許容幅を拡大)、他国の金利との差が意識されることで円が売られ、10月には一時1ドル150円台を付けるなど急激な円安が進みました。これも、2022年の象徴的な出来事として記憶されることでしょう」

2022年は各国の利上げのニュースが話題に。画像はFRB(米連邦準備制度理事会)

2022年は各国の利上げのニュースが話題に。画像はFRB(米連邦準備制度理事会)

要因3:東証再編

「日本では今年4月、東京証券取引所(以下、東証)の市場区分再編が行われ、従来の4つの市場(東証1部、2部、マザーズ、JASDAQ)が、『プライム市場』『スタンダード市場』『グロース市場』という3つの新市場になりました。これにともない、新規上場や上場維持の基準が変わり、売上や流通株式の時価総額など上場企業に求められるハードルが上がりました。この再編には、『国内外の投資家からの支持を集める市場になること』という目的があったのですが、ここまでのところ、その狙いどおりには行っていません。

たとえば、各市場の上場維持基準に満たない企業に対しては経過措置が設けられ、基準適合に向けた計画書を開示することで各市場への上場が認められています。しかし、この経過措置がいつまで続くのか明らかにされておらず、新しい上場維持基準が正しく機能していない状態が続いています。このほか、マザーズ市場が姿を消したにもかかわらずマザーズ指数は残るなど(2023年10月に「東証グロース市場250指数(仮称)」に変更予定)、現状、再編によるポジティブな効果よりも、市場の混乱を招いただけとの印象のほうが強くなっています」

2022年4月に市場区分が再編された東証ですが、ここまでのところポジティブな変化にはなっていない模様です

2022年4月に市場区分が再編された東証ですが、ここまでのところポジティブな変化にはなっていない模様です

波乱の2022年、好調だった銘柄は?

このように伸び悩んだ今年の日本株市場ですが、なかには株価を上げた企業もありました。さまざまな要因がからんで動く株式市場の中から、こうした“きらりと光る”銘柄を見つけるのも株式投資の醍醐味のひとつ。この章では、「海運」「半導体」「脱炭素」の3テーマについて、具体的な企業名を交えて藤本さんに解説いただきます。

テーマ1:海運(商船三井など)

「昨年2021年は海運関連の銘柄が大きく値を上げました。その背景には世界的な海運需要の高まりや、コロナ禍の人手不足による運賃の高騰などがあったわけですが、この動きは2022年に入ってからも続きました。

商船三井(東証プライム:9104)など、大手海運3社は好業績を発表。外国と結ぶ航路の運賃はドル建てで支払われるため、今年急激に進んだ円安も各社の収益増の追い風となりました。その意味で、今年の相場を象徴する投資テーマだったと言えます。ただし、世界的な金利上昇による景気悪化懸念から今後の見通しは明るくありません。実際、株価が好調だったのは今年の夏ごろまでで、それ以降は下降トレンドになっています」

商船三井の1年チャート。年初来高値3,880円を付けたのは3月16日。以降、もみ合いながら値を下げ、10月3日に年初来安値2,578円を付けました

商船三井の1年チャート。年初来高値3,880円を付けたのは3月16日。以降、もみ合いながら値を下げ、10月3日に年初来安値2,578円を付けました

テーマ2:半導体関連(レーザーテック)

「昨年2021年は世界的な半導体不足により、半導体関連株が物色されました。2022年になるとその状況にやや陰りが見え始め、半導体関連株の多くは値を下げました。そんな中、ひとり勝ち状態で株価を上げたのがレーザーテック(東証プライム:6920)です。

レーザーテックは半導体検査装置の開発を事業の柱としています。半導体製造は台湾の『TSMC』や韓国の『サムスン電子』などが強いのですが、その製造プロセスにはレーザーテックの技術が欠かせないと言われています。検査装置というニッチな分野ながらグローバルな市場を取っており、その強みが株価を押し上げたと言えるでしょう」

レーザーテックもほかの半導体関連株と同じく、年頭の高値から下降トレンドに。しかし年の後半から上昇トレンドに転じ、10月3日の年初来安値1万4,320円から12月中旬には2万6,000円台の高値を付けました

レーザーテックもほかの半導体関連株と同じく、年頭の高値から下降トレンドに。しかし年の後半から上昇トレンドに転じ、10月3日の年初来安値1万4,320円から12月中旬には2万6,000円台の高値を付けました

テーマ3:脱炭素 (マイクロ波化学)

「2022年の新規上場(IPO)は90社を超えました(2022年12月22日時点)。その中でひと際株価の上昇が目立ったのが、今年6月24日に新規上場したマイクロ波化学(東証グロース:9227)です。

マイクロ波化学は、電子レンジなどに使われるマイクロ波を化学産業の製造プロセスに利用する事業を展開している大阪大学発のベンチャー企業です。同社の技術は大型プラントでの素材の熱分解などに利用されていますが、マイクロ波を使うことによって、従来のガス・電気などを使ったプロセスよりも大幅な省エネが可能になります。また、マイクロ波を利用してプラスチックを熱分解することで再利用につなげる技術なども展開しており、世界的にニーズが急速に高まっている脱炭素の流れで大きな注目を集める企業です」

マイクロ波化学は、6月の新規上場後しばらくは横ばいが続いていましたが、年の後半から大きく値を上げました

マイクロ波化学は、6月の新規上場後しばらくは横ばいが続いていましたが、年の後半から大きく値を上げました

2023年、インフレに負けない賃金上昇はあるか?

全般的に低調だった2022年の日本株でしたが、2023年の見通しは?

「いくつかの注目テーマを中心とした上昇基調になると見込んでいます。そのひとつのテーマとして、新型コロナの水際対策の緩和や円安による『インバウンド需要』の復活があります。今年は円安もあり、訪日観光客の爆買いの様子がニュースで報じられたりもしましたよね。12月末に日銀が金融緩和を修正したことで円高に戻す動きが生じてはいますが、インバウンド需要復活の流れは続くはずです。すでに百貨店業界などでは売上増につながっており、2023年は旅行、ホテル、飲食などのサービス業界に活気が戻るのではないでしょうか。

また、『不動産』にも注目しています。各国主要都市の不動産価格と比較すると、日本の不動産は比較的割安な状況が続いています。台湾問題を抱える中国など、アジアの富裕層が日本の不動産にお金を移す動きが続いており、日本の不動産価格を支えるのではと見ています。

『内需』主導での経済成長にも期待しています。総務省が今年12月に発表した11月の全国消費者物価指数は、前年同月比+3.7%となり(生鮮食品を除く)、第二次オイルショックの1981年12月以来、40年11か月ぶりの伸び率となりました。これで15か月連続の上昇です。日本は長らくデフレが続いてきたわけですが、個人的には、経済が活性化し好景気が続く中で物価が上がっていく“良いインフレ”が見えてきたように思えます。その鍵となるのが、物価上昇に負けない賃金上昇が起こるかどうかです。昨今の人手不足を考えると、個人的には“賃金を上げざるを得ない”状況となると予想します」

人手不足が人材関連企業の追い風に

「インバウンド需要の高まりによって、サービス業を中心に人手不足がより明らかになってくるはず。そこで注目したいのが人材関連のビジネスを手がける企業です。たとえば、小売・飲食を中心にアルバイトの採用から定着、活躍までをワンストップで支援するツナググループ・ホールディングス(東証スタンダード:6551)などにとっては、追い風となる状況と言えそうです」

ツナググループ・ホールディングスの1年チャート

「このほか、日本国内でのDX(デジタルトランスフォーメンション)のニーズの高まりによって慢性的にIT人材が不足する中で、ベトナム人の方が代表を務め、ベトナム国内の豊富なIT人材を活用して日本企業向けのシステム開発を行っているハイブリッドテクノロジーズ(東証グロース:4260)などにも注目しています」

ハイブリッドテクノロジーズの1年チャート

不動産関連にも注目

「不動産関連で注目する企業のひとつがランドネット(東証スタンダード:2991)です。同社はマンションを中心に中古不動産の売買を専門に行っています。最新のテクノロジーと独自の物件情報データベースを活用し、全国の不動産を対象に買取から再販まで一貫して担うのがランドネットの強みです。同社は全国757万件の区分所有のデータを持っていて、ITなどの技術を使って買い手と売り手をつなげて利益を最大化しています。“不動産テック企業”として注目しています」

ランドネットの1年チャート

「先ほども触れましたが、海外の富裕層が日本の不動産に投資する流れがあります。その意味で、国内外の富裕層向けの不動産開発や不動産コンサルティングに強みを持つビーロット(東証プライム:3452)なども注目銘柄と言えるでしょう」

ビーロットの1年チャート

ビーロットの1年チャート

遊技機器の世界では“スマート化”が進行

「内需が盛り上がれば、インフラ、銀行、外食や小売など、国内で利益を稼ぐ幅広い企業にとって当然追い風となりますが、この中で私はちょっと変わったテーマとして『遊技機器関連』に注目しています。いわゆる“パチンコ・パチスロ”の台なのですが、今年から来年にかけて急速に『スマート遊技機』の導入が進んでいるのです。

すでに今年2022年11月には、『スマートパチスロ』がホールに登場しました。従来機と違ってメダルを使用せず、電子情報で遊技する画期的なものです。そして来年2月には『スマートパチンコ』が登場予定です。こちらはパチンコ玉が遊技機器内で循環され、出玉は電子情報で計測される仕組みです。いずれも、メダルやパチンコ玉に触れずに楽しめるため、感染症対策の面で注目されています。また、ユーザーの出玉情報などの管理が容易になるため、一定の出玉数で強制的に遊技が終了となる機能が付くなど依存症対策の面でも効果が期待されているようです。

従来機からの買い替え需要から今年すでに株価が上がっている銘柄もありますが、来年も、遊技機器関連メーカーのマミヤ・オーピー(東証スタンダード:7991)など、関連企業の幅広い銘柄に好影響があると見ています」

マミヤ・オーピーの1年チャート

まとめ

あらためて2022年を振り返ってみると、ロシアによるウクライナ侵攻や、急激なインフレ、円安、利上げなど、ニュースを騒がせた出来事の多さに気付かされます。いっぽうで日本株の動きは軟調で、「投資しづらい1年」との印象も強く残りました。

2023年の日本の株や景気を考える際、藤本さんが触れたとおり、「賃上げ」がひとつのキーワードになりそうです。物価高をふまえてすでに「インフレ手当」などを支給する企業が登場するなど、その“気配”のようなものは感じさせますが、はたしてどうなるか? まずは来年2月から3月にかけての春闘でどのような回答額が出るかが注目ポイントになりそうです。

※本記事は取材者、執筆者の見解です。

百瀬康司

百瀬康司

フリーランスライター。副業をはじめ、投資、貯蓄、節約などマネー企画全般を取材。ビジネスや働くママのジャンルでも取材経験豊富。雑誌、Web、夕刊紙、書籍などで執筆。「真に価値ある情報提供」を使命とする。

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